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鉄と用途


・・・最近思うんだ。

ウウダギ少し大きくなってないか?

そろそろ体当たりをまともに受け止める自信がない。


「ウウダギどうしたんだい?」

「ポンピカいなく成った」


「パパムイにここに居るって言ったでしょ?だから連れてこられたんだし」

「うん。」


変な所で素直なんだよねぇ。


まぁいいか。

抱きついてる分には邪魔じゃないからね。


「ポンピカ。ウウダギは何時もそうなのかい?」

「うん。そうなんだ。ミニョルンの件からこっち少し過剰になってるけどね」


「ふ〜ん。まぁ、程々にしときなよ。」

「分かってる。」


「ポンピカ。連れてきたからいいだろ?俺狩りしなきゃいけないしな。」

「パパムイ。いつもありがとうね。」


「へん!こんなこたーなんてことはないさ。それより、今日は帰ったら美味いもんでも食わせてくれ」

「わかったよ。」


パパムイはそのまま狩りに出かけてしまった。


「ウウダギ。これから言うことをちゃんと覚えて置けるかな?」

「うん。わかった。」


そう言って、ギュギュパニが掘り出した鉄鉱石やら何やら一通りの説明を始める。

ギュギュパニは何時もどおりの作業なのだろう。

硬い石で自作した斧とツルハシの間の子のような道具で、石を砕いては切り出している。


僕がさっき言ったとおり、石灰石をメインに掘ってくれてるんだ。


「ギュギュパニ。忙しい所ごめん。この切り出した石は何時も誰が集落へ運んでるの?」

「ん?日によって違うよ。今日は誰が来るかわからないねぇ」


そうか。

まぁ良いだろう。


ってかあの量を一匹で運んでるのかな?

そんな体力があるスキクはいないはずだけど・・・。


すると、遠くから足取りの重い音がこっちへと向かってくる音がする。

誰かが来たんだろう。


僕はウウダギに説明しながらそちらへ顔を向けると、

そこにはイイオオと追加で来た3匹が居る。そしてその後ろにデデンゴが着いてきているのが見えた。


「あれ?ギュギュパニ。運び手が来たみたいだよ」

「ん?ああ、今日もイイオオが来てるのかい。」


イイオオってグータラしてるスキクって認識だったんだけど・・・。

あまり話はしてないから良くわからない。

それから力は僕より有るだろうパレンケ。

雌の二匹、パチャク、ケチャク。

そして、デデンゴか。


「イイオオって毎日手伝ってる?」

「う〜ん・・・言われてみればそうだね。最初からやってたかもしれないね。」


なるほど。

アイツと今度話してみよう。

何時も寝てるばかりでやる気のないヤツだと思ってたけど、

意外に頑張るヤツなのかもしれない。


それにパレンケは、なにやら引きずっている・・・。

ってか引きずってる物の上にパチャク、ケチャク、デデンゴが乗っかってるんだけど?


あれって、ソリ?

自分たちで考えたのかな?


イイオオ達は、何の挨拶もないまま。

何時もやってますと言わんばかりに到着早々、砂利を積み始める。

ここでも避難所で使った道具を石で作り直したスコップを利用してるのが見える。


様子を伺っていると、デデンゴが此方へ向かってきた。

手持ち無沙汰のようだ。

やることがなかったんだろう。


「デデンゴどうしたんだい?」

「ずるい!」


突然だな・・・。


「デデンゴ?なにがずるいんだい?」

「ウウダギ。ずるい」


ウウダギがずるい?

デデンゴはなぜウウダギがずるいというのだろう?

そう思って、一生懸命鉱石を手にとって眺めて居るウウダギを見る。


別にずるくはない。

むしろ真剣で周りが見えてない。

相当、頭に叩き込んでるんだろう。


デデンゴが居る事も気にしていないようだ。


「ウウダギは今、仕事してるけど?デデンゴは何にかやってるかい?」

「・・・やってない。でもウウダギはずるい。」


う〜ん。

まだ、言葉というか会話が成立しない。

こまったなぁ・・・。


僕がそう思ってパレンケに顔を向けると、

一つため息を付いたあと、此方に寄ってきて、話しかけてきた。


「ポンピカ。申し訳無い。デデンゴはウウダギがなんでも出来るから羨ましいんだと思います。」


なるほど。

しかしそれは仕方ないだろう。

でもウウダギは体を動かす事には向いてないぞ?


「そうなのかい?デデンゴ」

「うん。ずるい」


「何度も言い聞かせてるんですが・・・。ああ、そう言えばですが先日、族長からデデンゴは僕の子供として扱うようにと言伝がありまして・・・。」

「パレンケの?」


「はい。何でもこの前のミニョルンで大きな被害が有ったそうですね?そん時にデデンゴの親も・・・」

「あー。そうだよ。集落の中心の集会所でね。」


「なるほど、わかりました・・・。恐らく僕等三匹が一番手が開いていたのでしょう。」

「パレンケは今何をしてるんだい?」


「僕はパチャクとケチャクの三匹で集落のために成ることは何でもして回っています。」

「へー。すごい。ってか偉いね。」


「いえいえ。ポンピカほどじゃありません。」

「ははwそんな事言っても何も出ないよw」


パレンケは至極真面目に話しているようだ。

全然笑わない。


やりづらいなぁ。


「まぁ、なんにしても今日はギュギュパニの手伝いだね?」

「いえ。イイオオの手伝いです。」


なるほど。

そりゃそうか。


「そうかそうか。頑張ってよ。ってかソリを作るなんて考えたね」

「ソリ?ですか?」


「ほら、イイオオが引っ張ってるヤツ」

「ああ。あれはイイオオが纏めて運んだほうが良いだろうって言って作ったやつですよ。」


へぇ〜。

イイオオって意外に考えてるんだね。


「ふ〜ん。イイオオってすごいね」

「はい!僕はイイオオを尊敬してます!」


パレンケ・・・ニートを尊敬ってどんなだよ。

まぁ、今のイイオオはニートとは呼べないけどね。


「ポンピカ、すみません。作業がありますので」

「あ、はい。引き止めてごめん。がんばってね。」


パレンケは「はい」と挨拶したあと作業を始めた。

ソリに砂利やら石ヤらを乗せて言ってるその間、

イイオオは砂利や石やらを見てはこれが必要とかアレはダメとか指示を出している。


その内容が的確なんだ。

すごいな。

僕が言ってたことをちゃんと理解してる。

そして、必要な事を推測出来るくらい頭が良いぞ。


とんだ、ダークホースだわ。


僕はその様子を見ている間にもデデンゴがウウダギに絡んでいた。


「デデンゴ。ちゃんとパレンケと一緒にやらないと大きく成れないぞ?」

「ウウダギがいけないんだ!」


何を突然・・・。

デデンゴは地団駄を踏んでは、大げさに何かをアピールしている。

あまり騒ぐようならパレンケに連れて帰ってもらおう。


「デデンゴ。ウウダギは何も悪いことはしてないぞ。」

「ちがう!ウウダギは弱い!なのになんでも出来る!ずるい」


何となくデデンゴが言ってる話がつかめてきた。

デデンゴは今まで、その体格をもって、集落の子供達の中で、ヒエラルキーが高かったんだろう。

それに比べ、ウウダギは最下層の辺りを進んできたはずだ。


ここに来て、僕が教育することで、その天性の頭の良さを活かせるように成ってきたんだ。

それに比べると体だけで特に特徴のないデデンゴは、これと言ってやれることが無く、浮いた状態に成ったんじゃないかな?


う〜ん。

それはどうにもならないだろうなーと思うんだ。

僕の子供なら口を出すのはやぶさかじゃない。

でも、いまはパレンケの子だ。

僕が何というようなことはない。


言ってやりたいけどね。


「なるほど。でも今は、パレンケが親だろ?ちゃんと親の元にいなきゃダメだろ」

「・・・でも・・・ウウダギは・・・」


「幾ら自分より出来るように成ったからって、それをとやかく言う必要はないだろ。ウウダギだって困ってるじゃないか。」

「・・・」


「怒ってるわけじゃないんだよ?ちゃんと自分が出来る事を見つけて出来るように成るしかない。ウウダギは自分が出来ることを一生懸命やってるだけだからここまで来てるんだよ。」

「・・・でも・・・」


「きっと、デデンゴもちゃんとパレンケの元で学べばウウダギみたいに何でも出来るようになるさ」

「・・・本当?」


「僕が決めることじゃないよ。デデンゴが自分で努力して行くしかない。その手がかりは親のパレンケだ。しっかり学んで、ウウダギを見返せばいいだろ?きっと其の方が、楽しいぞ?」

「・・・楽しい?」


「そうさ。ウウダギにちょっかいかけてる時間だけ、デデンゴは遅れているんだ。だったらウウダギにちょっかい掛ける時間を自分が成長する事に使おう?それが一番良い方法だと思うよ。」

「・・・わかった。パレンケのところに行く」


デデンゴは、なんだかまだ理解出来ていなさそうだけど、

でも、何となくは伝わったかもしれない。


デンデンとあるいてパレンケの元へと付いて、お手伝いを始めている。


「ポンピカ。あんたデデンゴまで気をつかってるのかい?」


ギュギュパニから声をかけられた。


「まぁ、正直言えば、ウウダギの邪魔はしてほしくなかっただけかな?」

「はははwちがいないね。あたしだったら一発ひっぱたいてたけどね。ちゃんと言い聞かせるところがポンピカらしいねぇ。」


僕はあまり暴力はしたくないんだよ。

何度も言ってるはずなんだけどね。


「で?ウウダギは順調なのかい?」

「順調。ってか漏れが無いところが流石というべき所だ。僕が話す内容をちゃんと記憶して解釈するんだ。ぶっちゃけ頭の出来が違うよ。」


「ははwやっぱりポンピカ。あんたは、親バカだw」


親バカ確定したらしい。

まぁ、自分でもそうだと思う。


ウウダギは一通り話した内容を覚えて、しっかり反芻するかのようにぶつくさ言ってる。


今日は此のへんで講義は終わろうかな?

ウウダギにあまり負担をかけさせるのもどうかと思うしね。


「ウウダギ。ちょっと来て」

「ん?何?」


「ウウダギ。今日覚えたことを集落に帰って葉っぱに記録を残そう。そうすれば、忘れたことがすぐわかるし、見直せる。それに見直しているときにまた新しい考えも出てくるよ。それを今度は僕に相談してみてご覧?」

「うん。わかった。」


「ウウダギは何時もいい子で偉いね」

「うん。大丈夫」


僕はウウダギの頭を撫でる。

ウウダギは目を細めて、じっとしてる時間が過ぎていく。


「さて、あたしゃもう少し掘ってくよ。」

「じゃぁさ?その石炭を少しもらってくよ。あとで集落で火を付けてみよう。本当に燃えるか知りたいんでしょ?」


「ん〜。確かにね。いいよ。持ってきな。」

「ありがとう。ギュギュパニ」


こうして僕とウウダギはそのまま集落へと戻ることにした。

イイオオやパレンケ達は何周か運んでは、集落の中心部分へと砂利と土、石を撒いていっている。


集落へと帰ってきたあとすぐにウウダギは葉っぱを見つけて取り出しては、今日の話しを事細かに書き記していっている。


今日ウウダギへ、話したことは鉱石の種類とそれをどうのようにして精製するかだ。

どんなものが出来上がるのか色々と話している。

ただ、全部ではない。そこまで時間がなかったので、またの機会にやろう。


夜に成り、集落の全員が食事をする時が来た。

ここ最近。皆自分勝手に食事を摂っていたりするんだけど、

一日に一回から二回は大鍋や焼肉を皆で摂っている。


今日は大鍋でパパムイが獲ってきた鹿の様な生き物を食べる事に成っった。

この鹿もどき、角が無い。

だけど鹿っぽい顔立ちと大きい体、

歯をみれば恐らく草食だろうとわかる生き物だ。


捌いた時、見慣れない物が心臓の近くから出てきた。

緑色が濃い石だ。

マカライト。

採掘の場所にも有った鉱石によく似ている。

なぜ体内から出てきたのだろう?


その石を族長に見せると、もう言った。


「族長、獲物からこんなの出てきたよ」

「ん?なんだ?・・・ほう。これは珍しい。これは”ボグ・マグ”と言う物だな。」


「それは何なの?」

「たまに動物の体の中から出てくる事が有る。まぁこれと言って使いみちはないがな、だが、綺麗だろう?装飾としてはとても価値があるものだ」


なるほど。

良くわからないけど石なんだな。

そして胆石みたいなものかもしれない。

緑色ってことで銅成分がカルシウムと固まったのかもしれない。

でも心臓付近で出てくるってのが怖いな。


まぁ、族長の話しによると”当たり”のようなものだそうだ。


「パパムイ。これパパムイが獲ってきた獲物だしさ、パパムイの石で良いよね?」

「ん?別にそんな食えない物は必要ないだろ?それより解体手伝ってくれよ」


パパムイは色気より食い気。

分かってました。


でもあとでパパムイにこの石を加工してギギリカへ贈り物でもしてみろと言ったら素っ気なく、「おお、わかった」と答えて持って戻った。

きっと良いことに成る。


食事が終わったので、戻っているギュギュパニを呼んで石炭の着火実験を始めよう。


「ギュギュパニ。石炭が本当に燃えるかどうか確認しようよ。」

「ん?ああ。そうだね。あたしゃ燃えるとは思ってないけどねw」


ギュギュパニは信じていない感じだな。

確かに石が燃えるっていうのが信じられないだろう。

まぁ、やってみればいい。


食事の時に炊いた焚き火の残りがあるので、そこへとウウダギも連れて三匹でやってきた。


「ギュギュパニ、石炭ってのはさ火が付くまでの温度が高いんだ」

「オンド?熱いってことかい?」


「そうそう。だから本当は焚き火くらいじゃ燃えないかもしれない。でもね。この焚き火ずっとここでやってるでしょ?」

「ああ、そうだね。随分、灰も出てきてるね。薪を取るのに大変なんだよ意外にね。」


「うんうん。それで、この石炭だけど、こうやって小さくするんだ。」


そう言って石と石の間に挟んで叩き割る。


「小さくしてどうするんだい?」

「小さくすると熱が伝わりやすいんだよ。まぁそう思ってくれるといい」


「ふ〜ん。」


あまり理解していないようだけど、できれば、粉にして、松ヤニなんかで固めて豆炭にできればいいんだけどね。


そう思った跡、すぐに見える距離の場所へ石炭を放り込む。

しばらく時間が立ち始める。


「なんだい?やっぱり燃えないじゃないかい」

「まだだよ。ちゃんと熱は伝わってるから大丈夫」


ギュギュパニがそう言ってる間に石炭が赤く薄っすらと衣のような物をまとい始めた。

恐らく中のガスが出始めてるんだ。


見続けること、十分くらいかな?

その間にも僕は薪を追加して熱を多くしている。


「ポンピカ。アレ燃えた」


ウウダギが指を刺している。

そう、目の前の小さい石炭が赤々と光り始めていた。


それをギュギュパニが目にすると、目を大きくして口が開きっぱなしに成っている。


「これで、証明出来たね。」

「ポンピカ。この石熱い。とても熱い」


「そうだよ。ウウダギ。石炭は高い熱を出すんだ。」

「ふ〜ん。これで、コウセキがテツになる?」


ウウダギがそんな事を言った瞬間。

ギュギュパニがハッとなってこっちを向いた。


「もちろん。石炭なら十分火力があるからね。鉄を精製することは可能だよ。」

「うん。わかった」


ウウダギのそっけない返事は何時もの事だけど、

その向こう側で口が開きっぱなしのギュギュパニが面白い。


「と、いうわけだよ。ギュギュパニ。これで、金属を加工出来るアテがみつかったわけだ。」

「・・・つまり、だ・・・あんたは、ここでマガを作り出すってことだね?」


「そうなるね。しかも加工するよ?当面は建材とかを量産できればいいんだけどね」

「・・・建材だけかい?」


「ギュギュパニは武器にするって話が嫌いなんでしょ?僕は鉄の武器は必要ないかもしれないと思ってるよ。」

「必要無い?」


「鉄をつかって、より強固な壁を作れば、ザウスだろうが、プンタだろうがクロデルだろうが、壊せないんだしね。」

「・・・なるほど・・・」


「まぁ、ナイフとかクワとか色々な工具は作るよ。そっちの方がずっと性能がいいからね」

「・・・わかったよ。まぁ、実際にマガが出来るまではあまり考えないでおくことにするよ」


「うん。取り敢えず石炭は見つけた。鉄鉱石も見つけた。石灰岩もみつけた。色々見つけたけど、どうしても作らないといけないものが出てきたんだ。」

「それは何だい?」


「木炭だね。」

「モクタン?さっき話してたやつかい?セキタンで十分だろ?」


「いや、木炭があればより皆が安全に火を取り扱えるように成る。」

「・・・ふ〜ん。」


「だから、明日から少し色々作業を始めるつもり。早速木炭を作らなきゃね。」

「・・・ふん。好きにすればいい。あたしゃ言われたことをやるだけだね」


「うん!お願いするよ。ギュギュパニ!」

「・・・あ、ああ・・・」


ギュギュパニにそれを言って、ウウダギとパパムイ立ちが固まっている場所へと移動した。


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