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娘でした。と、畑


「ねぇ。」

「なによ?」


「ウウダギって雌なの?」

「はぁ?何言ってるの?雌に決まってるじゃない!」


「えぇ・・・」


・・・衝撃の事実が今・・・ってかさ?

ウウダギは”僕”って一人称だけど?


「ウウダギ?雌だったの?」

「雌?知らない」


当のスキクも知り得ない事実だったとは・・・これいかに・・・。

・・・シシブブは動物の見分け方を知っているみたいだし・・・、

それにスキクはウソを付かない。

つまりシシブブの言動はほぼ事実。


そうかぁ。ウウダギ雌だったのかぁ・・・。

一人称が”僕”だからなぁ。

てっきり雄だと思ってた。


どうしよう。

僕、雌っていうか女性との関係なんかわからないんだけど・・・。


「・・・ポンピカ。その顔と話しから察すると、ウウダギが雌なの知らなかったわね?」

「・・・は、はい。知らなかった。ってか見分けつかないからわからなかった。一人称が”僕”だからてっきり雄だとばかり・・・」


「んもー。・・・そんなだとウウダギがバカな雄に成っちゃうじゃない!ちゃんと育てないとダメでしょ!」

「ポンピカ、悪くない!僕が僕って言った。ポンピカ知らない。僕も今知った。」


おおぅ!ウウダギが発言したけど、どうやらウウダギも今知ったみたいだ。

なんだか親子そろって、シシブブに怒られてます。

なんでだろう?


「・・・まぁ、いいわ。あたしにして欲しいのが動物の世話ってことね?」


話しを切り直したね。

流石お姉さん。

なんだかまともなスキクだな。

頼りがいありそう。


「そうだね。まぁ気を取り直して、アンキロの世話をしよう。暫くはシシブブに入り浸ってもらおうかな?シシブブもそっちの方がいいでしょ?」

「そうね。あたしは、集落にいても獲物取れないからね。パパムイの世話に成るのもギギリカに申し訳ないんだけどね。」


・・・やっぱりそうか。

パパムイとギギリカはくっつくか。

僕の願い通りだ。

パパムイは報われないとダメだし。

ギギリカもパパムイが向いてる。


「なるほど。わかった。それで行こう。だけど暫くは、餌の草を集めないとダメだろ?シシブブじゃわかんないんだよね?」

「少しなら出来るけど、アンキロ一匹の分くらいだわ。もし生まれて孵ったとしたら、何匹産まれるかわかんないしね。全部の分をあたし一匹で賄えることはないと思うわよ。」


なるほど。其のとおりだ。

ふむ・・・では、集落の畑作業を早々に開始しないとダメだな。


「ねぇ。アンキロが卵産んで、その卵が孵るまでにはどのくらいかかるとおもう?」

「そうねぇ・・・直接見るのは、初めてだけど、親から聞いた話じゃ、卵は数日以内に産まれるわよ。それが孵るまでに3ヶ月後ね。」


3ヶ月か・・・そうか。わかった。

それなら多分野菜も採れるだろう。

ンダンダに働いてもらうしかないな。


「そうか、それとなんだけどさ?」

「なに?」


「なんでこのアンキロは一匹なのかな?」

「それは多分、番に問題が起きたのよ。じゃなきゃ、離れたりしないものだしね。」


なるほど、やっぱり予想通りだ。

この個体は多分、番が居なく成って不安の中で一匹でも卵を産もうとしてたんだ。

だけど、餌を採るにしても一匹じゃ荷が重くて仕方ないんだ。

卵もすでにお腹の中にはあるだろうしね。


こうして、シシブブと今後の飼育方法に付いて事細かく話すのだった。

結局其の日は、三匹で辺りを警戒しながらの睡眠と成った。

ハンモックは持ってきてなかったけど、

やっぱりアレは持って移動したほうが良いものかもしれない。

いざってときに木の上ですぐに睡眠が取れるのは非常にありがたいんだよね。


夜が明けて、僕とウウダギは集落に戻ることにした。

そして、再度、ケルケオ捕獲の案を実行することにした。


ケルケオは、恐らく巣の場所が特定できれば捕まえることが出来るだろう。

捕獲用の網があれば問題は起きにくい。

力の強いパパムイやギュギュパニがいれば尚更成功率は高まるだろうし、

ってか、ギュギュパニ何してるかな?崖でテンションが上がりまくってるようなこと言ってたよね?

パパムイがさ?


「ポンピカ。僕は私?」


ウウダギが道すがらそんなことをいい始めた。

きっと昨日からそんな事を考えていたんだろう。

シシブブが言っていた事だ。


ウウダギが雌。

そうなると、僕も態度を変えなきゃいけないのかな?

だけど今までが今までだしなぁ。

其のことがウウダギにどんな影響を及ぼすかわからないし・・・。

というか、僕は雌の扱いがわからない。

ギギリカの事もそうだしシシブブは明らかに年上のお姉さんチックで僕は苦手なんだ。


う〜ん。

今までと同じでいいんじゃないかな?

特に問題はなさそうだし・・・甘いのかなぁ?


まぁいいや。


「ウウダギ。僕は今までどおりで構わないさ。別にウウダギが雌だろうが雄だろうが、僕の子供だ。可愛いのには変わんないんだしね!」


そんな事を言うと、ウウダギの顔がパァッ!っと明るくなった気がした。

一瞬だったけどね。

すぐに表情が抜け落ちる。


「わかった。同じにする」


どうやら嬉しかったのかな?

ってかシシブブから離れると、

なぜか僕から離れてちゃんと自分で歩き始めたね。


う〜ん。嫉妬かぁ・・・。

ん?

なんでウウダギが嫉妬してるんだろう?

僕の子供だよ?


まぁ・・・親が取られる気分だったのかな?

よくわかんないや。


やはり徒歩だと半日かかるようだ。

朝早く出発して集落に着いたのが夕方になってしまう。


戻った僕とウウダギを出迎えたのはパパムイとギギリカだ。


「おお!もどったか。で、シシブブはどうだった?」

「シシブブといい雰囲気だったじゃない?あれ?シシブブは?」


どうやらこの二匹は僕とシシブブがくっつくのだろうと考えていたようだ。


「シシブブはアンキロのところに残ったよ。ちょっとお願いもしたからね。それよりンダンダと話したいんだけど・・・ンダンダは?」

「ンダンダか。ちょっと待ってろ呼んでくる。」

「ポンピカもウウダギもちゃんと食べた?なんだか疲れてる顔してるわよ?」


正直、歩きづめで疲れて入るけど・・・。

そう思ってウウダギを見ると、すでにウトウトし始めていた。

この様子は前も見た気がする。

疲れすぎると、ウウダギはこうなる。


「!大変だ!ウウダギにご飯用意しないと!」

「そう思って、干したお肉が完成してるのよ。ウウダギに食べさせてあげて」


ギギリカが一抱えもある薄い肉を背中に隠していたのだろう。

まぁ、若干見えてたけど・・・。


それを僕の目の前に出してきたんだ。


干し肉?

何の肉?それ。

随分大きな獲物が狩れたのかな?


「何の肉?」

「クウォンに決まってるじゃない?あんだけの量よ?」


あんだけの量って言っても僕見てないんだけど?

最後に見たの顔だけだよ?


まぁ、いいけど・・・。

しかし見ると、腐ってない。

変色はしてるけど、変な匂いもしない。

なかなか良く出来た干し肉じゃないかな?

良く作れたね?


「クウォンかぁ。でも良く僕いなくても作れたね?」

「そりゃ、あんだけ一緒に作業したんじゃない。全部覚えたわよ。ちなみにパパムイも作れるわよ。」


パパムイも?凄くないか?

でもパパムイの干し肉は塩っぱそうだね。

何時も塩塩言ってるしね。


「これは?」

「これは、あたしが作ったやつ。パパムイのは日持ちするらしいけど、塩っぱいのよ。」


やっぱりパパムイは塩多めなんだな。


「まぁ、いいや。何よりもウウダギがダウンしちゃってるからね。食べよう」

「そうね。それと、この干し肉、塩抜きしなくても食べれるわよ。」


マジで?なんで?


「へー。どうやったの?」

「まぁ食べてみればわかるわよ。」


なるほど。まぁ食べよう。


「ウウダギ起きてる?」

「うん」


「ご飯たべようね?」

「うん」


ちょっと声に貼りがない。

やっぱり疲れてるようだ。


そう言ってる間に、ギギリカが見慣れない石のナイフを使い綺麗に切り分ける。


「ここ数日見ない間に色々と違うものがあるようだけど?どうしたの?」

「ん?これ?これはクグナをうまく作り直した物らしいわよ。よくわからないけど、獲物を捌くにはとても便利なの。」


「ギュギュパニが?」

「そうそう。何でもポンピカが教えたんでしょ?石と石をこすり合わせるとツルツルになるよって」


教えた。そしてそれは研磨の方法だ。

他の物も研磨できるからね。

そして、研磨技術が進むと新石器時代突入だからね。


「そっか。もしかして獲物を狩る道具とかもこのツルツルを使ってたりするの?」

「うん。そう聞いてる。ギュギュパニはすごいよね。こんな事出来るように成るなんて」


そうだね。

1個教えるとドンドン自分で改良を重ねて、自分なりに進んでいっちゃうんだ。

このスキクやザウス。つまりザーザースはとても賢い。

試行錯誤がとても効率的に行われるのかもしれないなぁ。

文明の進みが早すぎないかな?

まぁ早いに越したことはないんだけどさ。


切り分けられた干し肉を一欠片くちに放り込む。

・・・これ・・・燻製だ。

え?なんで燻製の方法を知ってるんだ?

しっかり火が通ってるし、ある程度水分が抜けてる。

でも、薄くカットすることで柔らかさが残る。


これならある程度、時間が経っても食べることが出来ると思う。

これはすごい。


ギギリカが考えたのかな?


「これ・・・」

「やっぱり気づいたのね。そうよ前、ポンピカがポロッといってたやつよ。」


僕が独り言でいってた事を聞き漏らさなかったのか。

そして実践してみて出来ちゃうなんてすごいな。


「すごいな。燻製も出来るように成ってるのか。」

「クンセイ?そういう方法なの?」


名前も知らないのに良く出来たね?


「うん。木の粉やチップで、燻すと出来るんだ。これはどうやったの?」

「これはね。焚き火の上に干したのそうすると、だんだん色が着いてくるのよ。きっとこれがポンピカが言ってたやつだなーっておもってね。試しに食べてみたら出来てたのw」


いぶりがっこか。

なるほど、たしかに原始的な方法だけど、

要は、そういう事だ。


僕は凄く感動した。

こんな方法をちゃんと見つけることが出来るんだ。

この先ドンドン色んな発見をして集落に取り込んでいくだろう。


感動している途中、ウウダギが食べ終わって睡魔に負けたらしい。

寝てしまった。


「ウウダギ随分疲れたみたいだね。」

「うん。やっぱり小さいスキクの足で半日も歩きづめはダメだったね。」


「半日も歩いたの?休憩は?」

「休憩はしないよ。」


「休憩しないと、大人のスキクでも辛いはずよ?」

「そうなの?シシブブは平気だったよ?」


「シシブブは何だかわからないけど体力が凄くあるのよ。しらなかった?力も強いのよ。」


初めて知った。

そーなのか・・・。


「おーい。ンダンダつれてきたぞー」


ギギリカと話している間にパパムイがンダンダを連れてきてくれた。


「パパムイありがとう。ンダンダにお願いがあるんだ。」

「なんだい?急に呼ばれちゃったけど」


「シシブブの手助けをしてほしいんだよ。」

「シシブブ?なんで?」


「シシブブがさ?今アンキロの世話してるんだよ。アンキロはもうすぐ卵産むらしくてね。産み終わって孵ったらシシブブだけじゃ餌の植物を取り切れないんだってさ」

「ふーん。・・・アンキロってなに?」


「えっと・・・ド・ミヌ・デだっけ?あの尻尾が固くて石みたいなやつ。」

「見たこと無いけど、その動物のは前は知ってる。確か植物が主食だったね?」


「そうそう。だからンダンダにお願いしたいなと」

「わかったよ。構わないよ。最近ギュギュパニに草を取る道具を作ってもらったからね。試してみたかったんだ。」


ギュギュパニすごいな。

何でも作っちゃってないか?


「そうか。なら任せる。場所はわかる?」

「今度教えてよ。それよりポンピカに見てほしいものが有るんだ。きっと驚くよ」


なんだろう?


「いいよ。見に行く。ウウダギはここで休ませて欲しい。ギギリカ見ててくれる?」

「いいわよ。あたしは、もう見たからね。」


「なんだったの?」

「それは自分で見たほうがいいわよ。あたしもビックリした。」

「おう!俺もビックリしたぜ。」


なんだろう?サプライズ的なやつかな?


「ほら、ポンピカ。行こうよ」

「う、うん。まってよ。」


僕はンダンダに連れられて、試作の畑に着いた。

集落の中でやってるから距離はない。


「見てよこれ!すごいだろ!」


畑の中には、真っ直ぐな細い枝が刺さっていて、

その枝に地面から蔓が巻かれている。

そして、その蔓には青々とした葉っぱがもっさりと連なっているんだ。


「え?生育が成功したってことかい?」

「そうだよ!すごいでしょ?これならポンピカや族長の草も育て放題だよ!もう食べ物には困らないだろ?」


流石に驚いたけど、なんでこんなに生育が早いんだろう?


「ねぇ、この草ってさ?何時頃はじめたの?」

「ん〜っと。たしか。この蔓のやつはね。・・・えーっと。ポンピカが死んでたときからだよ。一応それっぽい畑の話はパパムイから聞いてたんでね。面白そうだと思ってやり始めてたんだ。」


ってことは・・・一週間ちょっとか・・・それにしても育つの早すぎだろ。


「この種類ってこんなに育つの早い物なの?」

「この蔓は育つの早いよ。乾季以外のあいだずっと生えては枯れるを繰り返すんだ。そして、枯れる前に花を付けて、種が出来るんだよ」


へー・・・。そんなに早い種類があるのか。

初めて知った。ってかこれも食べれる種類なのか。


「この草って食べれるんだよね?」

「もちろんだよ!ポンピカや族長だってよく食べてるだろ?僕結構取ってきてるはずだよ?」


見覚えがないんだけど?


「そ、そうか・・・見覚え無いんだけど」

「う〜ん・・・ああ!そうか。ちょっとまってて。」


そういってンダンダが一本の蔓の根っこを引き抜く。

するとそこには、芋っぽい小さな塊が着いていた。


なるほど、あの塊は見た記憶がある。

ってかジャガイモ系のやつだ。

頻繁に食べてる。


「ああ、なるほどね。ムイムイか。」

「そう!ムイムイ!なかなかいいでしょ?葉っぱも立派だしね。」


確かに青々としている。

そしてムイムイはジャガイモと比べて水気が多くて、でんぷん質が少ない。

食感がどっちかって言うと、キュウリに近いんだ。


生で食べれるし、何よりジャガイモは青いと毒があるのにたいして、ムイムイは毒が無い。

年中食べれるけど栄養はたいして無いだろう。でも無いよりマシ。

主食となるかと言うとどうだろうと言うレベルだけどさ。


でもこれはすごい発展だ。

だって、いままで農業なんてのは行ってなかったのにンダンダは成功させちゃった。

しかも一発で。


ビックリするしか無いだろう。

そうビックリだ・・・。


「正直ビックリした。本当に驚いたよ。」

「でしょ!へへ。僕もやれば出来るんだ!」


何時になく声が弾けるンダンダが、

ちょっと可愛いお兄ちゃん風に見えちゃう今日この頃。


「ンダンダ?もしだけど」

「なんだい?」


「畑の規模をドンドン大きくしたらどうなる?」

「ん〜。大きくすればそれだけみのりは増えるよね?」


「そうだけど、これを育てるのに一匹でどれだけ育てられるかって話。」

「ああ・・・。多分この畑があと5個位が限界かな。僕なら10個は行けると思うけどね。」


なるほど。つまり一匹で5匹分くらいは単純計算で植物を育てられるのか。

なら家に1個とかの畑を儲けるのもいっけど・・・。

でもやっぱり大きく手広く専門的なスキクが専従したほうがいいかもしれないな。


それにまだ集落の土台が出来てない。

着実に石が積まれているようだし、

その石も最初は大きい物ばかりだったのが、

今じゃ小さい物の他に土砂も混じっている。

つまり地面が固く整地され始めてるんだ。


集落全体がミニョルンの水位以上になればあとは畑を拡張していけばいいだけだしね。

それまではここで少し実験を繰り返そう。


「ンダンダ。ここの畑だけどさ?」

「うん。」


「もう少し増やしていって、ンダンダが管理出来る範囲を絞って欲しい。そして色んな種類の食べれる物を育てはじめてほしいんだ。いいかな?」

「いいよ!でもあまり手がかかるとシシブブの件が疎かに成るよ?」


そうなんだよね。

一番のネックは、距離と時間なんだ。


森の中を一直線に進めれば、きっともっと時間はかからなくなる。

今は、森の木々が邪魔をしている。


道作ろうかな?


でもまずは、3ヶ月後の話しは置いておこう。

本格的にンダンダの協力が必要になるのは、子供が孵ってからだしね。


「まぁ、今のうちはいいさ。それよりも、どの種類がどうやって育つのかを知るほうがいいよ。後で集落が大きくなったときにも役に立つしね。」

「なるほど。わかったよ。畑は僕にまかせて!」


畑がいたくお気に入りのンダンダとわかれて、ウウダギの元へもどった。


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