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逃げても追ってくる


コドッ。


反射的だった。

すぐに転がり、棍棒を回避した。

床がドロドロしててヌメヌメしているのが嫌な感触では合ったけど、

それどころではない。


だって、死体が動いたんだ。

振り下ろされた棍棒は余り強い音は鳴らさなかった。

振り抜かれた速度がそれほどじゃないんだろう。

もしかしたら、重力に任せて降ろされただけか。


回避後即座に振り返り、

動く死体を見る。

こう言っちゃあれだけど、

フラフラしていて、力が入っていない様子だ。

顔の半分が腐ったり虫にやられたりしていて、眼球はない。

長い口顎も削れて、鼻の軟骨も失っている。

唇はスキクにはもともと無いけど、

それでも歯茎らしきものはある。

ソレがむき出しに見えているくらい干からびている状態も見受けられる。


ミイラ化してる途中。

もしくは腐って乾燥しましたと言えなくもない。


なんにしても、

前世ではこんな事起きない。

此方に転生してきてから気とか霊とか不思議なものは見たけど、

物理法則に完璧に反している。


動力源はなんだろう?

気持ち悪い。

筋肉はどうやって動いてる?

気持ち悪い。

センサー類はどうやって成り立っているんだろう?

気持ち悪い。


どんな疑問も最後は気持ち悪いで整ってしまいそう。

ソレだけじゃない。

どうやって立ち上がった?

三半規管は完全に潰れているように見える。

バランスは?

何処をどうやったらバランスを取れる?

二足歩行はかなりの操作性のはずだ。

そう簡単に死体が起きて動けるようなものではないはずだ。


なんだこれ?

目の前の光景がちょっと霧がかかったように思えてしまう。

まさに漫画、まさに映画と言っていい。


あぁ・・・。

スプラッターは僕苦手だってのになぁ。


観察に少し時間をかけてしまった。

ぼーっと眺めている間にも後ろの方でゴトゴトと音がする。

振り返ると床に崩れ落ちているご遺体が、

ムクッっと起きたかと思うと、表面の肉とか内臓とかがズルっと剥けて、

中から骨だけの死体が起き上がってきた。

ソレが、ズルッと剥ける感覚の通り、少し滑っているようなテカリでキレイになっていたりする。

白骨が少し艶があるんだ。


ってか、これも可怪しい現象だ。

骨、どうやって動いてんの?

アクチュエーターとかないよね?

ギアは?

筋肉が削ぎ落ちてるのに動けるのが怖い。

ありえない。


どうやって動いてる?

ソレばっかりが僕の頭を駆け巡っている。


気づくと、集会所内に転がっていたご遺体全てがワナワナと動き出している。


ハッ!と思いすぐさま外へと駆け出した。

駆け出したけど、入り口にでーんと居座るコアトル。

その後ろにはカラッカラに乾いて居るのが分かるミイラスキクが30体位うろついている。

小さいのから大きいのまで・・・。


コアトルは攻撃されない様子だ。

後ろではノソノソとあるいはズルズル、ガチガチといいながら、

僕の方へとゆっくりと進んでくる死体が複数。


取り敢えずコアトルの胸辺りに助走付けて飛び蹴りしてやった。


コアトルは多分そんなことされるとは思ってなかったんじゃないかな?

胸の辺りをバコーンと蹴られると、

そのままバランスを崩してパタリとゆっくり後ろへ倒れた。

まるで、トランプが倒れるようにパタリと。


砂埃が舞い。

コアトルはキョトンとした目で宙を仰ぐ。

僕は颯爽とコアトルを踏み台にして集落の外へと駆け出した。


あの動く死体連中は、

足が遅い。

走れない様子だ。

ただ、あんな状態で動いていて、

何処が弱点か分からない物体には関わりたくない。


一目散に集落の出口へ、


こう言っちゃなんだけど、僕はウチの集落で一番足が早い。

そりゃそうだ、前世の知識で体力を鍛えるため走り込んだからだ。


骨格もすでにスキクの骨格じゃない。

人間の骨格にかなり近づいている。


筋肉の質もありえないくらい強靭で、

持続力があるのがココ最近のトレーニングでわかった。


そんな僕が全力疾走すれば、

半日歩く距離だって、多分1時間位で走破するだろう。

しかも全速力で走りきれると思う。


何を言ってるかと言えば、

もうゾンビとかヤダッ!

逃げる!

僕グチャグチャ系は苦手なんだよ!


全力疾走で、走る!走って走る!

さっき入ってきた集落の門も越えて、来た道を戻る!


砂漠と大して変わらない砂地に変化しているヴァレヴァレ集落の周辺。

全力疾走でも足が取られて思うように走り抜けれない!

でも走る!ヤダッ!


「わぁーーー!もうイヤァダァー!」


思わず叫んだ。

だって、あんな気持ち悪いのに関わりたくないんだ。


無我夢中で走ってると、

ふいに足元の抵抗感と言うか地面から足が離れた気がした。

ハッ!と下を向くと、宙を漂っている・・・。


僕の肩を両方からガッシリと掴む大きな足。

コアトルめっ!


「ちょ!なんで?なんで僕なの?自分たちでやればいいんじゃん!僕こう言うの苦手なんだよ!もう見るだけで体中が痒くなるんだ!限界なんだよ!ねぇ?聞いてる?ねぇ!」


だめだ。

全くきく素振りがない!

何時もの感情のない目が僕を無視して目的地へと運ぶ。


空の上からでも分かる。

ましたにはゾンビ映画も何とやらな情景だ。

宛もなくワラワラとただ無軌道に動いているスキクが・・・。

そして、殆どが腐っているか乾いているかのどちらかに見える。

一部、棍棒を握っている骨だけのが居るけど、

ありゃゲームとかに出てくるスケルトンとかだろう。

だからといって、そんな物理法則に反した物が動いてて言い訳もない。


ゾンビならまぁ、納得するような内容を考えつくけど、

スケルトンはもうなんが何やら・・・。

スケルトンってロボットかな?

要らない考えだけがどんどん増える。

あの骨の中にアクチュエーター入ってるんじゃないか?

どう考えてもそうとしか思えない。

骨だけで動く現象が有ればロボットはもっと普及してるだろうし・・・。

いやいやそうじゃない。

そういう話じゃない。


クッソッ!コアトルめっ!

なんで僕を集会所に連れ戻すつもりなんだよ!


真下に集会所が見える。


「えっ?これ何処降りるの?下ゾンビだらけだよ?」


言葉を言い切るか言い切らないかで肩を掴んでいたコアトルの足が離れた。

一瞬の出来事で、「はぁっ?」って間の抜けた声が僕を通り過ぎてった気がする。


次の瞬間には集会所の屋根をぶち抜いて、

そのままさっきの魔法陣の前まで・・・。


ソレよりも、

あの高さから落とされて僕の身体にはそれほどの衝撃も、

それほどの痛みもなかったことがびっくり。

幾らスキクが高い所から落ちても平気だったりする生き物だとしても、

結構な高さだったよ?

滞空時間体感で5秒くらいだったし・・・。

床板も粉々な感じで衝撃の強さが如実に現れている。

何メートル落ちたの?ってか落とされたの?


開いた屋根のアナから上空を旋回しているコアトルを見上げて思う。

ゾンビとかそういうのよりコアトルの所業の方が怖くなってきた。


ええ?

逃げれば追ってくるし、

嫌だと言えば圧力掛けるし、

何なんだよアレ?


ちょ・・・。

もうかかわらないでほしいなぁ。


ふぅ・・・。

さて、どうしたものか。

周囲に居たはずのスケルトンは外に出ていっている様子。

どうやって外へと出れたのかわからないけど・・・。


集落の中にあった骨は全て動いて外へと出てしまった様子。

今はまわりの崩れた肉片やら鱗片なんかがビクビクしてるくらい。

それと、明らかに魔法陣の中心にある水晶を加えているヤギの頭が動いている。

もう分かるよね。


あの頭。

アレが術の起点、もしくは柱になっているのは丸わかりだ。

雑学王の物知り谷くんには悪いけど、

うんちくこねるより、やっぱりさっさと魔法陣壊したほうがいいね。


取り敢えず、あのヤギ頭と水晶を陣から取り除こう。


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