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夢と病み上がり


「悟、どうだ?調子は」

「ん?あ、じいちゃん。どうしたの?」


「ここん所、田舎に来なかったろ。鈍ってないか見てやろう。」

「ええ〜。やだよー。」


「はっはっは。今日は、じいちゃんに一発でも当てれれば、欲しい物買ってやるぞ?どうだ?」

「マジで?いいの?」


「おお〜。いいぞ〜いいぞ〜。だけどちゃんと当て身ができるかな?」

「もちろんだよ!ちゃんと家でも練習してたんだ!」


「おお〜!それは良い。そうか、じゃぁ悟よ、八卦は良いか?」

「うんっ!八卦良い!」


・・・

あれ?

いま僕何をしてるんだっけ?


なんでじいちゃんが?


ハッ!?

そうだった、僕、転生したんだよ。

なんでじいちゃんが、目の前にいんの?


これ、夢かな?

久しぶりにじいちゃんと手合わせしたな。

相変わらず強かった。

じいちゃん。


元の世界でも元気にしててくれると嬉しいな。


・・・いやいや、そんな場合じゃないだろ!

ウウダギ。そうだよ!ウウダギがワニに襲われたんだ!


ウウダギ!


・・・

目が覚めたようだ。

僕は、天井を見ている。

仰向けだ。


どうなった?

何がどうなったんだろう?


今一思い出せない。

確か、ワニにウウダギが投げ飛ばされて、ついカッとなってそれから・・・。


!あっ!そうだっ!

ウウダギ!ウウダギは大丈夫?


急いで、起き上がろうとしたけど、体に力が入らない。

辛うじて、首だけが、痛みに抗い、動く程度だ。


足の先の方へと目をやる。


僕の足元に巨大なワニが仰向けになり目や鼻、口から血を流し、息をしてない。

誰かが倒してくれたのかな・・・。


それにしてもデカイなぁ。

こんなデカイワニを倒すんだ。

ギュギュパニがやったんだろう。

きっと冷静に慣れたのかな?

それなら良いんだけどね。


はぁ〜。


僕は、そのまま頭の方へと、顔を向ける。

ワニとは反対側の避難所の隅に皆が固まってる。

ギュギュパニも居る。

パパムイもギギリカも族長も無事。

他の誰もが無事だ。

ウウダギは、どうやらまだ気を失っているようだ。

ギギリカが抱きかかえてる。

でも、ギギリカの事だ。

きっとウウダギは大丈夫なはず。


僕は、皆に起こしてもらおうと、呼ぼうとした。

でも声を出す力がない。


凄く、だるいんだ。

痛みも酷い。

体へ目をやると、随分ひどいことに成ってた。


手足の爪は全部剥がれて、何処かに行ってる。

右腕は曲がっちゃいけない方に曲がってる。

こりゃ骨折してるな。

足にはケガはない。だけど一番筋肉が痛む。

全然力が入んないんだ。


お腹周りは、若干見えづらい。

でも首の辺まで、様子を伺うと、無事である事がわかった。


どうやら、食われたりしなかったようだ。

なんとか無事で居られる。


ちょっと、休憩が欲しい。

なんだか随分と疲労が酷いんだ・・・

でもウウダギが無事ならいいか・・・。


皆、ちょっと僕寝るよ。

また、僕は闇へと落ちていく。

早く回復しなきゃね・・・Zzzzz。


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「おい!起きろよ!おい!」


なんか声がする。


「大丈夫か?ポンピカ!おい!起きろって!」


パパムイかぁ・・・僕眠いんだ。

体が疲れてるんだよ。

もう少し寝かせてくれないかなぁ?


「ウウダギが悲しがってるんだ、早く起きてくれ」


ウウダギ!

そうだ、ウウダギ!


パパムイの声で、僕は目を覚ました。

天井を見上げている。

仰向けで寝ていたようだ。


仰向けかぁ、しばらくぶりかな?

スキクは尻尾が邪魔して、仰向けに寝れないんだよね。


「おい!ポンピカ!・・・起きれるか?大丈夫か?」

「ああ、パパムイ。ごめん随分寝てたっぽい。」


「体動くか?」

「ん〜。まだちょっと鈍いかな。起きれると思うけど」


「じゃぁ、起きてくれ。」

「ん?いいけど・・・」


「ウウダギを安心させてやって欲しい。随分落ち込んでるようなんだ」


それは、一大事だ。

早くウウダギに会わなきゃ。


僕はパパムイに手伝ってもらいながら体を起こす。

立ち上がると、すぐに尻もちをついてしまった。

バランスが今一取れない。


「ん〜?なんでだろう?」

「どうしたんだ?」


「なんか、バランスが悪い」

「あ〜。そりゃしかたねーだろ?クウォンに尻尾食われちまったんだしな」


そう言えばそうだった。

パパムイに言われるまで気が付かなかった。


尻尾が有った場所を見てみると、

何だか、バッツリ綺麗に尻尾が切り落ちている。

血はでてない。

切れた痕は、何だか黄色くて濁ったような塊で塞がっている。

道理で痛くないわけだ。


・・・そのうち生えてくるかな?

トカゲだし。


それに曲がったはずの腕も戻ってる・・・誰かが処置してくれたのかな?

っていうか骨折ってそう簡単に治ったっけ?


「ポンピカ。もういいか?外にウウダギが居るんだ。」


はぁ?外?

そう思って、僕は周りを見渡す。

すでに避難所には僕とパパムイ以外居ない。

どういう事だ?

ミニョルンは?あれ?

僕どんくらい眠ってた?


「ちょ・・・待ってよ。僕どんくらい寝てたの?」

「ん?そうだな、一週間は寝てたぞ。」


えええええ!

大事件じゃないか!

ミニョルンは?うまく切り抜けたのか?

それより、ワニは?

避難所の壁に穴が開いてるのはわかる。

外が明るい。


「・・・まぁいいか。」

「歩けるか?」


「今一、足に力が入らないな・・・肩かしてくれないか?」

「おう!任せろ!」


パパムイの肩をかりながら、避難所の外へと向かう。

避難所の入り口を超えると、生暖かく、清々しい緑の匂いと、

鼻が十分に湿る程の湿気が漂ってきた。

実に生きた心地がする。

気持ちが良い。

天気は晴れ、どうやら雨季を超えたらしい。


そうなると収穫の時期がもうすぐやってくる頃合いだな。


「ポンピカ!」

「オフゥッ!」ドン!


ウウダギが僕目掛けて突進してきた。

胸辺りに頭突きアタックだ。

流石に病み上がりじゃ受け止めれない。

なすがままに後ろへ倒れてしまった。


「ポンピカ!ポンピカ!」


ウウダギが泣いている。

僕の胸にしがみついてだ。

スキクは基本泣かない。

涙腺があまり発達してないようで、

悲しかったり痛かったりしても涙を出さないんだけど、

ウウダギは涙を流している。


なんか申し訳無い。


「ゲホッ!ゲホッ!・・・ウウダギどうしたんだ?」

「ポンピカが死んじゃった!」


死んでません。

ちゃんと生きてるから大丈夫。


「死んでないよ。生きてるから大丈夫だよ。」

「うぅぅぅ。ポンピカ、死んだ!」


いや、死んでません。

力が入んないだけだからね。

だから、ちょっとどいてくれるかな?


「大丈夫。死んでないよ。ちゃんと生きてるから泣かないで?ね?」

「うぅぅぅ。うん」グスンッ。


泣き止んでくれた。

素直でとてもいい子だ。

ってか、ウウダギは大丈夫だったのかな?

頭から放り投げられただろ?


「ウウダギこそ大丈夫だったの?」

「大丈夫。元気」


急に片言になるって・・・。

まぁ、良いけど。


「そうか。ウウダギの元気な姿見たら急にお腹減っちゃったよ。なんか食べ物ないかな?」

「おう!有るぞ!とっておきだぜ!」


なんかパパムイが元気過ぎる気がする。

でも一週間寝てたんだ。流石にはらがへった。


もしかしたら、寝てる間、仮死状態だったのかもしれないな、

一週間も飲まず食わずで寝てるだけだったんだ。

普通なら死んでても可怪しくない。


ウウダギが僕の事を死んだといったのは、

もしかしたらそういう意味だったのかもな、

ウウダギはよっぽど心配してたんだろう。

未だに僕から離れない。

だけど会話がそっけない。

面白い子だなぁ。


僕が其の場に座っていると、

パパムイとギギリカがなんかデカくて白い肉を持ってきた。

流石にデカすぎだろ?

なんか良い獲物でも獲れたのかな?


「パパムイ。凄い大きい肉だけど?」

「ん?そうだな。でもこんなのまだ少しだぜ?」

「そうよ。ここん所、皆これ食べてるのに減らないのよ」


これで少しなの?

一抱えもあるよ?

え?大きい牛でも倒したのかな?

でも牛の肉は赤い、

白いってことは?

魚かな?


「へー。なんの肉?」

「んぁ?なんだ?わかんないのか?クウォンだ。」

「そうよ。クウォン。」


「クウォンってあのワニの?へー。凄いね。」

「おう!クウォンは美味いぞ!焼いて、塩かけると凄い!」

「あたしは、やっぱり、果物と一緒がいいかな〜」


「いやいや。やっぱり肉には塩だろ?」

「そうかな〜?お肉に甘い果物を塗ると柔らかくなるよ?」


「柔らかいって、年寄りじゃ無いぞ?俺」

「味も美味しくなるのよ?」


「・・・ギギリカが言ってるのは、気にしなくていいからな。雄なら塩一択だ!」

「ちょっと!ポンピカは葉っぱと一緒に食べるのよ?果物と一緒が言いに決まってるじゃない!」


「まぁまぁ、二匹共、其のへんで・・・それより、一週間もそのままなのか?」

「それがよ。この肉、腐らないみたいなんだ」

「そうなの、日が経ってるのにくさらないの。不思議よね」


「へー。すごいな〜。で?やっぱり焼いてくれるの?」

「おう!もちろんだ。焼かないと、ツーンと臭うんだ」

「そうね、少し臭いかもしれない。」


「ふ〜ん。」


そんなこんなで、パパムイが焚き火を炊いて、

平らな薄い石を用意する。


「あれ?この石どうするの?」

「おう!よく聞いてくれたな!こうやるんだ」


パパムイは、焚き火の周りに石を起き、

その石の上に平らな石を乗せる。

見事に鉄板ならぬ石版って所だな。


「凄いね。石版焼きか。よく思いついたね。」

「思いついたのは、ギギリカだぜ。っな!」

「へへ〜ん。凄いでしょ」


「うん。凄い凄い。これなら焼肉できるじゃん」

「「ヤキニク?」」


「うん。タレに漬け込んだ肉を薄く切って、それを石版のうえで、焼くんだ」

「・・・タレってなんだ?美味そうだな」

「ちょっと・・・この方法知ってる風な感じね?」


「うん。知ってる。そのうちやろうと思ってたんだw」

「へー。やっぱ、ポンピカだな」

「んもー。あたしが見つけたのにぃ〜」


こうして、パパムイとギギリカ、ウウダギと僕、いつもの四匹で、肉を食べる。

実際、なかなか美味かった。

焼く時に石版の上へ直に置くので、

少し焦げた部分が石版に残ったりするので、残念なところも有るけどね。


ワニの味は、鳥肉とあまり変わらない。

鶏肉の胸って言えばいいかな?

随分脂肪がないんだ。


ただ、一週間も何も食べなかったせいで、随分お腹が空いてたのかな?

凄く美味しく感じる。

パパムイとギギリカがいってた、臭いについてだけど、最初のほうは感じなかった。

でも食べ進めていると、少し、違和感として感じるように成る。


其の臭いには覚えが有るんだ。

アンモニア

そう、アンモニア臭がする。

流石に鼻が曲がる程じゃないけど、

これさえなきゃなぁと思うほどには臭う。


食事を摂って、一段落だ。

ウウダギはずっと僕にひっついたままだし、

動くにしても動けない。

食べる時も僕が食べさせてあげるほどだ。

ウウダギの執着心を見た気がする。

でも返事はそっけない。

そこが良い。


しかし、凄いなぁ。

あのワニを殺せたんだな。

ギュギュパニがやったのかな?

もしかしてパパムイ?

皆でやったのか?


「それにしても、良くワニを殺せたね?やっぱりギュギュパニが?それともパパムイだったとか?」

「えっ?何言ってんだ?」

「ポンピカ?頭でも打った?」


なんか凄く変な目で見られてる。

ウウダギまで、口をポカーンと開いて僕を見ている。

なんか変なこと言ったのかな?


「えっ?なに?もしかして、皆で倒したの?・・・そうだよね。あんなに大きかったんだし、皆でやれば勝てそうだしね。流石だなぁ〜。凄い!」

「・・・おい、ポンピカ?」

「ねぇ・・・覚えてないの?」


何だか、変な雰囲気なんだけど・・・。

何だろう?


「ポンピカが倒した。」


はぁ?

ウウダギが、そっけなくそう言う。

ビックリ発言であった。

僕は倒してません。

意識なかったんだしね。


「なぁ、本当に覚えてないのか?」

「ごめん。全ッ然覚えてない。ってか、気がついた時には、もう死んでただろ?」

「なるほど、ポンピカはもしかしたらギャ・ジャ・ズーだったのかもしれないわ」


ギギリカからとんでもない事言われた。

でも、そうかもしれない。

あの時意識が遠のく瞬間、気分が変に晴れやかになったりしてたしな。

ギャ・ジャ・ズーってあんな感じなのかな?


そうか、僕がやったのかぁ。

それで、動けなくなったのか?

覚えてないけどなぁ・・・。

どうやったんだろ?二匹とも覚えてないかな?


「あのさ?僕どうやってワニ倒した?」

「ん?・・・ん〜?なんていうかぁ・・・凄かったとしかいえねーな」

「そうね。なんていうか、わかんないけど、凄い光景だったわよ。」


なんだか、抽象的で良くわからない。

取り敢えず凄いと言ってるだけだろう?

凄いってなんだよ・・・。

まぁ、詳しくはわからないかな。


「ハッケヨイ!ハッケヨイ! ポンピカ!ハッケヨイ!」


ウウダギが突然はしゃぎだした。

ちょっと唐突過ぎてビックリしちゃった。

でもハッケヨイって・・・あれ?夢でじいちゃんと稽古したっけ?

まさか・・・。


「そうよ!それ!ハッケヨイ!ってポンピカ言ってたわ!」

「そうそう、それだ。ハッケヨイだ。確かそんな事を叫んでた」


二匹ともそこだけしか覚えてなかったの?

ウウダギは、気を失ってたんじゃないの?


「ウウダギは覚えてるの?」

「見てない!でも聞こえた。ハッケヨイ!」


そうか。なんとなくだけどわかった。

そうか、じいちゃんとの稽古どおりに動いてたのかもしれないな。


なんだかんだいって、体に・・・いや、此の場合は心に染み付いてたって事だろう。

なんだかじいちゃんに助けられた気分だ。


「そうか。八卦良いか。」

「なぁ?ポンピカ。そのハッケヨイってなんだ?」

「あたしも聞きたかったなにそれ?」


「ん〜?そうだな、多分、八卦が良いっていう事なんだけど。」

「ハッケってなんだ?」

「ハッケ?」


「えっとねぇ〜・・・どう言えばいいだろう。八卦が良いっていうのは、”勝負をする良い機会だ”っていう意味だね。」

「へー。なるほど、ハッケヨイか・・・面白いな」

「ハッケヨイねぇ〜。響きが面白いわ」

「ハッケヨイ!ハッケヨイ!」


ウウダギはとても気に入ったみたい。

ならヨシ!

問題ないな。


「他にも意味が有るんだけど、今の僕の状態じゃ説明できないかな。」

「そうなのか?」

「へー。どんな事なんだろ?」

「ハッケヨイ!ハッケヨイ!」


もうウウダギが止まらない。

そんなに気に入ったのかな?

ウウダギのはしゃぎっぷりが凄いからなにも言わないよ。

可愛い。


ウウダギが無事でよかったよ。

そうだ、他の皆は無事なのかな?


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