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脇の下の秘密とオルガクルガ

ちょい長かったかも


「何かわかったかい?」

「まぁ、ギュギュパニの足腰が立たない原因はわかったよ。」


「原因?それは何だい?」

「んっと、僕が作った新しい図は機能してるんだ。ただ、その新しい図は、生命力の消費が多いらしくてね。そこを通過した生命力が下半身まで行き届いてないんだ。だから足腰が上手く機能しないんだよ。」


「ふーん。どうすればいいんだい?」

「一応様子は見てみたんだ。結果は時間が解決するだろうという事だけだけど、そうなると結構時間がかかるかもしれないんだ。そうなるとさ?ギュギュパニの肉体の足腰が萎えてしまうだろ?木登りもまともに出来ないほど萎えるかもしれないんだ。肉体を元に戻すのってそれなりにまた時間がかかるんだよ。」


「なるほど・・・どのくらいかかるんだい?」

「僕の見立てだと、図が治るのに1ヶ月はかかる。更に萎えた足腰を戻すのに最低でも3ヶ月から半年はかかるとおもうよ。」


「!そ・・・それは流石に酷いねぇ・・・なんかいい手は無いのかい?」

「それを探したいんだけどねぇ。いい方法は有るっちゃーあるんだけど」


「あるのかい?」

「ある。だけど、ザウスにできるかと言われると疑問なんだよ。」


「?ザウスだとダメなのかい?」

「精霊さんの話だと呪術師に成るほど生命力の扱いに長けた種族はスキクだけらしいんだ。そして、ザウスとクロデルには未だかつて呪術師が生まれたことがないみたいでね。」


「そうかい・・・ザウスはそういう面では劣っていたんだねぇ。」

「でも、僕はちょっと試してみたいことが無いわけじゃないんだ。」


「ふむ・・・どんなことだい?」

「パパムイが何時も体操したりしてるのは知ってるでしょ?」


「ああ、あれか・・・知ってるねぇ」

「その中に僕が教えた気功ってのがあるんだ。」


「キコウ?・・・確かお前さんがシュトウでケルケオを切った際もそれを使ったって言ってたね?それかい?」

「そうそれ。それの中には、病気、つまり”ジン”や怪我を早く治す方法もあるんだ。それをギュギュパニがやればいいんじゃないかと思ってね。」


「ふーん。でも、あたしはパパムイのように飛んだり跳ねたりは出来ないだろう?」

「気功は別に飛んだり跳ねたりする事じゃないんだ。一般には生命力を養う事をいうんだよ」


「生命力ねぇ。その話し、ラマナイ様の話だとザウスは無理なんだろぅ?」

「そう思ってたんだけどさ?昨日ギュギュパニに取り憑いたオルガクルガってのは、結局、生命力の塊だったわけだ。取り憑く程につよいならザウスでも可能だろうとふんだんだよ。」


「なるほど、それは確かにそうだねぇ。」

「もしかしたらだけど、ギュギュパニのザウスとしての種族は、スキクよりのそういうの特化してたのかもしれないじゃん?まぁわからないんだけどね。」


「ふむ。まぁ、早く治るって言うならやってみようかねぇ」

「うん。それが良いよ。」


こうして、ギュギュパニに気功を教え込む。

呼吸法から、気の存在についての認識。

さらに気の練り方と順序を踏んで教えていった。


お手本とばかりに起き上がったパパムイも参加したんだけど。

これが凄い。

教えた事を生真面目に永遠とやってしまうスキクならではかもしれないけど。

気を養うことばかりやってたせいか。

物凄い気の保有量だ。

多分、この集落で僕の次に多いはず。

ただ、使えてないからなんとも言えないんだけどね。

体で覚えないと頭に入らないパパムイだからなぁ。

どうやって使い方を覚えさせるかちょっと考えておこう。


ついでにウウダギも興味を持っていたらしく、

一緒に学んだ。

このおかげで後でアンキロの角へ気を送り込む作業が捗りそうだ。

そのうちシシブブにも教えないとね。

ウウダギは問題なくスムーズにこなしていたし、

成長途中で気功をするとあまり良くないって、

じいちゃんが言ってたから程々にしなさい。

と、伝えておいた。


「う〜ん。なんだかもどかしいねぇ。このキってのは・・・生命力だったかい?どっちでも良いんだけどねぇ」

「実感できるなら充分だとおもう。そして、それを根気強く練っていけばいいだけだよ。」


「その練るっていうのもねぇ。今一ピンとこないんだけどねぇ」

「気、事態は認識出来てるでしょ?」


「確かに感じるねぇ。こんな力があるなんて知らなかったよ。」

「そのうち、パパムイも一緒にその気を扱う方法を教えるよ。」


「それはアレかい?あたしも呪術師になっちまうのかい?」

「いや、呪術には『形』が必要らしいんだ。だけど多分そこまでできないと思う。もっと気を多く持たないといけないしね。パパムイも多いけど、呪術師ほどじゃないから」


「ふーん。まぁ、これを続けるだけなんだねぇ?」

「当面はこれで何とか成るよ。」


「わかった。早速、キコウをやってやろうじゃないか。どうせ、動けない間は、暇なんだしねぇ」

「うん。それが良い。」

「なぁ?ポンピカ。ポンピカの気の量ってどんなもんなんだ?」


パパムイが元気になったみたい。


「ん?う〜ん。わかりやすく言うとね。地面の石ころあるでしょ?」

「ああ、あるな」


「あれが一匹あたりの生命力と思えば、僕の生命力はね。避難所よりちょっと大きくした岩くらいの大きさなんだ。」

「・・・でかくねぇか?」


「精霊さんより多いらしい。」

「それ・・・セイレイってやつの教えを受ける意味あんのか?」


「あるさ!使い方とかはまた別だし、意外に奥が深いんだよ。大きさだけが全てじゃないって事だね。」

「ふーん。じゃぁ俺は?どのくらいだ?」


「さっき見てみたけどパパムイは前より凄い伸びてるよ。そうだなぁ。拳位の大きさかな?大きいよ。」

「拳って・・・ポンピカのほんの少し位なのか・・・」


「まぁ、それは仕方ないさ。もし大きすぎると、精霊さんが出てきて弟子にさせられるよ。面倒だから付き合わないほうがいいよ。寝る時間なくなるからね?」

「・・・寝る時間がないって、そりゃ酷いなぁ・・・俺ねれないなら呪術師になんかならねーぞ?」


「精霊さんが出てきたら、そんな事言ってられないんだよ。強制らしくてね。酷いんだよ精霊さんって」

「そんなにかよ。じゃぁ俺、程々にしとくわ。」


「まぁでもパパムイの気がどんなに多くなっても精霊さんは出てこないと思うよ?結構難しい話しを永遠とするからね。頭に入らないパパムイには無理だろw」

「まぁ、たしかにな。俺は頭が足りないからなぁ。まぁいいや。それよりギュギュパニ」

「ん?なんだい?」


「いい加減、脇の下洗えよな」


バコンッ!


物凄く強い鉄拳制裁が目の前で炸裂した。

パパムイ完全に意識が刈り取られてる。

ギュギュパニすごいなぁ・・・。

でも、僕のことも叩こうとするのは辞めて欲しい。

臭い臭いとうるさいのはパパムイだけだからね。


・・・ホント、デリカシーがないんだなぁ。パパムイって。


ギュギュパニは瞑想を続けるようだ。

そっとしておこう。

ウウダギを連れて、パパムイはほっといて、下へ降りる。


さてと、一応族長から言われてるのは、例の2匹の事だけだ。

ただ、少し気になることがあってね。


「ウウダギ、採掘場いくよ」

「?」


「きっと採掘場にまだ居るんだ。」

「なにが?」


「ん?決まってるじゃんw」

「??」


ウウダギはわからないようだけど、

まぁ当然といえば当然だ。

ギュギュパニの体から出たヴァンが何処へ帰るのかって、

考えればそれは、元の体があった場所さ。


ウウダギが乗っ取られる心配は無いだろう。

首に下げているネックレスがあれば、

ウウダギにちょっかい出せるヴァンはそれほど多くないだろう。

それにその効果は、ウウダギが気を流し込み続けていればより大きくなる。

そのうち、僕も手が出せなくなるほどだろう。


まぁそれはいいや。

ウウダギがついてきてくれる方が何かと都合がいいしね。


2匹で採掘場へと赴き、すり鉢状の底にある、洞窟へと歩み寄った。


洞窟は、ギュギュパニが自ら掘ったものだけど、

何をどうしてか、入り口を岩で覆っていた形跡がある。

現在はその塞いでいた岩が外側へ倒れて、放置されていた。


「ポンピカ。何探す?」

「んっと、多分この奥だと思うんだ。ほら、少し匂いがするだろ?」


鼻をスピスピするウウダギが可愛い。


「なにか腐ってる。なんだろう?」

「うん。その正体は恐らくオルガクルガだよ。」


「!また、生きる?怖い!」

「もう生きないよ。大丈夫。それに僕はアレと話したいんだ。」


「話す・・・。死んでるよ?」

「うん。僕は狭間へと目とか耳とか口を持っていけるんだ。だからそこで聞いたり出来るんだよ」


「僕も出来る?」

「う〜ん。気功を頑張るしか無いかな?でもちゃんとやるのは成長してからだよ?」


「う〜。うん。わかった。僕は成長したらちゃんとやる。」

「うん。頑張ってね。」


生き物の腐敗臭が漂う洞窟へと入っていく。

生き物が腐敗するとここまで、アンモニア臭がキツイとは思わなかったよ。

髪の毛とか無いからと思ったけど、そんなの関係なさそうだ。

前世で、小さい時干からびて死んでいた蛇を見つけた時、似たような匂いを嗅いだことがある。

多分間違いないよ。


これは生き物が腐敗してるときの匂いだ。


奥へと歩み寄る。

ウウダギが突然鼻を押さえてうずくまった。


「キツイ?」


僕の問いに無言でウンウンと頷くウウダギ。


「一度外で待ってていいよ?無理は良くない。外に持ち出す予定だしね。」


その話にウンと頷いて踵を返していった。


まぁ、普通のスキクなら此のくらいの匂いだと強烈過ぎてたまらないんだろうなぁ。

僕の鼻があまり効かないのも元人間だからだろうしね。


ウウダギを見送り、一匹で奥へと進む。

それほど深くはなかった。

それに一本道だったのも幸いした。


何時もギュギュパニが使っていた、石で出来たテーブルを見つけたんだ。

そこには、まぁ、鉱物の他にも・・・食べかけというより、なんと言うか。

結構グロテスクな状態のオルガクルガが一纏めに成り、山となっていた。


肉の部分はほぼ無い。

内蔵部分は、食べなかった箇所が腐って溜まっている。


骨は、まぁ綺麗に食べたほうじゃないか?

火は使ってないから生で行ったんだろう。


こんな量の生物を一気に食べたらお腹壊すよ?

まぁ、お腹壊すどころじゃなかったみたいだけどさ・・・。

ってか冗談は置いておこう。


流石にここまで来ると僕の鼻でもキツイ。

早く処理しよう。


狭間へ意識を飛ばす。

すると、石のテーブルの所の残骸と被る形で、

ヴァンが浮いているのが見て取れる。


だけどこのヴァン少し変なんだ。

若干『形』を形成している。


相当、想いが強いんだろう。

生命力の方は、それほどでもないのに『形』を作れるってことは、

それだけ想いが強いからだ。


まぁ、言わず我もな、である。


「オルガクルガだろ?」

”・・・お前、見たこと無い生き物だね”


『形』が揺らいでいる。

不安を表現しているようだ。


「ああ、そうか、僕だよ僕。お前を殺った。ポンピカだよ。」

”!?・・・スキクだったはずだ。なぜそんな姿をしている?”


この『形』っていうのは本当に想いで出来ているんだろう。

感情の起伏なんかで、状態が変化するようだ。

今は、ビックリしたんだろう。

跳ねる様に動いた。


「まぁ、色々あるんだよ。それより、どう?色々やりきった?踏ん切りついたんじゃない?」

”踏ん切り・・・そうだねぇ。まぁ、彼処までして、結局何も出来なかったからね。もう、あたしは降りるよ”


今度は沈んだ感じだね。

本当に諦めていそうだ。

でも想いが残るってことは、まだ諦めてないんだろう?


「ふーん。随分、素直に負けを認めるんだね?もっと、アレかと思ったけど」

”ふん。ギュギュにまで迷惑かけてこの様だからね。それにもう何も出来やしないさ”


段々、消えそうなほど薄らいでいる。

此のままだと話が出来ない。


「そっか、じゃぁ、素直に天に召されるつもりなの?」

”天か・・・そうだね。あたしも次の時代に飛ばされるのかねぇ?”


次の時代っていうのは、ザーザース特有の生まれ変わりだ。

前世を持って生まれ変われるかも怪しい代物だし、

何よりそんな物を頼るのもどうかな?

この話し方からすると希望って言えるのかもしれないね。


「どうだろう?そこら辺は僕も知らないんだ。まぁ、そういう仕組みを作ったやつに聞いたほうが良いかもしれないけどね。」

”・・・随分、含みがある言い方をするんだねぇ?なにか用が有ったのかい?”


さっきより落ち着きを取り戻したようだ。

ただ、揺蕩うが如くってやつだね。

安定しない。


「ああ、そうなんだよ。ここまでして、さっさと天に召されても困るからね。」

”ふん。ポンピカっていったっけ・・・あんたみたいなスキクが居るんじゃザウスはもうだめだね”


変な言われようだけど、

僕一匹でどうにか成るような話じゃないだろうになぁ。


「なんだよ。いきなり?」

”いや、ただ、心残りがあるんでねぇ。”


おや、安定し始めた。

やはり心残りがあるんだ。


「ふーん。そんなものかな?まぁいいや。ちょっと質問に答えてくれない?」

”質問?内容によりけりだよ。あたしだって、答えれないことはあるんだ。”


「まぁ、それは追々って事だね。あと質問の他にお願いもあるんだ。」

”・・・まぁ、いいよ。あたしはすでに何も出来ないからね。素直に言うことを聞くよ。”


こうなるとやっぱり諦めも入ってるんだね。

そりゃそうか・・・体が無いんだしね。


「そう?それは良かった。早々で、悪いけど、なんであんなことしたの?これが質問だ。」

”あんな事?”


「うん。この集落を落とすのは方便だったんだろ?目的はギュギュパニだ。弱いから殺すって、どういう思考かわからなかったんだ。なんでそんな選択をしたんだ?」

”・・・あんたは、オルデの事は聞いたことあるだろう?”


突然、オルデの話し?

繋がるのかな?


「オルデってオルデゴ・ブンデダ?」

”そうだ。それだね。”


「オルデがなにか関係あるの?」

”そうだねぇ。かいつまんで話すけど良いかい?”


「うん。お願いするよ。」

”まぁ、普通、ザウスってのは、血族で生活するものだ。それは知ってるだろう?だけど、あたし等のようにスキクの集落に住むザウスがいる。どういう理由かということだ”


「それとオルデがなにか関係してるの?」

”ああ、そうだよ。オルデってのはね。あたし等の種族の先祖のことだ。”


むむ?

むー?

先祖とな?


「先祖って・・・じゃぁ、ギュギュパニも?」

”そうだ・・・続けるよ。オルデゴはねとても気の優しいヤツだったらしい。争いを好まない体質だったんだそうだ。だけどね。ある時、番の雌を誤ってスキクに殺されたことが有ってね。それから随分荒れたらしいんだよ。”


「荒れたってのは、それがオルデの由来?」

”いや、その時はそれほどでもなかったらしい。というのも当のザウスはそれほど力も強くなければ根が優しかったんだ。大したことは出来なかったんだよ。”


ふむ。

優しいからこそ、

怒ると怖いみたいな流れかと思ったけど、

ちがかったみたい。


「?それがどうして、あんな話しになったんだ?」

”問題はね。雌の方に有ったんだよ。”


「雌?番の?」

”そうさ、その雌ってのが殊の外、気の荒い体質だったらしい。当時、ザウスのトでの地位も高くてね。しかも第一のプンタが随分とかわいがっていたんだ。それがスキクに殺されたんだ。そんな事が起きるわけ無いだろう?でも起きたんだ。”


むー?

スキクの弱さは知ってるつもりだけど、

流石に何かの間違いでザウスを殺せるか?

本当にスキクがやったのかな?

疑問が残るけど、まぁ、話は最後まできこう。


「でも、その雌死んでしまったんだよね?」

”まぁ、そうだね。オルデゴは悲しみ、番の肉を口にした。すると、オルデゴは今までと打って変わって、気性がとても荒いザウスに成ったらしい。更に力も以前より強くなり、番を殺したスキクヘの復讐を開始したんだ。結果、スキクの集落が30も潰されたんだよ。一匹のザウスのせいでね。”


30の集落を一匹で?

どのくらいの期間をかけたんだろう?

まぁ、ザウスの力ならあり得ることのように聞こえるけど・・・。

実際にそれをしたのがオルデゴか。


「・・・何となく流れが分かってきた。つまり、オルデゴの番である雌が・・・今回のギュギュパニへのオルガクルガだったわけかい?」

”へぇ〜。察しが良いんだね。面白い。端的にいえばそうなる。ちなみにオルデゴの本当の名前は、オルデゴ・ムシャラテだ。そして、番の雌の名前が、ブンデダ・ケルオルっていうんだよ。”


「なるほど。もしかして、それで、オルデゴ・ブンデダ?って成ったわけか」

”そうだ。”


なんか面白い流れだな。

こう聞くとこのオルガクルガってのは、

面倒見の良いザウスだったんじゃないか?

話し方が優しいぞ?

なかなか分かりやすい。


「へー。なんか面白い歴史を聞かされてる気分だけどさ?なんでそれが今回の選択にかかわってくるんだ?」

”オルデゴとブンデダの間には、数十の子供が居たんだ。当時の第一プンタは、オルデゴ・ブンデダが討伐された後、子孫からまた同じ悲劇を出すべからずと言う決まりを言い渡してきた。さらに子孫には、亡くなったスキクへの償いとして、子孫全てがスキクの集落へと在中することに成るんだ。”


なるほど。

だからか・・・。


「つまり、アンタやギュギュパニの先祖がオルデゴで、その償いの為に今まで、こうして過ごしてきたわけだ・・・だけど、それで、ギュギュパニが弱かったとしてもだよ?どうして、討伐とかになるんだ?」

”討伐?そんなつもりはないさ。まぁ脅しは交渉には必要だろ?責任は取らさないとね。でなければまた、オルデゴが誕生してしまいかねないんだよ。”


ギュギュパニが弱いと、オルデゴが?

全然繋がらない気がするんだけどなぁ。


「弱い個体を残すとオルデゴと同じ悲劇がって事?」

”そうさ。第一のプンタはあたし等に強く在れと言ったそうでね。弱い、優しいザウスはどこかで、あたしみたいに付け込まれる。そう思ったんだろう。今回はまぁ、オルデゴの様にはならなかったけどね。あのままだったらあんたらの集落は全てが息絶えていたはずだよ。”


まぁ、実際、ギュギュパニはオルガクルガの肉を口にしたわけだしね。

結果、オルガクルガが想いを残していて、それを肩代わりしてしまったんだ。

悲劇かぁ・・・。確かにそう言えなくもない。

僕からしたらオルガクルガの一族が悲劇を被ったように思えるけどね。


「ふーん。で?弱いと判れば、お説教の一つもするつもりだった?とか?」

”説教で、弱さが克服できればありがたいんだけどねぇ。あたしらザウスは、そんな頭には出来てないんだよ。どちらかと言えば保守的な所が強いんだよ、ザウスってのはねぇ・・・。それも有って、あたしが責任を取らせるって言ったのは、再教育すること、それから今居る集落から違う集落へ移す事だ。”


なるほど、再教育か。

更に左遷ときたもんだ。


「ふーん。まぁ、それはもう出来なくなったわけだしね。・・・でも再教育って、以前も教育したの?」

”ん?おまえは何も知らないんだねぇ?あたしらザウスだよ?生まれて2年たてば、一度トで教育をうけるんだよ。一年ほどだけどね。それが戦の準備だ。そしてあたしがギュギュを直接教育したんだよ。”


親が先生で師匠って完全に頭が上がらないじゃないか。

そりゃギュギュパニが可愛そうだよ。


「なるほど。だから顔見知りみたいな態度だったんだね?」

”ああ、当時はおっとりとした性格だったからね。本当に危なかったんだよ。もし血族の中で強い雄と結ばれて、その雄が・・・なんてことに成れば、ギュギュの性格だと、オルデに成っちまいかねないね”


今回はそうでなくても成ったけどね?


「そっかぁ。でも優しさや弱さがある方が、強くなる時もあるんだよ?」

”どうだかねぇ。あたしはそう言うのは、見たことがないからねぇ。”


まぁ、実際、仲間が居るから強く成れる!とか言ってるけど自力の限界は低いんだよね。

何もしてなかったのが前提だから・・・何かしてても仲間が裏切ったり人質みたいな事に成ればすぐに屈服してしまうしね。

でもそう言うのは有ると思うんだ。

いや、有ってほしんだよね。


「じゃぁ、それで、スキクに負けたっていう報告が入って、今回の流れに?」

”ああ・・・ってかそのスキクってのが、アンタで、しかも本当に化物だったとは参っちまったけどねぇ。スキクに決闘で負けるザウスなんて有っちゃいけないからね。もしかしたらギュギュが・・・とかね。思っちまったんだよ。”


確かにそうだね。

実際、僕もそういう宿命があって、同じ状態なら同じ事を考えてたかもしれない。

情報が足らない事はよく有る。

有るけど、今回のは流石に情報が少なすぎないか?

早合点してしまったのかな・・・いや・・・そうか。

親だからか・・・。


「そっかぁ。まぁ、今と成っては仕方ない事だよ。ただ、僕のウウダギに手を出そうとした事だけは許せないんだけどね。」

”ウウダギってのはあの木の上に居た子供のことかい?”


「うん。僕の可愛いウウダギには絶対傷を付けさせないよ。何かあると僕、意識飛んじゃってね・・・まさに周囲の全てを殺しまくってしまいかねないんだ。もし、アノ時ウウダギに傷の一つでも付けていたら多分、今頃オルガの集落へ皆殺しに行ってたよ。」

”・・・何だい・・・アンタの方がオルデそのものだったんじゃないか・・・まいったねぇ。”


『形』が急に萎縮したようなそれでいて恐怖を表現するまでに成った。

そんなにオルデが怖いのかな?

所詮、ザウスだよね?


「・・・まぁ、いいや。ってか、その仕来りに従ってずっと暮らしてたの?」

”もちろんさ、それだけがあたし等血族の役目みたいなものだからね。手心を入れるつもりはないよ。”


なるほど。

最初は、プンタに押し付けられたけど、今では、使命なわけだ。

何となく分かる。


「うん。わかった。色々疑問点はあるけど大筋理解したつもりだ。」

"そうかい。で?他に聞きたいことは?無いのかい”


「まぁ、動機がわかったからね。とりあえず今の所は無いよ。後でまた聞けるしね」

”聞ける?何をバカな事を言ってるんだい?”


「僕からのお願いってのがあるでしょ?」

”ああ、言ってたね・・・まぁ、この状態でその願いを聞けるとは思わないけどねぇ。”


「まぁ、聞いてよ。僕のお願い。それはね。これからオルガクルガのヴァンに『形』を与えて、更に紫色の石に宿ってもらうことだよ。わかる?どういう事か」

”さー?”


「昨日はギュギュパニに宿ったね?アレを石が肩代わりするんだ。つまりその石があればオルガクルガはそこに居られるんだ。随分省略していってるけど、結局は今のように話し相手が出来るってことだよ。どう?運が良ければ、ギュギュパニとまた話が出来るよ?今度は、親子としてね。」

”・・・”


「僕はね。最近、ラマナイ・イッツァっていう精霊と知り合ったんだ。知ってる?ラマナイ」

”第一プンタのお抱えだった呪術師に同じ名前のやつが居たねぇ。それ以外じゃ聞いたこと無いねぇ”


「へー。やっぱり知ってたんだね?そのラマナイだよ。『形』有る状態でこの狭間を漂ってたんだ。僕はこっちに来れる体質だったらしくてね。そこで知り合ったんだよ。」

”・・・ってことは、あんた、呪術師なのかい?それも本物の・・・”


「そうなるかな?まぁ、体動かす方が本業?いや、物を作るのが本業だけどね。」

”良くわからないけど、その石に宿ることができればギュギュと居ても良いってことかい?”


「まぁ、そのつもりだけど?夜な夜な夢で、会話もできそうだね。思ったより、ずっと想いが強いっぽいしね。」

”言っている意味が全くわからない。だが、それに協力すれば良いんだね?”


「うん。それがお願いなんだ。」

”わかった。構わないよ。”


「快諾ありがとう。それと石に宿った後、最後まで抵抗してる2匹が居るんだ。説得も頼むよ。」

”バルバル達のことかい?”


「そうそう。」

”・・・呪術師かぁ・・・確かに必要な役割かもしれないね。それも受け入れよう。方法はお前に任せる。なんとか、あいつらだけでも生き延びてほしいものだよ。”


「まぁ、誤解が無いように言っておくけど、アノ場に居たスキクはまだ死んでないよ。ちゃんと生きてるし、そのうち4匹はすでに話が終わってうちの集落の一員になってるんだ。2匹だけが強情でね。」

”それは族長が決めたんだね?”


「まぁ、生き残らせるのは族長だね。僕は従うだけだしね。」

”そうかい。随分迷惑もかけちまったねぇ・・・”


「まぁ、いいさ、どうせ族長は僕がやってる事で手が足りないって毎日言い続けてたからね。少しでも手を増やせないか悩んでやったことだからさw」

”あんた、本当に何者なんだい?”


「どうだろう?族長やギュギュパニに聞いてみると僕の前世は侵略者と同じ種族なんだそうだよ」

”!侵略者だって!?・・・まさか・・・変な考えをしてるんじゃないだろうね!?”


「まぁ、続きが有るんだ。僕はね前世の記憶が有るんだ。ザーザースなら分かるでしょ?」

”まぁね。知らないわけじゃない。あたしは会ったことはないけどね。”


「会った事無い?たしか族長の話では、どの集落の族長も代々族長のはずだよ。そんな事言ってたね・・・ああ、話がずれるけど、僕はそもそもこの世界の生き物じゃないんだ。もっと別の平和な世界の住人だったんだよ。侵略者なんて考えは無いかな。むしろウウダギとかパパムイとかギギリカ、皆と一緒に楽しく暮らしたいんだ。それが望みなんだよ。その輪にオルガやバルバル達も参加してほしいって話なんだ。」

”・・・まぁ、それはあんたの態度を見ながら考えるようにするよ。何よりあたしには何も出来ることはないからね。あんたに縋るしかないだろうね。”


「うん。まぁいいや。じゃぁ、少し作業するよ?あまり構えないでじっとしててね」

”ああ。わかったよ。”


さて始めよう。


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