進展と文化
ある日、族長が「昨夜、鳥が来た」と、僕に耳打ちをする。
どうやら、例の件が進んだようだ。
返答はそんなに早くはないだろう。
でも、色々とこれから進むんだ。
進展が有ってよかった。
乾いたレンガもそこそこ溜まってきた。
なので、いい加減レンガを焼かないといけない。
ギュギュパニがある程度力仕事を採掘作業を削って、勧めている。
おかげで、土の壁は現在の集落の元の範囲の周りには腰くらいの高さまで積み上がっているんだ。
ソリが有るおかげで、随分と作業が進んでいる。
ソリも改造が進んでいる。
ベベビドに木を石ヤスリで削るという事を教え、
木を組み合わせるための接着剤として、
石油のでる沼から取れるアスファルトと思わしき固形物を熱で炙って、
ゆるくなった所を使うと教えたら、格段に作れる物の幅が広がった。
ヤスリの知識のおかげでまず、製材が可能に成った。
きっちりと角を出すことが出来るように成り、四角の木材を揃えることが出来るのだ。
接着剤のおかげで、組み木を考えなしに積み込めることで、
車輪にちゃんとした丸みが作れるまでに成った。
アスファルトは結局の所、すごく接着力があるようだ。
父ちゃんが土木工事の時、道路を舗装する材料の家の一つだと言っていた。
それを思い出したのが一番の発見?って事にしよう。
このアスファルト。
石油の沼には石油が沸いている辺りの脇に蓄積されている、
少しやわらかい感じのドロッとした塊なんだ。
手にとって見ると、石油に汚れてヌメヌメとした感触がある、おまけにひどく臭うけど、
しっかり洗うと黒くて溶けて固まった物のような外見をしている。
ただし匂いは取れなかった。
まぁ、膠でもつくればよかったんだけど、膠は膠で、大変そうだ。
ある物なら使わないとね。
こうして、日々集落の技術が進んでいく。
最近ベベビドに本当の組み木の事に付いて教えておいた。
角を出す事が出来るように成ったので、
木と木を接着剤なしに組み合わす事が出来ると教えたのだ。
というのもベベビドはアスファルトの匂いがたまらないらしく、あまり使いたがらない。
やはり膠にすべきだったか?と思ったけど膠も匂いがひどいはずだ。
じいちゃんの家で、じいちゃんが突然「今の時代はエコだ!」といい出したことで、
じいちゃんが膠を使って何やらやっていた。
ただ、なんか鹿だかイノシシだか良くわからない動物の足とか筋とかをずっと煮込んでは、
濾過して、冷やして水を抜いてとかやってる姿を見たときには、
この人なんでこんな事やってるんだろうと、思ったくらいだ。
結局膠で作ったのは自前の炭を粉にして、
松脂を入れたり何だりして出来た墨だったんだ。
あんだけ苦労して結局墨なの?と思わず呟いて、叱られました。
そう言えばその墨で書き初めしたっけなぁ・・・。
感想はなんか薄かったってことくらいかな。
まぁ、そんなわけだ。
そうそう、ウウダギの為にベベビドに簡単な機織り機を作ってもらっている。
ウウダギが作り出す蔓からの糸は手先が器用なウウダギだから出来るのだろうけど、
すごく丈夫な細い糸なんだ。
コレを大量につくれるなら機織りで、木綿布みたいなものが作れるんじゃないかと踏んだんだ。
まぁ、木綿の木はンダンダの手で収穫がされていて、種は試験的に畑へ撒かれている。
すでに青々とした芽が出ているので、OK。
そのうち皆裸なのを辞めてくれるといいなぁ。
流石に雌とはいえ、女の子のウウダギに服の一つでも着せてあげたい。
今は、ウウダギが薄い木の板に木炭を使った、ペンで、文字を書いている。
何でもギギリカ経由でズズナドが学習する為の教材を作っているのだそうだ。
たまにわからない事が有ると聞かれる。
変わった所で言えば、ケルケオだ。
ケルケオの2匹は最近まで卵を温めるばかりだったんだけど、
昨日から立ち上がり、集落の仲をゆっくりと移動したりしている。
ずっと座っていたせいか足元がナエているのが見て取れる。
しかし、もう卵を暖めなくていいのかな?とおもって、シシブブに聞いた。
どうやら、ある程度温めると後は放置するんだそうだ。
放置する頃に成ると、卵の中身はもう形が出来上がっている物なんだそうで、
あとは自力で大きくなって、割って出てくるのを待つばかりとのこと。
それを聞いて、焦った。
ケルケオの居場所が全然無い。
っていうか牧場計画が中段してしまっているからだ。
木々の伐採もあまり進んでいない。
木炭を作る時に木を切るくらいしかやってないからだ。
あとはベベビドが個別で、手頃な木を切り倒してはそれを材料に木工をしているくらいかな?
この話をギュギュパニにしたら、
「早めに牧場とやらを作れ」と、厳しい声で言われた。
言うまでもない生まれてきた雛が何匹になるかわからない。
しかも、ケルケオだ。
ひっちゃかめっちゃかに成ることくらいしか想像できないんだよね。
ってかアンキロに比べて随分育ちが早いと思う。
これもシシブブに聞いた所。
肉食で狩猟をする動物は早熟なんだそうだ。
何でもいち早く移動や狩りを覚えないと、生きていけないからと言われた。
早速今やってる作業を中断して、牧場を作る事にした。
場所は、もうこの際だから、集落に接している日当たりのもそこそこ良い場所で、
影がちゃんと出来る場所を考えている。
「ベベビド。ちょっと協力して欲しい。あとギュギュパニと、パパムイ。それからイイオオ」
「なんだい?牧場とやらだろ?」
「そうだ。速攻で作らないと大変なことに成るかもしれない」
「大変って、ケルケオの子供がわんさか出てくるからかい?」
「ギュギュパニだって、そんなことに成ったら嫌でしょ?」
「まぁ・・・それはそうだけどねぇ」
「後始末とか出来ないじゃないか」
「まぁ、いざと成れば食っちまえばいいじゃないかい?」
「そ・・・それは流石に・・・」
「なんでだい?あの子達の親は食っちまったのにかい?」
「そりゃそうだけどさぁ・・・」
「まぁ、言わんとするところはわかってるよ。ほら、木を伐採するんだろう?」
「お手伝い御願いします。」
「あいよ。」
ギュギュパニはそんな事言ってるけど、
新しく作った硬い鉱石を磨いて出来た斧を使いたいだけだろう。
こうして、一匹辺り小さい木を20本位、
皆協力して10本くらいの太い木を伐採して場所の確保はめどがついた。
だけど、切り株を抜いて、
地面を均して、
確保した木を処理して、
柵を作って、
とやる事が一気に増えてしまった。
正直げんなりしている。
自分で始めたことだからなんだけど、
こう仕事が多くなるとは、思ってなかったんだ。
「ベベビド、切った木から杭を彼処からここまで囲えるくらいの分量を切り出せる?」
「時間はかかるぞ?」
「まぁ、仕方ないだろう。取り敢えず間引く事も考えるから、作業を明日からでも開始して欲しい。」
「構わんぞ。あれだギュギュパニが作ってくれた硬い石のノコギリだったか?があるからな。もう一人付けてくれれば時間をかけんですむ」
「じゃぁ、イイオオも一緒にお願いできる?」
「わかった。」
イイオオは、ここ数日の間にすっかりお腹の脂肪が取れて、精悍な顔つきもしている。
何だかすごいなぁ・・・変わりようが異様だよ?
体付きと精悍さを見るとどこかウルグズを思い出す。
体格がすごい。
筋力的には、ギュギュパニには劣るだろうけど、
多分この集落のスキクの中じゃ、
ダントツだろうなぁ。
・・・イイオオに戦い方でも教えるか?
そんな事を考えているのがバレたのか、
ギュギュパニの尻尾が僕の太ももにバコンとぶつかる。
めちゃめちゃ痛いんだけど・・・。
ダメなのかね?
「ポンピカ。俺達は何をすればいいんだ?」
「パパムイと僕、そしてギュギュパニの三匹で此の辺りを整地するよ。」
「セイチ?」
「うん。木の根っ子を掘り返して、どける。それから地面を柔らかくするためにンダンダが使っているようなクワで、表面を耕すんだ。」
「なんでそんな面倒なことするんだ?」
「小さなケルケオの子供が怪我しないようにだよ。それから石もどけるからね。」
「へー。」
「結構重労働だから、気合いれてよね?」
「お、おう。任せろ。」
「じゃぁ、今日はもう遅い、あしたから始めるよ」
そう言って、今日は遅い食事をして、すぐに就寝についた。
何時もどおりウウダギが僕の胸の上で寝る。
可愛いなぁ・・・癒やされる。
翌朝からまた忙しく働いた。
朝から晩まで、牧場づくり。
夜中までかかったが、なんとか形には成った。
木を伐採したあとの杭作りに時間を取られてしまったんだ。
ベベビド以外、木を加工したことが無い連中だったので、
そもそも道具を教えるのに時間がかかったのだ。
ついでにベベビドに色々と細かい物も作るように言っておいた。
エサ箱もそうだけど、何より水桶だ。
木を隙間なく撚り合わせて互いの重さというか伸縮性の強度で、
ギュウギュウに互いを締め付ける方法。
ベベビドは、僕の説明に「これの為の製材か?」と聞いてきたが、その一つだとも言っておいた。
牧場の柵は元の世界の田舎で一度見たことが有る物。
以前、ダチョウ牧場の見学をしたことがあるんだけど、
ダチョウってメチャデカイよね。
首が柵の上からにゅっと出てきて、気になるのか僕の頭を嘴で小突いていったんだ。
あんときはとても痛い思いをしたよ。
まぁ、話は逸れたけど、その時に背の高い柵に囲われていたのを憶えてるんだ。
それを出来る限り真似た。
金属がないので、上手く蔓を大量に使ったんだけど、問題はなさそうだ。
というか実際使ってみないとダメだよね。
まぁ、いいや。
明日にでもあの2匹と卵を移動させよう。
翌日、朝一でウウダギと一緒にケルケオの移動をした。
卵を運ぶのはウウダギ、僕はケルケオ2匹を誘導して柵の中へと誘った。
2匹のケルケオは、僕をボスと認識してるようで、
嫌だとか困ります!とかそんな態度を取らない。
不満がある様子もなかったので、随分楽な作業だった。
誘導作業はすぐに終わり、今は柵の中をケルケオ2匹が、
匂いを嗅いだり、足場を確認したりと、居心地チェックをしている。
「ポンピカ。あれは何してる?」
「ウウダギも新しい場所に連れてこられたら住心地位は気になるでしょ?」
「うん。」
「ケルケオは今住心地を確認してるんだと思うよ。」
「うん。わかった。」
ウウダギは、理解が早い。
物事をそれはそういうものだとすぐに納得する。
なかなか素直。
悪く言えば、騙しやすい。
まぁ、騙すつもりはないけどね。
「そう言えば、ズズナドとどう?勉強を教える仕事は進んでるの?」
「うん。もうすぐ僕は、少し教えればよくなるっていってる。」
へぇ〜。
ズズナドはやっぱり頭がいいスキクなんだなぁ。
「そう言えば、昨日デデンゴがそっちに居たけど、どうなの?大丈夫だった?」
「デデンゴは最近、普通。」
普通?
「普通ってどんな風に?」
「泣いたり、無理を言わない。ちゃんと言えば分かる」
へぇ〜。
それすごいなぁ。
「どうしたんだろうね?」
「パレンケが教えてる。身についてる」
なるほどパレンケの影響がちゃんと出てるのか。
それは良い結果だ。
「じゃぁ。良かったね。」
「うん。デデンゴを見直しする。」
見直したってことかな?
「そっかぁ〜。ウウダギがそこまで言うならちゃんとしてるんだねぇ〜」
「・・・ギギリカが言ってた。」
ウウダギの評価は以前のままかぁ〜。
「そっかぁ〜。ギギリカかぁ〜」
「ポンピカ。ズズナドの所いってくる。まだ教えてない事多い。」
すごいなぁ。
やっぱりウウダギは立派。
将来が楽しみです。
「わかったよ。頑張ってね」
「うん。わかった」
ウウダギがチョコチョコ歩いて、ズズナドとギギリカの所へ。
デデンゴの姿も見える。
いい傾向かもしれないね。
さて、今日は続いて何をしようかな?
パパムイはここ最近、漁ばかりをしている。
「狩りは飽きたのか?」と聞いてみたら
「今の時代はサカナだっ!」とかわけのわからない事を言って、
川のある方へとすっ飛んでいく。
それに今は力仕事が必要な部分が埋め立てと壁、
それから伐採にしか必要がないので、
パパムイは好きにさせている。
ギュギュパニからは不満の声が上がっているけどね。
「なんでパパムイは好きなことをやっているのに、あたしは出来ないんだい?」
とか言われるので、「農場出来たら好きなことしててください」と言ってある。
つまり今、ギュギュパニは採掘場にいっちゃってるわけです。
ベベビドは僕が言ってる物を作るので手一杯。
伐採の際も手伝ってほしいものだけど、
ベベビドにしか出来ない仕事が多すぎて、駆り出すことが出来ない。
シシブブはアンキロにつきっきりだし、
何より怒られることが多いので、近寄ってない。
ンダンダも畑が順調で、
より多くの種類の植物を育てて、
その育て方を日々試行錯誤している。
あまり、それを中断させるわけにはいかない。
なぜなら、集落の食料問題に直結するからだ。
てを抜くことは出来ない。
そうなるとこの集落で手が開いているのは、
パレンケ、パチャク、ケチャク、イイオオ。
そして僕なわけだけど・・・あぁ、一応族長もか・・・でもまぁ、数には入れないでおこう。
取り敢えずその四匹をとっ捕まえてなにか出来ないか考えようかな?
そうおもって、集落のを見回した所イイオオの姿がない。
まぁ、いいや。
あの三匹を確保しよう。
「パレンケとパチャク、ケチャクちょっといいかな?手が開いてたら手伝って欲しい事があるんだけど」
「なんでしょうか?いまこの2匹に踊りと歌について聞いていたところなんですが・・・」
踊り?歌?
もしかしてこの間見せられた、あの奇っ怪なヤツのことかな?
「・・・なるほど、じゃぁ、そっちの話を進めようか」
「ポンピカは何か分かるんですか?」
「僕が知っている踊りや歌とは随分と違うものだったからね。ちょっと面食らったんだ」
「・・・なるほど、だからアノような反応だったのですね」
バレてんじゃん。
「う、うん。気づいてるんだったら言ってほしかったけど・・・」
「すみません。今後は口にするようにします。」
「いや、いや攻めてるわけじゃないんだ。そうじゃなくてもっと面白かったりかっこよかったり色々できるんだ。それをやってみないか?」
「!?そんなことが出来るんですか?」
「ポンピカ!あたしそれやりたい!」
「あたしも!もっと上手くなりたい!」
突然、話をし始めるパチャクケチャクにビックリだ。
そんなに執着することなのかな?
・・・でもスキクだからなぁ・・・執着するのかもしれないな。
「じゃぁ、まずは踊りから少しやってみるので、見ててよ」
「えええ!?ポンピカ踊れるんですか?!」
「すごい!」
「ホントー?」
なんか三匹がそれぞれに反応していて新鮮に思える。
パチャクケチャクはだいたい反応や言動が・・・言動はあまり聞かないからなぁ。
まぁ大体一緒なんだ。
まぁ、踊れなくはない。
と、言うのも中学校の頃、体育の授業でダンスが有ったからだ。
しかも、意外に本格的なダンス。
本格的っていうか・・・先生はシャッフルダンスとかいってたっけ?
あとはヒップポップとか何種類かやった。
何でも海外の大物芸能人が踊ったダンスとかそういうのをやらされたんだ。
僕を含めて、皆出来なかったりしたけど、それでも何とか形には成った気がする。
そんな感じのダンスなんだけどね。
取り敢えずやってみるか。
音楽がないと微妙なんだけどね。
リズムが取れないのが残念。
習ったシャッフルダンスの動きを心の中で曲を流しながら、
一応踊ってみた。
なんて言うか、虚しい。
でも、きっちり踊りきった。
懐かしさもあるかもしれない・・・。
「どお?こんなダンスの他にも色々あるんだけど・・・ちょっと下手だったかな。」
「・・・」
「えっ?えっ?」
「パチャク!何アレ!?なんか・・・凄い・・・」
パレンケは目を丸くしてぽか〜んとしている。
パチャクは、何が起きたのか理解してなさそう。
ケチャクは感激してそう。
「パレンケ?どうだった?パチャクケチャクもこんなダンスはできそう?」
「ダンス?ってなんでしょうか・・・?今の踊りですか?動物の動きを真似していませんでしたよね?」
「パレンケ!あれはちゃんと踊りだよ!凄い!」
「ケチャク?わかるの?あんな動き、あたしできないよ?」
なんか三匹が凄いチグハグなこと言っていて、取り留めがない。
でもケチャクは少し理解してそう。
「ポンピカ!それ!あたしに教えて!ちゃんと出来るように成るから!踊りたい!」
「ちょっと!ケチャク?正気なの?あたし出来ないって言ったよ!」
「なに言ってるのよ?パチャクはあまり踊りが得意じゃないじゃない?歌を歌えばいいでしょ?」
「そ、そうだけどぉ・・・」
どうやらこの2匹は役割が別れてるのかもしれない。
瓜二つに見えるけどどうやら性質が違うんだろう。
面白いけど、この流れだと歌も歌うことに成るぞ?
僕の歌なんて、カラオケで遊んだ程度だからね?
大したこと無いんだけど?
それより曲が無いのが一番ダメだろ・・・。
まぁ、踊りはケチャクで決定って事にしよう。
「じゃぁ、ケチャクが踊りを担当しよう。パチャクは歌だ。」
「ポンピカ?もしかしてさっきの動きって、歌に合わせるんじゃないの?」
「えっ?そういう物なの?ケチャク・・・。そうなの?ポンピカ?」
すごいな。
一度踊るだけでこうやって連想できちゃうんだ。
やっぱり、分野を特化してるスキクって優秀だよね?
なんで、今までこんな文化もない状態だったんだろう?
すごく不思議。
「ケチャクの言うとおりだよ。歌と曲に合わせて踊る物なんだ」
「キョクってなに?」
「キョク?どんなものか分かる?パレンケ」
「なんで、聞いてくるんですか?知るはず無いでしょ?」
ここでわかった。
ザーザースには、音楽がない。
これは致命的じゃないか?
だからなのかなぁ・・・。
だから、動物の物まねで、済ますのだろう。
そうかもしれない。
「うぅ〜ん。じゃぁさ、曲の件は少し道具が必要になるから後回しにしよう。楽器という道具を作らないとできないんだ。」
「ガッキですか?どんな物なんですか?」
「いろんな音が出る道具だよ」
「なるほど・・・」
「パレンケ?分かるの?」
「キョクできそう?」
「いや、見てみたいとは思いますけどね?面白そうだとは思います。」
どうやら、パレンケは新しいものが好きなような気がしてきた。
そう言えば、パレンケは革の加工が出来るって言ってたよね?
それなら・・・太鼓か?
いや・・・他にも色々あるんだけどなぁ。
でも太鼓があればリズムが把握しやすい。
太鼓作ってみるか。
「じゃぁ、まずはあたしが踊りをやるわ!」
「なにそれ?あたしが歌ってこと?」
「・・・その流れだと僕がキョクですか?・・・仕方ないんですよね?」
パレンケはあれだね。
なかなか諦めが早いね。
「まぁ、、騒いでても始まらない。取り敢えず歌はこういう感じだよ」
カラオケで良く歌っていた、ビジュアル系のメジャーな曲を頭に思い浮かべて、
取り敢えず完歌してやった。
途中調子外れた気がした。
でも仕方ないだろ?
スキクの声帯は人間のものとは随分違うし、口の構造も違うんだ。
破裂音とかを出すのがまず唇が薄すぎて無理なんだ。
日本語で歌ったけど、まぁ理解もできないんだ。
いいかな?
「・・・」
「すご〜い!これが歌?動物の鳴き声なかったよ?」
「パチャク?わかるの?あたしは出来ないからね?」
・・・そこの下りほぼさっきと同じじゃないかな?
いいの?それで・・・。
でもまぁ、これでわかった。
パチャクが歌、ケチャクが踊り。
パレンケは?やっぱり諦めるの?楽器がんばろうかぁ?
「ポンピカ・・・これが歌と踊りですか?先程の話だとキョクとかいうのが合わさって凄い事になりそうだけど・・・」
「パレンケ?口調変わり始めてるけど大丈夫?諦めついちゃった感じ?」
「パレンケ?大丈夫?」
「大丈夫?」
2匹にも心配されちゃってますよ?
「ポンピカ!諦めってなんですか!僕はそんな事しません!」
「どっち?楽器やるの?やらないの?」
「ガッキ・・・僕に出来ますか?」
「さ・・・さぁ〜?何事もやってみないとね。」
「そうですよねぇ・・・挑戦してみます。で、ガッキってどんな物なのでしょう?」
「いろんなものがある。そうだなぁ・・・音が出るものなら楽器として使えるんだ。」
「音ですか?例えば?」
「パレンケは革を扱うよね?」
「はい。扱います。最近では、パパムイが獲ってきた獲物の革をナメスという方法を学ばせてもらって、上質な革細工が出来るように成ってます。」
「鞣し出来るように成ったの?」
「ええ。ギギリカから手法を聞きました。何でもこれもポンピカが話したのでしたね?」
「・・・確かに少し話した程度だけど・・・実際に再現したんだね。凄い」
「ええ。ンダンダからその加工にひつような植物を教えてもらいギギリカが手法を指示していました」
「なるほど。じゃぁ、十分か・・・」
「なにがですか?」
「その鞣した革をね?大きなタルに目一杯貼り付けるんだ。すると太鼓という物が出来るんだ」
「はぁ・・・?」
「太鼓っていうのはね。その張った革の部分を木の棒でポンと叩くと大きな音が出る。それを一定の決められた感覚で叩くとテンポってものに成るんだ。踊りや歌を合わせるのに必要なんだよ」
「ふむ・・・それがガッキという物ですか?」
「うん。他にも多分乾いた蔓を彫り抜いた木に貼り付けて、弾くとまた違った音が出たりする。」
「違う音ですかぁ・・・なんだか今一想像出来ないですね」
「そーだよねぇ・・・現物見ないとわからないもんね。取り敢えず僕がすぐに容易出来るのは骨を削った笛とか筒状の木を削って作る笛くらいかな?」
「それもガッキですか?」
「うん。楽器っていうのはオンガクを奏でるための道具の総称だから種類が物凄く多いんだ」
「なるほど・・・」
「取り敢えず、パチャクケチャクには歌と踊り、それからパレンケには楽器と曲の作り方を教えることにする。いいかな?」
「あたしは構わないわよ。あの未知の踊りが踊れるなら・・・なんだかワクワクしてくる!」
「あたしだって!いろんな言葉をあんな風に歌えるなんて、ドキドキしてきちゃう!」
「・・・ガッキがんばります。」
「でも楽器がいま手元にないから笛は僕が作るよ。あとの物はベベビドと相談する」
「それでいいです。」
「踊りは?」
「歌は?」
「音楽が出来たら纏めてやろう。そのためにはまず楽器だ!」
「わかりました。」
「なんだか、お預けされた気分」
「あたしもー」
パチャクケチャクとの距離・・・縮まった気がする。
前は僕を見てビクビクしてたのになぁ。
何がきっかけで、変わるかわからないね。
取り敢えず、今すぐ何かをしなきゃいけないわけじゃなく成った。
始めたのは僕だけど、話している内に楽器が無いとこれがまた、
話しにならないっていう本末転倒な事に気がついたんだ。
なにはともあれ、楽器作らないといけない。
今から作ろう。・・・あれ?レンガ作るの途中じゃなかった?
まぁいいか。