救出と襲撃
呼吸を整えないとな。
「・・・?ポ、ポンピカ?」
僕の後ろからパパムイが声を掛けてきてくれた。
「助けに来た。危なかったんでしょ?」
「・・・ああ・・・いや、そうなんだが・・・」
「それより、他のスキクが集まる前に三匹共すぐに集落へ戻るんだ」
「お、おう!・・・いや、分かってるんだが・・・」
歯切れが悪い。
なんだと思い、振り返ると・・・惨状が広がっていた。
何とシシブブの尻尾が切られている。
切り口から見て、手斧だろう。
さっきシシブブを掴んでいたヤツの仕業か・・・。
「シシブブ!大丈夫か!?」
「ポンピカ!シシブブが捕まって・・・尻尾が・・・」
「ンダンダしっかりしろ!それより、シシブブの意識がないようだが?」
「うん。痛みで多分気絶してる」
「わかった。少し待ってろ」
パパムイにシシブブを座らせてもらい背中を向けてもらった。
肩甲骨と背骨・・・。
両肩に手を置き、膝を背骨に当てて一気に引っ張る。
横隔膜を刺激して、同時に肺の中の空気を外に出すことで呼吸をさせる。
そして痛みで覚醒を促した。
「ヒュッ・・・!ゲホッ!・・・い、痛い・・・」
「シシブブ!無事か!?」
「ポ、ポンピカ・・・ゴメンなさい・・・」
「謝るな!さっさと集落に三匹で向かってくれ、殿は僕がやるから」
「う、うん。でも待って、そこに転がってる卵を持っていかないと!」
卵・・・見たこと無い大きさ・・・全部で三個か。
なんの卵だ?
ってかそれどころじゃないだろ。
「卵なんてどうでも良いだろ!さっさと集落に戻るんだ!」
「ダメ!・・・アンキロのなの・・・アンキロが足止めしてくれてるの・・・」
!これアンキロの卵?
3個って事は・・・他の卵は?
少なくても4個以上は有る計算に成ったはず。
「他の卵は?」
「持てなかったの、置いてきちゃったのよ!」
そうか・・・必死で逃げたんだ。
仕方ないだろう。
「わかった。三匹で卵を持って帰ってくれ。重いかもしれないけど」
「・・・ゴメン。あたし、アンキロになんて言えば・・・」
「後悔は後でしろ!いいから戻らないと、今度こそアンキロの足止めが無駄に成る!」
「!・・・わ、わかったわ!」
もう、痛みなのか、悔しさ、悲しさなんだろうか?わからないけどシシブブの顔が涙でドロドロだ。
僕の説得で、すぐにパパムイが卵を2つ拾い上げる。
ンダンダが一つ拾い上げた。
シシブブも立ち上がり走り出そうとした瞬間。
バランスが取れず、足から崩れて倒れてしまった。
そうか・・・尻尾切れたんだ。
バランスが取れないんだ。
僕もそうだった。
「シシブブ。パパムイに背負ってもらえ。卵は僕が持つ。4匹で集落に急ぐぞ」
「う、うん。ゴメン」
パパムイにシシブブが担がれる最中に僕はカランビットとブレイカーを拾い、ホルダーに刺す。
そして卵を両脇にかかえて出発し始めた。
出発の時、シシブブが僕に「あのスキク達・・・殺したの?」っていうもんだから、
少し、答えに詰まったけど正直に「うん」とだけ、伝えた。
その後はシシブブは何も言わなかった。
集落までは、無事に走り抜けることが出来た。
パパムイは狩りで森に入っている事が多いのか、
シシブブを背負ってでも無事走り抜けることが出来た。
ンダンダは少し遅れる形でだけど、走ってくれた。
僕は卵二個しか持ってないし、元々素早いので、
走り抜けるのは容易だったけど体力がおぼつかない。
今度、体力面を鍛えよう。
これじゃ長期戦には向かないわ。
集落につくと、族長一同が出迎えてくれた。
少しホッとする。
で、シシブブの尻尾が切られている事に一同驚愕してしまった。
「ポ、ポンピカ。何がどうなったのじゃ?」
「詳しいことはわからない。三匹に直接聞いて欲しい。ただ、シシブブを襲った連中は殺したよ」
「・・・そうか。それは仕方ないだろう。」
「手下限する必要なさそうだ。流石にあんな状態を見せつけられれば、許せない」
「うむ、ワシとて許せるものではない。」
「多分、他の連中が追ってくるはずだよ。僕以外、皆後ろで待機してて欲しい。シシブブの手当もしてほしいんだ。ギギリカとウウダギに協力してもらって」
「うむ。わかった。」
そこまで言うと、族長が声を揚げ、
皆を一箇所へと集まるよう指示を出す。
皆はそれに従い、族長の元へと集まった。
ただ、ギュギュパニだけ、僕の近くで何かいいたげだ。
「ギュギュパニ?どうしたの?危ないから下がってて欲しい。」
「あんた、武器使ったんだね?」
「うん。咄嗟だったからね。」
「仕上がりはどうだったんだい?」
「仕上がり?ん〜。まずまずかな?本来は金属で作るものだしね。牙や爪も悪くないけど、使用回数が出てきそうだよ。」
「・・・そうかい。」
なんだろう?
聞きたいのはそんなことだったのか?
「ねぇ。ギュギュパニ。まだ、ザウスとはやりあってないよ。5匹のスキクだけだ。ただ武器を持ってたからね。気をつけないといけないよ」
「・・・そうかい。じゃぁ、次辺りかい?」
「たぶんね。まだ確認してないけど、すでに相手は近くに居るかもしれない。油断はしないでね。それと、僕は一匹で大丈夫だから、ウウダギや集落の皆の盾くらいには成ってくれ。絶対傷つけさせないで欲しい。」
「・・・ああ、わかったよ。全力を尽くすさ」
「うん。」
ギュギュパニが皆の元へ。
さてっと・・・。
「見てたんでしょ?精霊さん・・・近くに居るんでしょ?」
”ふん。気づいておったか。お前の隣におる。”
「もう一回。目だけでいい飛ばせないかな?」
”それは構わんがタイミングがずれると、奇襲されるぞ?”
「じゃぁ、接敵するタイミングだけでもいいから教えて欲しい」
”うむ。良かろう。”
「ありがとう」
”こりゃ。ビックリじゃな!はーっはっは。お礼をされたのは、はじめてかもしれぬw”
なんだかんだいって、こうやってヘルプしてくれると助かるよ。
ただ、少しうるさいけどね。
”それにしてもお前は凄いのう?なんじゃアノ体捌きは・・・見たことがない。過去のどの守り手もアノような動きをする者は居なかったぞ?”
「それは、そうだろうね。僕の動きは前世の名残だし」
”ふむ、そうか・・・。まぁ、良い、アレだけ出来るのだ安心して見ていられそうじゃ・・・とか行ってるそばからじゃな・・・ソロソロ見えるぞ”
思ったより早かった。
集落の北側、森の木々が立ち並び地面は枯れ草と泥、そして腰まであるような葵い植物が覆い茂るそのすき間に影が見え始めた。
奥まで透けているほど空気が綺麗で、どこまでも見渡せそうな中にあって、影がより濃く見える。
まるで世界がビビットで統一されるような・・・色彩感が狂ってしまいそうなほど鮮明に。
こちらに近づく集団、見えるだけで、7匹は居る。
いや、6匹がスキクだ。頭一つ低い。
中央の後ろに付けているのがギュギュパニの生みの親。
アレがオルガクルガだろう・・・。
デカイ。っていうかギュギュパニが小さく見えるほどデカイ。
・・・まともに相手すると大変そうだなぁ。
僕と比べると本当に赤ん坊と大人位の差じゃないか?
・・・どうするか・・・。
なんとかするしか無い。
僕は皆より前の方に陣取り、
集団が集落へと至るまで仁王立ちを貫いた。
目を放すとその途端に何をしてくるかわからないからだ。
幸い見て取れる中で飛び道具を持っているスキクがいない。
これまでどうやって食料を確保したんだ?
近づいてくるにつれ、より鮮明に詳細がわかる。
・・・こりゃ、シシブブやウウダギに見せれないわ・・・。
「ウウダギ!シシブブ!絶対に相手を見るなよ!」
僕は後ろに居るであろう2匹に声をあげた。
すると後ろの方からウウダギの声が小さく「・・・うん。」と、言う声が聞こえる。
もしかしたらすでにシシブブからアンキロの事聞いてしまったのかもしれない。
それでも・・・あのオルガクルガ。
ヤツが左手に持っているのは・・・アンキロの首だ。
あんな重い頭部を片手で荷物程度に持てる筋力はちょっといただけないなぁ。
とうとう、連中は隠れもせずに集落へとたどり着く。
横一列に6匹が並び、その中央後方にオルガクルガが陣取っている。
「・・・ここが、ギュギュの集落か・・・ふん。寂れてるね」
「それで?ボロンガは居るんだろ?話をしようじゃないか。出てきな」
ボロンガ?
僕の名前に近いな・・・。
もしかして僕の名前と間違えてるんじゃ?
そう思って僕が動こうとした瞬間。
後ろから声が上がる。
「ふん。ワシを呼び捨てとは、いただけんな。」
・・・族長・・・族長の名前今はじめて知ったんだけど?
あれ?なんで僕今まで知らなかった?
「ふん。そんな所に居るとはね。挨拶しに来たよ。」
「挨拶か。だが、それだけではないのだろう」
「当たり前だ!お前のところにやったあたしの娘が随分と弱くなったって話じゃないか。責任はとってもらうよ。」
「ふん。ギュギュパニは昔よりずっと強い。お前が危惧するようなことは起きておらぬ」
「なにいってんだ。鳥から聞いたよ。スキクに負けたんだってな・・・スキクにだ。間違いだったのかい?」
「・・・間違いではない。事実だ。」
「ほーら。やっぱり弱くなったんじゃないか。・・・ギュギュパニをこっちに寄越しな」
「まぁ、そう急くではない。ギュギュパニを下したスキクはホレ、目の前に居るだろう」
「あー?どこにだい?そんな強そうなスキクなんか見当たらないねぇ」
「ふん。まぁ、どちらにしてもお前は、ポンピカに殺られるのだ。隙が大きいぞ?」
「ふん。隙なんかないねっ。あたしの体は特別製さっ。ザウスの中でもあたし等は特に強靭だからね」
「そうか。では、一度そのポンピカと決闘してみてはどうだ?もし、ポンピカが負けるようならば、そのときは話を聞いてやろう。どうだ?」
「・・・ふん。決闘か・・・良いだろう。受けて立つ。だが、スキク一匹では、心もとないだろ。もっと数を増やしても良いんだよ」
「ふむ、かまわぬ。ポンピカ一匹で十分だ。」
「ふん。強がりとはねっ・・・」
「そういう事だ。ポンピカ。後は頼む。」
・・・話が勝手に進んでしまった。
まぁいいや。何とか僕のペースに持ち込もう。
「族長に紹介されたポンピカと申します。」
「・・・ふん。」
「決闘ということですので、申し訳ありませんが、お名前をいただけますでしょうか?」
「・・・あたしは、ヴァレヴァレのオルガクルガだ。あそこに居るギュギュパニの産みの親だよ。」
「左様でございますか。私、日頃より娘さんにはお世話に成っております。」
「・・・なんだ?その喋り方は・・・。お前だろ?あたしの従者を5匹も殺ったのは」
「やむなき事でした。私共の数少ない仲間が、危機でしたので・・・卑怯な手段を取りました。」
「ふん。どーりで、あいつらがそう簡単に殺られるハズないからね・・・って事はもしかしてギュギュにも卑怯な手を使ったのかい?」
「お恥ずかしい話し、見てわかりますように私は弱いのです。ギュギュパニほどの力と素早さが有るザウスに何とかして勝つにはどうしても卑怯な手を使わざる終えませんでした。」
「ふん。そうかい。だけど、ギュギュが隙を作ったのには変わりないね。責任はなくならない。」
「左様ですか。ですが、今こうしてオルガクルガ様を目の前にすると、さすがの私も卑怯な手を使うことが出来ないと言う事に思い至りました。ここまで強く、強靭な肉体を誇るザウス様には、私がいかに策を弄するとしても通じないでしょう。」
「ふん。何がいいたいんだい?」
「今日は私の命日・・・最後は華々しく散ろうと思います。」
「ほう!殊勝な心がけだねぇ!しかしそれは集落を見捨てる事に成るんだよ」
「私は私自身が可愛くて仕方ありません。ですから、私が滅ぶと有っては、もう思い残すこともないでしょう。」
「・・・ふん。で・・・?」
「オルガクルガ様に置かれましては、ギュギュパニの敗北がどのように成ったかということを見てもらいたいのです。!いいえ!決してオルガクルガ様に危害を加えるつもりはありません。ですが、ギュギュパニの名誉もあります。ですからギュギュパニが負けたときはどんなことだったか・・・と、言う事をお伝えしたかったまでです。」
「・・・ふん・・・なるほど。だけど、あんたは武器を降ろさないね?どういうことだい」
「ああ!これは失礼。私はとんだ粗相をしてしまいました。武器はここに投げます。」
僕は全ての武器を投げ捨てる。
それを見て、オルガクルガは短く「ふん」と言い放つ。
「では、もう少し近い所へ伺わせていただきますがよろしいですか?ギュギュパニとの決闘の際、もう少し距離が短かったので・・・」
「構わない。こっちに来なっ」
「ああ!誠に寛大なご処置、いたみいります。」
近づく。ギュギュパニとやった時位の距離だ。
さてと・・・。
「で?ギュギュはこの距離からどうなったんだい?」
「当時私は、武器を持っていました。棒を操るのが得意でした。ですから、この距離から此のように近づきました。」
そういって、ゆっくり、覇気が無い様子で、オルガクルガに近づく。
次第に懐までたどり着く。
「ふん。こんな接近をギュギュは許したのかい?・・・やはりダメだねぇ・・・」
「いえいえ。ここに至るまでに色々と卑怯な手をアレヤコレヤ使ったのです。ですからギュギュパニは悪くないのです。私が卑怯だっただけです・・・」
「ふん。今は心を入れ替えたと?」
「はい。オルガクルガ様のお姿を目の当たりにするとさすがの私も悪知恵が回りませんでしたから・・・」
「はははwスキクなんて皆そんなもんだ。ザウスはスキクより強い。そう決まってるからね。」
「たははっ。誠に左様でございますね。」
「ふん。愛想笑いなんていいよ。それで?ギュギュはどうなったんだい」
「はい。私が此のように近づいて、最終的にギュギュパニの胸の辺りを棒で此のように・・・ポンと」
そして、オルガクルガの胸へ、軽くポンと音が立つ様な拳を置く。
「これで倒れてしまったのです。」
「これが説明の全てでございます。さて、私も気分が晴れました。潔く決闘を致しましょう!」
僕は自分の元居た位置まで、戻る。
そして、無手の状態で左前の構えを取る。
「さぁ!オルガクルガ様。尋常に勝負!勝負!族長!合図を!」
すると、後ろの方から族長が涙声で「ぐ、ぐぬぬ・・・なぜこんな者に集落の運命をたくしたのであろうなぁ・・・ワシは悲しい!」と言い、「ぐぐっ・・・仕方がない・・・開始じゃ!」と、開始の合図がくだされる。
僕はそれを聞いて、ノロノロと歩み寄り、「やー!」とかるーいトーンで声を張り上げる。
次の瞬間。
先程まで、威勢が良かったオルガクルガが手でかばうこともせず前のめりで倒れてしまった。
ズザァァン。
それを見て、現場は、一気に寒くなった。
シーンという音が聞こえてしまうくらいに・・・森の木々も鳥も虫達も・・・。
全てが音をなくした。
その中で、どこからか馬鹿笑いをするやつが居る。
まぁ分かるけどね。
精霊さん。
あんた僕が何をやったか分かってるんだね。
まぁいい。
続いて、此の場を収めよう。
「あれれ?どうしちゃったんだろうねぇ?僕は何もしてないのに、なんで倒れたんだろう?ねぇ?ギュギュパニの時の方が、もっと手応えが有ったんだけどなぁ〜wどーなってるんだろーねー?疲れちゃったのか?おい、起きろよ」
ゲシゲシとオルガクルガの頭を足蹴にする。
誰も何が起きているのかわからないと言っているようだ。
「おい、従者共、確認くらいしろよ?おい、そこのグズ!確認しろ。お前らの主なんだろ?おい」
そうすると、ハッと成った一匹が直ぐざまオルガクルガに近寄る。
そして、腰を抜かした。
終いには僕を見て、アワアワし始めた。
「おい。どうしたんだ?オルガ何とかはどうなった?言ってみろよ?おい。聞いてるんだろ?ほら、言ってみろよ!」
僕の声掛けに言葉を失ったスキクが、後退りして他のスキクの元に駆け寄る。
「なんだ?お前ら、主がどうなったかわかったんだろ?ほら、言ってみろよ。おい!言えっつってんだよ!」
そこまで言うと、流石にか細い声で「し・・・死んで・・・死んでます」と呟いた。
流石に小さくて皆に届かない。
「ちーせーよ!もっとはっきり言えよ。それでも戦専属の集落の一員か?おい。お前ら実は、虫けら集落の一員だったんじゃないのか?それか負け組とかさぁ〜?はははははw大したことねーなー。」
そこまで、言うとギュギュパニが後ろから走ってオルカクルガに近寄る。
そして、確認をした後、僕の方を見る。
めちゃめちゃ怖い目で見るからつい僕はあっちを見ながらフケもしない口笛を吹く素振りをした。
それをみた、まだ状況が分かっていないスキクがギュギュパニにこんな事を言う。
「オルガクルガ様はどうなった!おい!ギュギュパニ!どうなったんだ!」
それに対し、ギュギュパニは僕を睨んだまま・・・。
「オルガがは死んでるよ。・・・ポンピカが殺ったんだ。間違いない。・・・くっそ!やり方が汚すぎる!」
ひどい言われようだなぁ。
まぁ今回は、少し卑怯過ぎたかもしれない。
多分集落での僕の評価もだだ下がりだろう。
でも集落が、守れた。
結果オーライだよ。
僕は側に居るギュギュパニには目を合わさず、族長へ振り返る。
「ってことで、決闘、勝っちゃったwテヘッw」
その姿を見た後ろに控えていた集団が一様に口をポカーンと開けて、顔に描いてあるんだ。
「なにが?どうして?どうなった?」ってね。
さて、此の後、残ってるスキク達が変な行動を取る前に一応釘を刺さなきゃなぁ。
「おい。負け組のお前ら!お前らの主は死んじまったってさwどうすんの?これ?ねぇ。決闘の戦利品って約束はどうなると思う?おい。」
すると、まだ、状況がつかめていない一匹が前へ出て、武器を構えた。
僕はすぐさま族長へと目配せする。
「やめよ!決闘は決着が付いた。取り決めが、破られれば、お前らの集落もどうなるかわからぬぞ?それでも良いのか?」
その声で、武器を振りかぶったスキクの動きが止まり便乗しようとしたスキクも動きが止まった。
「ってことだ。お前ら帰れると思うなよ?」
「ぐ!ぐぐ!・・・何が・・・何が起きたんだ!」
「オルガクルガ様!どうしたのです!起きてください!」
「あ、あわわ・・・皆、ダメダ・・・あれに関わっちゃ・・・」
「そうです!イヂジンが、言ってることは本当だわ!関わっちゃダメよ!」
「おい!お前ら!それよりオルガクルガ様を起こすぞ!」
「皆、手伝え!主を起こすんだ!」
最初に確認したスキクとそれがすがりついたスキク以外四匹がギュギュパニに睨みを効かせながら、オルガクルガをどうにか起こそうと力を振り絞る。
しかし、いくら揺すっても幾ら顔や、痛そうな所を刺激しても
オルガクルガが目覚めることはない。
そりゃそうだ。
息もしてないよ。
そうしたんだからね。
アンキロの仇だ。
しばらく場が混乱した。
でも、時間が経っても一向に息をしないオルガクルガに愕然としている。
負け認めようとしない四匹が、揃って、僕の方へ武器を構えて、対立した。
「お前ら!ワシの話を聞いておったのか!」
「うるせぇ!ジジイ!ヴァレヴァレの事なんかどうだっていい!どうせコイツが卑怯な手を使ったに違いない!それこそ、神聖な決闘を汚すものだ!お前らの方が覚悟を決めろ!」
族長!ジジイ扱いされちゃったよ?
ちょっと笑えるけど。
まぁそうなるかな。
オルガクルガってのと少し会話したけど。
どうやら、力が有る者を何とかして残そうとする事については、筋が通っていた。
多分色々と過去に有ったんだろう。
そういう信念を持って、生きていたんだ。
たとえ血を分けた娘だとしてもそのルールに触れてしまったんだ。
信念の元、今回の流れになったとしか思えないな。
さて、そうなると、2匹はもう戦闘をする気がない。
僕を見て、戦意どころではなく成ってる。
残りの四匹だけど・・・。
「族長、いいよ。纏めて相手してやるよ。」
「ポンピカ・・・。」
「どっちを選ぶ?殺る?それとも残す?」
「・・・これ以上の死は必要ない・・・出来るか?」
「どーだろうね?まぁやれるだけやってみるよ。」
「わかった。任せよう。・・・ただし、卑怯な真似はするな。」
「卑怯?僕は、卑怯な手は使ってないよ?まぁ、そう見えるようだけどね。」
「くっ!・・・では、程々にしろ・・・でないと収拾がつかぬ」
「あいよ」
僕が、武器を持った4匹の前に立つ。
僕は武器を持っていない。