表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/174

修行、『形』と術


”遅い。”

”遅いぞ、このバカ弟子”


・・・なんだよぉ〜。

本当に来ちゃったんだ?

僕、明日から下手すると死ぬほど忙しくなるんだけど?


”なんだ〜。ではない!全く、もう少し寝る時間を早めにできんのか?”


出来るわけ無いじゃん。

さっきまで、訓練してたんだからさー。

正直、体がヘトヘトで、何もする気ないよ?

なにしに出てきたの?


”ぐぬぬ。言わせておけば、調子にノリおって・・・。まぁ、勘弁してやろう。お前はワシ等に取って希望になるやもしれぬからな”


?ワシ等?


”まぁ、それは良い。今日は、お前に『形』を与えに来た。分かるか?『形』だ。”


ん?展開が早すぎて、今一理解が追いつかない。

なんだろう?『形』って。


”なんじゃ?それほどの力を持ちながら『形』も知らぬのか?”


いや、そもそもそういう系統は触れてこなかったからわかんないです。


”ふむ・・・。では、最初からの説明となるのか・・・困ったのう。”


ソレ知らないと、まずいのかな?


”いや、知らずとも有能な者は、自力で『形』を得るものだ。”


じゃぁ、僕は有能じゃないだろ?

精霊さんの期待には添えないよ。

だから、今日はもう寝よう?ダメ?


”ダメに決まっておろう?なぜワシが来たのか分からなくなってしまう。ソレにお前は有能で間違いない。ワシが保証しよう。”


えー?

なんで?

僕が有能だと決めつけるんですか?


”気づいておらぬのか?ソレだけ生命力が巨大だと言うのにのう”


生命力?

僕大きいんですか?


”うむ。通常のスキクは、お前を100、いや、1000に切り分けるより少ないだろう。上を目指せば現界で目視出来るほどだろう。その大きさはプンタに引けを取らん。随分、大きいのだ”


・・・随分大きいんですね?

でも僕そんなのわからないですよ?


”うむ、じゃからワシが教えると言っておるのだ。”


その『形』が出来たら寝ていいですか?


”うむ、構わんぞ”


じゃぁ、早速教えてください。

正直眠いんです。


”せっかちなやつじゃ。まぁ良い、まずは、『形』を得る事についてじゃ”


あ、はい。

そもそも形ってなんですか?


”お前は、ワシの姿が見えるな?”


ええ、見えてます。

寝ていて目を閉じているのに・・・見えちゃってるんですよねぇ。

なんででしょう?


”うむ、まぁ見えてしまう事については後だ、ワシはどんな姿をしている?”


どんなって・・・普通の年老いた、雄のスキクにしか見えませんよ?

あと、飾りをいくつか付けてますね。

格好良くないですよ?


”・・・格好はこの際置いておく、それにしても良く見えておるのじゃな?飾りまで見えるとは流石じゃ”


へー。

その羽飾りについて族長に言ったら、

精霊さんの名前教えてくれましたよ。

たしかぁ・・・ラマナイ・イッツァ。

そうだ、そんな名前でしたね?

そして精霊と言う状態をヴァンと言うんですよね?


”ほう、ワシの名を知っている族長がおるのか・・・そうか、あの儀式は正常に機能しておるのだな”


どういうことです?


”まぁ、気にするな、それとワシはヴァンなどではない。もっと複雑な存在となっている。”


ヴァンってのは死者ですよね?


”うむ。死者は肉体が機能しなく成った後、何かの想いが現界に留まるため辺りの生命力を取り込んだ存在のことだ。ワシは自身の意思と儀式を用いて、ここに居る。結果、肉体は朽ちたがな”


う〜ん。

難しいですね?

僕からしたらどっちも同じ気がします。


”まぁ、単一の想いのみで、存在するヴァンは会話すら出来ぬ。ソレに比べればワシはマシだと思わぬか?”


へー。

ヴァンってのは、そんな感じなんですね?


”それはもう良い、話が進まぬ。ソレよりもお前に『形』を与える事のほうが重要だ。『形』さえあれば、呪術が扱えるように成る。空を飛ぶ事も想いが強ければ地より離れずに済むでな”


もしかして、僕が天に召されちゃう件はその想いってのがなかったから?

想いってのが『形』と関係してるってことかな?


”ほう。まさにそうじゃ。うむ、お前は飲み込みが良い。助かる。”


で?姿が分かるとなにか違うんですか?


”うむ、では次にワシの手にある物は見えるか?”


・・・その玉いまどこから取り出しました?

玉っていうか光の集まりみたいに見えますね。

ソレなんでしょう?


”ふむ・・・。『識』は十分じゃな。良い良い。今ワシの手にある物。これが、お前が言うヴァンじゃ。『形』がないから不定形で、想いに集まった生命力が無意識の内にこの玉を形成しているのだ。”


ヴァンってそんな感じなんですね。

へー。


”ちなみにお前は今『形』がない。つまりヴァンと大差ない姿をしておるぞ。まぁ、規模が規模だ、相当大きいのだがな”


・・・僕ヴァンなんですか?

でも肉体有りますよ?


”肉体が存在している間は、ヴァンとは呼ばぬ。だが『形』を持たぬ者はえてしてこう見えるのだ。”


ふ〜ん。

で、形が出来ると、その呪術に進めるわけだよね?

形ってのはどうやって身につけるの?


”そうだな・・・。本来は生命力をより多く体内に取り込み、それから『形』を形成していく訓練をする物なのだが、お前はすでに生命力が他を圧倒している。ワシより大きいからな、いきなり形成を始めてもいいだろう。”


そっか。

わかったよ。じゃぁさっさと形成を始めましょう。

どうやったらいいんですかね?


”ワシの頃の方法だが、今の自分を認識した後、現界で水面に移る自分の姿をしっかりと思い描くことで、こちらでの姿が徐々に『形』を得ていくのだ。”


う〜ん。

ソレだと、まず今の自分を見るっていう事ですよね?

・・・それなら出来なくはないですよ。


”ほう?出来るのか?まぁ、やってみよ”


・・・う〜ん。

段々、視界が高く成ってきますね。

精霊さんが下の方へと・・・、

なんか今の僕って、こんなに大きい玉だったの?

これ、大きな建物位有るような感覚ですよ?


”・・・よう、やすやすと感覚までつかめるのだな?”


そうですかね?

あれ?なんだかフワフワしていて、

ん?手足がないですね?

やはり手足の感覚がないのは困りますね。

ちょっと手足の感覚を感じてみます・・・。


おお?

ふむ・・・手足が玉から出てきましたよ?

小さいですけど・・・。


精霊さん。

もしかしてこれが『形』とか言うものじゃないですか?

違います?


”・・・良くそこまで分かるな?どういう事だ?なぜそこまで簡単に出来る?”


あー。

前の人生でこういう訓練はしてるんですよ。

ここまで、はっきりしたものはなかったんですけどね。


そうか・・・じゃぁ、全身の形を想像しながら感覚を通していってみれば、

できそうですね。ちょっとやってみます。


”ちょ!まて!・・・あ!あぁぁ・・・”


手の感覚、足の感覚。

腰の動作や、横っ腹の感覚。

背骨や、広背筋・・・ソレに感覚を通す所は数多にある。


ふむ・・・夢の世界ってのは思うほど朧げなものではないのかもしれない。

なかなか感覚を通すのがスムーズだね。


これなら行けるじゃん。


さて、つぎはっと・・・ああ、指もそうだ。

頭も顔も、皮膚も・・・髪の毛やその肌触りも・・・嗅覚も味覚も・・・。

視界がずっと上に有るのはおかしいな。


小さくならないかな?

ドンドン低くしていこう。

体が縮んで、集まるように・・・。


精霊さんと同じくらいの背が有るのがいいな。

うんうん。


なんかイメージどおりにドンドン作れていける。

何だこれ、簡単じゃん!

楽しい!


皮膚の感触も耳も聞こえる。

うん。内蔵だって、重さを想像すれば、有るって分かるんだ。

なら、それも感覚で作っていこう・・・。


筋肉の動きも・・・。

理想の形にね。


”・・・”


精霊さん。

一通り感覚してみました。

結構上手く出来てると思いますけど?

どうですか?


”やってしもうたか・・・ワシが教えずともきっかけでここまで出来るとは・・・”


お!できたっぽいですね?

寝ていいですか?


”まぁ、まて、それよりその『形』はスキクではないようだが?”


スキクじゃない?

・・・ああ!僕元の体を想像しちゃってる!

どうしよう・・・。


”元の体?お前はスキクではないのか?”


ん?僕は元々人間だよ?


”ニンゲンとな?・・・ふむ、ワシはその姿の生き物を知っている・・・侵略者”


ああ、たしか族長もそんな事行ってたね。

うん。こっちで言うとそういう感じの連中と同じ種族なのかもしれないね。

でも、僕が住んでた世界では、ザーザースとかいなかったんだ。


つまり僕は、この世界の侵略者ではないよ。

まぁ、同じ種族ってだけだと思う。


”違う世界?古き者の末裔・・・そういう事か?”


古き者ってのも知らない。

神様なんでしょ?

僕は神様なんてのではないよ。

ただの人間。


ザーザースと大して変わんないよ。

形が違うだけかな?


”・・・それにしても・・・ワシの儀式に誤差があったのか?なぜ侵略者、いやニンゲンが紛れ込んだ?”


さっきから儀式がどうのって言ってるけど、なんなのそれ?

僕は元の世界で事故死だと思うけど死んで、気づいたらスキクとして生まれてたんだ。


”そうか・・・。釈然としないが、希望の弟子がまさかニンゲンだったとはな・・・しかし現界ではスキクなのだ・・・まぁ、構わぬか。”


精霊さんがいやなら、スキクの『形』になろうか?


”いや、それはできぬだろう。お前の本質がその『形』なのだ変えることはできぬ。そのままで良い”


ふーん。

じゃぁ、このままで。

さて、『形』を獲得したんだよね?

寝ていいよね?


”まーまー。どうせまだ時はある。気にせずとももう少し学んでいけ。せっかく『形』を得たのだ。術の一つも学ばずしてどうするのだ?”


・・・眠いんだもん。


”いいから、付き合え!お前のためにもなるのだ。”


う〜ん。

わかったよ。だけど、術を覚えたら寝るよ?

精霊さんがうるさくても寝るからね?


”うむ。かまわん。”


じゃぁ、次は?

『形』できれば飛べるとか言ってたよね?

飛ぶ?


”飛ぶには、まだ想いが足らぬ。今の状態で飛ぶとまた天に引っ張られるぞ?それでも良いなら飛ぶがいい。”


わかったー。飛ぶのは後にする。

で?次は?


”『形』が出来た事で、その形に応じた事が出来る。まぁ、こちらで現界と変わらぬ事が出来るということだ。”


ん?

どういう事?

こっちって夢の中で?


”夢・・・。お前はこの世界を夢の中だと思おておるのか?周りを良く見てみると良い。”


周りって・・・。足元に僕とウウダギが寝てるけど?

・・・これ夢じゃないの?

そうしたら僕ハンモックの上に立っている事に成るよ?

バランス悪くない?


”今は木の上の寝床という想いが肉体に宿っておる。つまりそこは寝床に立っていると、言うことだ。想いとは生き物だけのものではない。この世全てに存在しておる。木々が己の想いに沿って天を目指す。スキクがその形を維持するのも果ては想いなのだ。つまり全ては想いで形作られておる。お前もその体は想いで創られておる。一度周りの物に触れてみてはどうじゃ?”


触れる・・・なるほど。

ちょっと下へおりよう。


・・・なんか思っただけで、場所が移動出来る。

随分、物理法則に反した世界だね?


精霊さんは肉体がある場所を現界って言ってるけどこっちはなんて呼んでるの?


”うむ、こちらは狭間と呼んでおる。狭間はあの世と現界の間に存在する一時的な滞在場所となっているでな。”


一時滞在場所。

もしかして精霊さん。ずっと昔のスキクだったよね?

ずっと狭間に居るってこと?

暇なの?

あの世に早く行ったほうがいいんじゃない?

大丈夫なの?

暇なの?


”バカにするでない!狭間も列記とした世界じゃ。ワシには、子がおらなんだからな、ワシの力を引き継ぐスキクがワシが生きている間には生まれなかったのだ。それが、想いとして強く残ってしまったのだ。未だにワシを引き継ぐスキクが出てきておらなんだが・・・。”


なんだろう?

その話長くなる?

長く成るようなら後日にしてほしい。

取り敢えず物を掴んでみるよ。


”・・・本当にお前は失礼極まりない・・・まるでワシの小さな頃を思い出す。ふざけたやつじゃ”


僕大きく成っても精霊さんっぽくはならないと思うよ。

ってか、石ころ拾ってみたけど、なんだろう変な気持ち。

石に手が透けたんだ。だけど拾ったら・・・ほら、手の中になんか光る砂みたいなのが有る。


なんだろこれ?


”うむ、それはお前の想いの強さに負けてしまったんじゃ、じゃからその小石の想いがそのような形と成った。つまりはその手の砂が小石というわけじゃ。”


ええ!?

じゃぁ、想いが砕かれたってこと?


”そうなる。”


・・・でも変だよ?


”なにがじゃ?”


狭間でこうやって、小石の想いを砕いたら、現界に有る本物の小石は?

どうなってしまうの?


”ふむ、いい質問だ。狭間と現界の関係についてだな?”


そうそう。


”現界で起こることは狭間でも起こる。狭間で起こった事は現界でも起こる。これが摂理だ。”


?でもさっき想いに生命力が集まるって言ったよね?そして形をなしているとか何とか?

想いを砕いてしまったのにあの石ころはあそこに有るよ?

壊れたりしてない。


”全ての物には生命力がある。じゃからその生命力がなくなれば自ずと結果が出るであろう。”


じゃぁ、生命力ってのを壊したら?


”生命力は壊れぬ。壊せぬからな。つまり形を維持できなくなるのはその生命力が尽きるまでということだ。あの小石もあの形を維持出来るのは生命力が四散仕切るまでじゃ。”


・・・想いが無いと生命力が集まらないわけだよね?

想いに集まった生命力から想いを取り省くと、生命力が四散するわけだね?

そして生命力が四散すると、形を維持出来ない。

つまりはそういうことかな?


”そうだ。まとめるとそうなる。良く理解しておるな。”


じゃぁさ?

こうやって、小石の生命力を僕がもらったら・・・。


バキンッ!


あっ!

音を立てて崩れた・・・。

なるほど。

この技凄いな・・・こんなのが出来てしまっては、狭間からの備えが大変じゃないか!


”バカいうでない!石ころとは言え、狭間から現界に影響を出せる事が出来るのはお前かワシ等かプンタだけじゃ。”


そうなの?結構簡単に逝っちゃったけど・・・。


”狭間で『形』を得れる素質がまず今のスキクには無い。ザウスとなればまず出来ぬ。クロデルはそこまで思考力が無い。現界での活動を重視しておるからな。つまるところこの術が執り行えるのは僅かという事だ。”


・・・でも僕これは流石に凶悪すぎると思うけど?

僕が使っちゃっていいの?


”お前でさえ、生き物の想いは崩せんだろう。意思を持たぬ、思考を持たぬ物には、出来たとしてもな生き物は別じゃ。”


それって、想いが強いって事?


”そうじゃ。想いと想いがぶつかれば混ざり合う事も有れば、弱い方が砕ける事も有る。さっきの小石のようにな。つまり、相手を見誤れば、己が砕ける。危険な術なのだ。心して使わねばならぬ。”


・・・かなりリスクの高い技だね?

術って言ってたっけ?


”うむ、術で間違いない。想いをどうにかする事が呪術であり、それを可能にする者が呪術師と言われる。”


ふ〜ん。

でもこれが、僕の役に立つとは思えないけどなぁ・・・。


”今話したのは、ただ単に想いについての一部じゃ。狭間は想いで全てが形創られておる。”


精霊さんが言いたいことは何となくわかったよ。

要は、その想いをどうにか強くしていけってことでしょ?


”ほほう!よう理解した!上出来じゃ!”


じゃぁ上出来の僕は寝ちゃっていいよね?

術覚えたし、約束だしね。


”まぁ、ここまで出来たのじゃ、今日は寝てよかろう。ちなみに明日、お前は戦う事に成るじゃろう。気をつけろよ?せっかくの弟子なのだ、命だけは何とかして守り抜け。”


・・・何時頃?

何時頃、やりあう?


”そうじゃなぁ・・・。相手とはまだ距離がある。じゃから正確な時刻はわからぬが午後じゃろう。それと北へ迂回しておるようじゃ。北に注意しろ。”


・・・午後か・・・北ね?

わかった。

貴重な情報ありがとう。


じゃぁ、寝ます。


”うむ。くれぐれも気をつけるのじゃ”


Zzzz。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ