族長語りと日常
翌朝、昨日の疲れが綺麗サッパリ取れた。
久しぶりに動いたので、なんだろうストレスでも取れたかな?
気分が良い。
ウウダギは僕の腕の中ですやすやしてる。
暫く撫でていよう。
「ポンピカよ。昨日は済まなかったな」
なでなでタイムが族長の訪れで台無しになった。
「んもー。危惧してる事があるなら前もっていってくれればいいじゃん。そうすりゃあんなことに成らないんだし・・・」
「そうだったな。それを含め済まなかった。」
なんだろうしおらしい族長キモい。
いい歳してるんだからもう少し威厳を保とうよ。
ってか、なんか言いに来たんじゃないの?
そこに突っ立ってるとウウダギタイムが減っちゃうんだよ。
「・・・なに?僕今、ウウダギ撫でるので忙しいんだけど・・・」
「・・・少し話そうではないか?」
・・・まぁ、昨日の事やプンタまわりの事だろうな。
困った族長だ。まぁ、集落全体の事を思ってなんだろうけどね。
仕方ない。また明日にでもウウダギタイムはおあずけだな。
そう思いウウダギから手をどけると、「起きてました」みたいに、
パチッとウウダギが目を開けてチョコチョコと、自分のエリアへ移動、再度寝る。
・・・ごめん。ウウダギ無理させてたわ。
「・・・族長いいよ。どのへんで話す?」
「そうだな・・・まぁギュギュパニと三匹であそこらへんでどうだ?」
別に何処だって同じだろ?
個室なんて作ってないんだしね・・・
いや、こんど作るのも良いかもしれない。
うん。恐らくギュギュパニの協力があれば、モルタルもイケるだろうしね。
僕は族長に着いていき、ギュギュパニの元へとたどり着く。
ギュギュパニを見ると、痛そうに肩を抱えていた。
外れてんじゃないか?
「ギュギュパニ。肩外れたんじゃないの?締め上げた時、感触が有ったんだ。」
「・・・どうだろうね。そのうち痛みは引くだろう、気にするな。」
いや、肩外れたまま放置したら癖になるだけじゃなくて色々不都合が出るんだぞ?
僕はギュギュパニの方へ近寄り痛そうにしている肩を触る。
「ぐっ!・・・」
「やっぱり外れてるじゃないか。治すからちょっとじっとしてて」
そういって、ギュギュパニの脇腹に踵をねじ込ませて大きな腕をしっかりと掴む、そしてそのまま一気に引っこ抜いてから元の正しい位置に戻す。
この作業、実は凄く痛い。脳天に響くほど痛いんだよね。
まぁ今回は良いクスリだと思ってください。
「ぐがっ!」
ギュギュパニが接合する時の痛みを味わったようだ。あとは肩を固定しなきゃいけないんだけど・・・。
そう思って、ギュギュパニへじっとしてろと言ってウウダギが大量に作った紐を何本か持ってきて三角吊りの様にして、固める。
「此のまま数日の間は動かさないようにね。ちゃんと元に戻るから」
「・・・ああ。済まないな。しかし凄いな、こんな事も出来るのかい?」
痛そうに牙をむき出していたけど、どうやら違和感が無くなった様だ。
安心してくれた。
「で?族長。昨日のギュギュパニとの大本の件でしょ?」
「・・・うむ・・・まず何から話そう」
う〜ん。とりあえず僕が聞きたいのは、
スキクが武力を持ってはダメな理由からかな?
「ねぇ。族長。なんでスキクは武力を持ってはいけない?」
「ブリョク・・・戦の力の事だな?」
「そうそう。何故なんだろう?」
「ふむ。それは、単に数が多い為だとワシは考えたんじゃがな・・・プンタの意見は分からぬ」
ん?ここでもプンタの意見がでるのか?
つまり、スキクが武力を持つ事に否定的なのはプンタなんだろう。
そして族長が、数が多いって言う事が原因だと言っている点は、
恐らく武力を持った大きな集団が出来た場合。
それを鎮圧する術が無いからだ。
ザウスでも僕みたいなのが居ればすぐに殺される。
しかしザウスとプンタそしてスキクや他の種族の立場が微妙にわからない。
「ねぇ。その話だと、ザウスがプンタの言う事を聞いて、鎮圧する事に成るんだよね?」
「ふむ・・・。まさに其の通りだな。・・・そうだ。プンタの守護はザウスだからだ。」
なるほど。
プンタは自ら動けないのか?
王様だよね?
下の者。特に軍関係者には何か指示を出すんだろうけど、
実際に行動するのは恐らくザウスだけなんだ。
そこにスキクは入らないのか?
「それって、スキクはプンタの意見を聞かないって事?」
「う〜む。難しい所を突いてくるが、結果から言えば、スキクはプンタの言う事に対し服従する。」
ふむ。どうやら何かあるんだろう。
何だろうね?
「スキクが大きな武力集団と成った場合、ザウスが止められなかったらプンタは王座から降ろされるのを嫌ってそういう事をしてるのではないの?」
「・・・随分な言い分だな。しかし、そうではない。まず、プンタはプンタにしか成れぬ。つまり幾ら能力が高いとしても、スキクやザウスがプンタに取って代わる事はない。なぜならプンタ以外に神、”古の者”の言葉を聞ける”ザーザース”がいないからだ。」
初めての単語出ました。
「ん?ザーザースってなに?」
「話してなかったか。そうだな。この大陸に居るワシらの様な種族全般を示す言葉だ。」
なるほどリザードマンとは言わないのか。
ザーザースね。覚えとこう。
そして、プンタってのは今の話からすると、種族名であり役職と捉えられるんだ。
だから代わりが居ない。
そういう事か。
「じゃぁ、ザーザース全体を見ても神の声を聞けるのがプンタだけで、それ以外は神の声を聞けないからプンタに取って代わる事は出来ないと?」
「そのとおりだな。そもそもプンタは”古の者”が主となるべく作り出した神聖な種族だ。更に今までに神の手以外でプンタは生まれていない。其の意味がわかるか?」
えっ?
プンタってそんななの?
じゃぁ、前話していた九匹の内、五匹がすでに死んだわけだよね?
残ってる四匹は、九匹分の働きを分担してるってことかな?
それもずーっと最初から・・・どんだけ寿命が長いんだろう?
しかし、考えてみると、凄いことだ。
そのプンタは何百何千と居るザーザースの指揮をわずか四匹でとってるんだ。
そりゃ大変な役割だろう。
しかし、その役割を肩代わりできないスキクが武力を持って反逆したところで、反逆に成功したスキクは”古の者”の声は聞こえないわけだろ?つまり意味が無くなるんだろう。
・・・いや、意味はあるのか・・・もし圧政に対しての反逆であれば、圧政から解放される可能性は残ってるんだ。もしスキクが其のような事を考える場合は確かにザウスが出張るしか無いだろう。
「ふ〜ん。大体読めてきた。でも族長は言ったよね?スキクは数が減っているって」
「・・・うむ・・・」
「そうなると、数が減ると言う事に対し、何もしないプンタはどうなんだ?変な話だけど、僕はそんな考えはしないつもりだけどさ?何もしないプンタに対して、抵抗を始めるスキクが出ても可怪しくないだろ?どうして放置してるんだろうね?」
「ポンピカよ・・・それには、深いわけがあるのだ・・・」
族長は随分言いずらそうな口ぶりだね。
「ポンピカ、あまり族長を困らせるんじゃないよ。コレでも、随分と気を使って話してるんだよ。」
「そうなの?族長」
やっぱり気を使わせちゃってたか、
でも僕には別に気なんか使わなくてもいいと思うんだけどね。
「ギュギュパニよ。構わん。どうせ話さなければならんからな・・・其の上でポンピカの意見も聞きたいと思っていたのだ。」
「族長・・・それで良いんだね?あたしは止めたからね?」
ん?んん?ギュギュパニが”止めた”といった。
つまり、この件の話は何やら制約がかかってるのかな?
「かまわん。ポンピカよ。何故、プンタからの施しや救済がないかについてじゃが・・・」
「ちょっとまって。ギュギュパニが止めたって言ってるって事は、このまま話すと、プンタとかそこら辺への反逆に成るんじゃないのか?ちがうのか?」
族長!いきなり本題切り出されても困りますよ!
恐らくその話しって、聞いたら後戻りできません。
みたいなやつでしょ?
族長が気を使うわけがわかったよ。
そうか、では、ギュギュパニにも気を使わせたかな?
「・・・ポンピカ・・・気づいちまったか・・・」
「ギュギュパニは逆に僕に族長を止めてほしかったんじゃないの?」
多分聞いたら、其の内容が・・・
いや、違うな、多分、ギュギュパニと関係があるんだ。
ギュギュパニに関係するってことは?
以前から族長と話してたり、それに兵士って話も鑑みると、
ギュギュパニはプンタもしくはザウス側のヤツなんだ・・・。
「・・・」
「族長もできれば言わないほうが良いとか思ってないか?」
「・・・」
「恐らく、こういう展開の流れだと、ギュギュパニはザウスだ。つまり何処かでザウスの”ト”だっけ?そういうところへ繋を取らなければイケなかったり、報告しないわけにはいかなかったりして、集落が危険に晒されるんだろ?違うか?」
「・・・そうだ。聡すぎるのも問題だがな・・・だが、それは報告をすればというだけだ・・・」
「ギュギュパニは?報告するの?集落の生き残りを見捨てるって事?」
ギュギュパニ自身の判断を知りたい所だ。
あえて、情に訴えかけてみよう。
「何時そんな事するって言ったんだい!あたしは、そんなつもりは毛頭ないよ。見くびられるのは嫌なんだよ。全く・・・」
「しかし、それは、どこかで報告しなければならんだろう?」
「・・・そりゃ・・・そういう誓いがあるからな・・・守らなきゃそれこそザウスの集団が集落を襲っちまう・・・」
「なるほど・・・じゃぁこうしよう。」
二匹は僕に顔を揃って向ける。
「族長は僕にちゃんと話してくれ。其の上で、いい塩梅の理由をギュギュパニに吹き込む。だからギュギュパニは吹き込まれた内容をそのまま”ト”へ報告すればいい。」
「なんだいそりゃ!ウソをツケといってるのかい!?」
そうだよね。
僕はこの世界に来てからほとんどウソとかをつかれたことがない。
なんでか?
それは、スキクが正直すぎて、疑うことをあまりしないんだ。
一部を覗いてだけど、本当に素直で、言われたことはちゃんとやる癖が付いてるんだよ。
だけど、ウソを通さなきゃいけない時もあると思うんだ。
「そうだよ。ウソで誤魔化そうとしてるんだ。」
「あんた・・・そりゃいくらなんでも・・・」
ギュギュパニはウソが下手なんじゃない。
ウソがつけないだけだ。
そういう風に教育されて育ったんだろう。
周りも、ウソは付かないんだと思う。
疑うってことがあまりできない性分何だろう。
「僕からしたら、スキクやギュギュパニのようなザウスは正直過ぎるんだよ。元の僕、人間ってのはとても狡猾で疑り深くって相手の事を常に監視して、相手を貶めるためには手段を選ばなかったりそういう事を何千年と繰り返してきた種族なんだよ。つまり僕の中身はソレなんだ。だから其のくらいのウソで集落が助かるなら別に僕はウソついても構わないと思ってるんだけど?」
「神聖な誓いだぞ?種族の誇りとも言うべきものだぞ?ソレを捨てろと?」
誇りかぁ。
男なら、いや、雄ならたしかに魅力的な言葉とも言えなくない。
誇りがあれば心には力が湧く。
だけど、その誇りは、生活には何も役に立たない。
つまり、生きていく上では必要とは思えないだろう?
「誇り?誇りで、ご飯が食べれるの?子供は育つの?生きていけるの?どうなの?」
「・・・生きていけるさ・・・誇りさえ有れば、心に力がでるから・・・」
ギュギュパニは自分の誇りが僕の手によって、随分傷ついてるからね。
いいづらいのはわかる。でも、集落に残ったスキクの事も考えてほしいんだ。
「ギュギュパニは分かってるんだろ?生きていくっていう厳しさを・・・ぶっちゃければ、生きていく上で絶対にしちゃいけないのは、死なないって事だけだ。わかる?誇りなんて関係ないんだよ。」
「ポンピカ。其のへんにしてやれ・・・ギュギュパニだって、先の試しで、誇りが傷ついておるのだ・・・」
族長が合いの手を出したか。
ギュギュパニは下を向いちゃってるし、
なんだか、か弱い女の子を口喧嘩でまかしたときのようで、
ちょっと複雑な気がする。
でも、まぁいいや。
取り敢えず、一つ質問をしよう。
なぜプンタが武力を制限するのか?
そして武力を持ったらどうなるのか?
何より、プンタはどうしてそんな命令を・・・ん?
プンタがもし命令を出さなかったら?
プンタはどうしてこんな事を繰り返すんだろう?
数千年は生きている可能性だってあるだろ?
言い換えれば10世紀を生き抜いている可能性もあるんだ。
病気の特効薬も開発してていい話なのにな。
どうして、プンタは何もしてくれないんだ?
どうして・・・ん?もしかして、プンタがいないんじゃないか?
いたとしても、別のプンタとか?
「・・・まぁいいさ。じゃぁ、族長一つ、質問する。」
「・・・なんだ?」
「僕らの今のプンタは本当に僕らのプンタなのか?」
「・・・本当にポンピカは、よう気づくスキクだ・・・全く、そこまで的確な質問をしてくるとはな・・・」
そうか、居ないのか・・・じゃぁ、何をもってプンタに従ってる?
「そうか。大体わかったよ。それに、僕らスキクが何時まで建っても進歩しないのも恐らく種族的な特徴である、素直さが原因だけど、ソレよりも施し・・・特に技術の提供をしないプンタにもあるんじゃないか?プンタが知っている知識が何千年かは知らないけど、其の中でなら”ジン”の特効薬についての知識だってあるだろう。さらに、より安定的な糧の採取方法だってあるはずだ。なぜ提供されない?逆にスキクは何を持ってプンタに従ってるんだ?それも神が決めたことだからとずーっと正直に信じてたわけじゃないだろ?」
「・・・まぁ、今と成っては、ポンピカの言っている事が正しいとワシは思っている。なぜなら、ワシらスキクは働き手なのだそうだ。あまり良くは聞かされていないがな・・・そういうことらしい。」
「働き手・・・つまり労働力か・・・なるほど、それじゃ農奴ってやつじゃないか・・・」
農奴か・・・だけどそれを縛る楔が見当たらない。
ザウス一匹を集落に派遣した所で、なんともならないと思うんだ。
一匹で、集落を全滅させるくらいの力があるって言うなら話しは別なんだけど、
実際ギュギュパニと戦ってみて、そうは思わなかった。
ぶっちゃけ僕には焦る要素が一つもなかったし、戦い方も原始的過ぎる。
ザウスは抑止力にならないだろ?
「ポンピカよ。ザーザースはすべてが”古き者”の技によって生み出されたのだ。」
なるほど、古き者ってのが事の始まりか。
「太古、この地に赴いた”古き者”は、その叡智を駆使して、この地で生きていた原始の生き物であった、ワシ等の祖先である”地を這うもの”達をザーザースにまで高めたと聞いている。」
古き者ってのは、随分と進んだ科学を持っている異星人の事だろう。
多分だけど、ちょっとSFすぎやしないか?
それに先祖ってのも恐らく此の地に多い原始生物である爬虫類や両生類の事だ。
哺乳類はあまり見ないしね。
「しかし、”古き者”はある時期、忽然と姿を消してしまった。なぜかはわからない。だが、消えてしまったのは事実だ。」
ん〜。そうか。
居なく成ったんだね?
なんで居なく成ったんだろうね?
僕は大体わかる気がするけど、あえて口には出さないさ。
「当時居た九匹のプンタは消えた”古き者”を必死に探した。しかし、見つからなかった。」
「プンタはこう思ったのだ、我らザーザースが清く正しく生きていればきっとまた”古の者”が現れると・・・そして、再びワシ等に恵みをもたらし、”古き者”の世界へと・・・だから、いつ”古き者”が来ても万全でなければならなかった。」
なるほどね。
だから、清く正しく、ウソ付かないみたいな環境ができたのか。
「”古き者”の恩恵は非常に強力だったのだ。無くなってから初めてプンタは焦った。そして、”古の者”が行っていた恩恵を自分達でも体現できないかと必死に模索したらしい。其の結果、九匹のプンタがそれぞれの地を収めるに至った。」
へー。つまり古き者ってのは、随分と働き者だったらしい。
でもなぁ?その恩恵ってのは何だろう?
科学の進んだ異星人が施す恵みか。
「次第に時は過ぎていき、暫くは平穏な暮らしが訪れた。だが、ある時、海からの来訪者によって、その平穏が打ち砕かれたのだ。」
おおっと、ここで急展開かな?
来訪者って言ってるけど、この話しの流れでは侵略者が適当だろう?
「なるほど・・・侵略者か・・・」
「そうだ、侵略者だ。当時、プンタは”古き者”が戻ったのだと勘違いして、歓迎したらしい。結果は、プンタの一匹が命を落とす事に成った・・・」
おいおい、プンタさん。
どこぞのコロンブスですか?
んー。でも考えてみれば、それって、航海してきた何かなわけだ。
それって、同じザーザースではないわけだし、そう考えると・・・恐らく答えは。
「大体読めてきたぞ。そうなると、ギュギュパニや族長の雰囲気からして相手は、”ニンゲン”だったんだろ?僕の素性を話したとき血相かえたろ?」
僕の答えに対して族長とギュギュパニの目が見開かれた。
その表情だけでわかった。
僕の予想は当たりだ。
「何処まで聡いヤツだ・・・まぁ、他にも見慣れぬ生き物が多数居たようだがな。」
「って事は、ザーザースの住む中に人間がいるの?」
つまり、人間に会えるって事かな?
でも人間に会えた所で、今の僕はスキクだしな、まぁ関わらないほうがいいだろうけどね。
「いや、今はすでに排除した。したのだがな・・・8匹居たプンタが排除後にはすでに6匹まで減っていた。其のせいで、統治していたはずの地が荒れる結果に成った。其の中には、人間との小競り合いを繰り返していたザウスの集団やスキクの集団が恩恵を受けるためにとプンタの統治下へと進行を始めたことも有ったのだ。」
なるほどね。
闘争心が抑えられなかったのかな?
それとも、何かの理由だったりするのかな?
でも、其の事がきっかけなんだと思う。
武力発起されると、やはり同族って括りなんだしね。
溜まったものではないんだろう。
「なるほど、それで、スキクには武力を持たすな・・・か。」
「そういう事だ、ちなみに今居るこの集落は、プンタの恩恵を受けておらぬ。今居る地は始めに旅立ったプンタ、当時第一位の位についておったプンタの地だからな・・・荒れておるのだ。」
あれま。衝撃の真実がまた飛び出したみたいだ。
そうかぁ。ここは第一にプンタが居なく成った土地か。
代わりにどのプンタが管理してるんだろう?
気になるけどね。
「なるほどなぁ。でも、スキクはそれをわかった状態で、何もしないで、滅びるのを待っていたわけだね。」
「今と成っては、過去の忌まわしい行いを繰り返さぬための取り決めと成っているわけだ。だから”ト”へ戦の準備をしていると思われるのは非常にマズイことに成ると、そういう事だ。」
ふむ。だけど防衛だけじゃないだろうな。
それに見捨てられているならば、
もしかしたら管理がゆるいかもしれない。
「状況は大体わかったよ。族長、気を使わせて済まないね。でも、だからこそ、自衛は必要だよ。なぜならここは捨てられた、見捨てられた集落という事だろ?”ト”がどんな管理をしているか知らないけど、寂れたただの集落で起きる変事にたいして、管轄でもないプンタがとやかくは言わないだろう。」
多分此のまま、今までどおり自衛もしないで居たら本当に数年でこの集落は全滅だろう。
武力とかの話だけじゃない。
例えば野生の動物が集団で集落を通るだけでアウトなはずだ。
ただでさえ、恐竜が居るんだ、デカイものだとブロントザウルスみたいなのまで居る。
マズ勝てないだろう。
防衛しても怪しいのにな。
「だがなぁ?ポンピカ。あたし達は、今までそうして生きてきたんだ。安定のほうが集落には必要だとあたしは思ってる。違うか?」
ギュギュパニの安定ってのは変わらないって事か。
そうなると、やはり何も変わらないだろう。
それが、一番の下策だと僕は思うんだ。
見捨てられて、管理がずさんな集落が全滅してもプンタは見向きもしないのが現状だしな。
「安定だろ?でもギュギュパニが言ってる安定ってのは、何もしないって事だろ?それがどうやったら安定につながるんだ?それは進んでいない。つまり失速しているんだ。とどまっているわけじゃなく、減速している事に他ならないよ。気づいてないだけだ。」
絶えず世界は変化してるんだ。
同じ時間は訪れない。
つまり不測の事態が発生すれば、
対応ができなくなるはずなんだ。
「ポンピカよ。ワシは、ポンピカと同じ意見だ。なぜなら、この集落はすでに半数が死に絶えた、此のままでは数年後には集落が無くなる。間違いなくだ。であれば、プンタへ反旗を翻そうが、手段は選んでは置けぬ。子や家族を守るのがワシの使命だからな。」
なるほど、覚悟を決めていたのは族長なのか。
そしてギュギュパニは集落の監査の立場からこの話しに同席してるわけで、
今のは族長からの監査への意思表明だな。
「なるほど・・・ってことだよ?ギュギュパニ。」
「へん!あたしだって、同じ思いさ・・・いいよ。ポンピカ。あんたの口車とやらに乗ってやろうじゃないか。だけど、いいな?あたしが乗るんだ、覚悟しなよ!」
ギュギュパニも覚悟決めてくれたと思っておくよ。
だけど、どうやって”ト”に説明するかな?
ってかこの集落って、数が足らないよね?
何にしても増やさないと何もできないだろう。
「べつにいいよ。覚悟なんかしなくても何とでもなるよ。」
「はん!わかったよ。・・・”タイソウ”たっけか?あれは子どもたちが遊んでるだけって事にしてやる。それでいいな?」
いいね。それは、いい提案だ。
子供が自主的に遊んでいるだけの物なら誰もとやかく言うことはできないだろう。
だけどザウスが粛清に来るような事が有れば、この数でも撃退出来る準備と、
交渉出来る余地を作らないとイケないだろう。
「其れで構わないさ。それに、もしザウスの集団が粛清しにくると分かったらすぐに情報を教えて欲しい。交渉とかが出来ない場合、最終的には、ザウスと事を構える。そして、恐らく返り討ちしてしまうけどね。」
「はん!ザウスの”ト”にはあたし位のはゴロゴロ居るさ。あたしに勝っただけでいい気にならないほうがいいよ。」
正直、ギュギュパニがどの程度の強さなのかわからない。
手合わせしても簡単すぎたんだ。
あれが、兵士としての力量ならたかが知れてる。
2〜3年もこの集落で錬功を詰めば、少しながらでも対応出来るように成ってしまうほどだ。
ただでさえ、小さいスキクは天才なんだ。
力を発揮すれば、結果は分かっていると思う。
「うん。分かってるつもり。何にしてもミニョルンを耐えよう。話はそれからだよ。」
「望む所だ。」
「うむ、それでよかろう。」
取り敢えず重要な話はコレで一段落ついたのかもしれない。
まぁ、僕としては、ウウダギが自らやりたいと言うほどの行いを、
今更取り上げるのは嫌なだけだったんだけどね。
この真意だけは隠しておこう。
「あ、そう言えば、ギュギュパニ」
「ん?まだ何かあるのかい?」
「腕大丈夫?さっき繋いだ所」
「・・・ああ、痛みはなく成ったな。凄いもんだ」
「じゃぁさ。多分ミニョルンが過ぎる頃には、治ってると思うから、ミニョルンが終わったら色々お願いすることが増えると思う。よろしくお願いね。」
「・・・まだ、なにかさせるのかい・・・ったく、使い方が荒いんだね、あんたは・・・」
ギュギュパニに睨まれました。
まぁ、もしギュギュパニが本気でザウスより僕らの集落側に着くなら
ギュギュパニに武器の使い方とかキッチリ教えよう。
と言っても僕がじいちゃんに教わった武器ばかりなんだけどねw
此の話は随分と時間をかけた。
話している間も、ウウダギやパパムイとギギリカは体操を行っていたようで、
族長も話しの最中チラチラと様子を見ていたんだ。
ギュギュパニは何だか少ししおらしい感じで、ケガの治療の為に動かないでいた。
話し終わってからすぐにご飯に取り掛かることに成った。
やはり鍋物が一番量をごまかせる。
お腹が一杯に成るし、栄養も余す所なく摂れるから最高だね。
今日も魚の鍋で乾杯状態であった。
その後僕も腹ごなしに体操をして、
パパムイやギギリカ、ウウダギと穏やかな日を過ごすことが出来た。
ただ、パパムイがなんの話ししてたんだ?とか空気を読まない発言が飛び出したけど、
なんとなく、ごまかす。
今思えば、このスキクの中で僕ほどウソツキなスキクは居ないだろうね。
そんなこんなで、一日が過ぎた。