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問題を解決するべく、一匹旅


僕が住んでいる”ギ”(集落)は、ジャングルの真っ只中に有る。

集落を一歩出ればそこは鬱蒼と茂ったシダ植物や細く高い木々など様々な種類の植物が生息している。


気温も常に高く、湿度も十分なほど有る。

そのため、ジメジメするのが当たり前なんだ。

だけど、スキクである僕は、そのジメジメが心地いい。

むしろジメジメしないと、快適とは言えないんだ。


今、僕は一匹で集落からしばらく離れた場所へと来ている。

”問題”を解決するべくここまで来ているんだけど、目的地までは、あと数日歩くだろう。


今いる場所までは、歩いて大体3日かかってるはず。

時計とか無いし、日が昇り日が沈むという事だけでしか日を数えることができない。


食料は、其のへんの昆虫を見つけてば齧る感じだし、

木の実もスキクは食べるのでありがたく頂いている。


水もそこら辺に生えている木に巻き付くように太い蔓が巻かれていて、

この蔓を切ればコップ一杯分位の水が出てくる。


まぁ食料や水に関しては、意外に不自由はない。


だけど、寝る場所。

これだけはどうしようか毎回悩む。


通常スキクは、地べたに寝転がって寝るんだけど、ジャングルってのは思いの外危険なんだ。

前世では熱病とか蚊とかの被害でヤバイってTVではやってたけど、スキクは其のへんへっちゃらみたい。

多分、耐性みたいのが在るんだと思う。

だけど、野宿となると、地べたは本当に危険。


一番危険なのは、やはり動物だろう。

前世のジャングルでもココまで、凶暴な動物がゴロゴロいるということは聞いたことがない。


そう、とても危険な相手は、やはり夜行性や昼行性問わず、動物がヤバイ。

何も手にもたない状態で、動物と対峙すると、多分僕は生きていけないんだと思う。


スキクは器用で、素早く、そして、頭も良い。

だけど、力が弱く、鱗が有ってもこのジャングルの動物は当たり前のように鱗を貫通する牙を持っている。爪も当たれば、傷が残る。


困ったことに、傷が大きければそれだけ、化膿してしまう確立が多いようで、転生チート小説なんかの定番のポーションなんて言う薬も無い。

それに、薬草と言っても熱冷ましとか、化膿防止とかそんな程度で、治る様な植物も無い。


なので、僕らスキクは傷つくと大概、大事になる。

それほど、動物の視点から見ても虚弱な生き物ということだと思う。


だけど、それをどうにかしないと、生き残れない。

まぁ、少し話がそれちゃったけど、結局の所、木の上がどちらかと言えば安全に過ごせる確立が高いということに成る。


木の上・・・そこに自分が寝るスペースを作らなきゃ成らないんだ。

それが結構重労働で、半日歩いたら周りからその日の夜の寝る場所を確保する作業に移らないと間に合わないわけ。


毎回悩むのは、どうにかして楽できないかなぁ〜?ってことなんです。


例えば、テントみたいなもの・・・いや、此の場合はハンモックみたいなものだけでも有れば、十分なんだけど・・・


『あンモッぐがぁ・・・』


前世の人間が聞いたらこんな風に聞こえただろう・・・「ハンモックか・・・」と言ったんだけど。

僕は一匹の時は、やはり前世の言葉が出てしまう。


このスキクという生き物は声帯は備わっているが、舌の動きがとても拙い上にあまり複雑な言葉を出すことができない。

なので、前世の日本語を口にしようとしても旨く出せないという始末なんだ。

それでも、前世の記憶はしっかりと残ってるので、ついつい日本語で独り言を喋ってしまう時が在る。


一匹での生活は思いの外、独り言が増えるんだなぁと実感してしまう事がある。


まぁ、そんな事言ってても始まらない。

今日は、もう少し進んだら寝床作りを始めよう。


でも、ハンモックか、それが木の上で旨く機能するなら、集落の皆も遠出する時楽だろうと思う。

そうだな、この際だから、今在るものだけで作れないかチャレンジしても良さそうだな。


一度手元の物を整理してみようかな。


「えっと、何が入ってたっけ?」


僕は背負いの革袋の中から其の場に広げてみた。

まずは、ナイフ(クグナ)に大きな革、乾いた板、火起こしの棒。

それと、小さな革袋に入った乾いた木のクズ。


う〜ん・・・こう見ると、食料周りが入ってない事に感謝したいな。

随分と簡素な物しか入ってない。


半分以上、火を起こす道具だな・・・

これをもしコンパクトにまとめて、作ることができれば、とても容量が空くし楽だ。


火か。

スキクは基本食べ物に火を通さない。

火を通すのは、日にちの経ったクズ肉にしか使わないんだ。

だけど、僕らスキクは、なんと言っても変温動物。


そう、変温動物なんです。

つまり、万が一。気温が下がった場合、自分で体温を調節できなくなってしまい。

意識が無くなって其の場に倒れてしまう。らしいです。


実際に其のような状態には成ったこと無いのでどんな事なのか分からないんだけど、どうもそういう物だと教わった。

なので、この火起こしの道具というのは、命綱というか保険という意味合いが強い。

だけど、背負袋の中身が圧迫されるのはとても困るんです。


んー・・・。

あとは、今手に持っている槍もどきと背負っている小さい弓、それから10本位しか無いけど、石の鏃がついている矢と矢筒。


こう見ると、結構な重量なんだ。

やっぱり火起こしの道具がネックだなぁ。

食べ物は全部、生で食べる習慣があるしなぁ。


族長はなんでこの背負い袋を持ってけって言ったんだろ?

困ったなぁ。


ハンモック、ハンモック・・・この背負い袋・・・思いの外大きいよね?

木に吊るして其の中に入るってのは・・・?

流石にそこまで大きくないか、片足を入れて腰まで袋を持ち上げると僕の尻尾が邪魔をして上がらない。


う〜ん・・・木の上でうつ伏せに寝れる様なハンモックを此の場では作ることができない。

取り敢えず、今回の件が終わったら集落で作ってみようかな?


そうと決まれば、今日はいつもどおりに寝床を作ろう。

僕はそのままその日の寝床の材料を集め、問題なく就寝に就くことが出来た。


次の日は、遅く起きた僕は空の様子を見て、訝しんだ。

だって、妙に発達した雲が遠くに浮かんでるんだ。


う〜ん。ありゃ積乱雲ってやつだなぁ〜。


一雨来ちゃうかもしれない。

雨が降ると、今度こそ寝床に困るんだ。


ここはジャングル。

完全に熱帯雨林だと思う。

そうなると、やはりスコールが怖い。

雨が降り始めると、いっときの間にすごい量の雨が降るんだ。

それも半端ない量が。

去年の今頃は、生まれたてでやっと一人で歩き回れるように成った頃だと言うのにメチャクチャ降ったんだ。


そして、其の結果、集落は何処も床下浸水が毎日続いた。

一時的に物凄い量の雨が降ると、地面が水を吸収できなくなるのか、集落の中が川のように成ってしまった。

なので、しばらくの間、上げ底式の木で出来た屋根の有る集会場の様な場所に集落の者が集まり、水が引くまで凌いだんだ。


そう考えると、これはとても先に進むことが出来ない。

此のまま先に進んで、最終的に木の上でも雨を凌がなければ成らなく成る。

そうなると、食料の問題が出てしまうし、何より先に進めない。


木の上を進むわけにもいかないし。

やっぱり、下準備が必要だったかな?

ここは一度戻って、機会を待ったほうが良さそうだ。


こうして、素直に集落への帰路へと向かった。


まぁ、今回の”問題”の期限は無いみたいだし、どうせ他の集落や外の者が放り出した案件だし、期待はされていないだろう。

でも此の”問題”は多分良い機会になるんじゃないかな?

誰も解決出来なかった問題をスキクの集落が解決したと成れば、外への発言にも力が着くだろうし、そうすると、集落の繁栄にも大きく貢献出来るということだし。

だから、僕は必ず解決したいと思っている。



帰路に着いた翌日。

懸念していたとおり、やはり雨が降ったりやんだりを始めた。

この降り方はスコールの前触れ、シトシトと降っているけど、気温もあってか、すごく蒸す。


地面は、まだぬかるんでないから歩くのには問題なさそうだ。

取り敢えず少し急いで集落へと向かおう。


本降りになったら泳ぎでもしない限り先に進めなくなる。



集落まで後一日の所で、本降りに成った。

僕はとても困った状態にある。


というのも、此のまま集落へ帰っても僕の分の食料が無いだろう。

失念していたんだ。


雨よけの集会場には、倉庫が併設されていて、

族長の号令で集落全員で一ヶ月は続くスコールをやり過ごすために、

日持ちのする木の実などを倉庫に集める。


つまり、今の状況では、僕が帰っても僕自身の食料がないんだ。

困った。餓死だけはしたくない。


う〜ん。

困ったなぁ・・・。


僕は今、土砂降りの雨の中木の上に美味いこと大きな葉っぱを屋根代わりにしてスコールが止むのを待っている。


既に、木の根元の辺は僕の腰くらいまでの量の川と化しているし・・・やっぱり、何とかここで食料を調達しながら打開策を模索しようか。


・・・船でも有れば、集落まで漕いでいけそうだし、そうなれば、集落と連絡も取れる。そして、連絡が取れれば、食料と言わずともなにか解決策も聞けるかもしれない。


船かぁ・・・

僕は木で出来た船を思い浮かべたがこれを作るには、それはもう時間がかかる。

しかしなぁ、木の船は現実的じゃないな、事この場では駄作だろうし・・・


そうなると、筏もダメだ。

となると、泥舟?

なわけにはいかないし・・・


考えていた僕はふと、屋根代わりにしている大きな葉っぱに目が止まる。

・・・まさかなぁ〜?


この葉っぱは、水はけが非常に良くて軽い、そして何より、丈夫な葉っぱなんだ。

だって、この葉っぱを取る為にクグナで根本をガッツリ叩き折らないと取れないんだから・・・


此の葉っぱと今手元に有る物を使えば・・・船っぽい物作れないかな?

・・・スコールがやんだら、一度試してみようかな?


前世でお盆の時期に田舎のじいちゃんの家に言った時。

たしか、川に流す用の葉っぱ船を作ったんだ。

じいちゃんは何枚もの葉っぱを組み合わせてでっかい宝船まで作ったけど、僕はロウソクが一個乗るくらいのやつしか作れなかった。


葉っぱ船ならイケるかもしれない。

この葉っぱを何枚か組み合わせれば僕一人が乗る位の船なら・・・

少し、希望が持ててきた。


よし、スコールが止むのを待とう。



スコールっていうのは、本当に不思議だ。

ほんの今さっきまで降っていた雨が次の瞬間には空が青天に切り替わり、カラッとするんだ。

だけど、今現在、地面の方は、濁流とまでは言わないが、落ち葉や乾いて軽くなった木なんかがゆっくりと、流れている様子が伺える。


・・・あの浮いてる木も使えるんじゃないかな?

うん。そうだよ。

森には一杯使える物が大量に有るじゃないか!


そうだ、この葉っぱだって、使い用なんだし、なんだって使えばいいんだ。

よし!そうと決まれば、早速作業に入ろう!


僕は、四苦八苦しながらだったが、何とか大きな葉っぱを5枚ほど集めることに成功した。

これだけ有れば、十分な笹舟が作れそうだ。


しばらく、作業を続ける。

お腹が減ったら木の上に成っている実を食べて我慢した。

気がつくと、夜が更けてきた。

木の上の枝と枝の間に渡す形で、随分と大きくなってしまったが、船と見れそうな笹舟と言えなくもない物を完成させることに成功しました。


形は、笹舟とほぼ同じだけど、端と端をつなげるため、持っていた槍もどきに引っ掛けて反りを出してみた。

中に浸水してきた場合を考慮して、袋に入っていた何に使うかわからない毛皮を敷いた。

取り敢えず形にはなったかな?


明日は、これを早速浮かべて見よう。

そう思って、そのまま就寝に着く。


夜が明けると、また、遠くの方で、積乱雲が立ち上がっているのを見て取れた。

もし、このままこの船を浮かべ船で集落を目指すとしても途中でまたスコールに出会ってしまう。


昨日のスコールは、雨の量がすごく、風はそれほどでもなかった。

でも、スコールが本番に成れば、この笹舟は吹き飛ばされてしまうだろう。

吹き飛ばされない為にはどうすればいいだろうか・・・


というのも、この笹舟、非力なスキクの腕でも軽く持ち上げることが出来るほどの重量なんだ。

だって、葉っぱ5枚しか使ってないし、何か重りのように成るようなものも無い。


どうしようかな?

木の上は下より風は強く吹くし、この笹舟が木の上にあるのはどっちにしてもまずそうだな。

やっぱり、下に下ろして一度浮かべよう。

その上で、紐か何か有ればいいんだけど・・・紐かぁ・・・。


僕は紐で思い浮かぶのは、水を出す蔓だ、アレの表皮は縄の代わりになる。

集落でも表皮を使って紐代わりに色々と加工しているわけだし。


そうだな。紐があれば他にも色々と使い勝手がいいかもしれない。

笹舟の反りを出すために使っている槍もどきも船の底に持ってきて置けば、少しは重りの役割をするんじゃないだろうか?

紐があれば反りを作っている槍もどきの代わりにも成るだろうし。

そうだ、紐を作ろう。


まだ、スコールが来るまで時間はありそうだし。

紐くらいなら今いる木の上からでも採れる。


こうして、僕は何本もの蔓の表皮を採取した。そして、三つ編みにして、一本の縄を作った。


もっと早く紐を作っておけばよかった。

紐があれば他にも色々と使いまわしが出来たはずだ。


次からは、積極的に紐を作っておこう。

さて、笹舟を水面へと下ろそう。

此の時も紐が大活躍だった。


スルスルと下へ降りていく笹舟。

浮かぶかな?

ちゃんと浮かんでほしいな〜。


笹舟が水面へ到着。


浸水しちゃうかな?

大丈夫かな?


浸水は今の所していないみたい。

次は、僕が乗っても大丈夫かな?キッチリ重心を確認しないと転覆しちゃうかもしれない。


そろ〜りとゆらゆらと浮かぶ笹舟に足を乗っける。

乗っける場所には毛皮が敷いてあるから足の爪で笹舟を引っ掻いたりしない。


・・・うん。大丈夫そうだ。

だけど、バランスがとても取りづらい。

前後は気を使わなくてもいいのは、ありがたいけど、気を抜くと左右何方かに転覆しそう。


どうすればいいんだろ?

僕がそんな事を考えていると、遠くの方でザァーっと言う音が響いてきた。

心なしか、風も強くなっている。


マズイかもしれない。此のまま笹舟にいればバランスを崩して間違いなく転覆する。

だけど、浮かべちゃったし引き上げるのは問題ない。

でも風が問題なんだ。


紐・・・そうだ、紐で笹舟を固定すればいいかもしれない。

紐はかなり丈夫だし、ちぎれることはないだろう。

幸い笹舟は軽い。

ならば、笹舟を木の幹に立てかける状態にして紐で固定しよう。

勿論風が当たっても抵抗を生み出さないように反りを外側にしてっと。


よし!これで様子を見よう!

これができれば、スコールが過ぎ去ったあとすぐに移動を始めることが出来る。

僕がそう思い、木の上に上がる前にスコールがやって来た。

おかげで、僕は激しい雨と横からぶつかるように吹く風に煽られて散々な目にあってしまったけど。



スコールが過ぎたあとすぐに船の確認をした。

船は無事だった。


ただ、船は風にはやはり強くなかったみたいで、木の幹にペッタリと張り付くようにしていた。

また紐を作って、修理しないといけなくなったのだ。


だけど、このお陰で、船をスコールからやり過ごす方法がわかった。

船を木の幹に巻きつけて、紐で全体をグルグルと巻いておけば、物が当たらなければ風や雨に耐える事が可能だ。


さて、そうと決まれば修理をしよう。

一日費やしたけど、明日には動ける。

これで何とか集落へ向える。



次の日、スコールを無事乗り切ると、早速船を展開して乗り込む。

相変わらずバランスが怖い。


長くて地面に届く木の棒でも有れば楽なんだけどなぁ

と、思ったら周りの木々に漂流して引っかかっている長い枝が沢山有るのに気がついた。早速使わせてもらおう。


しばらく、地面を押す形で、集落を目指し始めた。

天気を気にしながらだったけど、歩くよりは随分と速い。


船を押していてわかったことが有る。

水の流れには逆らわないほうがいい。


あと、押している間に流れている枝なんかをかき集め船の横に転覆防止ように羽のように細工をしたらバランスが幾分取りやすく成った。

ただ、其の分重くは成ったけど、十分浮いている。


これならもう少しスピードが出せそう。


木々が意外に邪魔で、ひっきりなしに切り返しながら先に進んでいる。

そろそろ夜だ、でも水が引かないし、此の状態なら動物も来ないだろう。


船の中で睡眠が取れるんじゃないかな?

そんな考えが浮かんだらやるしか無いかな?と思ってしまった。


ということで、辺りは真っ暗ですが、

幸いスキクは月明かり程度の光量があると、

とても周りが明るく見えるので、

特に問題無く夜を過ごすことに成功出来た。


久しぶりに熟睡しちゃった。


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