ウウダギ成長してる。とギュギュパニ無茶はダメ
翌朝、遅く起きてしまった。
木から降りてみると、
ケルケオが卵の温め位置を変えている所だった。
ケルケオの卵は大きさというとケルケオの頭ほどもある長細いのだけど、
縦長の卵なので斜めに傾け放射状に並べられている。
その中心のくぼみへとケルケオが腰を下ろすのだ。
どうやら温度のムラを無くすために頻繁にこうやって、
卵の位置を変えたり転がしたりして調節してるんだろう。
お母さんは大変だね。
ケルケオが僕に気づき、一言「ハラヘッタ」とでもいいたげな鳴き声を出す。
二匹同時にだ。
この二匹すごい同調がいい。
同調っていうか姿形が酷似してるんだ。
ほぼ似ている。
身体の模様はほぼ同じだろう。だけど、色合いに少し違いがある。
毛の生え方は同じだけど生える向きが逆だったりする。
ようはつむじが右巻きと左巻きで別れてるような感覚だ。
多分、双子と言っても問題ない程の関係なのかもしれないな。
まぁ、要求はわかった。
すぐに虫取ってくるよ。
あれ?お肉も食べるんだっけか?
シシブブに欲聞かないとわからないや。
取り敢えず今日は虫採ってきます。
ついでに僕も虫食べよっと。
今の時期、バッタの種類がとても繁殖をしている。
凄く沢山固まって草を食い散らかしたりしてることがある。
なので、バッタは取り放題なわけだ。
一箇所の集団を見つければ、背負袋一杯に成るほど、バッタを取れる。
それでも減らない。
そのくらい多い。
そして、集落の中にはまれにバッタが入ってくるんだけど、
皆は、虫をなんの気に求めず過ごすため。
完全スルーしているんだ。
これは勿体無いだろう?
虫を欲食べる僕としては、やはり、見過ごすわけにはいかないんだ。
この際だから、沢山取ろう。
それに畑に被害が出るのは避けなきゃいけない。
害虫となっては、面白くないだろう。
取り敢えず、手近な大袋を担いで、森に入っていこうとする所で、呼び止められた。
僕を呼んだのは、イイオオだった。
「ポンピカ。少しいいか?」
「うん・・・いいけどなんかあったの?」
珍しい。ってかイイオオが他に興味を抱いた瞬間を今目撃しました。
ずっとニートだと思ってたけど、最近の働き具合はとてもいい。
他のスキクにも話を聞くと、意外に評価が高かったりする。
頼んだことはちゃんとやるんだそうだ。
ただ、趣味がないだけで、その時間を寝て過ごしているだけなんだと僕は思ったんだけど。
「あのな・・・」
「うん?」
「また、プブが食いたいんだ・・・どうにかならないか?」
「プブって、魚のことだよね?」
「サカナ?たしかお前たちはそう言ってたな。それでいい。サカナだ。」
「釣りすればいいんじゃないかな?」
「ツリは習った。だが、いまは雨季じゃないだろ?水も無い」
「いや、川とか湖とかわかるかな?そういう所に行っても釣りは出来るよ」
「そうなのか?俺はてっきり雨季だけの物だと・・・」
「ああ、そうか。たしかサカナを獲るっていう行為がはじめてだったよね。詳しく話さなくてごめん。」
「いや、いい。つまり、水の有る所で釣りをすればいいのか?」
「水っていうか、川が一番いいかな?この辺りに海は無いしね。内陸だから」
「ウミ?」
「うん。海っていうのは塩っぱい水で出来た大きな大きな水たまりだと思ってよ。そうだなぁ・・・この大陸の周りは全て海だってきいたよ?族長はしってるみたいだけど」
「そのウミってのは、サカナがいるのか?」
「川の魚とは種類が違うはずだけどね。なんにしても大きい水たまりだから魚の大きさも大きいものだと、この集落に入るかどうかの大きいものもいつかもしれないね」
「なるほど・・・まぁわかった。つまり川で釣りをしてみろと?」
「そうだね。そうすれば、魚は食べ放題かな?もし、大量に取りたいなら、大きい川で網漁をすればいいよ。多分一回のと網で、集落の一日分を超える収穫があるはず。」
「そうか・・・それはとても集落のために成るか?」
「なる。むしろ食料事情がよくなると、皆の活力も充実する。僕もそうだけど、集落の生き残りの中には肉がダメな個体も居るからね。魚はとても良いと思う。保存も出来るし、いいとおもうよ」
「そうか・・・いい話が聞けた。助かる」
「うん。また相談してね。」
挨拶をして、去っていった。
話してみたけどイイオオは意外にまともだ。
寡黙に見えたけどね。
結構ちゃんと話す。
ただ、どことなく暗い雰囲気は残ってるなぁ。
模様のせいかな?
まぁいいや。
気を取り直して、虫捕りに行く。
僕はお気に入りの虫が何種類かいるんだけど。
その家の一匹は木の幹、枯れている木々を割って獲るのだ。
乳白色の身体をしており頭部は小さく、赤黒い。
コレを生で食べるとカスタードクリームみたいな風味と味がする。
おやつ感覚だ。
他にもバッタは火を通せばエビみたいな甲殻類の殻の味がする。
大きい蜘蛛は焼いた後、中身を食べると、カニの味がする。
見た目だけ気にしなければバラエティーに飛んだ食べ物と言えるんじゃないかな?
元現代人の人間だったからと言う事も有るけどたしかに始めは、抵抗あった。
バッタや蜂の子はじいちゃんの所で食べたことが有って何とか行けるんだけど、
流石にカブトムシの様な甲虫まで食べると成ると、少し抵抗が産まれるんだ。
でも食べ慣れていないのが原因だろうと思って、慣れるようにした。
カブトムシによく似た甲虫は、僕の知ってるカブトムシとは形も大きさも違う。
ずっと大きい。
しかも、カブトムシの角だけど、アトラスオオカブトのような三本尖った角があったり、
四本、五本と増えている種類もある。
大きさも手でつかめる物から一抱え有るようなものまで様々だ。
幼虫だってそうだ。
まぁ、色々有る。
そう思って欲しい。
結局、今回は、バッタがメインだけどね。
このバッタは殿様バッタによく似てるけど、大きさがデカイ。
体長が30センチ暗い有る。
足も茹でれば中身が食べれるほどデカイ。
とても主食となるだろう。
コレを袋にガンガン詰めていく。
捕まえ方は簡単。
スキクを怖がらない為、近くへ行っても触っても気にしない。
というか食べる事に対して集中してるときは周りを一切気にしないんだ。
そこを首の辺にある継ぎ目の部分を抑える形で掴んで、そこに枝を刺す。
すると、あっという間に〆ることができるんだ。
バッタだし大きいから暴れるとシャレにならない。
なのでその場で〆るのが鉄則である。
他の昆虫も背負い袋へとボンボンと入れていき、
最終的に満杯になる。
この時期だからこうなるんだ、生き物が溢れているこの時期だからね。
さて、すぐに集落へ戻ろう、ウウダギも心配する。ギュギュパニの容態も診なきゃだしね。
集落に戻り、大きめのバッタをケルケオに2匹ずつ与える。
それでお腹いっぱいのようだ。
ケルケオは食事を取るとすぐに寝てしまう。
卵を温めるために。
採ってきた昆虫は結構残っている。
集落では、小さい昆虫に限っては誰も拒否しないんだけど、
大きいものに成ると、そっぽムイてしまうヤツも居る。
まぁ、好き嫌いがでてしまうんだ。
今日の朝食はバッタを茹でて、中身をたべよう。
まだやってないけど、この大きさならエビの代わりになるはず。
中身も熱で固まるだろうしね。
食事の支度をしているとウウダギが木から降りてきた。
「ポンピカ。おはよう」
「おはようウウダギ。昨日は疲れたね」
「大丈夫。寝た」
「うん。じゃぁ、ご飯作ってるから食べる?」
「うん。食べる。」
幸い、ウウダギに好き嫌いは少ない。
虫も食べる。
というかほぼ何でも食べる。
肉が好きな時もあるけど魚のが好きな方かな?
他にも野菜より果物のほうが好き。
虫は甘い虫なら喜んで食べる。
今回のバッタは甘くはないけどエビみたいだからなぁ。
どうだろう?
「ウウダギ。今日のご飯はバッタを煮るけどいい?」
「バッタ?」
袋からバッタを取り出して見せる。
「コレを煮ると中身が美味しいよ。」
「美味しい・・・。うん、わかった。食べる」
ウウダギは凄く興味しんしんのようだ。
バッタをジッと見つめてる。
鍋に水をはって、沸くのを待つ。
沸いたら森で採ってきた野菜を入れる。
そして、バッタを投入。
大きな葉っぱで作った蓋を上に乗せて、しばらく待つ。
エビと似たいい匂いがしてくる。
ちょくちょく蓋を開けて、中を覗いて、頃合いが良いだろうと思う頃に蓋を取る。
「出来たかな?あとは塩をちょっと入れよう」
「うん」
岩塩を砕いて、パラパラと鍋へ投入。
木製のスプーンで味見。
スープはエビに似た出汁が効いていておいしい。
完成です。
「じゃぁ、よそるね」
「うん!」
ウウダギがワクワクしている。
木製の器を僕に差し出してきてるので、それに鍋の中身を入れてやる。
そしてバッタを一匹。
バッタが器からはみ出てるけど、豪華ってことでいいよね。
続いて自分へもよそる。
バッタは一匹。
「ウウダギ、このバッタはねこうやって食べるよ。」
ウウダギが僕の食べ方をジッと見ている。
ウウダギが見ている中、僕は器のバッタを掴む。
やはりブリブリに茹で上がってて、パンパンだ。
うまそう。
バッタを両手で掴み、首の辺りからバキッとふたつ折りにする。
頭部のほうは後回しだ、まずは腹部から食べよう。
腹部にある内臓類の部分を指でこそぎ落として、
尻尾の排泄部分までしっかり捨てる。
背の殻の部分へ、右手の親指を入れて、左手の親指はお腹側の殻へと入れる。
そして少し力を入れて殻を割いた。
バリッ!
なかなか良い音がした。
割いた殻のところから棒状の可食部分が乳白色状ヌメリとともにヌルッと突き出している。
それを僕はバクッと口に入れた。
味。
エビ、エビと行っていたけど風味はエビに近いのは事実。
だけど、エビより青い匂いが少しする。
多分、草を食べている丘の生き物だからだろうと思う。
でもまずくはない。
どっちかって言うとタイとかの料理って言われれば納得する。
とても独特のハーブが効いているようなそんな風味で美味しい。
続いて、頭部の部分は、脳髄の辺りを枝で引きずり出して、すする。
ここは、凄く濃い味がした。
次に、太い後ろ足だ。
ここは歯で割って、縦に割いたところから枝を使って果肉をこそげてすする。
胴体の果肉とはまた味が違うのにビックリした。
実に美味しい食べ物だと思う。
残り、スープも美味しかった。
野菜にバッタの出汁が染みていて、良い味がでています。
「こんな感じ」
「うん。わかった」
何時もどおりわかったと言っては居たけど、
見ている間、ずっと、よだれまみれだったウウダギ。
食いしん坊なんだとおもう。
お預けしちゃってごめんよ。
ウウダギが食べているのを見る。
ちゃんと僕が食べたようにやっている。
殻を取って、果肉部分をパクッ。
すると動きが止まった。
あれ?どうしたんだろう?
と、おもって様子を見ている。
何度か口の中で咀嚼をする。
そして喉を通って行ったようだ。
そして、また黙々と食事が続く。
「ウウダギ。美味しい?」
「うん!味がする!美味しい!僕コレ好き!」
ほー。
ウウダギは昆虫が好きみたいだ。
うんうん。良いと思う。
低カロリー高タンパク。
しかもカルシウムもバッチリ。
野菜も好きだから一緒に食べれば、更にいい感じだね!
ウウダギは胴体のほうは完食したようで、次に頭部をすすり始める。
ただ、味が濃いからウウダギはどう思うかな?
美味しいことは美味しいんだよ?
気に入ってくれるかな?
しばらく様子を見ていると、ずいぶん長く頭部をなめまわし、すすっている。
多分、美味しかったんだと思う。
そして、綺麗にすすり終わった、殻を僕に見せてくる。
まさに「綺麗に食べたでしょ!」とでもいいたいんだろう。
僕はうんうん。とうなずいて、ウウダギの頭を撫でてやった。
ウウダギも完食。
相変わらずお腹がポンポコリンだけど、前よりは体が大きくなっているんだろう。
会った時ほどお腹が出ていない。
食べる量も前ほど多くはない。
良いんじゃないかな?
自分のペースで食べて良いんだ。
それに一日一回しか食べちゃダメなんて話じゃない。
自由に食べて良いんだよ。
しっかり食べて丈夫なスキクに成ってください。
食事を終えて、ギュギュパニの容態を診ようとギュギュパニを探す。
だけど寝床には居ない。
その辺で木材をいじっているベベビドに尋ねてみた。
「ベベビド。ギュギュパニ知らない?」
「ん?ギュギュパニなら石取りに行ったぞ?」
なんだよ。
もう動き始めてるの?
どんだけ元気なんだあのザウス・・・いやスキクか。
「体調はどうだった?」
「ん〜?どーだろうな?本調子ってわけでもなさそうだったがな。まぁギュギュパニなら問題ないだろう」
「昨日の今日でもう動けるのがすごい事なんだけどなぁ。一度直接診なきゃイケなさそうだ」
「そんなに酷かったのか?話はきいてる。怪我したんだってな」
「そうなんだよ。内股の太ももの辺をガッツリ爪で抉られたんだ」
「なんだって!?それで良く動けるな・・・知ってたら声かけたんだがな」
「まぁ、昨日戻るの遅かったからね。仕方ないさ」
「じゃぁ、この後、コウザンとか言う所に行くのか?」
「そうだなぁ。一度はいかなきゃなぁ」
「そうか・・・」
なんかベベビドが悩んでるようだ。
なんか話をしたそうだな。
聞いてみるか。
「ん?なんか困ってるの?」
「ん?・・・ああ。この間ポンピカに言われたシャリンとか言う物の事だ」
車輪はすでにソリに着いてるだろ?
随分不格好だけど機能はしてるように見えるんだけどなぁ?