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手型と縫合


「なぁ、ポンピカ」

「ん?」


「そう言えば、全部で7匹居たんだったね?」

「うん。そうだよ。」


「あたしに襲いかかったケルケオがボスだったのかね?」

「あー・・・どーだろ?ウウダギの尻尾を齧ったヤツのがデカイ気がしたけど?ボスには印とか出るのかな?」


「ああ。ケルケオのボスには印が出る。顔に特徴が出るって話を聞いたことが有るよ。」

「どんな特徴?」


「顎の側面の鱗が、見て取れるほど尖り始めるらしい。」

「ふぅーん・・・そうなると、もしかしたらウウダギ齧ったやつかもしれない。さっき倒したのは、そんな特徴なかったよ。大きいだけだったあと爪が見るからに成長してたけどね。」


「ん?爪だって?」

「あれ?ギュギュパニは、その爪で傷付けられたんじゃなかった?」


「・・・そうだったか・・・いや、あたしも急な戦いだったんでね。あまり良く見ていなかったんだよ。あんたが警告した直後だったからね。蹴りを避けるのがやっとでねぇ。年甲斐もなく少し焦っちまったよ」

「そうかぁ。まぁそれは仕方ないさ。」


「・・・ところで、ウウダギ齧ったっていうケルケオは?生きてるのかい?」

「いや、生きてないよ」


「ふーん。」


そういって、ギュギュパニは腕を使い身体を無理やり起こして、ウウダギを齧ったケルケオの方を見て取る。

そして、深刻な顔つきをする。


なんでそんな顔をするのかさっぱり理解できなかった。


「なぁ・・・ありゃ・・・どうしたらあんなことに成る?クグナでもあんなにはならないだろ?」

「え?何のこと?」


「何のこと?じゃないだろう!なんで首が落ちてるんだい!」

「あー・・・いや・・・あまり突っ込んでほしくなかったんだけどさぁ・・・」


「どうしたらあんな綺麗に首が落ちるんだい?」

「ん〜。勢い・・・そう。勢いってやつかな?はははw」


「笑い事じゃないだろう!あたしに内緒で武器を使ったのかい?」

「あー・・・武器はつかってないよ。」


「そりゃ・・・素手で殺ったのかい?」

「まぁ・・・咄嗟だったしウウダギが噛まれたのでついカッと成っちゃってね。本気出しちゃった。ごめん」


「本気?本気ってなんだい?あんた・・・もしかしてクロウのときは本気じゃなかったのかい?なんだいありゃ」

「う〜ん。説明してもわからないと思うけど?」


「そんなことはどうだって良いだろ!どうやったんだい!」

「・・・手刀って技だよ。手刀・・・わかるかな?素手の手の平の側面をクグナみたいな刃先だと仮定して、硬気功と併用して、切り裂いたんだ。あんときは本当に頭に血が昇っちゃってね。手加減出来なかったんだよ。まだまだ、僕は未熟者って事だね。」


「・・・シュトウ・・・そんな技があるのかい?」

「簡単なのならすぐ出来るよ。気功はタイミングとか色々必要だから使わないけどね」


「・・・いい。少し見せてくれないかい?」

「いいけど、きっとギュギュパニは怒るよ?」


ギュギュパニが座り込んだので、その前に石を積み重ねる。

そして、その石に向かって、手刀を軽く繰り出して素早く引き戻してみる。

すると、一番上にあった、石がパックリと2つに割れてみせた。


「これの応用って言えば応用かな?」

「・・・それがシュトウかい?」


「気功を取り入れると、本当の刃物くらいの威力を瞬間的には出せるように成るけどね。連続は無理だし、タイミングや気の練り具合もでも違うし、色々条件が必要なんだ」

「・・・刃物と一緒ってことかい?あんたの手が?」


「まぁ・・・そう言えなくもないね」

「・・・他には?他にもあるってことだね?」


「うん。」

「いくつか見せてみな」


ギュギュパニに要求されるまま、その場の木片や石を使い。

中国武術で使われる手型の一通りを実践してみた。

拳の型は、平拳、立拳、単眼・双眼龍拳、扣拳、透骨拳、龍頭拳・・・。

続いて掌型、勾型、爪型、指型・・・。


様々な手の形から得られる効果は千差万別で、どのようにでも変化をもたらす。

手は全ての道具に置き換えられるんだ。

爪が伸びていた頃は爪が邪魔してまともに拳を作れなかったけど。

爪が無くなった今では、人間だった頃と変わらない動きが出来ている。


一通り試してみる。

結構時間がかかったけど、やってる最中ギュギュパニの顔がどんどん青ざめていってる気がした。

ザウスの顔色なんてそうそう変わるものではないわけで、気のせいかもしれなかったけどね。


取り敢えずこんなものかと思って、ギュギュパニへと声を掛ける。


「こんくらいかな?他にもまだまだ沢山あるよ。それに打ち方や使い方も様々だしね。1個で全部何ていうことには出来ないかなぁ」

「・・・」


だんまりである。

言葉が出ないのか?

もしかしたら具合でも悪くなったか?止血したのに・・・

ハッ!もしかして貧血起こしたか!?


「ギュギュパニ!大丈夫か!?目眩がしたりしてないか?傷口いたむか?」

「・・・いや、もういいよ・・・何ていうか・・・ポンピカだねぇ・・・」


なにが?


「ポンピカ。アレどうする?」


ウウダギが作業をしないとダメだろうと催促している。

ギュギュパニの様子はまだ大丈夫そうだし、取り敢えず作業をしよう。


さっさとやっちまおう。

手近に転がっている雄二匹の息の根を止めて、

首の下へとクグナを突き刺し、

腹部の下側後方へも深く穴を開ける。


取り敢えずこれで、血抜きは大丈夫だろう。

匂いで他の動物が来るかもしれないけど、まぁそんときはそんときだ。


続いて雌の三匹。

一匹目を処理した時、腹の下に温める形で残っていた卵が見つかる。

ウウダギは全部で残り12個あるって言ってたけど、ウウダギが持ってきたのが6個、

残り12個そのうち潰したのが2個だから合計16個あるってことだ。


先に卵をどけておくべきだったな。

次からはそうしよう。

取り敢えず卵を避難させなきゃ。


ウウダギに手伝ってもらって、卵を一箇所に集める。

数を数えると、きっちり16個。

正確さがすごい。

流石ウウダギだ。


早速雌の二匹目へと手を伸ばすと、妙な事に気がついた。

手を伸ばした先のケルケオ雌が小刻みに震えているんだ。

なんだろうと思い、様子を伺うと、キノコの目眩から覚めているようだ。


そして、僕がやっている事を見てしまったんだろう。

恐怖で震えているってことだね。


う〜ん。

どうしたものかなぁ。

さっさと頭を砕けばよかった。


ここまでに成ると流石に僕も気が引けちゃう。

ウウダギに目を向ける。

するとウウダギがジッと僕の方へと目を向けて、

辞めてあげてとでも言うように顔を横へと振っている。


ウウダギは優しい子だった。

シシブブほどじゃないだろうけど、

やっぱり子供の前で殺生はキツイね。


思案しているとギュギュパニが顔を此方に向けて声をかけてきた。


「ポンピカ。その二匹は解放してやんな、起きちまったんだ仕方ないだろう。ウウダギも辞めろって言ってるんだ。集落にはまだ食料は沢山ある。その二匹を逃したってどうということもないだろう?」


ギュギュパニが言うんだ。

そうしよう。


「ウウダギ。辛い思いさせちゃってたね。ごめんね」

「ポンピカ。二匹助ける?」


助けるもなにも捕まえたのは僕らなんだしなぁ・・・。

まぁ、ウウダギとギュギュパニに免じて助けよう。


「うん。解放しよう。そして、僕らには近づかないように威嚇しておこう」

「うん!」


ウウダギの声に張りがあった。


そのまま震えている雌の口の縄を解く。

すると、顔だけ鎌首を上げて、僕の方をジッと見つめる。


続いて、足の縄を解いた。


僕はすぐに立ち上がり、去っていくとばかり思ったけど、

すぐには立ち上がらない。

座ったまま、何かを待っているようにジッと僕を眺めているだけである。


どうしたもんかね?

シッシッとでもしたら良いのか?


しばらくにらめっこが続いた。

先にしびれを切らしたのは僕のほうだ。


もう一匹の方へと歩み寄り、様子を伺う。

こちらもブルブルと震えている。


仕方ないので、解放すると先程のケルケオと同じ様にジッと僕を眺めているだけである。


どーせーっちゅーねん。


なぜかそんな言葉が頭に浮かぶ。

するとギュギュパニがこんな事をいい始めた。


「ああ、なるほどねぇ。ポンピカその雌たちはもしかするとあんたをボスって思ってるのかもしれないよ?」


はぁ?

僕ケルケオじゃないよ?

なんで僕がボスなの?


「多分、この群れのボスを倒しただろう?それでボスの資格がポンピカに移ったんだと思うけどね」

「ちょ!やめてよそういうの!僕ボスとか族長とかそういうの嫌だって言ったじゃん!」


「いやもなにも、多分そうなっちまってるんだよ。」

「えー!そんなー・・・どーしろっていうんだよ」


「そうだねぇ・・・もしかしたら集落までの足くらには成るかもしれないよ?」

「・・・マジで?」


「ああ。取り敢えず卵を温めさせてやればいい。きっと落ち着くだろう」


ギュギュパニからの提案で一箇所に集めてた16個の卵を8個ずつに分けて、二匹の側へと並べた。

すると、重い腰をあげて、卵へと顔を近づける。


少し思案しているようだけど、口先を器用に使って、卵の位置を整えている。

満足な配置になったのであろう、

そのままゆっくりと卵の上に腰を下ろして頭を抱える形で休み始めてしまった。


その頃には、震えが治まっていた。


どうやらギュギュパニが言っている事が正しかったのかもしれない。

「ここに晴れてボスになりました。」と宣言したい気分である。


しかし、このケルケオってのは、不思議な生き物だ。

それにデカイ。

感覚的には本当に馬って言えるかもしれない。

そんくらいの存在感がある。


う〜ん。

でもさ?

この流れだとこの二匹は集落へと連れていけるわけだよね?

そうなると、飼う事に成るわけだ。


飼えるかな?

運良く全部の卵が孵ったらシャレにならないんじゃないか?

あれ?

ヤバくない?


・・・マビクの?将来的に?

どうやって?

・・・僕はいやだなぁ。

どーしよう。


「ポンピカ。手伝って」


僕が思案している間もううダギは自分の出来ることを一生懸命やっていた。

流石にこの巨体を運ぶのは無理らしく、僕にどうにかしろと言ってきてる。


ただ、正直・・・僕でも運べないです。

重すぎる。


筋肉の塊だよ?

食べる?


流石にそれは無理だよね。

ここで解体しちゃ。

運ぶのも辛い。

まぁ、引きずるくらいなら僕でもできるかな?

やってみよう。


ウウダギと一緒に縄を使って、引っ張ってみた。

一番デカイやつをだけど。


ウウダギの尻尾を齧ったやつが一番デカかった。

だけど、首がスッパリキレて落ちているのに物凄く重い。

ちょっと腰が悲鳴上げるレベルでビクともしない。


・・・もう僕らだけでやれることはなさそうだ。

ギュギュパニがいないとどうにもならないだろう。

ギュギュパニはまだ足を引きずる。

痛みは治まっているようだけど、

それは痛み止めの葉っぱのおかげ、

きっと効果が無くなると激痛でのたうつだろうしなぁ。


うむー。

力自慢が足りない。

ギギリカ辺りに期待しよう。

取り敢えず、ケルケオは放置。

ギュギュパニの安否確認だ。


ギュギュパニの側まで来るとギュギュパニがうつ伏せで寝ていた。


やっぱり辛いのかな?

辛いだろうなぁ。


「ギュギュパニ。調子はどう?」

「ん?ああ、随分と痛みは引いてるよ。ただ、さっきより足の感覚が無い。大丈夫かね?」


まぁ、それは痛み止めの効果だと思う。

痛み止めの葉っぱ。

効果を見る限りこれ・・・麻酔だわ。

効果が大きすぎるとヤバイんだっけ?


あまり多用はしないでおこう。


仕方ないか。

集落に戻る前に処置しないとダメそうな気もする。


う〜ん。

まぁいいや、縫合はじめてだけど、やってみよう。

たしか、昔の人は縫合の糸を麻糸とかを代用してたって話は聞いたことある。

針は骨を加工したものを使ったっていってたっけ。


やるしか無いかぁ。


「ねぇ。ギュギュパニ」

「なんだい?」


「多分集落戻るまでに処置しないと足が動かなくなるかもしれない」

「・・・そんなこったろうと思ったよ。で?何するんだい?」


「今ここで糸と骨の針を使って、その傷を縫う」

「縫う?縫うって・・・傷口をかい?」


「うん。そうしないと、傷口が塞がらない。塞がらないと血が出すぎて、死んでしまうかもしれない」

「・・・なんだい・・・そりゃ随分な状態だったんだねぇ・・・」


「うん。だから、今からウウダギに協力してもらって、その傷を縫う。いいかい?」

「痛いのかい?」


「多分気を失うほど痛い可能性もある」

「そんなにかい・・・まぁでも死ぬよりはまし・・・なんだろう?」


「うん。それに縫えば、自分の力で足も動く。治りも早い」

「・・・なるほどねぇ・・・じゃぁ、嫌だとはいえないねぇ。いいよ。やっとくれ」


ギュギュパニが凄く険しそうな顔をしている。

やっぱり痛いのは嫌なんだろう。


仕方ない。


「ウウダギ手伝って欲しい。」

「うん。何する?」


「何時もの糸を出来る限り細いので何本か作って欲しいんだ。」

「わかったすぐやる。」


ウウダギが手近な蔓を物色し始めた。

僕は、ケルケオの発達した爪を一本折って、クグナで加工を始めた。


幸いケルケオの爪は非常に硬い。そして繊維質の塊なんだろう。

粘りもある。


細い針を作るのにはそれほど時間はかからなかった。

僕のクグナはギュギュパニのお手製で新石器時代に突入した優れものだからね。


ガリガリと爪を加工する、釣り針の要領だ。

すぐに出来上がる。


さて・・・。


「ポンピカ作った。コレどうする?」

「んっと一回煮る。」


「煮る?・・・わかった。火を起こす」


そういって、ウウダギが火を起こし始めた。

そして、僕は小さい窯を作りその上に葉っぱで作った器を起き、

近くの水場から綺麗な水をすくって葉っぱの器へ入れる。


ウウダギが火の準備を終えたようだ。

火種を小さな窯へと投入。

すぐに火がつき始める。


しばらくすると葉っぱの器は燃えず、その中の水が沸騰し始めた。

骨の針と糸をその中へと入れる。

そして岩塩を砕いて、少し一緒に煮出した。


その間もギュギュパニの様子を見ていたけど、段々ユラユラとしはじめているのに気づく。

どうやら、血が足りないのかもしれない。


ギュギュパニの足元の土が思いの外湿っている。

血が出すぎてるんじゃないか?

ヤバイな。


綺麗な葉っぱへと、煮出した針と糸を枝を削り出した箸で取り出す。

そして、僕は水場で手を洗い。

清潔を保っておいた。


「ウウダギ、その箸で糸と針を僕に渡してくれる?出来る?」

「うん。出来る」


何故かウウダギは箸を僕が使うのと同じに使いこなす。

もしかして、今見た事を真似れるのか?

すごい!


・・・関心してる場合じゃない。


ウウダギから冷めた糸と針を受け取り針のお尻に糸を取り付ける。

蔓の糸、これは釣りが出来るほどに丈夫だ。

ニジマスよりも大きな魚をパパムイは釣ってみせた。

つまり、この糸は非常に優秀な糸なんだ。


コレなら縫えるだろう。


さて・・・。


「ギュギュパニ。意識はある?」

「・・・ああ。目眩がする・・・大丈夫だよ。やっとくれ」


ギュギュパニの合図がでた。


「ウウダギ。こっちに来て、ギュギュパニの葉っぱをどかしてくれる?」

「うん。わかった」


ウウダギがギュギュパニの足にまかれている紐を解き、止血の葉っぱと痛み止めもとい、麻酔の葉っぱを剥がす。

剥がした途端、患部の傷口からドバっと血が流れ出した。


「ウウダギさっきの窯でお湯を沸かしておいてくれ、塩も適量入れておいてすぐに使うから」

「うん!」


すぐに準備を始めるウウダギ。


「今痛む?」

「いや、痛みはない。」


麻酔が効いてる今のうちだな。


すぐに針を傷口の先端部分へと差し込む。

ザウスの内ももの鱗は薄くて、股のあいだともなるとほとんど鱗がない状態なんだ。

まさに獣のスキン、皮と言えるだろう。


差し込んだ瞬間、少し強いテイコウが針にテンションとしてかかったけど針は丈夫なようで助かる。

鈎状の針をググッっと押し込んで開いた傷を貫通するようにしっかりと深く通していく。

血が止まらない。


結構傷口が見えないところがある。


前もって洗えばよかった。


針が通過して、一周。

そこで結び目を作る。

キツくひくことで、傷口がその部分だけくっつくように合わさった。


その調子で続けて二針ほど縫う。

まだ大きな患部へは届いていない。


すると、ウウダギがお湯が湧いたと言う。


「ウウダギそのお湯をこっちに持ってきて冷ましてくれ」

「わかった」


ウウダギが持ってくる。


「ウウダギよーく見ておくんだ。きっと深いキズをおった仲間が助けを求めた時、僕がいなかったらウウダギに頼むからね」

「う・・・うん。」


ウウダギの喉がゴクリと鳴った。

物凄く真剣に見ている。


続けて二針。

小さい方の傷口の部分はだいたいが合わさっている。

次から大きな裂け目へと突入する。


糸は十分長く用意されているからだ丈夫だろう。

ただ、ソロソロ麻酔が切れ始めると思う。


ギュギュパニの顔に痛みを感じているような表情が出始めてるんだ。

物凄く痛いんだよね・・・。


前世で小さいときにプールで転んで、打ちどころが悪く、膝の先をパックリ切った時、病院の先生がこのくらいなら麻酔なしのほうが治りが早いからって言うことで、6針ほど塗った経験があった。

メチャメチャ痛かった。

痛いっていうか、ショックを受けたのを覚えている。


きっとギュギュパニは今そんな状態だ。

早めに終わらせてあげなきゃね。


それにしてもこの糸すごい細いのに丈夫だ。


煮たおかげで消毒もできてると思う。

針も十分強度がある。


行けるぞ!


大きな患部は、纏めて一度で針を通すことが出来なかった。

なので、一度針を通してから傷口を押さえて合わせ、位置を確認しながら再度針を通す。


その時ギュギュパニがうめき声を出した。

すでに麻酔が切れてるんだコレ。


この後大きな部分が3針ほどある。

行けるかな?

暴れないでね。


続けて二針・・・ギュギュパニが点を牙をむき出しで耐えている。


「ギュギュパニもう少しだ。この大きな所が終われば、残りわずか。すぐ終わる」

「グググッ!いいからさっさとおし!かなり痛いんだよ!」


分かってる。

僕も前は経験したんだ。


すぐに終わらせるからね。

そういって大きな患部最後の場所へと針を差し込んだ瞬間。

ギュギュパニがそのまま意識を失った。

通常ザーザースは尻尾が邪魔をして、仰向けにはならない。

けど、今回のギュギュパニは限界を迎えたんだろう。

そのままバターンと真後ろへと倒れ込む。

尻尾のせいで腰が少し浮いてしまった状態だけど。


僕はすぐさま力を抜き、糸が切れないように力を逃した。


仰向けになったギュギュパニをウウダギがすごい形相で見ている。

めが飛び出るんじゃないかってくらいに大きくして。


「ウウダギ大丈夫意識を失っただけだ。傷の縫合を続ける」


返事がない。

相当ショックだったようだ。


「ウウダギ!しっかりしろ!こんなのでショック受けてる場合じゃないよ」


そこまで言うとハッ!と気づいて、僕をみて大きく頷く。


そして、患部をしっかりと見ている。


その状態で、大きな傷を縫い。

続けて、小さなキズの方へと向かう。

小さな方はあっという間に縫い終わった。


そこまで来て、最後に冷めたお湯をチロチロとゆっくりかけながら、患部を洗っていった。


綺麗に鳴った患部を観察すると、しっかり縫えているようだった。

ただ、患部がくっついているってだけだから、糸が通っていない場所からは少し血が滲んでいたりする。


でも大きな出血は無くなった。

これで血がこれ以上減っていくこともないだろう。


ただ、ギュギュパニは失神した後、失禁してしまって、そこも洗ってあげるしかなかった。


縫い終わって、最後の糸をクグナでチョンと切り終わると、ドッと疲れが出てしまった。

相当集中してたんだろう。

人間だったら相当汗かいてたはず。


「ふぅ〜。縫合終わった。」

「終わった?ギュギュパニ大丈夫?」


「多分大丈夫、しっかり患部を洗って、また、止血の葉っぱを巻いておこう。」

「うん。わかった。」


ウウダギが新しい大きな葉っぱを持ってきて、患部へ巻ける位の大きさへ切り分ける。


内ももの部分へとぐるっと巻いて包んでおいた。

上からは傷に触らない位置で紐を少しキツく縛り上げる。


後はうつ伏せへと、傷のない側へと転がしておいた。

ただ、転がすだけでも相当力が必要だ。

ギュギュパニは重い。

ケルケオほどじゃないけどね。


後は気がつくまではそっとしておくしか無い。

痛みで気絶したんだ、それを痛みで起こす必要もないだろうしね。


パパムイ立ちが戻るまで後はここで待機なわけだ。


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