憑依と脅威
今日はそれっぽいタイトルつけれた。
集落へついたのは、すでに夜が明けて、昼近くに成った頃だ。
流石にぼーっとする。
すぐにでも寝たい。
集落につくと、族長がカンカンだった。
「ポンピカ!何処に言っておった!」
「いや、アンキロの件で少し精霊さんの力借りてたんだ。」
「アンキロ?何じゃそれは」
「まぁ、ほら、シシブブに言って飼っていた動物の事だよ」
「・・・ふむ。そうか。いや、それ所ではない」
「なんかあったの?」
「縛っては有るが、あの6匹が目覚めておるのだ。なんとかならぬか?」
「えー?そっちでどうにかしてよ・・・僕寝てないんだからぁ・・・」
「しかしのう?奴らの主たるオルガクルガをくだしたお前が、奴らの処遇を決めるのが習わしじゃ」
「・・・そんなの集落の一員にしちゃえばいいじゃん?そのつもりで殺すなって言ったんでしょ?」
「うむ、そのつもりなのだがなぁ・・・聞き分けが良くない・・・それも相当強情なのじゃ」
「どう強情なのよ?」
「未だに負けを認めぬ。」
「じゃぁ、オルガの首でも目の前に飾ったら?きっと素直に成るでしょ」
「それもできぬ・・・流石にギュギュパニの血縁じゃからな・・・まぁ、お前の指示でならやぶさかではないが・・・死体を離さぬのだ、ギュギュパニは・・・」
「えっ?腐っても親ってこと?育ての親より産みの親的な?」
「何を言っておるかわからぬが、まぁ、恐らくそんなところじゃろう」
「もしかして、僕、相当恨まれてたり・・・する?ギュギュパニに」
「それは無いじゃろう。お前が居なければ此の集落の者はみな殺されておったじゃろうしな」
「・・・そこまでするヤツの親玉をギュギュパニはなぜ?」
「まぁ、情のようなものが有るのかもしれぬ。」
「ふ〜ん。じゃぁ、僕が寝て起きたらアンキロにやったような事をしてあげるから皆には平常心を保つように言っておいてよ。」
「?何をするつもりじゃ?」
「まぁいいじゃん。悪いようにはしないよ。取り敢えずうるさい奴らには、”これ以上騒ぐと、ヴァレヴァレに戻れなくなるぞ”とか言っておいて。きっと静かに成るから」
「ヴァレヴァレに戻すつもりなのか?」
「言葉のあやだよ・・・真に受けないでほしいんだけど?」
「ぐぬぬ・・・相変わらず、嘘つきじゃなぁ・・・。しかしわかった。その手を使わせてもらう」
「うん。そうしてちょうだい。僕寝るからね。」
「わかった。ウウダギはすでに寝てしまっておるのじゃな?」
「うん。あ!それとこの角をシシブブに渡しておいて、アンキロの角でアンキロが宿ってるっていっておけばいいよ。」
「ん?・・・ふむ。わかった。渡しておこう」
「それじゃ。おやすみ」
そこまで話して僕はさっさと、自分のハンモックに登って床についた。
何時もどおりウウダギをお腹のうえに置いて、安眠するつもり・・・。
今日は精霊さんこないだろうしね。
おやすみ。
ZZZZzzzzzz
僕が目覚めると、そこにウウダギが座って僕をジッとみていた。
いつものように「死んだ!」とか「起きて!」とかしてない。
十分安眠できました。
「ポンピカ。起きた。」
「おはよう。ウウダギ」
そう言って、ウウダギをヨシヨシする。
ウウダギは目を薄く閉じ気持ちよさそうに喉をゴロゴロする。
スキクって、ゴロゴロいうんだ?
さて、起きたし、一連の後始末しなきゃ・・・。
ってか、オルガクルガとかすでに解体されて食卓に登ってたりしないよね?
そんなことが起きるのがこの世界、この集落だ。
空気を読まないパパムイあたりが、率先してやっちゃうから始末に負えないんだよね。
まぁそれが一番楽なんだけどなぁ〜。
パパムイ動いてくれてるといいんだけどー。
ウウダギと一緒に木を降りて、空を見る。
すでに夕方だ。
8時間くらいは寝たかもしれない。
ふぅ。寝る時間がずれると生活リズムがずれるんだよねぇ。
体に悪いからやなんだよなぁ。
「ウウダギ。族長の所に行くよ。」
「うん。族長カンカン」
え?なんで?
「そうなの?」
「うん。ポンピカ起きない。族長カンカン」
そんなぁ・・・。たかが半日位寝かせろよ。
「・・・まぁいいさ。いこう」
「うん。」
ウウダギの手にはまだ、角が握られている。
速攻でネックレスにしないと、てが使えない。
「ウウダギ、ちょっと紐作れる?」
「うん。持ってる。」
ウウダギは腰の所に紐で作ったベルトを巻いていた。
そこには紐を織って作った小さな袋が有って、
その中から紐を取り出した。
?ってか、そんな装備昨日持ってたっけ?
まぁいいか。見落としてたのかもしれない。
歩きながら、僕の肩に飾っているクグナでアンキロの角の根本に切れ目を入れて、
そこへと紐を引っ掛ける。
交差するように紐をぐるぐると巻いたら、首が入るように輪を作って完成。
ウウダギの首にかけてやる。
「これで手が使えるでしょ?何時も身につけてられるし」
「うん!これいいね!」
とても気に入ってくれた。
ニッコリのウウダギ可愛い。
ってかお腹減った。
凄い減ってる。
なんか食べたいなぁ・・・。
とか何とか思ってると族長の元へつく。
族長は僕を見て、すごく不機嫌な顔をするんだ。
なんで?
「ようやく起きたのか・・ポンピカ」
「ようやくってたかが半日でしょ?怒るほどのこと?」
「半日?何を言っておる。すでに3日経っておるのだぞ?」
「・・・うそ〜ん。」
「ウソではない!お前ではないのだ!ウソなど言わぬ!」
「ああ、ゴメン。なんか勘に触っちゃった?」
「・・・相変わらず、好き放題なスキクだ・・・全く・・・」
「で?まぁ、起きるの遅かったのは悪かったよ。でも疲れてたんだと思う。」
「ん?・・・うむそうだな。アレだけ動いて、食事も摂らずだ、流石に疲れもするか・・・」
「理解してくれて助かるよ。」
「で、朝の事だけど・・・朝じゃなかったえっと先日の件だけどさー?」
「ああ、奴らじゃな?」
「そいつ等どうなった?」
「まだ、拘束は解いておらぬ。毎日うるさくてかなわんがな」
「もしかして、イライラしてるのってそれが原因?」
「それも有る・・が、ギュギュパニがオルガクルガの死体を持って採掘場に籠城しておる」
「なにそれ?」
「いま、パパムイとギギリカが説得に行っておるのじゃ・・・進んではおらぬようじゃがな」
「それ、めんどそうだね?」
「はぁ〜・・・。本当にお前と話していると、気が抜けるのう・・・全く。」
「・・・そう?まぁいいや。取り敢えずその従者を何とかしよう。あとでギュギュパニだ。」
「頼めるか?」
「仕方ないでしょ?僕がやんないと族長がイライラで仕方なさそうだしね」
「・・・そうじゃな。頼む」
「あいよ。」
族長が、珍しく頭を下げた。
ってか、前から思ってたけど、
ザーザースには頭を下げるような習慣が無い。
無いんだけどこの集落は僕が生まれてから数ヶ月で、
誰ともなく頭を下げる風習が生まれたみたい。
不思議。
それはどうでも良いかもしれないけど、
まぁ、クロゥの前例もある。
縄を解けと言われたら拘束を解いてしまいかねないのがスキクだ。
全く、正直者っていうか何ていうか・・・呆れるよね。
今回見張りをしていたのはイイオオだ。
前回のンダンダのようにかる〜い気持ちで居るわけではなさそうだった。
ヴァレヴァレのスキクは皆太い切り株にそれぞれが、
別々に手足と尻尾を一纏めにしてくくりつけられている。
「イイオオ。遅くなった申し訳無い」
「ん?ああ、ポンピカか。」
イイオオはわりと情緒が安定している類で助かる。
「様子は?」
「族長と話したろ?変わりなく喚く」
そうか。
だけどイイオオはンダンダのように縄を解いたりしないんだね。
「そうか。まぁいいや。それじゃ、族長は奴らをこの集落の一員に引き入れたいみたいなんだけど?」
「・・・族長が言うなら仕方ないだろう。俺がとやかく言うところじゃない」
「納得は出来る?」
「・・・納得かぁ・・・難しいかもな。現にシシブブの尻尾が切られているのだ。」
なるほど。
やっぱりイイオオがシシブブと繋がってたのか・・・。
ってかさ?
ンダンダどうした?ショック受けてるんじゃ?
「ンダンダは?」
「ンダンダ?・・ああ、畑に行っている。最近はパパムイも俺も食べ物を獲る暇がない。ンダンダが代わりにヤサイを獲ってきている」
まじで?すごいな。
もう生産ベースにこぎつけてるの?
早すぎない?
「・・・ンダンダの事は後でやろう。早速、説得を始める。」
「ああ。そうしてくれ、俺も少し休む。」
いや、少し見てって欲しいなぁ。
「イイオオ少し付き合ってくれ。時間は取らせない」
「?・・・構わないが?」
「じゃぁ、始める。」
僕はそのままウウダギと一緒に拘束された奴らの中で僕を怖がっていた2匹に近づいた。
様子を見ると、僕を見たからか、
力なくだらんと気力がなかった2匹が急に萎縮して、
縮こまったんだ。
この2匹は説得簡単そう。
まずは、オルガクルガの死亡を確認したヤツからだ。
「ねぇ。族長から言われたよね?」
「・・・」ガタガタ
震えが大きい。
「族長は言ったはずだけど?これ以上騒ぐとヴァレヴァレに戻れないって」
「・・・」ガタガタ
「返事がないけど?それとも言葉が通じないかんじ?」
「・・・」ガタガタ
萎縮度合いがひどい。
パチャクケチャクの比じゃないな。
「こまったなぁ〜。このまま返事してくれないんじゃ。ここで始末付けないといけないんだよねー」
そこまで言うと、目を大きくして、モゴモゴ言い始めた。
ちなみに轡をされている。
族長がうるさいからと付けたようだ。
スキクの轡ってのは、鼻面が長いのでそれを縛ってしまう事だ。
話せないし、そもそも、口が開かなくなる。
クウォンと同じく、スキクも咬む力は強いけど開く力は弱いからね。
「ん〜。話せるようだけど?ちゃんと話してくれるかい?」
必死で、肯定を示している。
なので轡を外すと、すぐに話し始めた。
「私は逆らいません!だから命だけは!」
「そうなの?騒いだって聞いたよ?」
「騒いでません!他の仲間が・・・騒いだようですけど・・・」
「ふーん。それを止めもしなかったんでしょ?」
「止める?止めるだなんて・・・私は此の中で一番階級が下なんですよ?私の言うことなんて聞かないんです!」
「ふーん。そうか。じゃぁ、お前は、ヴァレヴァレに帰りたい?」
「か、帰りたい・・・帰れるものなら・・・」
「なるほど、たしかに帰りたいよなぁ・・・僕も帰しても良いんじゃないかって思ってるんだけど、族長がね?手数が必要だってうるさいんだよ。しばらくここで働いてみない?」
「働く?戦ですか?」
「ああ、そうか。ヴァレヴァレってのは戦が仕事だったんだよね?ここの集落はそんな仕事はしないさ。皆好きな事をやって、自由に暮らしてるんだ。」
「えっ!?」
「本当だよ?僕だって別に戦うのが仕事じゃないよ。むしろ物を作るのが好きなんだ。ね?ウウダギ」
その問いにウウダギがウンと答え、ハッと目をキラキラさせながら首から下げているネックレスを見せびらかす。
「これさっき、ポンピカ作った。アンキロの角。」
「か・・・飾り?」
「そうだよ。飾り、他にも色々作ってるよ。食器や木炭、他にもやれることは沢山有るんだ。皆は僕から知恵をもらって、自分の好きな事に役立ててるしね。ほら、見てみな?彼処の木で出来た桶とかさ、箱なんかも凄いでしょ?他にもここからじゃ見えないだろうけど、元々集落が有った場所を埋め立てて、より安全なすみかを作っている最中なんだ!凄いだろ?皆、そういうことが出来るんだ。」
「・・・」
「あれ?わからない?」
「ポンピカ。話しが長い。混乱してる」
ああ、イケナイ、イケナイ。
趣味のこととなるとホント、話しが長くなってしまう癖が有る。
治さないとなぁ。
治んない気がするけど。
「まぁ、そういうふうに自分が好きな事をドンドン発展させてくれるんだったら此の集落では仕事になるんだ。楽しいだろ?一緒に頑張ってみない?」
「・・・生き残れるんですか?」
なるほど、そもそも死ぬか生きるかしか判断基準がないんだね。
「う〜ん。生き残れると言い切って間違いない。だけど、気づいてるかな?此のままヴァレヴァレに帰ったとしよう。皆オルガクルガが負けて死んでしまったという事を知っているんだ。そうなったらヴァレヴァレの集落の皆はどんな対応をするんだろうね?」
「えっ?・・・」
「あれ?暖かく迎え入れると思っちゃってた?ヴァレヴァレってのは戦が仕事とするほどの所なんでしょ?そんな所に弱い仲間が戻ってきたら?どうなると思う?」
「・・・」
「じゃぁ、仮に・・・ああ、名前聞いてなかったね?名前教えてちょうだい。」
「イ、イヂジン・・・イヂジンです」
「イヂジンかぁ・・・言いにくいねw」
「・・・皆に言われます」
何となくわかった。
このスキク気が弱い。
しかも、周りにお味噌でついてきちゃったポジションのスキクじゃないか?
あまり刺激するのは可哀想な気もするなぁ。
でも周りも聞いてるんだ。
詰めるしか無いな。
「そうか。まぁいいや、仮にイヂジンが集落の外から、理不尽な理由で襲撃されたとする。」
「・・・はい」
「その時、運良く、完勝できたんだ。捕虜も捕まえた。・・・捕虜って分かる?」
「わかります。」
「皆は、その捕虜をどうする?」
「殺して食べます。」
「うん。それが普通のスキクだ。だけど、僕らの集落はどうだい?だれか食べられたかい?」
それに対し、無言で首を横に振る。
「うん。この集落はね。皆優しいんだ。とても仲間想いだし、協力関係もなかなか進んでると思うよ」
「・・・そうかもしれませんね。」
「そこで、問うのだけど・・・イヂジンは、此のまま集落に戻って殺されたいの?それとも、ここで皆と仲良く楽しく、自分の生涯を送ったりしたくないの?多分、今がイヂジンの生涯の折り返し地点だ。それにこの集落は来年のミニョルンに耐えるだけならまだしも食料にも困らないだろう。そういうふうに作り変えてるからね。安全なんだよ。」
「・・・わ、私はここで一生を過ごすと?」
「僕は其の方が良いと思うよ?殺されるかもわからない賭けに自分の生涯を使いたくないと思うからね。結構良い提案だと思うんだけど?」
「・・・み、見返りは・・・この集落の見返りは?」
「イヂジンがこの集落から得る安全に対して、イヂジンに求める見返りはね。楽しく生きてくれることだよ。それ意外無いんだw面白いだろ?」
「・・・そ、そんな事が?見返り・・・?」
「そうだよ!ブラブラしてても集落の為に成る。実際、見張りをしていたイイオオなんかついこの間までブラブラしてたんだからwね?イイオオ」
「・・・おい。俺を引き合いに出すために呼んだのか?」
「だって、事実でしょ?」
「・・・ああ。間違っちゃいない。ちょっと前の俺はただのクズだ・・・何もやる気がなかったんだ。だけど、ギュギュパニや集落がドンドン変わっていく内に俺に出来ることが有るんじゃないかと思ってな、結局ポンピカの策にハマったようなもんだ。たちの悪い策だけどな・・・でもおかげで、ブクブク太ってた俺も立派なスキクに成れた。それだけじゃねぇ。サカナを自ら好きに獲って食べて良いんだ。凄いことだ。サカナだぞ?・・・ああ、他の集落じゃプブだったか。どうだ?」
随分話したな・・・いままでこんな長く話す所、見た事ありません。
「・・・プブ?ここはプブが穫れるんですか?」
「獲る方法も、獲る場所も全てポンピカから学んだんだ。おかげで、この集落は食料に困らない。しかも保存という方法もあってだな・・・それだけでミニョルンの間、食べるものに困らない。」
「ミニョルンで・・・食べ物に困らない?そんな事出来るんですか?」
「出来るのがこの集落だ。まぁ、ポンピカが居るとそうなるっていう事だな・・・すまん、少し話しすぎた。喉が痛い。」
「はい。ご苦労さん。代弁ありがとうw。」
イイオオは「ふん!」といって、少し後ろに下がる。
帰りはしないようだ。
「まぁ、そういう集落なんだ。どうだい?この集落の一員に成ってみないかい?もちろんヴァレヴァレに帰って殺されても良いんだけど、僕としては、そんな非情なことは避けたいんだ。悪い話じゃないと思うんだけど?」
「・・・私は・・・私は正直に言いますと、ヴァレヴァレには戻りたくないんです。」
あれ?さっき戻りたいって言ってなかった?
ウソだった?
ウソつけるスキク!発見だ!いいね!
「最初ここから出られるのなら・・・あなたのような凶悪なスキクから離れられるなら・・・ヴァレヴァレで死んでも構わないと思っていました。・・・ですが、今、そちらのスキクの話しを聞くと・・・死んでも良いことは無いんだと思いました・・・ポンピカ様、私イヂジンを・・・どうかこの集落の一員に迎えてくれませんか?後生です。」
・・・う〜ん。
ウソついてない。
逃げたいだけだった・・・その理由が僕からっていう。
ちょっと複雑なんだけどなぁ・・・。
ウウダギはウンウンって言ってるし、イイオオは、少しニヤついてる。
ウウダギはまぁ、仕方ない。全部知ってるからね。
イイオオ後で、お仕置きな。
「わかった。じゃぁ、イヂジンの拘束を解こう。そして族長の元に自ら進んで、集落の一員にして欲しい旨を話すんだ。いいね?それから僕に様はいらないからね。ただのポンピカだよ。」
「はい!ポンピカ」
最初ガタガタしてたけど、まぁ、少しは落ち着いたか。
急いで族長の元へ向かうイヂジンを見ると、
なんていうか、若いスキクなのかもしれないなぁと思う。
なんか、明るい感じのスキクだ。
喜びオーラが出ちゃってる感じがする。
さて、次っと。
次は、まぁ、もう一匹のビクビクしていたスキクだけど、今の話を聞いていたんだ。
そして仲の良さそうであったイヂジンが陥落したわけで、すんなり行くと思う。
「じゃぁ、名前から聞こうか?」
轡を外してやる。
少し震えて居るけど、随分気丈な趣だ。
・・・ん?コイツ雌じゃないか?
匂いとか僕はわからないけど・・・なんと言うか。
雌っていう感じがする。
「名前は?」
「セルセルです。」
「で、イヂジンがああなったけど、セルセルはどうする?」
「ここで生きていくのには拒否はないです。」
「そう?じゃぁ、ヴァレヴァレにも戻らないでしょ?」
「殺されるの分かってるのに戻るわけ無いでしょ?」
「さもありなん。うん。僕もそう思う。」
「ただ・・・こんな身分で言うのもどうかしてると思うけど・・・」
「なんか要求があるのかな?」
「あたしは、イヂジンと番になりたいんです。」
「ふーん。いいよ?ご自由にどうぞ」
「えっ?」
なんか僕変なこと言った?
「あれ?僕変なこと言った?ウウダギ僕変なこといったかな?」
「ポンピカいってない。」
「俺もそう思うぞ?なにを驚いている?」
「だって・・・強いスキクは・・・」
「あれ?もしかしてハーレムの事を言ってたりする?」
「ポンピカ。ハーレムなに?」
ぐっ!ウウダギには言えないかもしれない。
多感な時期なのに・・・。
「ウウダギ。多分、ポンピカは雌の独り占めの事を言ってるんだ。」
「イイオオ!ウウダギにはまだ早い!」
「ポンピカは、雌沢山がいい?」
「いや、多いのは嫌い。一匹でいい。一匹をずっと愛するんだ。それが望み」
「・・・わかった。」
「ウウダギ本当にわかったのか?」
「うん。わかった。続けて」
イイオオが頭を捻る。
僕も釈然としない。
セルセルはやり取りをポカーンと見てる。
気を取り直そう。
「え、えーっと。セルセル。自由にどうぞ。で、間違いない。ただしイヂジンの意思も確認する事は忘れないでね。一方的なのは良くない。互いに愛し合うのが筋だ。」
「・・・わかりました。」
「他には?要求あるかな?」
「あたしからは無いわ。族長の所に行っていいかしら?」
セルセルの拘束を解くと、
すぐにイヂジンのあとを追って族長の元へと向かった。
うん。あの2匹は落ち着くだろう・・・問題はこの四匹だ。