運動とお稽古
翌朝、ズズナドとデデンゴが起き上がっていた。
周りの4匹のスキクも随分落ち着いている。
ギャ・ジャ・ズーの影響が弱まったみたいだな。
多分この避難所が風や雨を十分防ぐ事が出来ると理解したのかもしれない。
実際音はそこそこするけど、水は一切入ってこない。
恐らく外は完全に川になっているだろう。
凄い量の雨が降っている音が絶えずしているんだ。
まぁ、3日目にも成れば慣れるというものだろう。
集会場よりも音が小さいし、振動も少ない。
雨だって雨漏りもしないんだ。
安心感を得るには十分だろう。
「ポンピカ、起きたか?飯どおする?最近腹が減るんだ。なんでだろうな?」
多分それは体操を一日中、飽きもせずやってるのが原因だと思うぞ。
「あたしも、何だか身体の調子いいのよね。なんていうか力が出るっていうか」
それも体操のおかげだと思う。
「エイッ!エイッ!」
ウウダギは、本当になんていうか言いつけというか暇なのかな?
教えたことをずっと続けてしまう所がある。
自分の体力とか分かってないんだろう。
昨日も気を失うくらいまで、体操してたしな。
ちょっと、一途過ぎる所がある。
若干怖くもあるけどね。
「ウウダギ、昨日みたいに気を失うほどやらなくていいんだからね。」
「うん。」
分かっているように答えたけど、あれは取り敢えず返事しただけだろう。
最近ウウダギの返しに一定のパターンが有るのに気づいた。
ウウダギは集中してると、受け答えが雑になるんだ。
良くも悪くも集中しすぎる傾向に有る。
まぁ、僕が側で見ている分には問題ないかな。
「パパムイもギギリカもお腹空いた?僕も若干すいたんだ。皆もご飯がほしいとおもうから準備しようか」
「待ってました!今日はソーセージ食べよーぜ!」
「ソーセージ!いいね!」
「ソーセージは無理だよ。この人数分行き渡らないだろ?」
「何言ってんだよ?鍋があるだろ?」
「そうよ鍋に入れればいいじゃん」
・・・そうかもしれない。
鍋にソーセージか?
まぁ、肉類ってことなら良いかもしれないな。チャレンジしてみよう。
「わかった。でもソーセージ全部は使わないよ?半分ね」
「おう!」
「いいわよ!」
二匹ともソーセージに目がない。
日が建っても肉が食べれると言うことがとても幸せなのかもしれないな。
ミニョルンがすぎればすぐに収穫時期だ、森に動物がわんさか戻ってきて、取り放題となるんだ。
だからその時にでも干し肉やソーセージ、保存食を大量に作ろう。
大鍋へと食材を投下。
火を炊いて、グツグツと煮込む。
塩と胡椒の葉で味をつけて、っと・・・
まぁ飽きてしまうかもしれないな。
でも、ミニョルンを過ぎるまでは、辛抱だ。
人数分の食事を作る。
出来上がりと同時にパパムイから順番に木の器を手に並ぶ。
そして僕は大きなコレまた暇な時間に作ったお玉ですくっては入れると言う、
完全に給食係な感じである。
食事を貰ったスキクは各々の場所で食事を始める。
お玉を作る時にギギリカとギュギュパニに強力してもらって、
各自の木製スプーンも付けているので、
熱いスープの中に手を突っ込む輩は居なく成った。
ミニョルンの間というのはなんにしても暇なんだ。
手が開いている。
なので、ベベビドが全快したら色々とお願いするだろう。
ギュギュパニと一緒に農耕具とか製材工具なんかも作ってもらうつもりである。
まぁ、そのためには色々しなきゃいけないんだと思うけどね。
今回の食事では、ズズナドとデデンゴも普通に食事をとった。
というか、とれるまで回復したんだ。
実に良い。
其の姿をみて族長は関心した様に頷いていた。
なんだか、口元が微笑んでいるように曲がっていたけどね。
嬉しそうでよかった。
食事が終わると、皆にお椀とスプーンを洗うと言う事を教えた。
これは族長の号令も込めてだ。
今までお椀といえば葉っぱで作った即席のものだったけど、
木製の物が有るなら何回も使えるだろう。
衛生面を考慮して、
族長に洗わないと”ジン”になるといったら血相を変えて号令してたね。
お腹も膨れたので、食後の体操でもしようかとウウダギの側に行く。
するとパパムイとギギリカも寄ってきた。ついでにギュギュパニも来ちゃったので困り果てた。
さて、新しい事でも学ばせるかな。
「ねぇねぇ。体操してるところ悪いんだけど、ウウダギとギュギュパニこっち来てくんない?」
「何だい?また怪しいことでも始めるのかい?」
「うん。わかった。」
ウウダギが素直でよかった。
「んっと、二匹とも向き合うように座ってくれる?」
「ん?ああ、わかったよ。」
「うん」
僕は二匹の真ん中少し離れた所に座る。
「えっとね、体操だけだと面白くないだろ?」
「あー。まぁあな」
「大丈夫」
ウウダギは飽きるということがないようだ。
まぁ、其れでも良いんだけどね。
「まず、ギュギュパニ僕の手を掴んでくれない?」
「ん?ああ、良いけど、大丈夫なのかい?」
「うん。構わない。」
「そうかい・・・まぁ、痛かったらいいなよ」
「どうぞ。」
そして、ギュギュパニが僕が出した右手首をぐっと掴む。
本気じゃないだろうけど、結構な力だ。
・・・いや本気っぽいかな?若干二の腕あたりの筋肉がプルプルしている。
そこに僕は、左手をそっと添えて、手首を外側へクルンと回転させた。
ズデーン。
地響きとともに座っていたギュギュパニが外側へと仰向けに成ってしまったのだ。
これは合気道の合気を応用したもので、良く合気道の実演でやる見せ技の一つ。
意外にちゃんと出来るように習得するのは難しいんだよね。
ひっくり返ったギュギュパニは何が起こったか、
さっぱりわからないとでも言うように目をパチクリとしている。
「ウウダギこうやって、掴まれた腕を撚ると力が弱い僕でもギュギュパニ位の重さも転がせるんだ。わかった?」
「わからない」
随分素直だな。
流石に原理がわからないかな。
ウウダギも目の前で起きた事が現実とは思えていないようだ。
そこへ、パパムイが寄ってきて要らないことを吐く。
「なんだよギュギュパニ、遊んでるのか?」
「・・・いや、遊んでは居ないさ・・・わけがわかんないよ・・・どうなってるんだい?」
「遊んでるようにしか見えないぞ?なんかの踊りか?」
「じゃぁ、あんたもやってみればいいさ!」
ギュギュパニが憤慨してしまった。
まぁ良いでしょう。
「じゃぁ、パパムイ其の状態からでいいから僕の手首を握ってよ。強くて構わないから」
「ん?いいのか?腕がへし折れるぞ〜?へへーw」
「いいからやりなよ。」
「お、おう。なんだかポンピカが今回も怖いな・・・」
そう言ってパパムイは両手で真っ直ぐ出した右腕をがっしりと握る。
パパムイは立っているので、随分と腰を入れてギューッと握られた。
若干痛いです。
でもそれを僕は手首をクイッっと上下させて、クルンと内側へと撚る。
すると・・・。
ズテーーーン
パパムイは、まさに僕の腕を中心に一回展するかのように宙を舞った。
そして地面に叩きつけられる。
当事者のパパムイは何が起こったのかわからない様子。
パパムイは、未だに僕の腕を握っている状態だった。
其の様子を眺めていたギュギュパニが改めて驚きを表す。
「ポンピカ?こりゃなんだい?どうしてこんな事が起きるんだい?何かの呪術かい?」
「呪術じゃないよ。護身術っていう身を守るだけの身体捌きだよ。」
「そんなはずはないだろ?だって、あたしやパパムイの方がポンピカよりもずっと力があるんだ」
「そうだよ。だから派手に転がるんだよ。」
「どういう事だい?」
「この動きっていうか原理というか、そもそも相手の力を利用してるんだ。」
「相手の力?つまりあたしやパパムイは自分で転がったって事かい?」
「そうそう。こないだも似たような事をしたんだよ。ギュギュパニが僕よりずっと力強くて助かったよ。」
「・・・ってことは何かい?あんたにゃ、力では勝てないって事かい?」
「まぁ、一片的に見るとそうだね。」
「何だい何だい。じゃぁ、あたしにゃ勝つ見込みがなかったって事じゃないかい」
「そうだよ。だからよしたほうが良いって言ったんだけどね。ごめんね」
「呆れたねぇ・・・」
「ちょ!放してくれよ!なんか手が動かねーんだよ!」
「パパムイ何言ってるんだい。さっさとそこからどきな。コレ、あたしも覚えるよ」
「いや、俺も早くどきたいんだけど、全然力が入らねーんだよ!身体が動かねぇエエエエ!」
「・・・どういうこ事だい?ポンピカ」
「へへw。僕の腕を掴んでる限り、自分からは動けないよwそういう風に成ってるんだよ」
「だ、そうだよ。パパムイ手をはなしな」
ギュギュパニに促されて、渋々僕の腕から手を放したパパムイは、
腕を引っ込めるとサッと立ち上がった。
「ポンピカ!酷いじゃないか!」
「ごめんごめんwでも面白かったろ?」
「・・・まぁ、面白かった・・・コレは俺でも覚えることが出来るのか?」
「出来ると思うよ。」
「ねぇねぇ!あたしも出来る?」
「ギギリカも出来るよ。」
「ポンピカ。教えて」
「ウウダギならすぐに覚えるよ!」
こうして、合気道の基本、合気上げを皆に教える事に成った。
「じゃぁ、ウウダギにマズ教えるから周りで見ててね」
ギュギュパニとパパムイ、ギギリカは目を皿の様にして見ている。
「ウウダギ、じゃぁ、僕の腕を両手で掴んでみて、力いっぱい」
「こう!」
座った状態では掴めなかったようだった。
でも立って僕の両腕に体重をかけながらぐっと力いっぱい掴んでいる。
「いい?この状態だとウウダギの体重や力が僕の腕に真っ直ぐ乗ってるよね?わかる?」
「ああ、たしかにね・・・コレじゃ、ポンピカの力じゃ持ち上げれないだろう」
「たしかにな。幾ら小さなスキクでも体重はそこそこ有るから腕だけじゃ持ち上げられない。」
「真っ直ぐねぇ・・・なるほど」
「この状態から、僕は腕を一回内側に引くんだ。見ててね」
そうして、僕は内側へとぐっと引くと、それだけでウウダギのバランスが崩れる。
倒れそうにまで成ってしまった。
危ない危ない。
「どう?なんとなくわかった?」
「んー?俺はわかんねー」
「なるほどね。支えてる棒の地面をずらした感じだね。」
「なるほど、ギギリカの言うとおりだ。確かにずれてるね。」
「ウウダギちょっと動くよ」
「うん。」
僕はそこから手首を上へと傾けてスーッと前へと引き上げる。
するとウウダギが腕を掴んだ状態でつま先立ちになってアワアワし始めた。
あまりやり過ぎはダメだな。可愛そうだ。
「って感じ。」
「う〜ん。全然わからないな」
「なんとなく分かってきたよ。」
「なるほどね。力の方向が関係してるのね。」
ギギリカはとても観察力があるようだ。
「じゃぁ、ギギリカとパパムイでやってみよう。僕はウウダギに掴みかかるからギュギュパニは見てて」
「わかったよ。」
今度は僕が立っているウウダギの腕を掴む。
あまり握りを強くしないようにしよう。
でもしっかり体重とかをかけていく。
「ウウダギ、ここで一回後ろへ引いてごらん」
「こう?」
すーっとウウダギが腕を引く。
すると僕のバランスが崩れる。
「そこから手首を僕がやったように上へあげて腕を斜め前へとおしてごらん。一歩前に出てもいいからね。」
「こう?」
ウウダギが一歩前に出る瞬間に手を上へとひねり腕を上げると同時に前へとすすんだ。
すると僕はさらにバランスが崩れ腕が外に反るようにしてひねあげられる。
ここで僕は力を抜き手を放す。
すると束縛から開放されるわけだ。
「どう?ウウダギなんとなくわかった?」
「もう一回。」
ウウダギは勤勉だな。
何事も真剣に学ぼうとしている。
可愛いのに真面目なんていい子だ。
こうして何回かやっている内に本当に小さいスキクが天才だという事を再認識させられた。
見事数回で合気上げが出来てしまう。
それに比べて、見様見真似でやっているパパムイとギギリカはと言うと、
なにかチグハグな動きをしている。
パパムイは腕の力だけでギギリカの体重が乗った力に対抗しているし、
ギギリカは撚るところから腕が上がらない。
「一回僕が相手をする。ウウダギはギュギュパニと練習してみな」
「わかった。」
「おいおい!流石にウウダギじゃ相手にならないだろう?」
「ギュギュパニ。良い機会だからやってみるよいいよ。」
ギュギュパニは渋々といった感じで、ウウダギに掴みかかる。
其の瞬間にウウダギが前へと手を出し、出された手をギュギュパニが反射的に掴む、そして、そのままウウダギが手を引くと前のめりにつんのめって、さらにウウダギが腕を捻り上げると、まさに腕が反腕状態になったギュギュパニが出来上がる。
見事ウウダギは、モノにしている。凄い、集中力と凄い機転だな。
あの相手の隙を突くやり方は、上級者だな。
「ウウダギそのまま右腕を外側に回しながら体ごと右にお辞儀するように曲げてみな、そして左手はそのままゆっくり大きく右に円を描くようにしてごらん。」
ウウダギが言われたとおりに動くと、
ズデーン。
ギュギュパニがウウダギの右側へと転がる。
流石に度肝を抜かれたように目をパチクリしているギュギュパニ。
今何が起きたのかさっぱりだとでも言うようだ。
「おい!ポンピカ!早く俺にも教えてくれ!アレがやりたい!」
「ちょっと!あたしも!あたしのが先!」
「二匹とも順番に基本から行くよ。」
「おう!待ってました!」
「どんとこーい!」
こうしてパパムイとギギリカにも一通り合気上げの型をやってみた。
感触は掴んだようだ。
「あとは二匹で交互に練習してごらん」
「おう!絶対ギギリカを転がす!」
「言ってなさい!パパムイ!転がるのはアンタよ!」
そんな感じで二匹でキャッキャと練習を始める。
僕は、ギュギュパニの方へと向き直る。
散々ウウダギに転ばされてげっそりしていた。
「どうしてだい・・・どうして、小さなスキクを抑えることが出来ないんだい!」
「それは、さっきも言ったけど力が強いのが原因なんだよ。」
「わかんないねぇ。全然理解が出来ない。なんでだい?」
「そうだなぁ。大まかに言えば大きい力は無駄が多いとも言えるかな?」
「無駄?力に無駄なんてあるのかい?」
「まぁ、体験してみよう。僕がギュギュパニを抑えるから、力を抜いてやってみなよ」
「ち、力をぬくのかい?・・・難しいねぇ」
僕がギュギュパニの両腕を力いっぱい抑える。
「この状態から、教えたとおり、力を入れないでやってごらん」
ギュギュパニは訝しんでいるようだけど、言われたとおり動きをトレースする。
こういっては何だけど、此のへんで躊躇しないのが、
このザーザースと言う一団が正直でウソを付かないと言う証拠なんだ。
普通の人間なら疑って言われたとおりの事は出来ないんだけどね。
まぁ、中には先入観とかがなくて何も考えてない人間は疑いもせず行うんだけど。
ギュギュパニは教わったとおりの動きをした。
すると見事に僕の腕は捻りあがる。
見事。
やはり優秀なんだと思う。
「・・・なんだい・・・あたしゃ力いれてないよ・・・何も・・・なんでこんな?」
ギュギュパニが一向に手を戻さないので、痛い。
しかたないから僕は自力で、解く。
「いてて・・・。でしょ?力が要らない”技”なんだよ。」
「”ワザ”?」
技ってものが無いのかもしれない。
まぁ、教えればいいだけだしね。
「そうそう、色々と種類があるんだ。臨機応変に使い分けるし、応用もする事で、相手へ何もさせないで、鎮圧させるのが目的の物だよ。」
「相手に何もさせないって・・・。でも倒せないだろう?」
「倒すのは別の技だよ。自衛には必要ないよ。」
「・・・って事は、攻撃用の技もあるって事かい?」
「あるけど、見せることは出来ないよ。自衛には必要ないだろ?」
「まぁ、そうだね。それを聞いて少しは安心したよ。」
「そう?まぁ、自分の身を守るのが第一だよ。それに今は体操だからね。こんなのお遊びだよ。」
「・・・ふーん。これで遊びなのかい・・・随分、痛い思いをする遊びねぇ」
「まぁ、いいじゃんw」
「ふん。だけど、このワザだっけ?これには欠点が幾つもあるね」
「そう?例えば?」
「例えば・・・こうだ!」
そう言って、ギュギュパニが僕の後ろへと周り首を羽交い締めにする。
「普通、相手を拘束するのに両腕を掴むなんてしないだろ?それがまず一つさ、それに後ろから襲うのは常套手段だよ。こんな風にね。どうだい?抜けれないだろ?」
「ああ、なるほど、じゃぁ、ギュギュパニ、ちょっと痛いかもしれないけどごめんね。」
そう言って僕は自分のてを羽交い締めにしている腕を掴み、筋肉の感触をしっかりと確かめる。
「何しようってんだい?ポンピカの力じゃ抜けれないよ。」
「そうだねー。力を使えば抜けれないね。」
そういって、ギュギュパニの腕の一点を指で強く押す。
すると・・・。
「グアァッ!痛っ!」
と言って、ギュギュパニが腕を解く。
「どう?痛かった?」
「・・・何だい?ポンピカが触った瞬間、あたしの腕に火がついたかと思ったよ・・・痛すぎだ」
「へへw」
「・・・これもワザってやつかい?」
「今皆が練習してるヤツとは違うけどね。他にも出来るよ。」
「・・・そうかい。じゃぁ、同じワザを受けない様にしてみようじゃないか」
ギュギュパニは懲りずに僕の両肩を鷲掴みにする。
凄い力で、押さえつけられた。
「これなら、腕は使えないだろぅ?どうするんだい?」
「なるほど、此のときはね、こうするんだ。」
僕は身体を少し左右に振った後、自分を中心にして、半円を往復するように回す。
すると、ギュギュパニが僕の左側にゴロンと転がる。
またしても転がされたのが理解できない様で、目をパチクリするリュリュパニ。
「どう?転がっちゃったね。面白いでしょ?」
「・・・どうしてだい?あんた、何もしてないじゃないかい・・・身じろいだだけだろう?」
「そうだよ。これね、ギュギュパニの力が強いから出来るんだ。面白いでしょ」
「あたしの?どういう仕組みなんだい?」
「ギュギュパニが力を込めれば込めるほど、僕は力を使わなくて済むんだよ。転がるほどの力って事はそれだけギュギュパニの力が凄いって事だよ。」
「じゃぁ、なにかい?ウウダギじゃぁ、捕まえられない、だけど転がらない。あたしじゃ捕まえれるけど転がるって事を言ってるのかい?」
「まぁ、簡単に言えばそうなるよ。」
「じゃぁ、あんたは、誰からも拘束されないって事かい?」
「そーだねー。まぁ、要領が判れば出来なくないけど、ギュギュパニの様子からするとザーザースには捕まらないかな?」
「・・・そりゃ、すごいね・・・あんたを捕まえる事は出来ないって事か・・・」
なにやらきな臭い事をいい始めたなぁ。
まぁ、予想は出来る。
もし、僕の事で集落に迷惑がかかるようなら、
最終的にプンタやザウスが捕まえに来るだろう。
そうなると、率先して捕縛、突き出せば集落は難を逃れる。
だけど、今の様子だと僕は捕まらない。
次に取る手段は負傷させるか、殺すかだ。
だけど、恐らくそれも出来ないだろう。
なんだかんだ言ってもギュギュパニは集落の事を必死で考えてるんだな。
この訓練もどきに参加したのも僕の強さっていうか技術を盗んで、
対抗できれば良いだろうと思ったんだ。
だけど、僕はほんのお遊び程度のそれも体操レベルの事しかやってないよ。
武術は意外に奥が深いんだ。
門下生でもまともに教えることはないのに、
遊びの輩にはなおさら武術は教えれない。
それに僕の武術なんて大したこと無いんだ。
そもそもじいちゃんが僕を弟子にしなかったのは、
僕に素質がなかったからだしね。
だから、本当の力とかはない。
ただの身体を動かすコツをしってるだけの小僧って事だね。
「まぁ、ギュギュパニが危惧している事はわかるよ。僕はその兆候があれば自ら”ト”にでも出向くつもりだし、手を煩わせるつもりはないよ。」
「・・・あんたは、本当に聡いヤツだね・・・何から何までお見通しってことかい」
「だって、わかり易すぎるんだよ。ザーザースはね。ウソくらいは、キッチリつくもんだよ。」
「へん。そうかい。じゃぁ、あたしはあたしなりの訓練でもするかね。こんな分けのわからない訓練は懲り懲りだよ。」
「そう?武器の使い方も教えようか?」
「そっちのが、ゴメンだよ。あたしにだって誇りがあるんでね。」
「そう?じゃぁ、頑張りなよ。ちなみにギュギュパニがどんな武器使うかわからないけど、長い武器使うなら穂先に重い物を付けてそれを自由に動かせるようにしておくといいよ。きっと役に立つ」
「ふん。忠告ありがとうよ。ったく・・・パパムイもポンピカみたいにならなきゃいいけどね。まったく・・・」
そんな事をいいながら族長がハラハラしながら見ている離れた場所まで、歩いていく。
さて、敵情視察も終わったようだし、
ちょいと真面目に訓練を始めようかな。
「三匹共、少しは慣れてきたかい?」
「おう!ポンピカ!コツがわかると簡単だな!」
「そうね!ウウダギが凄く細かく教えてくれたわ!おかげであたしも出来るようになったわよ!」
「ポンピカ。次」
この三匹はとても元気が良くて助かる。
特にウウダギは良く覚えてしっかりと出来る子で良かったよ。
結局その後、色々小技を教えてみた。
打撃技とかは、まだ無理、ウウダギは筋力ないし体重も無いからまともな打撃は出せない。
それに、打撃が出来てもあまり意味ないからね。
自衛だよ自衛。
教えていてわかったことが幾つか有る。
まずは、パパムイ。
彼は、口頭での説明では一向に理解しない。
なので、目の前で実際に体験させると、何をどうやって理解したのかわからないけど、
出来るように成る体質らしい。
なので、僕の技の一部を文字通り身体にしみつけた具合だ。
だけど如何せん、頭が足りない為に機転というか応用が出来ない。
悲しいかな、咄嗟のときには応用が物をいうのだ。
大丈夫か不安である。
ギギリカについてだけど、
こっちはしっかり図解までして、説明すると、理解する。
そして、実際に身体を動かして、要所要所を修正することで、身につくタイプだ。
なので時間がかかる。
パパムイの様に一回投げ飛ばすと理解すると言う様な事がない分、
手間がかかるけど、実際に身についてからは、なかなか応用が効くらしい。
元々機転はきく方だし、とても優秀と言える。
最後にウウダギ。
桁違いである。
流石にこれは小さいスキクだからとか言えない。
目の前でやってみせると、覚えてしまうレベル。
内心、「マジで?」とつぶやくレベルである。
ぶっちゃけ末恐ろしいです。
しかも、持ち前の頭の良さのせいか、
機転もきくようで応用はギギリカを超えるレベルで身につく。
もしかするとウウダギって種族的にも上のクラスなんじゃないかと思うんだよね。
これで、ウウダギの身体が成長して大きくなれば、もしかして凄いスキクに成るんじゃないかな?
いまから期待してしまう程だ。
そんなこんなで、今日は二度目の食事をした。
珍しい事だけど、どうやら動いていた僕ら四匹とギュギュパニはハラペコである。
他のスキクはそれほどじゃなさそうだけど、有るなら腹に入れると言うのがスキクである。
当然皆の分も作ることに成った。
そして、食事を作り、皆で食べた後、夜が訪れたので、寝ることに成った。
何の変哲もない一日である。
若干ギュギュパニが絡んできたけどね。
諦めたっぽいからそれでヨシ!
はぁ〜。眠い。ウウダギ抱いてねよーっと。
「ウウダギ。おいで〜。」
「ヤダ」
拒否された。
「じゃぁ、なでさせてー」
「わかった。」
撫でるのはOKっぽい。
基準がわからない。
ウウダギを撫でながら睡眠を取った。