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鍋と到来


避難所の中では、大分のスキクが起き上がるくらいまで回復していた。

腹が減ってるようだけど。

そろそろ食べさせても良いかもしれない。


鍋でも作るか。

すでにパパムイとギギリカは戻っていて、魚を二匹で捌いている。

僕が捌いていたのを見ていたのだろう。

すでに自分たちで出来るように成っていた。


ウウダギは、細い棒を抱えて、座っている。

相当疲れたらしい。ウトウトしているんだ。


ギュギュパニは族長とまた話している。

もしかしたらさっきの棒術の件でまた族長から小言があるかもしれない。


困ったものだ。


「ポンピカ!遅いぞ!もう魚の準備はできてるぞ」

「捌いといたわよ!凄いでしょw」

「ありがとう。二匹とも凄いね。」


二匹は揃って照れくさく笑った。


「じゃぁ、起きてるヤツも多いからそろそろ食事にしよう。少し料理するから待っててね。」

「ポンピカ。手伝うぞ!美味いもん食わせろよ!」

「あたしも手伝うわ!」


取り敢えず鍋に大量の水を張った。

鍋の下に火を起こす。

暫く待つ。


「ポンピカ。まだか?」

「水が沸くまで、またなきゃね。」


「ポンピカぁ。あたし、お腹減っちゃったよぉ〜」

「ハイハイ。ちゃんと作るからね」


食いしん坊のパパムイとギギリカの圧が凄い。

早く作れとプレッシャーでしかない。


耐えること、数分。ようやくブクブクと泡が立ってきた。


「じゃぁ、具材を入れるよ。」

「待ってました!」

「はやくっ!はやくっ!」


もう食いしん坊達は待つ事が出来ません。

せがみっぱなしです。


具材をドンドン投入。最後に塩を少し入れる。


暫く待つ。


「なぁ、ポンピカ!もういいんじゃねーか?美味そうな匂いするぞ」

「そうよ!きっと大丈夫よ!たべちゃお?」


待てない二匹だなぁ。

と思っている所で、火が通り始めている。

この辺で穫れる魚は基本的に身が白い。

湯の中に入れればよりふっくらと成る。

一緒に入れた野菜もどきの葉っぱもいい感じにゆだってる。


味が出ていそうだ。

塩加減を見るために少し味見をする。

しっかりとした魚の味が出ている。


「どうだ?良いだろ?なっ!なっ!俺もう腹減って動けねーよ〜」

「あたしもぉ〜」


どう見ても、ご飯時に遊んで帰ってきてハラペコの子供だ。

しかも母ちゃんにせがみっぱなしのソレにしか見えない。


「はいはい。そろそろいいかな?器を持ってきなさいね」


ちょっと母ちゃんチックに言ってみた。

それに対し、パパムイとギギリカは元気良く「はーい」と返事をして、

自分の器を持って来て僕に渡してくる。

ただ、同時に渡されるのは困る。

なのでパパムイ、ギギリカの順で並ばせる。


パパムイの器に木で作ったオールの様なスプーンもどきで鍋をよそる。

魚肉の塊と野菜。そして汁をたっぷりと。

同じものをギギリカにもよそる。


「あちっ!ポンピカ!熱いぞ!」

「ふーっ!ふーっ!」


もうパパムイは我慢が出来ない子なのでいつものことだ。

だけど確かに鍋の物は熱い。

だから、小さい木を削って作ったスプーンを使えと言っておく。


パパムイがスプーンを手にすると、真っ先にかぶり付いたのが魚肉。

そして、感想が飛び出た。


「うんめぇ〜!なんだよこれ!焼いたのもうまかったけど。これはすげーぞ!あちぃ!」


いつもの「あちぃ!」が聞けてよかった。

それを見たギギリカは慎重な方だったにも関わらず、我慢が出来なかったよだ。

スプーンをつかって、魚肉にかぶりつく。

しっかりフーフーしたのが良かったのだろう。

そんなに熱そうではない。

そして感想が飛び出した。


「えっ・・・えっ!魚ってこんなに美味しかったっけ?あれ?葉っぱも美味しい!味が染みてる!」


こうして二匹の毒味が終了。

二匹はボケーッとした顔で、互いに器を持って座ってしまった。


それを見た、ギュギュパニが猛スピードで自分にも分けろと言ってくる。

勿論分けます。

全員分あるんだしね。


「なんだ!これは!・・・何だこれは!ポンピカ!何だこれは!」


はい。「何だこれは」さんの出来上がりです。

次、ウウダギと思ったけど、ウウダギは疲れてて寝ちゃってる。

いま起こすのも何だから、先に皆に分けよう。

族長から順にドンドン配っていく。


結局まだ意識がない二匹以外に渡った。

あとは僕とウウダギの分だ。

鍋の底の方にはまだ、魚の身が残ってる。

僕は、ウウダギ用の器によそる。

そこで、僕の分がほとんどないことに気づいた。

まぁなんとでも成るし、大丈夫。


先にウウダギに食べてもらおう。

僕は其のへんの草や葉っぱを齧る。


「ウウダギ。ウウダギ起きれる?」

「う、うん。ポンピカ・・・」


眠たそうにしているウウダギ。

まだ視点が定まっていない。


「ご飯だよ?食べるかい?」

「うん。食べる」


食べるといいながら寝そうに成る。

本当に可愛い。

僕は、そんなウウダギにスプーンでちぎった魚肉を

ウウダギの口に運んだ。

匂いに誘われたのか、鼻の穴がパフパフとして、目が開き口を開ける。


まんか、子犬見たいだなぁ・・・。


口の中に冷ました魚肉を放り込む。

するとゴクンと飲み込んだ音がした。

様子を見ると目を開いた。


「どお?おいしい?」

「うん。味がする。・・・おいしい」


いつもの語句に追加で「おいしい」いただきました。

幸せです。


続けて、更に葉っぱや、汁、魚肉と行った感じでウウダギの口にドンドン運ぶ。

そのすべてがウウダギを元気にしていってるようだ。

みるみる目がはっきりと開き、じぶんでスプーンを持つように成る。

よかった。力が戻ってきたんだね。


「大丈夫だった?今日は疲れたんだろ?」

「うん。初めて。」


もしかしたらあんな風に親子で何かをするという事がなかったんだろう。ウルグズだしな。

やらなかったんだろうけど、もしかしたらウウダギはとてもはしゃいだのかもしれない。

完全に糸の切れた人形のようだったしな。

それにまだ小さいんだ、仕方ないだろう。


そう思い、僕は葉っぱを齧る。

うん。ギギリカが採ってきたこの葉っぱ美味しいな。

あとでなんの葉っぱか教えてもらおう。


皆も食べ終わったのかな?

と思い、周りを見てみると、匂いに惹きつけられて我慢できなくて食べたヤツや、

食中毒が魚だったせいからか、疑心暗鬼になっているヤツもいて、手を付けていないヤツもいる。


なかには、葉っぱだけ食べて、どうしたもんかと悩んでるやつも・・・それは族長か。


「皆聞いてくれ。この”鍋”っていう食べ物は火を使ってるから安心していいよ。”ジン”にはならないよ」

「・・・それは本当か?ポンピカよ」


「族長?そうだけど?」

「ふむ・・・わかった食べてみよう。」


そういって、族長が口に運ぶ。

瞬間、ビクッ!っと動きが止まった。

もしかしてアタリを引いたか?

とちょっと思ったけどすぐにガツガツと平らげた。


「焦らせないでよ。族長」

「・・・こんな美味い物、食ったことがない・・・何だこれは?”ナベ”とはなんだ?」


「ただ、味付けて、煮込んだだけの食べ物だよ?スキクは食べないの?」

「・・・そうだな、食わないな・・・なぜなら今もそうだが火が怖いからだ。食べ物に使うのも肉が傷んだのを焼くくらいだからな」


ああ、そうだった。

うん、失念してた。

あまりにも火から避けようとしないもんだから

火が怖わくないんじゃないかって思ってしまったけど、

パパムイやギギリカとは違い族長はまだ焚き火経験は浅いんだった。


族長が食べたのを確認したんだろう。

手を付けていなかったヤツが食欲に負けて、器を空っぽにする。

そして一様にして、ボケェーっとした顔に成る。


スキクって血糖値が上がるとボケェーっとなるっていう習性でもあるのか?

僕はそうならないしウウダギもギュギュパニもならない。


なんでだろ?


まぁいいや。食事もしたし、ウウダギは食べ終わってから疲れたのかダウンしてしまった。

パパムイやギギリカはマダマダ何かできるし、時間も有る。


ギュギュパニに避難所の事を任せて、僕ら三匹だけで、保存用の食料を取りにでも行こうかな。

そして塩をつかって、干そう。

それで少しは日持ちがするし、何より、やることが有るのは良いことだ。


「パパムイ、ギギリカ、コレからまだ時間あるから一緒に魚を沢山捕りにいかない?」

「また取りに行くの?あたしは良いけど?パパムイは?」

「俺もいいぜ。まだ動ける」


決まりだ。僕ら三匹はそのままギュギュパニに断り、外へ出た。

空の様子を見た僕は致命的な事に気がついた。


すでに風が強くなっている。

湿気が無いのに・・・

これはもう今夜から始まるぞ。


食料足りるか?

薪も少しは取って置かないといけない。

こまった、どうしよう・・・

でも取り敢えず昨年は一週間続いたんだ。

ならば一週間分と言う事で、間に合わせないといけないだろう。


「なぁ?ポンピカ」

「ん?」


「今夜にでも来るんじゃねーか?」

「そうね。あたしもそう思うわ」

「奇遇だね。僕もそう思ってたところだよ」


パパムイや、ギギリカも天気をみて、直感したんだろう。

本当に危機感が募る雰囲気なんだ。


「食料足りるのか?」

「そうねぇ・・・今有る分では少したらないわよね」

「たしかにね。でも雨が降るまでの間にできるだけ食料を確保しないとね」


パパムイも食料に付いてやはり気になっているんだ。

ギギリカも残っている物を計算しながら答えてる所を見ると、

勉強が生きているきがして嬉しい。


「そうだな」

「そうねぇ・・・。ねぇ?」


ギギリカから何か提案があるようだ。


「ん?」

「なんだ?ギギリカ」


「果物は日持ちするじゃない。」

「確かに」

「おう、たしかにな・・・でも、魚や肉がなきゃ意味がないだろ?」


ギギリカが建設的な提案をだしてきた。

僕としては、一週間ぐらい野菜や果物でも問題ない。

だけど、他の肉食派のスキクは我慢できるかな?


「そーかなー?」

「なんだよ?ギギリカも植物派になっちまったのか?」


「そういうわけじゃないのよ。今いる”ジン”のスキクもそうだけど、ポンピカの話じゃ、あまり強い食べ物は無理らしいじゃない」

「ああ、なるほどな・・・。じゃぁ、果物を沢山採るか?」


ギギリカはとても良く考える事が出来るスキクだな。

ここ最近、勉強をしてからというもの自分で良く考えると言う事を覚えたようだ。

とても重要なことなんだよね。


今まで、スキクって、与えられた事に限り考えたり答えたりを繰り返していたらしくて、

自ら深く考えたり、思慮を回したりと言う事をしてこなかった。

実際そういう風潮があるせいで、文明が進んでない様に思えて仕方ない。

これはいい傾向かもしれないな。


「じゃぁ、魚もほどほどに採るけど、主に植物類を沢山とっていこうか?」

「あたしはそうした方が良いと思うわ」

「なるほど・・・鍋なら異存無いな。俺もそれでいいぜ。多分肉食派もそれでいいって言うはずだ」


話は決まった。

今日中に採れる分を確保しよう。


僕ら三匹は、それぞれ担当を分けた。

パパムイは魚、ギギリカは果物、僕は野菜類。


三匹はそれぞれ避難所と収穫場を言ったり来たりと忙しく過ごした。

ここで、気づいた事が有る。


ウウダギが編んでくれた紐を利用して袋を作っておけばよかったと思った。

あとは、パパムイの釣りを漁として、行わせるために網でも作れれば良いんだけどね。

きっと大量に穫れるはずなんだ。

まぁ、今は仕方ない。


そんな事を思い、食べられるキノコや、

白菜の様に水分を多く含んだ葉っぱ。

キュウリの様な瓜、

パパイヤのように硬い木の実、

沢山のナッツが詰まっている大きな木の実。

他にも様々な植物を腕イッパイにかかえては、避難所へと積み込んでいく。

船で、集落へと戻る際にはこれと言って食べ物が見当たらなかったんだけど、

水が引くと、不思議に沢山の食べれる植物が目に映る。


もしかしたら植物は生存戦略として、水没を受け入れているのかもしれない。


なぜかと言えば、泥の中に埋まっていたであろう、硬い実から若い芽が出始めているからだ。

すでに僕の腰くらいまで細い草が伸びている。

多分、雨季に水が浸透して、殻がふやけて、からじゃないと芽が出ないと言う植生なのかもしれない。

面白いなぁ。


・・・あれ?

この草って、確か米や麦のように穂を垂らすタイプのやつだったよね?

もしかして、米か麦のように種が採れるんだろうか?

観察が必要かもしれないな。


農耕は今後必要に成ると思うし、僕もお米は食べたい。

仕方ない、これは重要事項に入れておこう。

折角それっぽいのが有るんだから、この機会を逃さないようにしないとね。


さて、風が強くなってきた。

今夜からだろう。


僕はありったけの野菜を避難所へと何度か運んだ。

避難所にはパパムイもギギリカもすでに戻っていた。

二匹の収穫はなかなかの量である。

僕が採ってきた野菜と合わせれば、十分に一週間は過ごせるだろう。

さて、そうなるとこの一週間の間、どのように過ごすかだけどなぁ・・・。

今日から暫く外に出れないわけだし。


避難所の強度は十分だと思うけど、実際は過ごしてみないとわからないことも有る。

なんか博打を打っている気分で仕方ない。

皆には言えないけど。


「ポンピカ、魚獲ってきたぜ」

「うん。ありがとう、これでミニョルンを超えられそうだ。」


「あたしだって沢山採ってきたよ!」

「うん。ギギリカもありがとう。その果物があれば弱ってるスキクにも十分栄養が行き渡るよ。助かる。」


「へへーwあたしもやれば出来るのよ!」

「ギギリカは、果物の皮がほしいだけだろ?」


「何言ってるのよ!パパムイには皮あげないからね!」

「んなもんいらねーよw」


「まぁまぁ、二匹共、言い争わないのっ!仲良くだよ。仲良く」

「むぅ・・・まぁポンピカがそう言うなら・・・」

「まぁな・・・俺も少し言い過ぎたかもしれねぇ・・・すまねぇな、ギギリカ」


この二匹はとても素直だし、仲が良い、ホント見てて飽きないよ。

それに、なんだか二匹共嬉しそうだしな・・・仲良しで居て欲しい。


「さて、二匹共、魚を捌こう」

「おう。」

「いいわ。」


二匹が元気に答えてくれた。

そこに、ギュギュパニが近づいてきた。


「なんだい?もう遅いのにコレからまだ何かやるのかい?」

「うん。この釣ってきた魚だけは塩で干すか、付け込まないと日持ちしないんだ。」


「・・・なるほど、それをしないとまた”ジン”に成るっていうアレだね?」

「そうそう。ギュギュパニは覚えが良いね」


「ふん。あたしはこれでもザウスだからね・・・パパムイとはちがうさw」

「おい!ギュギュパニ!俺だってそんくらい知ってるさ!」


「おおそうかい?じゃぁ、あたしが手伝わなくても良いんだね?」

「・・・いいさ、俺等でやるから、なぁ!ポンピカ」


「まぁまぁ。ギュギュパニは、なにかしたいかんじ?」

「いや・・・ちょっとイラついてただけさね。・・・なんでかねぇ・・・あたしにもさっぱりだけどねぇ・・・」


ふむ・・・さっきギギリカとパパムイもそんな状態だった。

今もパパムイとギュギュパニがそうだった・・・どっちも雌の方がイライラしている様子だ。


もしかしたら、ミニョルンってのは月の満ち引きみたいに、

僕らスキクやザウスに何かしらの影響を出しているのかもしれないな・・・

特にそれが顕著なのが雌ってことなのかもしれない。


ふむ、一考に値するなぁ・・・。

もしくは・・・雌特有の物?まさかねぇ?

こんなミニョルンの時に?


まぁいい、取り敢えず作業は進めよう。

樽みたいなものは作っていないから仕方ない。干す方法でやろう。


それから、パパムイと僕ギギリカとギュギュパニで作業した。

パパムイは不満そうだったけど、まぁ作業が終わる頃には機嫌も治っていたんだ。


そして、そろそろ寝ようと思う頃に、ミニョルンが到来した。


「ポンピカ。怖い。」


ウウダギが風の音で起きてきた。

僕はもう寝ようと思ってたんだけど・・・。

やっぱり、音が五月蝿かったようだ。


風が、避難所へと当たると、ゴオオっと凄い音が立ち込める。

集会場に居た時は、隙間風があったけど此方では、ほとんどそれがない。

一部通気の為に開けている天上の辺と、

床に近い辺りの壁の穴からかぜが吹き込むかと思ったけど、

外の壁、葉っぱの壁が仕事をしたようだ。

弱い風が吹き込む程度で済んでいる。

雨は、全く入ってこない。


この避難所は十分機能しているとおもう。

それに風が幾ら強くてもこの作りだ、軋みも出ていないようだし、強度もいい感じだ。


ただ、中に居る皆、スキクとしては、不安なのかもしれない。

寝ていたはずのほとんどのスキクが恐る恐る起き上がってきてしまった。


族長はそれを見て、皆を一所へと集める。

族長も随分体調を取り戻したようだ、さっき食べた食事が良かったのかもしれない。


「皆、聞いてくれ」


族長のお言葉です。


「ミニョルンが来た。だが、集会場ではこのミニョルンを凌げなかったであろう。」

「幸い、”ジン”から逃れたワシ等だけは、十分頑丈なこの避難所に来れた。」

「だが、それでも初めての場所ということもあり、不安なスキクもいるだろう。」

「ワシも不安を抱えるその一匹であることは、言うまでもない。」

「だが!皆よ。安心せよ。この作りの建物は、我らスキクの歴史の中にさえ作られた事が無い程の物だ。」

「頑丈で、あることはワシが保証する。だから皆よ安心してミニョルンをやり過ごすのだ。」


族長のお言葉でした。


族長の言いたいことはわかる。

事実不安が広がっていたんだ。

それを払拭しなければ、

不安なスキクの中には何をしでかすかわからないヤツもいる。


まぁ、錯乱しないでよね。ってことだけどね。


僕の側で未だに震えているウウダギを僕は抱っこする。

可愛いウウダギのことは、僕が守るから!


「ウウダギ。ミニョルンは音が大きいね」

「うん。」


「外は水で一杯だよ」

「うん」


「でも、ここは大丈夫。この避難所は吹き飛ばされたりしないし、雨も入ってこない。水が溢れても浸水したりもしないからね」

「うん。わかった。」


「だから、怖がらなくていいよ。もしどうしても怖いなら僕の側に居なさい。僕が何が有っても守るからね」

「うん!」


ウウダギの声に元気が出てきた。

震えも止まる。

そして、僕を見つめるウウダギの目が真ん丸でクリクリして可愛い。


なんだかんだ言って、皆結局は眠気に勝てず、諦めもあったのかもしれない。

僕も疲れていたしね。

すぐにそのまま、眠りについてしまった。


ウウダギも僕の胸の中にうずくまる形で、寝息を立てた。


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