鉱石掘りと贈り物
「ポンピカどうだった?すごかったろ?」
「うん。まさか、畑が成功してるとは思わなかったよ。」
「あたしもアレ見てからは、やっぱり何でもやって見るものだと思うように成ったわ」
なるほど、それで燻製なのか。
仲間内で良い刺激を与えあっていて居るようでよかった。
「さて、今日は僕もウウダギも疲れてるからね。寝ようかな」
「おう!ハンモックは用意してあるぜ。ウウダギは先に寝てるぞ。しっかしあのハンモックすごいな。集落の皆はもうハンモック生活が当たり前に成ってるぞ。安全だからな。」
そうか。それは良い。
でも力が弱かったり年寄りには木に登るのは辛いだろう?
「族長も?」
「なにいってんだよ!族長が一番気に入ってるんだぜw」
そうなのか・・・へー。
「そうか。ならいいかな。年寄りはそのうち登れなくなるんじゃないかと思ってたから」
「・・・なるほど。確かにそうかもしれないな・・・でも俺等スキクはそうそう登れなくなるなんてことは、ないと思うけどな」
そんなものかな?
まぁ今はこれでいいか。
取り敢えずウウダギはもう夢の中だ。僕も寝よう。
ウウダギが寝ているハンモックへと移動して、
僕は一緒に寝ることにした。
翌朝目が覚めると、ギュギュパニの姿をみた。
ウウダギはまだ寝ている。
昨日は随分疲れたんだろう。
もう少し寝かせてあげよう。
それよりギュギュパニと色々話したい。
「ギュギュパニ。元気だった?」
「ああ、ポンピカか。戻ってきてたのかい。」
「うん。そう言えばさ、パパムイから聞いたんだけど、色んな石を見つけたんだって?」
「ああ!そのことか。もちろんだよ。そりゃ沢山の種類を見つけた。なかには輝く物まであったさ!いやー掘るのがたのしくてねー!はーっはっはっは」
なんていうか、疲れを微塵も見せないギュギュパニの体力どうなってるんだろうって所が一番不思議だった。
「今日は、これからギュギュパニの作業場見せてよ。僕がほしかった石もあるかもしれないでしょ。」
「ああ!その事か!確かに血の味がする石も何種類かみつけたよ。他にも沢山ある。いまから作業場に行くから付いてきな。」
「ウウダギはどうしよう。」
「ウウダギか・・・。おい!パパムイ。起きなっ!」
ギュギュパニが大声でそんなこととを言うと、
パパムイが木のうえからスルスルとおりてくる。
随分眠たそうだ。
「なんだよぉ・・・おれもう少し寝たいんだけど。」
「ウウダギが起きたら一度狩りの途中でもいい。あたしん所に連れてきな。先にあたし等は行ってるからね」
「ああ。わかった。ウウダギが起きたらな」
「ああ、よろしく頼むよ」
「へーへー。」
マダマダ眠いです。とパパムイの顔には書いてあった。
僕とギュギュパニは二匹でギュギュパニが作業している採掘場へと向かった。
集落からは、2時間ほど歩く場所にそれは有る。
森を抜けるとすぐにすり鉢状の地面が段々になってむき出している場所がそれだ。
採掘場。
すごいな。
こんな天然資源がゴロゴロしてる大陸はそうそうないだろう・・・。
もし、他の大陸より恵まれているのならば、外から攻めてくる理由としては十分だろうな。
ここから見てもわかる。
彼処の断層の断面に赤茶けた帯状の層がある。
アレは、サビに似た色合いだ。
間違いなく鉄が取れるだろう。
それに手前の所の浅い断層部分には太い帯状で、真っ白な断層がある。
ありゃどう見ても石灰石だ。
ってか、ここでほぼ取れない鉱物資源無いんじゃないかな?
彼処の金色に似た断層は黄鉄鉱だと思う。
つまり真鍮の材料もあるだろう。
ほら、彼処の緑がかった場所。
ありゃ完全に銅だ。
ってか、何でもあるじゃん。
深く掘れば、もしかしたら金や銀、水銀まで手に入る可能性もある。
そして深い位置にある断層の所には・・・驚いた事に、ありゃアメジストの塊の層があるわ・・・。
宝石も取れるぞこれ。
ってかさ、なんでこんな場所を知っていたのに誰も手を出さなかった?
なんでだろう?
「ギュギュパニ。早速聞きたいんだけど。」
「ん?なんだい?」
「ギュギュパニはどの辺を掘ってるの?」
「う〜ん・・・気分かねぇ?なんかありそうだと思った所を掘る事にしてるからねぇ」
なるほど。
完全に勘だよりか。
「ギュギュパニ取り敢えずだけどさ?」
「おお?何だい急に」
「今ギュギュパニが掘ってる所見せてよ」
「構わないけど?ってかそのために来たんだろ?」
そうだった。
ギュギュパニの後に着いていくと何だか掘り上げられた洞窟の様な場所がある。
ってかこの短い間にどんだけ掘ってんだよ。
めちゃくちゃ硬いはずだよ?鉱石類の地層。
到着した洞窟の中は掘り進められて、10mほど直進で進んだ場所だった。
そこには、石の台があり、卓上に様々な鉱石が置かれている。
「ここだよ。なんかめぼしいもんでもあったかい?」
ギュギュパニがニヤリとしてる。
その理由は知ってるんだ。
パパムイがこの間言ってた。
鉄鉱石が取れたんだと言う話。
多分これだろうと示してるんだ。
僕はそう思って、そこにある鉱石を色々と物色し始めた。
どれもこれも鉱石であることは一目瞭然。
求めていた鉄鉱石もある。
ってか、こんだけの物を見つけてたのか・・・。
関心してしまう。
ザーザースは何にしても基本スペックが高いのかな?
ってか、本当に何でも出来る生き物だな。
「ギュギュパニ。この鉱石は出る所全部分かってる感じ?」
「もちろんだよ。味をみればたいていわかるさ。」
味の部分が微妙にしっくり来ないけど・・・。
それはそれですごい。
「じゃぁ、この採掘だけど、手は必要?」
「う〜ん。こういっちゃーなんだけど、あたしくらいに石に詳しいやつじゃないと務まらないだろ。それに力も体力も必要だしね。」
同感。
でも採掘自体は、ギュギュパニに任せて、他をお願いする必要があるかもしれない。
「なぁ?ポンピカ」
「ん?」
「この石がマガになるんだよね?」
ギュギュパニがてに持っている石。
それは、明らかに鉄が凝縮して固まって、鉱石化してるものだった。
鉄鉱石より鉄の含有量が多いのだろう。
結晶化までしてるように見える。
「その手に持ってる物何だかわかるのかい?」
「・・・掘ってて偶然見つけたんだよ。色と匂い、それから味が”ト”にあったマガとそっくりでね。」
「ご名答。それが鉄だ。そしてこっちの台の上のこの石。これを砕いて高い温度で熱すると、鉄が取れる。つまりその手に持ってるものも同じものだけど、鉄が含まれている量はそっちのほうが多いんだ。そういうものだよ。」
「へー。そーなのかい・・・そりゃすごい。ってかあたしゃ、あれかい?マガを掘り当てちまった・・・そういうことかい?」
「そうなるよ。それ以外にも沢山掘ったね。こっちの赤いのも鉄が含まれてる。それからこっちの緑色。これは銅っていう物が含まれてるんだ。そんで、こっちの金色のが黄鉄鉱。真鍮が取れる。」
「・・・あんた。良くわかるんだね。あたしゃ掘るだけだからさっぱりだけどね。」
まぁ、掘ってる当のザウスは掘る事だけが仕事だと思ってたんだろうね。
まぁ、いいや。これで、鉄のめどが出てきた。
続ければすごいことに成るだろう。
「ねぇ。ギュギュパニ」
「ん?」
手に持っている鉄鉱石を興味深そうに眺めているギュギュパニへ僕は、
ちょっと労いも込めて話をしようと思った。
「少し時間くれないか?」
「なんのだい?」
「いいからさw」
「ん?ああ、別にいいけどね。何するんだい?」
「まぁ見ててよ。」
「?」
ギュギュパニはとても不思議そうに頭を傾げていた。
僕はさっき見たアメジストの断層の場所へと近づく。
そこにはゴロゴロと岩土に巻かれて、いそうなアメジストの原石がゴロゴロしている。
一見ただの馬糞の様なこの石。
割れば、中では、アメジストが結晶化してるんだ。
さっき遠くから断層を見てるときにキラリと光ってたのはこれだろう。
後ろに居るギュギュパニは頭を傾げているばかりだった。
「なぁ?その石どうするんだい?」
「ん?こうするんだよ。」
僕は一抱えもある石の塊を岩へと投げつける。
何度か投げつけると、綺麗に割れて、
中から結晶化しているアメジストが石の内側に連なるように着いているのが見えた。
「!何だい?なんかの卵かい?」
変な表現だけどそう見えなくもない。
「ギュギュパニ。雌は大抵、光り物は好きだろう。これは、アメジストっていう宝石だよ。貴重な石なんだ。」
「へ〜・・・。綺麗だね。」
割れた原石の中、一際曇りも無く綺麗な柱を立てているアメジストを根本から石を使い折る。
そして、それを腰元に持っているウウダギの紐を器用にアメジストへ巻く、
そして首飾りのように作ってわたした。
「・・・なんだい?」
「これはギュギュパニへあげるよ。いい仕事してくれたお礼。」
「・・・」
「なに黙ってるんだよwほら」
そう言って、渡した首飾りをギュギュパニの手から取り、ギュギュパニの首へとかけてやった。
「こうすれば首にかけれるだろ?」
「・・・ああ・・・そうだね・・・」
なんだか、表情が読めないのでわからないけど相当困惑してるようだ。
「何時も、力仕事ばかり任せてごめんね。僕も集落の皆もギュギュパニに感謝してるんだ。こんな物で申し訳ないけど。受け取ってよ。」
「・・・ああ・・・ありがとう・・・」
なんだろうなぁ?
随分声のトーンが落ちてる。
なんか悲しい思い出でもあるのか?
過去似たようなことでなんか酷い思い出も?
あれ?僕やっちゃった感じかな?
「あ・・・もしかして・・・首飾りとかで、いい思い出がなかったり・・・する?」
「!いや!そんなことはない!ないよ!」
急に大きい声を出し始めた。
なんだろう?
でも杞憂するだけですんでよかった。
まぁいいや。
それより、鉱石だ。
ここまで色んな鉱石が出てると成れば、アレもあるはずなんだ。
「ねぇ。ギュギュパニ」
「・・・!ん?なんだい?」
どうやら、首飾りは気に入ってもらったみたいだ。
僕が話し始めるまで首飾りを眺めていたしね。
「この辺に真っ黒で軽い石は出た?」
「真っ黒い?・・・ああ、でたよ。気味悪いから一纏めにしてはあるね。」
真っ黒が気味悪いか・・・。
まぁわからなくない。
でもそれは良い燃料に成るだろう。
僕はその真っ黒い石を纏めてあると言う場所へ案内してもらった。
そこには随分とうずたかく積み上げられた石炭の山があった。
「・・・随分あるね。」
「そりゃね。今掘ってる穴の手前はこの石でイッパイだったんだよ。ただ、こいつらは砕きやすくてね。掘りやすかったよ。」
なるほど。
石炭を手にとって見ると、どうやら木片がここまでになったようだな。
木の外皮のような模様が浮き出ている。
恐らく遠い昔に火山やなにかで、焼けた木々が炭になって、
凝縮して石炭になったんだろう。
・・・ってことは?
こんだけ鉱石が出て、石炭まで出てしまうということは・・・。
この辺りって、もしかして火山帯?
いや・・・恐らくそうだろう。
疑問を持つ理由がない。
鉄鉱石が出てしまうところからも考えて、火山帯なのは間違いないだろう。
それに沼の所には石油まで出てるんだ。
無いはずはなかったね。
「ポンピカ?こりゃ何なんだい?そのニヤケ顔からすると相当なものだね?」
「ああ、これがアレはね。色んなことが出来るんだ。例えば、彼処の鉄鉱石から鉄を取り出す事とかね」
「!それは本当なのかい?」
「うん。使い方を間違わなきゃただの火が付く石ってだけだよ」
「ん?火が付く?」
「そうそう。火が付くんだ。」
「ポンピカ・・・何いってんだい?火が付くわけ無いだろう。石だよ?」
「それが火が付くんだよ。」
「・・・ふーん。」
「まぁ今度やってみよう。それよりも火を付ける元も作らなやだしね。」
「なにか準備しないとダメなのかい?」
「そりゃね。いきなりは火が付かないんだ。まぁ、木炭を作れば何とでも成るよ。」
「モクタン?」
「うん。木を蒸し焼きにすると木炭が出来るんだ。」
「ふ〜ん・・・で?モクタンってなんだい?」
「ん〜?大きな焚き火をするとたまに奥のほうで、黒い炭ができるよね?」
「黒い?・・・ああ、あれか。アレは、慎重に扱わないとまた火が出るんだ。気をつけないとダメだね」
「その黒いのが木炭だよ。」
「なるほど。でもモクタンってのはそうそう作れないだろ?」
「それが作り方があるんだよ。ちゃんと作れば大量に作れて、それだけでも鉄は取れなくもないでも完全に鉄を溶かすことは出来ないからね。石炭が適切なんだ。」
「へー。まぁあたしにはわからないけど、そういうのなのかい?」
「うん。まぁ、鉄・・・マガを加工するには木炭がいいんだけどね。」
「そうかい。まぁ、いいさ。それより、集落の土台の件だけど。あんな感じでいいのかい?」
「うん。十分だと思うけど、もう一つ別に切り分けておいてほしいものが有る。」
「切り分ける?」
「そう。まずは、あそこの白い地層だね。」
「・・・あれは脆いけど、綺麗に切り分けるのは大変だよ?」
「綺麗に切り分けなくていいよ。木炭ができればそれを利用してアレを焼くんだ。するともっと軽い真っ白な塊が出来るんだよ。」
「ふ〜ん。ここでもモクタンかい?」
「そうそう。そしてね。その白い石を砕いて、砂にして土と混ぜて水を掛けると、石より硬い物が出来るんだよ。」
「なんだって!?石より硬いだって?」
「石より硬いってのは、ちょっと大げさかもしれないけどね。でも自分たちが欲しい形を作れるんだ。便利だろ?中身は石だしね。」
「・・・なるほど・・・」
「まぁ、それもやってみよう。ってかその白い石の事を石灰石っていうんだ。あれは石灰っていう名前」
「セッカイ・・・。そんなものがあるんだねぇ」
「うん。それが有れば、集落の建物が全部石作にかわる。」
「石?建物が?・・・それって、ザウスのトでも神殿でしか見たことないよ?」
「神殿って石で出来てるの?」
「そうだよ。昔、プンタの命令で、神殿を作るときは、大勢の石に詳しいザウスが駆り出されたってはなしだ。たしか、石を切り出して、作るって方法だったね。」
「ふ〜ん。流石原始的だね。」
「原始的?どこがだい?未だに石の切り出しができるザウスがいないのにかい?」
「いないの?」
「当時の切り出しができるザウスは、プンタの命令で子を儲けることが禁止されたんだよ。」
「ふ〜ん。随分厄介なはなしだね。」
「なぜ、厄介だと思う?」
「だって、そうでしょ?プンタは意図的に技術の伝承を止めてるんだ。つまり、あまり文明を発展させないようにしてるんだと思うよ。」
「・・・なるほど・・・それは、そうかもしれないね。」
「なんか思い当たるところでも有るの?」
「ああ、そうだね。プンタは、変わる事をひどく嫌うんだよ。そして、あたし達がより繁栄することをあまり良く思っていない節が有るんだ。」
「なんで?」
「それはプンタに聞かないとわからないことだよ。あたしは、似たような命令が過去何回も出されたって話はきいてるんでね。そうかもしれないと思っただけだよ。」
「ふ〜ん・・・。って事は、下手すると僕がこれからやる事はもしかしたらプンタの気分を損ねるね?」
「・・・そうなるね・・・本当に大丈夫かね?」
「まぁ、完成すれば、幾らプンタだろうが、ザウスだろうがクロデルだろうが来てもビクともしない集落が作れるよ。」
「・・・そりゃ・・・すごいねぇ・・・」
「まぁ、そんなに遠い未来の話じゃないから大丈夫さw行ける行ける!」
「・・・そうであってほしいものだね。」
「まぁ、ギュギュパニのおかげでも有るんだ。ありがとうね。」
「・・・ああ、まぁ石は好きだからね。やることはやらせてもらうよ。」
「うん!」
こうして、話をしていると、遠くからパパムイの声が響いた。
「ポンピカ〜。いるか〜?」
「パパムイー!ここー!」
遠くからパパムイの声がするのでそちらの方を見るとウウダギと一緒に歩いているパパムイが居る。
パパムイと一緒にきたウウダギは、僕の姿を見ると一目散に僕のそばへと走り寄ってきた。
走り寄ってくると、すぐに僕に抱きつく。