臭い!とソロソロ例のアレ
「ポンピカ!何をやっておる?集落が煙だらけではないか?」
「ああ、ごめん。しばらくはこんな感じになるよ。」
「目が渋くてイカン!何とか出来ないか?」
「木に溜まっている水分が抜けるまでは何も出来ないよ。ただ、水分が飛んでくれれば、煙も収まるから大丈夫だよ」
「しかし、こりゃ渋くてイカン!」
「でもこうしないと、木炭が出来ないんだよ。」
「モクタン?初耳だな?何だそれは」
「木炭ってのは木を燃やすとたまに出るでしょ?あの黒いやつ。」
「焦げ付いた木の事か?」
「そうそう。焦げ付いたやつ」
「それを作ってどうする?」
「枝の芯まで炭化させると木炭ってのに成るんだ。そうするとその木炭は燃料になるんだよ」
「タンカ?ネンリョウ?」
「簡単に言えば、皆が何時も燃やしている作業が楽になる。それと、日持ちもするし、他にも使いみちが多い物なんだよ。例えば水を綺麗にするとかね。」
「ぬ?水が綺麗になる?」
「そうそう。此の周辺ってさ?水汚いでしょ?鍋やるにしても泥水に近いんだしさ」
「??」
「まぁ、わからなくてもいいけど、取り敢えずこの作業は絶対必要なんだ。」
「うぬぬ・・・しかし、此の煙にはかなわん」
「まぁ、次はもっと集落から離れて作るよ。今回は我慢して欲しい。」
「今回はって事は何回もやるものかのか?」
「そりゃ、燃やせば無くなるんだしね。」
「ふむ・・・わかった。今回だけだぞ?」
「うん。ごめんね」
そこまで言うと、族長は鼻を押さえながら自分の場所へと戻っていってしまった。
まぁ、たしかに言われればそうだ。
こりゃ町中じゃなくても集落の中でやる作業じゃなかったな。
まぁ、今と成っては仕方ないだろう。
皆目を押さえたりしている。
かく言う僕とウウダギも目と鼻を押さえているわけである。
あまり近くにいないほうが良いな。
ちょっと避難しよう。
そう思ってウウダギを見ると、小さい声で何かつぶやいている。
「ウウダギ?どうしたの?」
「ポンピカ。熱い」
ああ。確かにめちゃくちゃ熱い。
そうだね。
さっさと、移動しよう。
窯の様子が見える距離まで移動した。
「ウウダギ。ここなら熱くないでしょ?」
「うん。大丈夫」
ウウダギのOKをもらった。
しばらく此のまま様子を見ていよう。
2時間くらいかな?結構長く燃えている。
窯から立ち上る煙も目に沁みる煙じゃなく成ってる様子だ。
そろそろ、穴を塞ごう。
「ウウダギ少しここでまってて、穴塞いでくる。」
「一緒に行く。もう大丈夫」
ウウダギは、頑張り屋さん。
でも無理はしないでね。
可愛いのでウウダギと手を繋いで、窯の所まで戻ってきた。
さっきよりずっと熱い気がする。
下の穴から仲を覗く。
しっかり全体に火が回っている様子である。
ただ、ものすごく熱いので、ウウダギが耐えれるか不安だった。
でも作業はすぐ終わるだろう。
少しの辛抱だね。
下の穴を粘土でささっと塞ぎ、
上の穴・・・だけど・・・。
ちょっと長い木の棒を利用して天辺に粘土を覆いかぶせることに成功した。
天辺からも下の穴からも火や煙が出ていないことを確認する。
これで後は手がかからない。
もう目も鼻も痛くないし渋くもない。
よしっ!コレで後は、火が鎮火するまで待つだけだ。
2日位このままで様子を観よう。
「ウウダギこの作業は取り敢えず終わったよ。後はコレが冷めるまで待つだけに成った」
「わかった。次やろう」
気が早いウウダギ。
でも底が良い。
続いて、火種を持ちなが岩台の所まで来た。
さっきの失敗点を踏まえて、今度は天辺から火を入れることにした。
上から順に燃えて行けば、下から見た時しっかり中まで火が回っているか確認できるはずだしね。
岩台の上へ昇って、上の方から火を炊いて入れていった。
天辺のほうでは段々火が下へ付いていく様子がわかる。
ただ、顔が熱い。
これはどうにもならないな。
結局同じ工程を踏んで、穴を塞ぐことまで成功した。
ウウダギの助言のおかげで岩台に作ったのはやはり正解だったようだ。
天辺を塞ぐのにあまり手間がかからなかったからね。
何にしても炭作りは後で役に立つさ。
この日は、これで終わった。
朝、パパムイとギュギュパニ、ギギリカが揃って、僕らを起こしに来た。
「ポンピカ。いいか?」
「ん?おはよ」
「ああ、おはよう。起き抜けで悪い。そろそろケルケオの件片付けようと思うんだいいか?」
ケルケオ・・・。
ああ、そうだった。
アンキロに気が行っちゃってすっかり忘れてた。
そうだよね。
アンキロがすぐに捕まえられなかったんだ、ケルケオを捕まえるしか無いな。
「わかった。準備は何を用意すると良いと思う?」
「ポンピカ。あたし達が一応、持っていけるものは持ってくつもりで用意はしたわよ」
ギギリカがどこで作ったかわからない籠を僕の前に突き出してきた。
僕とウウダギはそのまま籠の中を覗く。
縄にボーラ。
網に石矢。
毛皮と大きな葉っぱ。
他にも細々としたものが入っている。
「・・・随分準備がいいね。」
「そうだろ?ギギリカはポンピカの作ったものを自分で作れるように努力してたんだ。この中の物全部ギギリカが作ったんだぜ!すげーだろ?」
マジで?最近関わりがなかったけど一匹でこんなの作ってたのか。
・・・そうだ。もう1個作っておこう。
「時間かからないから少し時間をくれないか?より確実にケルケオを失神させれる道具があるんだ」
「・・・ポンピカ・・・あんたまた何か作るのかい?」
ギュギュパニの視線がイタイ。
作ろうと思ってるのは、そんなに危険性の無い?ものだよ?
殺傷力はほぼゼロだ。
「傷つけたり、殺したりしないものだよ。」
「・・・わかったよ。じゃぁすぐに作りな」
ギュギュパニの許可が出た。
なので、皆を連れて、集落の焚き火の辺まで来る。
「ねぇ。小さい袋とか無い?」
「袋?何に使うんだ?」
「その袋が失神させるのに役立つ道具になるんだよ。」
「・・・まぁ、有るっちゃーあるぜ。何個ひつようだ?」
「そーだなー。皆一つづつ持ちたいかな。だから5袋あればいい」
「小さいので良いんだな?」
「うん。できれば小さいほうが良い」
「わかったすぐ持ってくる。」
パパムイが族長のところへ向かう。
「ポンピカ。何作るんだい?」
「んっとね。サップとかブラックジャックって言う物だよ。」
「ブラックジャック?」
「そう。ブラックジャック。袋の中に細かい砂を詰めるんだ。それだけで出来るんだよ。」
「砂?・・・それは何に役立つんだい?」
「まぁ。できればわかるよ。」
「ふ〜ん。砂ねぇ・・・何だか想像付かないわね。」
「ギギリカは良くいろんなもの作れるように成ったね」
「ウウダギに負けてられないでしょ?それにせっかく皆が楽になるような物があるんだもん。作れるように成りたいじゃない。」
ギギリカは上昇思考な女子ってかんじだな。
パパムイが戻るまでの間に焚き火で出来た灰と砂を集めておいた。
パパムイが戻ると手渡された皮袋は本当に小さいものだった。
大きさで言えば、片手の手の平に乗るほどの大きさ。
少し小さい気もするけど、逆にこのくらいの大きさなら取り回しも楽かもしれない。
僕は受け取った袋全てに砂と灰を半分まで詰めていき、
ウウダギの紐で袋の口を結んだ。
余った袋の口付近を紐でぐるぐる巻にして掴む柄の部分を作って完成だ。
「・・・これがブラックジャックってやつかい?」
「そうそう。」
ギュギュパニが首を傾げている。
「ウウダギ1個持ってご覧」
ウウダギに一つ手渡す。
ウウダギには少し大きいかもしれない。
でも、持てないほど重いものじゃない。
ウウダギが両手で柄のところをもって、「どうするの?」とでもいいたげな顔をする。
「ウウダギ、柄の所を持って僕がやるように叩きつけてご覧」
「わかった。」
僕は自分の分を手に取り、そのまま振りかぶる。
そして手頃な木片へと袋の部分を叩きつけた。
バスンッ!
っと言う鈍い音とともに木片に当たる。
続いて、ウウダギが同じように両手で振りかぶり。
そしてバスンッ!と言う音と共に木片へと叩きつけた。
「上出来」
「これでいい?」
「ウウダギは何でも器用だね。いい子だ」
「うん。出来た。」
「おいおい。これだけか?」
「そうだよ。これだけ。だけどパパムイはこれを頭に受けたいと思う?」
「いや・・・それはヤだな。イタイじゃないか」
「でも木片は折れなかったよ?痛そうにみえた?」
「いや・・・見えなかったけど・・・なんと言うか、重い物が頭に当たると思うと、ただ事じゃないだろ。あの音だ。」
「パパムイ。あんたが言ってる事はわかるよ。だけどねぇ、ありゃ本当に頭にあたりゃ失神するよ。ケルケオの頭は小さい。だから、しっかり当たれば、間違いなく気絶するねぇ。」
ギュギュパニはどんな物か理解しているようだ。
ギギリカもなんだか感心して見てるだけだし。
まぁ何はともあれ、準備は出来た。
捕まえに行こうか。
「じゃぁ、ブラックジャックを持って行こうか。」
「ああ、いいぜ。」
「久しぶりに体を動かすわね。」
「危ないようだったらすぐに引き返すからね?」
「うん。わかった。」
皆それぞれに言いたい放題が基本だ。
取り敢えず僕とウウダギは他三匹と共にケルケオが巣を作ってると思われる、
あの場所まで向かうのだった。
森を進み、見覚えの有る斜面の近くまで歩いていった。
少し離れた場所からでも例の斜面付近に動きが有るのが伝わってくる。
どうやら、ケルケオは戻ってきたらしい。
「ポンピカ。少し止まってくれ」
パパムイがそんな事を言い始めた。
何だろうと、様子伺うと、僕以外はすでに少し手前で腰をかがめている。
なんだろうと思ったけど、パパムイが僕を見て、自分の鼻を指差していた。
なるほど、匂いか・・・。
僕は頷き、腰をかがめて、皆の場所までゆっくり移動する。
皆の場所まで着くと、パパムイが小声で話を始める。
『ポンピカ。ここは風上だ。これ以上は進めない。だから少し迂回して斜面の横まで移動するぞ。』
なるほど。
どうやら僕は、殊の外鼻の性能が良くないのか?
『わかった』
こうしてパパムイ主導で、その場から大きく迂回することに成る。
どうやら、僕以外のヤツはみんな分かっていたみたいだった。
パパムイを先頭にして隊列を組み、
そのまま、目標の場所を大きく迂回する形で、側面少し下側の風下へと移動。
「ここなら声も届かないだろう。で?作戦どうすんだ?」
パパムイからそんな話が切り出された。
こまったなぁ。
ノープランだわ。
しかし、ここから躍り出ても意味がない。
結構な距離である。
それに近づけば、気づかれて、動ける場所のない巣のまわりだ。
恐らく反撃に転じるだろう。
そうすると、被害がでてしまう。
それは一番に避けなければいけない。
ふむ・・・。
やっぱり、キノコ使おうかなぁ?
「パパムイ。お願いがあるんだ。」
「なんだ?」
「とっておき。」
「おう。」
そう言って、腰に下げている小さな袋から乾燥した例の目眩がするキノコを取り出す。
「・・・ポンピカ・・・あんた、なんでそのキノコもってんだい?」
ギュギュパニは知ってるみたいだ。
「パパムイもしってるだろ?このキノコ」
「ああ。たしか目眩がするってやつだよな?」
「多分。燃やした煙もその効果があるはずだよ。」
「・・・どうするんだ?」
「なんとか近くに潜んで、このキノコの煙をケルケオに嗅がせるんだよ」
「!」
「わかったみたいだね。そうすると、ケルケオは目が眩む。そこへ皆で近づいて、網をつかって動きを封じるんだ。身動きが捕れなくなったケルケオにブラックジャックで、失神してもらう。どうだい?」
「・・・ポンピカ・・・お前、良くそんな事思いつくな・・・」
「これには、一匹だけ危ない橋を渡ってもらう事に成るんだ。」
「・・・いいぜ。それは俺がやる。任せろ」
やっぱりパパムイは雄だなぁ。
良い雄としか言えない。
たのもしい。
「ちょっとまって!それじゃぁ、パパムイが危ないじゃない!もし気づかれて集団で襲われたらどうするの?」
「だからパパムイなんだと思う。だよね?」
僕はパパムイに目を向ける。
それに対して、パパムイは無言で頷き返した。
「どういうことよ・・・。」
「ギギリカ。この中で、察知能力が特段高いのがパパムイだ。しかも狩りに慣れている。いち早く逃げ出せるんだよ。それに若いスキクだから反応が良い。すぐに手近な木によじ登れるだろう。むしろ、ケルケオが頭を使ってきた場合一番危なくなるのは僕達なんだ。パパムイが目くらまし役だと気づかれれば、一目散に僕らの方へと集団で押し寄せるはずだよ。」
「えっ!・・・」
「ギギリカ。まぁ、そーゆーこった。なんだったら俺がケルケオを集めてもいいぜ」
「なに言ってるのよ!そんな危ないことさせれないわ!」
「ギギリカ。しずかにおし。パパムイもそんなことしなくていい。取り敢えずそのキノコを燃やしてくるだけでいいわ」
ギュギュパニの仲裁によってギギリカが口を閉じた。
・・・ってか、こんな作戦しか建てれない僕はだめだなぁ。
親友を危険に晒すなんて、友達失格だろう・・・。
「ポンピカ。気を落とすなよ。ケルケオはどっちにしても必要なんだ。やるしか無い」
「ああ。わかってるよ。だけど、気をつけろよ?いざってときはすぐに逃げるんだぞ?」
「まかせろよ!皆より先に逃げてやるw」
「はははwその調子だw。じゃぁたのんだよ。」
「おう!いってくらぁ!」
パパムイはキノコを持って、素早くシダ植物が広がる低地部分をすり抜けて走り去った。
「・・・ねぇ・・・ポンピカ」
「ん?」
「パパムイ大丈夫かなぁ?」
「パパムイは大丈夫だと思う。キノコに火が付いた時点で、すぐに戻ってもらえば特に問題はないと思うよ。」
「そう?・・・それならいいわ」
「それより、僕らはもう少しケルケオに接近しておかないと、パパムイが作ってくれるチャンスをのがしてしまうからコレから少し動くよ」
「ポンピカ。あんたあまり鼻が効かないようだね?」
「ギュギュパニにはわかる?そうなんだ、最近知ったんだけどね。どうやら僕はあまり鼻が良くないみたいだ。だからケルケオを警戒して近づくには、ギュギュパニかギギリカの助力が必要なんだけど・・・」
「いいよ。あたしが先導してやろう。ギギリカは殿をお願いするよ。」
「あたしが殿?そんなのでいいの?」
「ギギリカ。もし、ケルケオが予想より頭がよかたた場合。挟み撃ちに会う可能性があるんだよ。だから後ろを警戒する必要があるんだ。頼めるかい?」
「なるほど。いいわよ。まかせて」
こうして、パパムイが先行している中、よりケルケオへと接近をするべく、ギュギュパニを先頭に歩みをすすめ始めた。