訓練一対一と一対多数
最近、食事を作っているのはイイオオかギギリカだったりする。
ギギリカは分かる。どうやら僕が教えたことを寄り発展させる事に執着しているからだ。
イイオオは・・・自分が食べたいからだね。
まぁ、どっちも自主的にやってることなので、とやかくは言わない。
今日食事を作ってくれたのはイイオオ。
魚汁に野菜が入っている。
イイオオは魚を捌くのがとても上手い。
血抜きと内臓取りが素早く、力も有るので魚をミンチにしては、団子にして鍋へ入れる。
それと枝に挿して火にかけ、焼いたりもする。
平均して、集落の皆は、魚の時2匹程度の量を食べる。
足りない分は野菜で補っているようだし、何よりイイオオが漁で獲ってくる数が半端じゃない。
皆が3匹ずつ食べてもお釣りが来る。
お釣りの部分は開きにして塩を振ったら天日に干している。
干物が大量に有る。
この干物、すごく味がいい。
でも少し臭い。
イイオオはベベビドに樽のような桶のような物を作ってもらったらしく。
ソレに内蔵の食べれる部分とか塩とかを大量に混ぜて、発酵させたりしている。
発酵の事をイイオオに話したのは僕だけど、ここまで自分で発展させるとは思わなかった。
完全にアノ干物・・・クサヤだよね?
匂いがやばいったらありゃしない。
焼いて食べるとなんとも言えない味がする。
マイルドというか甘みも出てる気がするし、塩っけがとても癖になる。
族長とズズナドは、匂いが好きではないらしく口にしないけど、
恐らくそのうち食べるだろう。
族長は僕が色々煙を出すと叱りに来るけど、イイオオのアノタレも相当だよ?
イイオオも叱ってあげてほしいなぁ・・・なんて考えてしまう。
まぁ、才能って凄いなぁ。
イイオオはホント、ダークホースだったわ。
まぁ、いいや、ウウダギはもう自分の分を食べ終えている。
僕がチンタラ考え事をしながらだったあら遅かったみたい。
急いで食べるよ。
「ポンピカ。ちょっといいか?」
パパムイが話しかけてきた。
「むぐぐ。・・・どうしたの?」
「今日、森の中が騒がしかったんだ。なんか嫌な予感がするんで早めに引き上げたんだけどな。なにか知らないか?」
なんだよ。
知るわけ無いだろ?
知るわけ無いんだけど心当たりはあるんだよなぁ・・・。
どうしようパパムイには注意を払ったほうがいいかな?
前回クロゥを見つけたのどうもパパムイっぽいしね。
そういう事に運が有るヤツかもしれない。
「あー。うーん。明日からしばらく森は避けたほうがいいかなぁ〜?」
「・・・なんか知ってるのか?」
「知ってるっていうか心当たりがあるんだ。」
「心当たり?なんだそれ」
「ギュギュパニの親のこと知ってる?」
「親?・・・どっちのだ?」
「あー。知ってるんだね。生みの方だけど」
「・・・厄介事なんだな?」
「パパムイ。今日はすごく凛々しいね。なんかしっかりした大きいスキク感半端ない。」
「あー。まぁそうだな・・・ギュギュパニからさんざん愚痴を聞かされてるんだ。」
「なるほど、で、その親が下手すると攻めてくる。しかも部下連れて結構な数でね」
「・・・マジで?」
「うん。どうもそんな話しになってる。」
「それギュギュパニが解決するんだろ?」
「いや、僕がやる事に成ってるよ。そもそも僕が原因だからね」
「そうなのか?なんでポンピカが原因なんだ?ポンピカが物作るのってのはそんなに危険だったか?」
「いや、そうじゃないんだ。単純にギュギュパニを認めることが出来ないって理由だと思う」
「なんでギュギュパニが認められない?この集落ではアイツが居なきゃ立ち行かないぞ?」
「ごもっとも。同じ気持ちだよ。」
「そうかぁ・・・ギュギュパニが親とやりあうのか・・いや今回はポンピカか」
「複雑な気持ちなの?パパムイ」
「いや・・・。万が一、向こうが勝った場合。俺は真面目に成るしかなさそうだからなぁ・・・。俺真面目に生きていく自信が無いんだ。何とかしてほしい。」
「・・・」
「ポンピカだってそうだろ?向こうの言いなりで生きていくのは、流石に骨が折れる。納得も出来ないだろ?」
パパムイって、自分が真面目じゃないってしってたんだ・・・。
でもパパムイなりに真剣に考えているようだね。
「それに、ギュギュパニが死んじまうような事が有ったらどいつをからかえばいいかわからないじゃないか?」
なんだろう。
からかう相手が居なく成るのが、嫌なだけなの?
「う、うん。からかうのはどうかと思うけど・・・何となく分かるよ・・・でも僕が相手するんだし、まぁ、大丈夫さ。今回特別に武器作ってよかったから作ったしね。」
「武器?クグナじゃダメなのか?ピブでもいいんだろ?」
「う〜ん。まぁ、なんでもいいんだけどね。接近で使える武器を作ったんだ。見てみる?」
「お?見せてくれるのか?」
僕は手元に有るカランビットとブレイカー、そしてテルビューチェを見せる。
パパムイはソレを手にとって、不思議そうに眺めているんだ。
「どう?」
「どう?って言われてもなぁ・・・このクグナなんかグニャグニャ曲がってて、使えそうに無いぞ?」
「そうでもないよ。軽く動いてみるかい?」
「おう。本気はヤダからな?」
「大丈夫手加減は出来るからw」
「なんで笑うんだよ!」
そういって、パパムイがクグナを取り出す。
最近パレンケが暇を見つけては、皮製品を作っている。
その中にホルダーも有るんだけど、クグナや装備品は体に巻きつけるようなホルダーにするとすぐに取り出しできるよって、伝えたらすぐに作って皆に提供してたんだ。
おかげで、皆の腕には腕章の様な皮が撒かれていて、そこにクグナがかけられている。
パパムイは左腕に巻いてある腕章ホルダーから右手でスッと取り出せるように成ってる。
そして今対峙してるわけだけどね。
僕といえば左手にカランビット、右腕にブレイカーを構え、
少し前かがみの猫背状に屈み、左前に体勢を立てている。
「ポンピカ行くぞ?」
「どっからでもいいよ。」
パパムイが何も考えず僕の胸を目掛けて、真っ直ぐにクグナを刺しに来た。
ソレを左手に持っているカランビットで巻き取る。
同時に手首をカランビットで硬め、パパムイの背中へとキメていく。
パパムイの背後へと一についたら右手に持っていたブレイカーで心臓の辺を刺す動作をして終了。
やられたパパムイは、何が起きたかわからないという顔をしている。
「どう?」
「・・・いや、どうって言われてもな・・・気がついたら勝負が決まってたぞ?何だソレ?」
「クグナを真っ直ぐ突き出すのはとても効果的なんだけどね。読まれちゃこうなるんだよ」
「・・・そうか・・・」
そういって、僕はパパムイを解放する。
「もういっちょいいか?」
「いいよ。ドンドン来て構わない。」
「じゃぁ、遠慮なく」
「うん」
次にパパムイが仕掛けて来たのは、
右手に持ったクグナを左したから右上へ斜めに斬りつける攻撃だった。
パパムイは素人だから仕方ない。
全ての動作に力を溜める動作が必ず入ってしまうんだ。
初動がワンテンポ遅れる。
つまり、軌道や標的が一目瞭然。
なので、少し後ろへスウェイで避けると同時に、
目の前を過ぎた腕をカランビットで大きく内側へ絡め取り、
手首をキメて、右手のブレイカーで、
パパムイの右肘内側へと当てて、体重を前方へ移動する。
ここまでの動作を一挙動で行うのがミソだ。
体重が乗った前進に肘が抵抗無く曲がり、
パパムイが前かがみにバランスを崩す。
そのままパパムイの頭を超えて背後まで腕を捻り上げていくと、
痛かったのか、たまらずクグナを手放し、うつ伏せに倒れ込んでしまう。
残ったのは、地面に左手を着き、力が入らずもがくパパムイだけだった。
「どう?」
「イテテ!離してくれ!そっち側に腕は曲がらないんだ!」
やっぱり痛かったみたい。
素直に手を話す。
右肘をさすりながら立ち上がったパパムイが、僕に文句をいい始めた。
「痛くしないっていったじゃねーか!」
「しかたないだろ〜?ああ言う技なんだから。アレでも手加減してるんだよ?」
「そうなのか?」
「そりゃそうだよ。肘曲げた瞬間喉を掻っ切るのが本当なんだから」
「・・・喉を?」
「うん。」
「こええなぁ・・・。」
「まぁ、こんな調子で複数の相手でも戦えるんだ。面白いでしょ」
「複数って、同時にか?どうやって?」
「う〜ん。見てみたいならギギリカかギュギュパニでも連れてくれば見せてあげるよ?」
「マジか!連れてくる!」
パパムイが、即座に踵を返したと思うとギュギュパニの所へ。
何やら話すとそのまま、イイオオとンダンダとパレンケ、ギギリカまで連れてきた。
多すぎやしませんか?
戻ってきた一団のなかでパパムイがニヤけてる。
まさに「どうだ?凄いだろ?」とでもいいたげだ。
ちょっとイラッとくる。
「ポンピカ。複数を同時に相手するだって?何考えてるんだい?」
「えー?ギュギュパニは複数同時に相手できないの?経験ないの?」
「経験なんてしてないよ!ったく・・・。どういうものか見せてもらおうじゃないか。」
「やる気一杯じゃんかwそういう所好きだよ。」
「はっw本当かどうかみたいだけさ。あたしとパパムイは本気で行くよ。後のヤツはクグナを武器として使うのがはじめてだからね。気にしなくてもいいだろうけど気を抜くと怪我するよ。」
「いいね〜wどーんと来てよw」
僕を囲む形で、正面にパパムイ、ギギリカ、
横にパレンケとンダンダ、反対側にイイオオ、
真後ろにギュギュパニだ。
ザウス含め六体一はずるいw
でも、面白そうだ。やろう。
「ウウダギ合図任せる。」
「うん。わかった」
僕を囲む皆が緊張しているのが伝わってくる。
異様に圧が強い真後ろ。
正面のパパムイも本意の目をしている。
横に居るギギリカは「え?なに?この状況」みたいに挙動不審だ。
パレンケとンダンダはクグナをスキクに向けているのが怖いのだろう、
互いに目を合わせてブルブル震えている。
意外に冷静に隙きをうかがっているのがイイオオ。
ホント、ダークホースだわ。
構え方が堂に入ってる。
そんなことを感じている中、ウウダギの声が響いた。
「はじめ!」
合図と共に真っ先に僕のところへ攻撃が届くのがギュギュパニだ。
伊達に訓練を受けていない。
真後ろだからね。
取り敢えず、しゃがんで足払い。
ギュギュパニの目からしたら突然目の前の標的が居なく成った状態だろう。
そして、足に違和感が走り、つまずき前のめりに倒れる。
その隙きにパパムイの攻撃が立て薙ぎで振り落とされてくる。
ソレをしゃがんだ状態から腕を上へ交差する形で、受け入れ、
勢いを殺さずそのまま軌道をずらして地面へ逃していく。
パパムイは意図しない方向に力が流れてしまったことで、
膝が折れて前のめりに倒れ込んできた。
タイミングを見計らっていたイイオオの突き攻撃が、
斜め上から躊躇なく振り抜かれるソレを
姿勢をずらす事で躱し、突き抜ける瞬間にブレイカーの弧の内側で巻き取る。
イイオオが姿勢を崩す。
攻撃の機会を失ったギギリカがデタラメなタイミングで殴りつけてくる。
ソレを左手のカランビットで反らし、手首を固め、引きつける。
その結果ギギリカもパパムイのうしろから倒れ込む形になった。
パレンケとンダンダはアワアワしてて、攻撃するチャンスを失ったようだ。
そして沈黙のあと、
僕の前には一番下にギュギュパニ、パパムイ、ギギリカ、イイオオの順番で折り重なって倒れていた。
「・・・」
「いっつぅ・・・」
「お、重い!イイオオどいて!」
「・・・動けない・・・」
「「アワワワ」」
こんな感じだ。
「どう?なかなか面白かったでしょw」
「おい!ポンピカ!早く皆をどけてくれ!潰れちまう!」
「そうよ!イイオオ!早くどいて!」
「そんな事言ったって・・・ちょっ、ポンピカが押さえてるんだ!」
「ギュギュパニ〜!なんとかしてくれ〜!」
「無茶言うな・・・あんたらの重さであたしゃ腕さえ動かせないよ!」
「ポンピカ〜!助けて〜!」
「ギギリカ!俺が今助ける!」
「どうやってよ!この足りないパパムイ!」
「ポ、ポンピカ・・・そのへんでいいんじゃないでしょうか?」
「う、うん。僕もそう思うんだけど・・・」
そんなうめき声だった。
「じゃぁ、イイオオ手を放すけどゆっくり抜け出てね。落ちると痛いからね」
「お、おう・・・。」
僕はゆっくりとイイオオから手を放す。
するとズルズルと言い大が地面に落ちた。
次にギギリカが足場がないのでもがく、ソレを補助してやる。
パパムイが、参ったとでもいった素振りで立ち上がる・・・ギュギュパニの上に・・・怒られるぞ?
「パパムイ退きな・・・」
ギュギュパニの低い声で危険を察知したようだ、「ヒェッ!」と変な声を出してギギリカの方へ退く。
最後にギュギュパニが、ゆっくりと僕の前に立ち上がる。
「ポンピカ、あんたが凄いのはわかった。だけど、ヴァレヴァレの連中がこうも上手く行くとは限らないよ。肝に命じときな」
「うん。僕も手加減するつもりは無いから気にしないでいいよ」
「ふん。そうかい・・・しかし、ホント、とんでもないねぇあんた・・・」
「はははwまぁ、いい準備運動には成ったよ。武器の訓練もしときたかったんだ。ちょうどよかったよ。ありがとう。」
「はっ!そうかい・・・連中が来たら頼むよ」
「任せてよ」
ギュギュパニはソレで族長の元へ去っていく。
「はぁ〜!まいったっ!さすがポンピカだ」
「パパムイ。六体一は流石に多いぞ?」
「いや、ポンピカならこの位どうってことないだろ?」
「まぁ、一度に5匹相手に出来るように成れば100匹来ても変わんないんだよ。体力が持てばだけどね。」
「そうなの?」
「うん。そうなんだ。互いの体が邪魔をして攻撃をする場所を見失うんだよ。」
「へ〜。そんなものなのね?」
「まぁね。」
「ポンピカ。お前、おかしいぞ?気づいてるか?」
「変な言いがかりだよ。イイオオ」
「普通スキクはこんな事出来ないんだ。出来るポンピカがおかしい。」
「そうなの?訓練すれば誰でも出来るように成るよ?」
「そんなものか?」
「そんなもんだよ。」
「あ、あのぉ〜。僕達は、もういいですよね?」
「ああ、パレンケもンダンダも付き合わせてゴメン。ありがとうね。助かったよ」
「いや、ポンピカ。助かったの僕達だから・・・」
そういって、パレンケとンダンダは仲良く自分の場所へ戻る。
「なぁ?ポンピカ」
「どうしたの?イイオオ」
「お前は何時も受けだよな?」
「おお!良く見てるね。そうだね。」
「自ら攻撃はしないのか?」
「出来るけどやると手加減出来ないんだよ。未熟者だからね。結果、怪我で済めばいいんだけどねぇ・・・」
「そうか・・・。ヴァレヴァレの連中・・・」
そういって、イイオオが自分の場所へ戻る。
「さて、俺等も戻るわ、ポンピカ頑張れよ。」
「パパムイ暴れ足りなかったら何時でも言ってよw」
「いや、もうゴメンだw身が持たねーよw」
「ちぇ〜。」
「なにがなんだかわからなかったけどポンピカなにか困ったことが有るなら言ってね?」
「ギギリカは優しいなぁ。」
「そうよ?あたしは優しいの。だから、何か有ったらちゃんと知らせなさいよ?」
「うん。わかったよ。今日はありがとう」
そういって2匹がそれぞれで戻っていく・・・所で思い出した。
急いでパパムイに小声で話す。
”パパムイ。頼みなんだけど、明日以降森の様子で少しでもおかしい事が有ったらすぐに知らせてくれ”
気を効かせたパパムイが、返事をする。
”話の流だとギュギュパニの親が集団でこっち来てるんだろう?気をつけておくさ”
ソレだけ聞ければ安心。
僕はニッコリとして、送り出した。
さて、食事も終わったし訓練まがいの事も終わった・・・。
きょうは何時もより一日が長いようで短かったなぁ。
ハンモックに揺られ、胸の上のウウダギを撫でて眠りについた。
眠りにつく時、なにか忘れてる事がああるような
気がしてならなかったけどね。
明日になれば思い出すだろう。
いいや、眠い。おやすみ
Zzzz。