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窯と木炭


「パパムイ。明日も狩りかい?」

「ん?ああ、もちろんだ。此の集落で狩りしてるのは俺だけだからな」


「そうかぁ・・・」

「なんかやりたいことが有るのか?」


「まぁ、手が欲しいんだよ」

「手かぁ・・・ギギリカは?」


「これからギギリカも誘う」

「そうか。でも俺は明日は無理かな。ちょうど大きい獲物が近くを通るんだよ」


「へー。毎年通るの?」

「そう聞いてるぞ。」


「それって、大きい獲物?」

「いや、小さいんだけどな、数が多いし、ノロマなんだ。捕まえやすくてな。沢山取れるんだ」


「へー。じゃぁさ、網使えないかな?」

「アミ?」


「うん。ウウダギ、ちょっと網持ってきて」

「うん。わかった。」


ウウダギに随分前から作らせてた物が網だ。

ケルケオを捕まえるのに役に立つと思って言いつけてあったやつだけど、

ウウダギがあっという間に作り終えたという。

出来栄えもすごいしっかりしてて、丈夫なんだ。


ウウダギが引きずるように持ってきた束を僕に渡してくれた。


「これだよ。」

「それって、この間ケルケオを捕まえるためってやったやつだろ?」


「そうそう」

「ケルケオ以外にも使えるのか?」


「もちろん。網目が小さいのは魚取りにも使える。ケルケオには目の大きいものならいいと思うんだ。それにこれ、丈夫だよ?引っ張ってみて」


パパムイに手渡す。

躊躇なくパパムイは両の手で頑丈さを確かめているようだ。


しばらく奮闘していると、「うん」と頷き、僕の方へと顔を向ける。


「これなら大丈夫だと思うぜ」

「でしょ?」


「だけど俺、これの使い方わからねーんだよ。」

「それなら、一度投げてみればいい。投げ方は教えるよ」


「おう!助かる!」


こうして寝るまでの間、僕はパパムイに網の投げ方を教え込んだ。


次の日、僕とウウダギは、早速木炭を作るための窯を作る事にした。

粘土は前もって作り方は心得ているので、それほどの苦労はない。

ただ、粘土を作るのに少し時間がかかるだけだ。

と言ってもそんなに大きな工程は殆ど無い。


と、言うのも、乾いた木を集めてピラミット状に立てる形で積んでいく。

そしてその周りを粘土で覆い被せて行き山状の形にする。

燃やした際に煙が逃げるための穴を天辺に作り、

山状の下の所には均等に幾つかの穴を開けるだけだ。


此の状態で外側の粘土が乾いたら下の所から火を付けて燃やしていく。

そして煙突効果で天辺から火柱が上がるように成った跡仲を覗き、

中の木全てに日が回っているようならば、全ての穴を下から粘土で塞いでいく。

こうして酸素が少ない状態を作っていく。

すると蒸し焼き状態に成るんだそうだ。


じいちゃんが、炭を作るときは大きな窯で作ってたけど、

これはどこでも作れる即席のやり方らしい。

実際にじいちゃんが河原でコレをやってみせた事が有る。

それに習って、今回もやっていこう。


と、いうことで、ンダンダを巻き込んで、

大量のそれなりの大きさの木を採取して積み上げ終わった所だ。

僕は指示だけして、粘土作りをやっている。

ウウダギは僕の側で僕の作業と進行状況を確認しながら、

次から誰かに作業が引き継がれても大丈夫なようにメモを取っている。


「ポンピカ。こんなもんでいいのかな?」

「うん。十分だと思う」


「じゃぁ、僕はそろそろ自分の作業をやりにもどるよ」

「手間かけさせてごめんね」


「いいよ。それが出来るとなんかすごいんだろ?」

「そうだよ。燃料を一々取りに行かなくて済むように成るよ」


「へー!それはいいことを聞いたよ!」

「へへw。ンダンダありがとね。」


「うん。また何か有ったら言ってね。じゃっ」

「はーい」


こんな感じで、ンダンンダは自分の畑へ向かってしまった。

ここ最近イモ類の成長が著しい。

そして蔓草に連なるように成る豆類が随分と成長していて、蕾が出来ているらしい。

すごい成長速度だと僕は思う。

蕾が出来るということは、花が咲いたはずだ・・・受粉とかどうしてるんだろう?

前の世界の豆類の成長は千差万別だけど、

最低でも3ヶ月から半年は実るまでに時間がかかったはずだ。

なのにここでは、数日、いや二週間程度で蕾が出来るという。

こんなに育成が早いと栄養価の心配が出てしまいそうだ。

大きくなる分にはいいのだろうけど、その大きくなる理由が水分となれば、ベシャベシャなだけの野菜になるかもしれない。


・・・ベシャベシャの豆なんて食べたくないのになぁ。


まぁ、まだ出来上がっていないんだ。

様子は継続的に観察すべきだろう。


まぁいいや。

僕らは僕らの作業を進めよう。

目の前には、積まれた木材が有る。


後は、粘土を周りに積んでいくだけだ。


「ウウダギここからは一緒にやろう。」

「うん。わかった」


ウウダギと一緒に出来上がっている粘土を随時、

積まれた木の足元から手にとっては、ベッ!っと投げつけるような形で、貼り付けていく。


意外に作業が進まない。

ウウダギの手は小さい。

なので、貼り付ける量が少ない。

なので、僕は細かい所、

例えば隙間と言えるような場所に穴を埋める形で吊りつけるように言い聞かせ作業を進めている。


作業が進まない状態の中、必死に進めていると、後ろから声がかかる。


「ポンピカ。僕らも手伝いましょう。」


振り返ると、パレンケとパチャク、ケチャク、デデンゴがそこに立っていた。


手伝ってくれるよ言う。

有難く手伝ってもらおう。


「じゃぁ、大きいスキクは僕の真似をしてこんな風に貼り付けていってくれ、小さいスキクは、ウウダギの真似をしてやって欲しい。」


そういって、作業が進む。

一山をみんなで手分けして作業しても結局半日はかかってしまった。

でも念願かなって、出来栄えは上々な木炭窯になった気がする。


後は表面が乾くのを待つ呑み。


作業が終わると、その場に居る皆にありがとうと伝える。

するとパレンケや他のスキクが目を大きくしてビックリした様子をしたんだ。


なんでだろうね?


その後、ウウダギと一緒に食事を済ませて次の事を始めていた。


避難所にある大きな岩台の当たりにまた木を積み込め始めておいたんだ。

今回、失敗したなぁ〜と思った点を改善するにはどうしたらいいかと言う事をウウダギと話したんだ。


今回失敗した点。

それは、木材が多すぎて、天辺の辺の穴を開けるのに苦労したことだ。

つまり窯を燃やした後、蒸し焼きにするにあたって、天辺を塞がなきゃいけないんだけど、

それに苦労するだろうと思った事に起因している。


ウウダギが、その事に対して、

じゃぁ、始めから登れる所に天辺を作ればいい。

と言う結論をサッと提示した。


僕はごもっともと頷いて、避難所の岩台の所がベストだろうと思って作っているのだ。


結局ンダンダがいないと、積んでくる木の種類や量が集まらなかったけど、取り敢えず、一端コレで作業終了ってことにして、明日も続けていこうとおもう。


その日もまたウウダギと抱き合って眠った。


翌朝、昨日に続いて、ンダンダに協力してもらい木々を積む作業をした。

少し自分たちでやっていたおかげか、此の作業はすぐに終わってしまったんだ。


その後また、粘土を塗る作業に成る。

だけど今回は粘土を塗り込む量が昨日の窯の量の半分ほどで済むと気づいた。


岩の面が垂直に近い形で立っているためそこに立てかけるような形で作っていたおかげだ。

此の時、ウウダギの案がまさに良策であった事を裏付けていた。


前もって窯の機能を話していたおかげで、どんな所から風が吹き込んで、

どこに流れると言う事を理解している証拠だったんだ。


実に賢い。

僕一匹じゃ、思いつかなかっただろう。


ウウダギ。ナイスだっ!


一通りの作業が終わったのでドロドロの体を洗いたいと思った。

ウウダギも何だかベチョベチョなんだ。

可愛いお顔が台無しさんだよ?


取り敢えず風呂なんてまだ作れない。

ならば・・・ん?

ちょっと待てよ?


粘土が有るよね?


なら、余った粘土は大量に有る。

ここは・・・穴を掘って風呂を作るか・・・。

それ良いかもしれない。

穴を掘って、その穴の周りを粘土で覆って、

表面が乾いたらそこで焚き火をすれば素焼きの風呂が出来るんじゃないかな?


でも入排水はどうする?


・・・そうか・・・坂の途中に風呂を作って、下に排水の穴。

上から入水すればいい。


下の排水穴は固まったら木かなにかで塞げればいいわけだしね。

となると避難所の丘の中腹に風呂を作ろう。

そうしよう。


「ウウダギ。もう少し作業出来る?体は疲れてない?眠くない?」

「大丈夫。まだ出来る。」


「無理はしないでね。」

「うん。大丈夫」


こうして、丘の斜面にLの字状のくぼみを作っていった。

明日には、粘土で風呂を形にしていこう。

きっとうまく行くだろう。


結局その日は、近くの水場に言って体を洗って済ませた。

そして、ご飯を食べて就寝。


翌朝、早速作業をしようと思って粘土の確保をするため、一番初めに作った炭窯の所へ行くと、

乾燥し始めている炭窯の外側にヒビが入っている。

ヒビが入っちゃまずい。


急遽、そのヒビに粘土を塗り込む作業に変更して、穴を塞いだ。

ヒビの修正作業は滞り無く終わり、粘土を大きな葉っぱで包んで、

丘まで持っていくと言う作業をかいししたら、

今度はイイオオが無口なんだけどソリを使えとでも言いたげにこっちに歩み寄ってきた。

結果イイオオはそのままソリを僕に押し付けるだけ押し付けて、自分の寝所へと向かってしまった。


だけど此のソリ重いんだ。

僕じゃ十分に運べないよ。


とおもったけど、ちょっと待てよ?

いいこと思いついた。


そう、思うとすぐにやりたく成る。


「ウウダギ、ベベビドにこのソリの下に突起物を付けれないか聞いてきてくれない?」

「うん。わかった」


ウウダギがチョコチョコ歩いていった。

しばらくするとウウダギがベベビドを連れてくる。


「なんだ?突起物ってな?」

「ああ。ベベビド。ソリの裏に本当なら車輪がほしいんだけど。こんなに地面が凸凹だとどうにもならないからさ?ある程度突起した、足を付けれないかと思ってね。」


「ん?突起か・・・そんな形がいいんだ?」


ベベビドにそう聞かれたので地面に車輪の話しとは別に、

くの字の突起を三本寝かせる形で付けてもらう話をした。


「ポンピカ。シャリンってのはよくわからないが。この突起はすぐ付けれる。付けるか?」


ありがたい話しだ。

是非お願いしよう。


結局、ベベビドはそこら辺の木々を切ってはウウダギの紐をうまく利用して、

図で説明したような三本足のソリが出来上がってしまう。


前輪の位置に2つ大きな突起。

後輪の位置に小さな突起。


此の形なら運ぶのがソリのまま引きずるより、接地面が少ないから楽だろう。

試しにやってみた結果。

このソリは僕でもある程度、重くても運べる物に成った。


「なぁ?ポンピカ」

「ん?ああ。ありがとうベベビド」


「お、おう。それは良いんだが、こんな事で良いのか?」

「ん?何が?」


「いや、お前は色々教えてくれるだろ?今回のやつもそうだ。なんだっけ?セッチメンとか言うんだろ?」

「うん。そう。小さくて少ない面積ほど、抵抗が少ないんだよ。」


「テイコウってのがよくわからないが此の運ぶ台は随分小さい力で重い物が運べるように成ったな?」

「うん。そういう風にしてほしかったからね。」


「ふむ・・・。わかった。今度お前専用のソリを作ってやろう。そのシャリンってやつも付けてな」

「いいの?ってか出来るの?」


「ああ。さっき聞いた穴を開けるって話だが、この間、ギュギュパニが穴を開けるには先っぽが平たくて尖っている石を利用すれば簡単だって話が出てな。作ってもらったんだ道具を」

「へー。ギュギュパニは物知りだね。そのとおりだよ。本当はこんなのが理想だけどね。」


地面にドリルを描く。


「ふーん。覚えておこう。取り敢えず、お前専用のソリはそのうち作ってやる。」

「ありがとう。」


「おう。任せておけ」


そういって、ベベビドは自分の仕事に取り掛かってしまった。


僕の元に残った新型ソリ。

コレから作業が捗りそうで、少しウキウキしてしまう。


「ポンピカ。」

「どうしたんだい?」


ウウダギが今までのやり取りをジッと見ていたみたい。


「足ができた。」

「そうだね。これで、運びやすく成るよ」


「うん。わかった。」


多分、原理が知りたいんだろうけど、詳しいことは僕にもわからない。

でも接地面が小さいほうが、運びやすいのはわかる。


結局、粘土を運ぶのに何周かすることに成ったけど、

葉っぱで運ぶよりはずっと回数を抑えることが出来た。

つまり時間が節約できたんだ。

良いことだ。


運び終えたので、早速、浴槽を作ろう。


L字に掘り上げた丘の斜面。

浴槽に成る部分の所に、細い真っ直ぐな枝を等間隔に突き刺して、

それをウウダギの紐で繋いでいく。

隙間が有っても良い。

排水栓用のある程度太さがある真っ直ぐな枝を底の付近へと設置。

長方形をかたどる事で、骨組みが完成する。


そこへ、粘土を積んでいく。

最初は、外側。

一日かけて、外側の粘土積みが終わる。

次の日、粘土をある程度ゆるく溶かした物を浴槽の底として流し込んでおいた。


コレで、乾けば後は此の中と外で火を炊けばいい。

結構出来はいいと思うんだよね。


ウウダギは終始頭をひねっていたが、使用目的は伝えてある。

だけど何分はじめてなのであまりしっくり来ていないようだった。


底ヘの粘土流し込みはすぐに済ませることが出来たので、

今日は早速1個目の炭窯の塩梅を見ておこう。


1個目の炭窯の元までだどりつき、窯の周囲をじっくりと眺める。

もう、ヒビを治した部分も乾燥しているように見える。

そろそろ火を起こしても良いかもしれない。


「ウウダギそろそろ火を入れてみよう」

「うん。わかった」


ウウダギのこのあっさりとした受け答えが結構癖に成っている今日この頃。

とても、しつこくなく軽やかな舌触りだなぁ・・・食レポみたいだ。


僕は焚き火をしているヤツの所まで行って、火を少し分けてもらって、

それを種火として、窯の側で焚き火を起こす。

しばらく大きくなるのを眺めた後、

大きい火が出ている枝をそのまま窯の下へと突っ込んで様子を見る事にした。


下の方は大きな木々が積まれているので、なかなか火が回らないかもしれない。

次に積むときは、着火具合にも気を配ろうと思う。


落ち葉や、乾いた細い枝なんかもどんどんと突っ込んで行くことで、

何とか中の木材に火が移って行き始めた。


それと同時に、煙突部分の天辺からものすごい量の煙がバンバンと立ち上る。


それを見た、族長が小走りに僕の所へとやってきたんだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ソリについてですが、基本的に接地面積が減っても全体の摩擦力は変わりません。 もし摩擦が小さくなる場合、接地面が小さいテーブルやイスがツルツル床を滑って使い物になりませんから。 実際に…
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