ハプニングと水泳
次の日。
僕は早く起きて、船を集会場に取り込む作業をした。
昨日は色々と有ったため、ずっと放置していたからだ。
幸い寝てる間にスコールや大風なんかが来ることはなかったようで、
ドアの外に繋いだままの状態で浮いていた。
それを見た僕はすぐに取り込む作業を開始した。
其の作業をしていると、後ろの方から近づく音がする。
誰か?と思い後ろを振り向くと、ギギリカだった。
「ポンピカぁ〜。こんな早くなにしてるのぉ〜?」
寝ぼけている。
寝ぼけているギギリカはそのまま僕の方へとヨロヨロと歩み寄ってくるけど、
嫌な予感しかしないので、船の取り込みを一時中断して、ギギリカへと向かう。
「昨日さ?船で来たろ?」
「うぅ〜ん」
「船を集会場へ取り込んで今日のスコールをやり過ごそうと思うんだ。」
「ふぅ〜ん。・・・ねむぃー」
こう聞くとやっぱり雌だなぁと思う。
普段は明るく元気で、雄勝りな所が目立つが、雌は雌。
ギギリカもこういう可愛らしい所があるんだなと思った。
ただ、残念なことに僕の感覚、美的基準は人間だから正直惹かれはしないけど。
ギギリカには言わないでおこう。なんか可愛そうだし。
「ギギリカ。足元が覚束ないだろ?ちゃんと寝床に戻って寝たほうがいいよ」
「う〜ん。そーするー。ポンピカもねぇー」
またフラフラと自分の寝床へと戻るギギリカ。
そんな中、もう一匹起きているスキクがいる。
族長だ。
族長は僕を見て、ニヤリと笑った様に思う。
まだ一年程度しかこの世界に居ないんだ。
しかも、スキクとは、前世の僕と種族的に随分と違う。
其のため表情を読むという行為は随分と苦労するんだ。
どうやら、表情の他に匂いや色とかで判断する事も出来るらしいんだけど。
今いちそう云う所が出来ない。
そんな事を思いながら、作業を再開する。
しばらく紐をたぐり寄せて、自分の真下まで来た船の先端に手をかけ、
グイッと室内へと引き寄せる。
笹舟の様な物なので、ドアにぶつからずにスムーズに引き込めた。
其の場で、木で出来た骨組みを外し、葉っぱを丸めておく。
これで何時でも展開出来る。
水も切れるしなかなか重宝出来る物になったと実感した。
「ほう、そうやって小さく出来るのか。ふむ、興味深い」
突然後ろでそんな声が聞こえた。
振り向くと、声から分かっていたが、族長だった。
「え、ええ。そうです。この仕組みのお陰で、数日でもスコールを凌げました。」
「そうかそうか。のうポンピカよ。」
此の流れは?
大量に作れと言う話か?
「その”船”とやらは、他にも種類があるのか?」
ん?どういうことだろう?
少し、予想と違う質問だったので、返答が遅れる。
「え、えっと・・・。まぁ色々と種類はある・・・有ります。」
「そうか、その種類の作り方は知ってるか?」
「ええ、知ってます。知らない物もありますが」
「そうかそうか。ふむ・・・」
そこまで、族長は話すと、
そのまま「そうかそうか」といいながら自分の寝床に戻っていく。
はて?何だったんだろう?
それよりも、スコールがそろそろ来そうな雰囲気だ。
止むまで、休もう。
その日のスコールは、いっそう盛大な物だった。
そのせいで、集会場の屋根の一部が吹き飛んでしまった。
まぁ、船にもつかってる大きな葉っぱを乗せただけの屋根だしな。
そりゃ吹き飛ばされるよ。
と僕は納得した。
この世界に僕の知識を持ってくるのには全然異存はない。
むしろ暮らしが少しでも楽になるなら積極的に取り入れたいと思っている。
なので色々と計画を立てたいんだけど、
まず、任せられるスキクが居ないのが玉に瑕なわけだ。
その辺は族長に話せば、少しでも協力してくれるかもしれない。
取り敢えずは、スコールをやり過ごして、食料を獲る理由で、色々と作り始めようかな。
しかし、なんで屋根の一部が吹き飛んだだけで、こんなに騒ぎに成ってるんだろ?
大きな葉っぱは外に沢山あるんだし、紐になる蔓の皮はそこら中で取れるのになぁ。
「皆の者!騒ぐでない!落ち着きを取り戻せ!」
族長が一喝した。
それに対し、一匹の年長スキクが立ち上がり、不安を口にする。
「しかし!屋根がなければ、雨が中に入ってきてしまいます!此のままでは、集会場も安全とは言えません!」
「分かっておる。いま良い案を考えておる。」
族長は、考えるフリをしながら、チラチラと僕を見る。
族長は、多分僕が答えを知っていると踏んでいるんだ。
そりゃ知ってるさ、でもそう簡単に教えていいものか?
あまり僕を頼る事に成ると、僕が万が一この集落から居なく成った場合、
何もできなくなるんじゃないか?
ウルグズの件も有る。
多かれ少なかれ、多分奴とは揉めるだろうしね。
取り敢えず、僕はそのチラチラを無視することにした。
「うむ〜。困ったのぅ〜」
「おい!今回壊れた場所の補修をした奴は誰だよ!?そいつにやらせればいいじゃないか!」
また、先程の年長が、不安から来る恐怖に駆られた様子で、そんな事を叫び始めた。
「まて、ズズナド。ワシに良い考えがある。」
「族長!ホントですか!?」
「うむ。ちいとまっておれ」
族長はそう言って、僕の方へと歩いてくる。
分かってます。
つまり良い考えというのは僕にやらせるという事でしょ?
多分、新しい”問題”として、達成させるっていうところでしょ?
族長が僕の側で止まる。
「ポンピカよ。」
「はいはい。わかりました。やりますよ!やります!」
「ほほぅ。ワシは何も言って居らなんだが?」
「どうせ、やらせようと思ってたんでしょ?」
「ふふふ。敏い奴だ。では、”問題”だ!解決してみせよ!」
「わかりました。」
仕方ないな。
まぁ、出来なくはない事だし、
それに多分此の中だとすぐに対処出来るのは僕くらいだし、
やらないわけにはいかないな。
「族長!ポンピカ一匹にやらせるのは酷いです!」
「そうだ!俺も手伝わせてくれ!」
パパムイと、ギギリカが名乗り出た。
「ふむ。それで良いか?ポンピカよ」
「むしろ僕の方がお願いしたいくらいです。」
「ポンピカ!分かってるじゃねーか!」
「なにから手伝えばいいの!?」
「って、ことです。取り敢えず外出ますので」
「ほう、外へか・・・わかった。”問題”を解決する姿は集落の皆が見ている。気を引き締めてやり遂げるようにな」
「はーい」
こうして、朝方に畳んだ船をまた、展開して、外へと浮かべる。
「パパムイとギギリカは少し待ってて。まずは屋根の材料採ってくるから」
「おう!」
「待ってるだけでいいの?こっちでやること無い?」
ギギリカはなかなか気が利く。
そうだなぁ〜。
他の木材が有ったらラッキーかな?備蓄してれば嬉しいけど。
「倉庫の中に長い棒が有ったら何本か揃えておいて」
「わかったわ!パパムイ!手伝って!」
「おう!」
パパムイは、「おう!」しか言わないけど、本当に雄気の有るスキクだな。
そのまま僕は船を漕ぎ、柵の外に生えている。
大きい葉っぱを採ってきては集会場へと運搬する。
そして、行き帰りの途中で、紐になる蔓の皮を毟っては、一緒に運んだ。
3時間位かかったかな?
時計がないからはっきりとわからない。
集会場には十分なほどの素材が積み込まれた。
「ポンピカ?疲れてない?」
「大丈夫だよ。それより棒は?」
「おう!ここに有るぜ!これでいいか?」
パパムイが手に持っているのは随分と長い棒だった。
そのまま持ち上げれば天上を突き抜けてしまう位のながさがある。
これなら室内から作業できそう。
「パパムイありがとう。ギギリカ、手伝ってくれるか?」
「任せて!何すればいいの?」
こうして、作業が始まった。
僕は、紐を作り始め、
ギギリカには、大きな葉っぱを紐を使い編み込んでもらった。
出来上がった隙から、パパムイが長い棒を使い、器用に天上の隙間へと葉っぱを刺していく。
そして、屋根が塞がると、今度は、僕が木登りを利用して、壁を登り、バランスを取りながら葉っぱの屋根の補修を始めた。
作業事態は恐らく5時間はかかったかもしれない。
意外に葉っぱの編み込みに時間がかかった。
完成する頃には、もう外は暗くなっていて、夕食の時間を迎えていた。
「族長!完成したわよ!」
「ふむ、たしかに直っておるな。」
「結構疲れたぜー!雨季にこんなに動くなんてはじめてだよ」
「パパムイは雨季はじめてじゃなかった?」
「去年はまだ小さかったからなwよく覚えてないぜw」
「そうか。まぁそういうわけで、できましたよ。族長。僕だけの力ではないですけど」
「いや、そういうでない。ギギリカもパパムイもお前を手伝いたいと言ったのだ。お前の力と考えて良いだろう」
「そんな!じゃぁパパムイとギギリカにも”問題”解決したって事にできませんか?」
「ふむ。まぁ、今回は急ぎだったからな。多めに見よう!」
「やったー!族長すき!」
「おう!認められたぜ!俺がんばったー!」
パパムイとギギリカは殊の外嬉しかったようだ。
二匹が喜んでくれたならまぁいいか。
「さて、ズズナド、どうだ?」
「はい。先程は取り乱してすみませんでした。・・・ポンピカありがとう。」
「お礼なんていいですよ。僕も族長に言われなかったらやるつもりがなかったんですから」
「それでも、騒いでしまって済まなかった。」
「う、うん。わかったよ。その礼ちゃんと受け止める。」
「よかった。」
「では、皆が心安らかに戻ったようだし、食事を始めよう。昨日獲れた”プブ”がまだ有るだろ?腐る前に食べてしまわないといかん。」
族長の一言で、結局夕食も魚がでた。
まる一日経っているので、若干アンモニア臭かったが、此のくらいは日常茶飯事。
十分食べることが出来る。
・・・明日位には、他のスキクにも釣りの仕方を教えよう。
教育係はパパムイでいいかな。実践したんだし。
その日もそんなことで、一日を過ごした。
まだまだ、雨季の時期は長い。
次の日は、スコールが止んでから活動を開始した。
取り敢えずパパムイに釣りを他の奴にも教えてくれと、頼み。
僕は一匹で船をだした。
船を出す時。
ギギリカも一緒に行きたいと言い始めたけど、正直この船は一匹が限界。
なので、ギギリカとパパムイにもそれぞれ用意してやると約束してその場を切り抜けた。
さて、材料を取りに行く。
材料で言えばあの大きな葉っぱだけど、非常に丈夫なのだ。
数日前に切り取ったはずなのにまだ、僕の船の葉っぱは緑色をしている。
凄いなぁとおもう。
でも将来的には、やっぱり木製のカヌーくらいは作らなきゃイケなさそうだ。
僕はそのまま船に乗って、大きな葉っぱを大量に集める作業に入った。
それと同時に船に使う紐の蔓皮を昨日同様に大量に仕入れることに成る。
材料が一通り揃った頃合いを見て、
早速、二艘の船を作る作業を開始する。
何度も作り直したり、解体と展開をしていたのが良かった。
僕がはじめて作った船よりも随分とキッチリとした物が二艘完成した。
船を作る作業はギギリカと行った。
なぜなら、パパムイだと絶対失敗するから。
パパムイは、ああ見えて結構面倒見が良い。
年下のスキクを中心にちゃんと釣りの仕方を教えてくれたのだ。
そして、教材となる釣り竿を僕が船の材料収集中にギギリカが何本も作っていた。
パパムイとギギリカは本当に使えるスキクだと思った。
適材適所をすればきっと、この二匹は物凄いスキクパワーを出すだろう。
マンパワーと言えない所がアレだけど。まぁそんな所だね。
結局二艘完成するまでに夜中まで作業する羽目に成った。
今日の夕食も魚だったので、若干飽きが来てます。
それでも、集落のスキク達はとても美味しそうに生の魚の一切れを丸呑みしていた。
川の魚ってたしか、寄生虫の宝庫って聞いたけど?
でも、魚の扱いを知ってるスキクが年配に居たことがそもそも良かったのかもしれない。
そして、今日の食事で結構重要な事に気がついた。
僕らスキクには頬が無い。
そりゃそうだ、牙は覆い隠されているけどそれは戸が閉まっているみたいな作りなだけで、
頬のように物を食べる時蓄積とか出来る部分がないんだ。
代わりに舌の裏側に溜め込むスペースを作ることが出来ると知った。
そして、咀嚼っていうのは、頬が無いとまず出来ないんだとはじめて知ったんだ。
意外でしょ?
今までそんな事したことなかったので、
族長の食べ方を見てた時何気なく聞いたらそんな事を言われた。
うん。やはり先人の言葉には学ぶべき点があるんだなぁと納得した日だった。
とまぁ、出来上がった船を二匹に見せると?
「ポンピカ!ありがとう!あたしのためでしょ?」
「さすがポンピカ!親友は持つべきだ!」
そんな二匹の感激に僕は思わず。
「そう言えば二匹とも泳げるよね?」
不穏な顔をされた。
そもそも、スキクは泳がない。
泳ぎ方なんて知らない。
そして、川が恐怖の対象である。
つまると所、泳げません。
「な・・・何言ってるのよ?泳げるわけ無いでしょ?」
「ポンピカ?泳ぐってなんだ?」
こんな感じだった。
そうかぁ。泳げないよなぁ
泳ぎから教えるのか?
泳げないと、そもそも船から落ちたり転覆したら一大事だろ?
仕方ないか。
明日は、泳ぎの練習からだな。
こうして、不安を隠さない、二匹を尻目に僕は夢の中へと入っていったのだ。
翌朝、夜中にスコールが有ったみたいで、
起きた時にはすごく湿り気があって快適な陽気だった。
よし!水泳日和。
早速二匹を特訓だな!
僕は、ジャングルから戻る間、何度か水の中に落ちていた。
前世の記憶を持っているため、足がつく程度の水ならば、
怖くは無かったので、前世と同じように泳いでみたら、意外に泳ぎづらかった。
そのためTVで見たことの有る蛇やトカゲの泳ぎ方を思い出して、
実践してみたら恐ろしいほど早く泳ぐことが出来た。
多分この左右に体をクネラせてからの尻尾を使って、
前へと移動する泳ぎ方が理想形だろう。
この泳ぎ方は、顔を水面にだしながら泳げるので、とても安心感が有った。
「さて、二匹とも準備出来た?」
「出来たけどぉ・・・本当に水に入るの?」
「聞いてないぞ!ポンピカ!」
「大丈夫だよ。足も地面に着く位なんだから」
「それにパパムイは、雄気を見せろよ」
「うえぇ〜ん。」
「お、おう!雄だからなっ!」
こんな調子で、取り敢えず長い紐を集会場の床にくくり付けて外の水面へと垂らす。
イザという時、この紐に掴まれるようにって事だ。
「二匹とも一度僕の泳ぎ方見ててね。」
「ポンピカ泳げたの?」
「ポンピカ?水入るのか?危ないぞ?」
若干一匹これからやる事を理解してないのが居たが、
僕は二匹を振り返りもせず、集会場からダイブする形で溜まっている水へと身を投じた。
ザバ〜ん!
水しぶきが上がり、キラキラした飛沫が二匹を襲う。
その飛沫が当たったのか、二匹とも悲鳴を上げてた。
水の中は少しヒンヤリしていて気持ちよかったが、
長くいると体温を奪われるので、
まだ水没していない家の屋根へと登って体を日に当てる。
「二匹とも今みたいに泳ぐんだ。出来るかな?」
すると、二匹の顔色が悪くなる。
と言うか悪く成ったような気がした。
スキクの肌はそもそも血行が見えづらいので、
顔色なんて変わるわけないんだけどね。
「ちょ・・・ちょっと、ポンピカ?何やってるの?」
「お、お前!大丈夫か!?」
いやいや、むしろなんでそんなにビックリしてるのかさえわかりません。
「ほら、早く。二匹ともこっち来なよ。」
「ちょっと!無茶言わないで!出来るわけ無いでしょ!」
「そうだぞ!水だぞ!水!正気とは思えないだろ!」
そんなに怖かったの?
怖くないよ?
二匹が竦んだように尻もちを付いてしまった。
足がガクガクしてる。
そして、その後ろで、族長が成り行きを見ていたのだろう。
なぜか、目を大きくして口を大きく開けてワナワナと震えている。
なんか悪い事しちゃったか?
「おい!二匹ともなに竦んでだよー。やる時は一気にガーッとやんなきゃ覚えないだろ?」
「そんなの出来るわけ無いでしょ!」
「そうだぞ!これが泳ぐって事なのか!?」
困ったなぁ、全然水に入る気配がない。
そんなに水が怖いのかな?
「ポ、ポンピカよ・・・お前は何をしておるか!」
族長?どうして驚いてるの?怒ってるのか?
わかんない。
族長がどうやら怒り始めたので、仕方なく僕は泳いで、集会場へと戻る。
戻る時に水に入った瞬間、集会場から揃って「ヒッ!」というような声が聞こえた気がした。
泳いでたので分からなかったけど、
集会場のドア付近に集落のスキク達が
ギュウギュウにして僕の泳ぎを見ていたみたいだ。
紐を伝って、集会場のドア付近に手を掛けて、
よっこらしょってなもんでドアの中へと体を入れようとしたら族長に止められた。
「ポンピカよ!何という事をしたんだ!」
何ていう事?
泳いだだけですが?
「族長?どうしたんですか?」
「どうしたんですかでは無い!スキクは泳がない!それが分かっておるのか?」
はぁ?泳ぎますよ?
泳いだじゃないですか。
「泳ぎますけど?どうしたんですか?」
「川や水は、混沌だと教えたはずだ!」
そう言えば、水に関わる教えを受けたことが有ったな。
でも、どれも、知らないが溜めに陥った事件ばっかりだった。
「ええ、それは知ってますけど?」
「ならば何故、そのような危ない事をしたのだ?」
危なく無いからですけど?
狩りを一匹でやるほうがよっぽど危ないんだけどなぁ。
「危ない事?」
「今、お前がやった事だ!水の中は息も出来ぬ。死の世界だ!」
いやいや、死の世界じゃないですよ。
確かに息出来ませんけど、それは顔を水の中に入れてるからでしょ。
「いやいや。見てましたか?僕は顔を水面に出してましたよ?息できてますよ?」
「ぐぬぬ!そういう事ではない!」
じゃぁ、どういうことなんだよ?
「言ってる意味がわかりません。どうして、ダメなんですか?」
「わからない奴だ!水は危険なのだ!」
なんとなく分かってきた、漠然として危険だと成っているんだ。
多分、経験や代々の知識からそうなのだ。と思い込んでいるんだな。
「ん〜?まぁ、たしかに溺れれば危険ですね。息もできないですから、ちゃんと訓練しなければ泳げないですね。」
「訓練でどうにか成るわけ無いであろう!」
訓練すれば、僕が泳げたんだから、多分他のスキクでも出来るよ?
「成りますよ?僕がそうですから。」
「ぐぬぬぬ!それはお前が特別変なのだ!」
おいおい。変なのだ!というのは分かるけど、
理由に成ってないじゃん。
「いやいや!ちょっとまってください。僕が変なのは認めますけど、別に泳ぐのは変ではないですよ?なんでしたらパパムイに泳ぎ方教えましょうか?」
「ふん!パパムイか・・・いいだろう。それが、本当ならば、認識を改めなければならないな」
ふむ、こういう所が族長の良い所だ。
自分の知識不足や間違いが有ったら、ちゃんと認め改める癖がついている。
苦労したスキクなんだ、きっとね。
「わかりました。では、何時もの奴お願いします。」
「・・・うむ。ポンピカに”問題”を出す。パパムイを泳げる様にするのだ。」
”問題”いただきました!
パパムイには悪いけど、協力してもらおう。
「わかりました。」
「ちょっと待ってくれよ!族長!なんで俺が泳がなきゃいけないんだ!」
「もう決まったことだ。ポンピカに訓練してもらうんだな。」
「そんなぁ〜。」
パパムイの抗議も虚しく、僕に強制協力することに成ったようだ。
悪いな、パパムイ。
震え上がってるギギリカには、押し付けるわけにはいかなかったんだ。すまん。