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何かが行われていた形跡


手前に転がってるスキクの腸が、

不自然に飛び出してソレがドロっとして、

なおかつこう・・・ヤバイ感じだ。


なんか表現できない。


いや、これ前世も含めこんな酷い状態は見るの初めてかもしれない。

ってか以前のウチの集落での病死騒ぎより強烈な光景だ。


他にも複数居たのだろう。

判別できない状態の死体がゴロゴロ転がってる。

外のテントに居た死体のほうがまだマシっていうレベルだ。


炎天下の中完全に腐敗の進行が進みまくって、

もうドロドロっていうのが正確な表現。


こりゃ、ウウダギ他、ウチの皆には見せれないだろ・・・。

まぁ、見せる見せないとかではないけど、

そもそもなんでこんな状況になった?


そして、此の中でヴァレヴァレは生きていられるか?


ほぼ真っ暗の中、

僕が押し開けたドアからの光が差し込む。


それと同時に、

群がっていた虫達が一斉に出口を見つけたとばかりに光のほうへ。

僕の方へと大移動を始める。


咄嗟に僕は、後ろで控えてるコアトルを押しのけ、

集会所から離れる。


すると、

無数の影の塊がコアトルを囲む。


ザマァ見ろ。

正直してやったと思った。


・・・。

コアトル真っ黒の塊に囲まれてもびくともしねぇ。

なんだよ、つまんないなぁ。


コアトルに集ってた虫の群れはあっという間に散り散りに散っていってしまった。

残されたコアトルが感情のないその目で、

集会場へと再度突入しろと告げている。

怒ってるように見えないのが逆にムカつく。


仕方ない。


実際、今の状況で物事を正確に判断できるのは、

僕だけだという事が、一番重くのしかかるストレスだ。


ヤんなきゃいけないのは分かる。

でもあの惨状の中にまた踏み入るのはなぁ・・・。

気分が滅入る。


鼻を覆う布もない。

マスクなんてそもそもない。


辛い。


渋々、集会所へと足を運ぶ。

片手で鼻を押さえ、

中を恐る恐る伺う。


やっぱり死体だらけ。

・・・もうこれ建物ごと焼いて終わりにしたらどうだろう?


コアトルにアイコンタクトを送ってみたが、

アレ、キレてるのかな?

「イケッ!」とシャクってくるだけだ。


はぁ〜・・・。

コアトルと押し問答しててもしかたないかぁ。

やることやってさっさと戻ろうかな。


一度集会所の外で、

焚き火を起こす。

集会所野中が暗いので、

明かりが必要なんだ。


幸い周りには枯れて、

乾ききった木材が大量に有る。

すぐに藁っぽい物も揃ってしまったので、

松明ならぬ、灯りを用意できた。


コアトルはその間ジッと待っていたので、

僕としては、気をもまなくて済んだ。


灯りを掲げ、片腕で鼻を押さえ、

3度集会所へと入っていく。


灯りのおかげで、

周りがよく見える。


ウウダギには見せれない感じの光景が照らされて浮き彫りに成っている。


集会所は大体奥行きが20m程度ありそうな立派な平屋だった。

中間に6本の木製の柱が地面に突き刺さって立っている。


内部の屋根側に梁が有るので、

これを作った連中は以前のウチの集落の連中よりも高度な建築技術が有るとひと目でわかった。


外のテントはネイティブアメリカンが出てくる映画とかで見るような物ばかりだったけど、

この集会所だけは別格なんだなぁ。


全然違う技術が使われている。

中に入って気づいたけど、少し上げ底に成っている様子だ。

床は板張りになっている。

器用に板を作る技術が有るってことだ。


今ではウチの集落では板をすぐに作れるように成っているけど、

以前の文化レベルと比べると明らかにヴァレヴァレはレベルが高い。


なぁ、板張りの床は何処もかしこも腐肉や血が乾いた血痕だらけだったり、

身体から不用意に排泄されたであろう汚物で、かなりの汚れが見て取れる。


建物自体は長方形で、

僕が入った入り口から奥へと長く続いている。

20mのっ距離だ。

灯りに慣れた目で奥がクッキリと見えている。


奥には祭壇の様な何かの儀式が行われたであろう形跡が残る。

形跡の周囲は無数のスキクの腐肉と思われる物で埋め尽くされており、

パッと直感で分かることとしては、この集落の生き残りであった連中は、

ここで、生贄か何かにされたんじゃないか?

そんな疑問が最初に浮かぶほどだ。


形跡へと足を踏み出していく。

形跡自体はちょうど円形状に床へと血文字が描かれている物だ。

描かれている文字は、パッと見では分からない。

未知の文字だと思われる。


第一印象は、

まぁ、漫画やアニメいろんなメディアで出てくるアレと酷似している気がするんだ。


魔法陣。


どう見ても図形と文字らしきものが描かれて、

中心には水晶玉らしきものまで有る。


水晶玉?

水晶って確か石英だよね?

かなりモース硬度で言えば硬い部類に入るはずだ。


硬い物質。

硬い物質は加工が難しいんだ。

前世の様にグラインダーや工具が有れば問題ないけど、

今のこの世はそんな物は手元にない。


つまり、どうやって作ったか不明な代物ってことだ。

完全にオーパーツだろこれ?


まぁ、考察は置いておこう。

その水晶玉ってのが首だけの黒いヤギの頭の口にがっぽりハマっている。

ヤギの頭自体は、多分前世と変わらない様なヤギだと思う。

大きさもまぁ、手頃?


更に魔法陣の中にいくつかの円形のラインで区切られている場所があり、

その中に毛むくじゃらの手が置いてあったり、

他にもいくつもの素材っぽいものが置かれているのがわかった。

置かれているものはどれも生き物の体の一部だろう。


ただ、集会所はただ広いワンルーム状の作りだから全貌が分かるけど、

生きている動物もしくはスキク・・・ザーザースが見当たらない。


ヴァレヴァレが生きていればここに居ると思ったけど違ったみたいだ。


果たしてヴァレヴァレが生きているのか?

それとも死んでいるのか・・・。

謎だらけだ。


ただ、エネルルたちの話しからしてこの魔法陣や儀式跡は、

全部ヴァレヴァレが仕組んだことだと思われる。


・・・。

襲われる心配が無さそうだなぁ。

ちょっと物色と言うか、あの水晶だけでも盗るかぁ。

でも魔法陣にズカズカ入っていくのはダメだと思うんだよね。


こんな術は僕の知識にはないし、

何より手に余りそうだ。


できれば触りたくないんだけど・・・。

入り口の外にコアトルの影が見える。

感情がないその目が逆光の中でも光って見えるんだ。

その目が言ってる。

「入ってミソ?」ってさ・・・。


絶対ふざけてる。

なんで感情無いのに伝わってくる言葉がふざけてんだよ。

頭来るなぁ。


どうするか?

う〜ん・・・。


ん?

そう言えば、

前世で谷くんがこう言うの詳しいようなこと言ってたな?

なんだっけ?


物知りの雑学王の谷くん。

普段無口なんだけど、

いざ興味が有ることを聞いてしまうと、

事業中だろうがなんだろうが喋り倒すというちょっと厄介な友達だった。


仲良くなると、

事有るごとにうんちくを垂れ流すんだ。

聞いてる此方がラジオ感覚で聞き流してると、

突然、テストをしてくるんだった・・・。


もううざいんだけど、悪いやつじゃなかったんだ。

むしろ要らないけど、面白い知識も提供してくれるんで、

まぁ、いいかな?と思ってたけど・・・。


ああ、今はソレどころじゃないか。

えっと・・・?


魔法陣って西洋のなんか魔法とかで使われてたとか?

そんなヤツでアニメや漫画、映画なんかでよく見るやつだよって言ってたなぁ。


そんで・・・。

そうだ、アニメや漫画の様な代表的なそういうのは誇張されたようなものだったらしく、

本来魔法陣っていうのはなんか、円のラインの中に四角いラインがはいってマス目になってて・・・。


そうそう。

そのマス目に文字が刻まれていたりするやつを言うんだよと言ってたっけ?

なんだっけ?

アブラメリンとか言う名前は覚えてる。


・・・ああ、思い出してきた。

魔法陣って本来願い事を暗号化して表現するための技術だとか?

儀式と言うよりタリスマンって呼ばれるお守りに刻まれたりしてるんだそうで、

自己暗示に使う要領で、魔法陣の効果と言うか願いを成就させる手法だったはず。


うん。

そんな話しだったっけ?

たしかぁ・・・。


そうだ!

魔法陣ってのは、

そのサークルと言われてる円形のラインを消すと、

まぁ、効果が薄れるってのが定番だよって言ってた。


うんうん。

意外にシンプルだ。

消すか。


・・・ん?

この魔法陣は、谷くんの魔法陣とだいぶ違うぞ?

なんていうか、複雑なやつだ。

マス目なんかも無いし、

何より黒ヤギとかの頭が有るんだった・・・。


谷くん?

これはどんな部類なんだろう?

聞きたいけど、

前世だしなぁ無理っぽいや。


えーっと・・・。

これが西洋な感じの魔法陣って言う事ならぁ?


う〜ん。

だめだ。

解決法がわからない。


まぁいいか。

谷くんの方法でいこう。

どうせ似たようなものだろう。


一度外にでて、手頃な石を手に持って中に入る。

松明ならぬ灯りを片手に、もう片手に石・・・。


臭い。

非常に臭いけど4回目とも成ると我慢出来なくもない。

涙が出るし、鼻の奥が甘ったるいけど、貰いそうな据えた臭いがする。

吐く時の刺激によく似てる。


まぁ、もうこの際だから吐いてるわけだけど、

胃の中空っぽで胃液しかでないし、

仕方ないかぁ。

我慢だなぁ。


コアトルはこんな臭いでも平気なのかな?

入り口でジッと待ってるし臭わないはず無いんだけどなぁ。

まぁ、何はともあれ消そう。

臭いがキツイので手早くやろうと思う。


手に持った石を勢い良、

床板に刻まれている魔法陣の外枠と思われるサークルへと突き立てた瞬間だ。


一瞬視界の端っこで、

骨が露出して壁に倒れ込んで顔が半分ドロっとしてた遺体が横にずり落ちたのを見た。


・・・。

これ本当に魔法陣消して大丈夫なのかな?

谷くん?

大丈夫かな?


でも、ホラーでもないしスプラッターでは有るけど、

そもそも死体が動くなんてそんなことはないはずだ。

キョンシーというわけでもない。


動ける理由がないんだ。

生命活動が止まって、

動力も回路も・・・。

そもそも生き物は死んだら動けない、動かない。

ただ、自然に帰っていくだけだ。


床板の作りが甘くて、

シーソーの様に死体を刺激したのかもしれない。


少し過敏に成ってるかもなぁ。

まぁ、いいや・・・続けよう。


ガンッ!

ガンッ!ガンッ!


ゴリゴリ、ゴリゴリ、ゴリゴリ。


音を立てて、床板が削れる。

持ってきてた石がいい塩梅にヤスリっぽい質感だったから良かったのかもしれない。


良かったのかもしれないんだけど・・・。

見間違いじゃなきゃ。


明らかに周りの遺体が動いてる。

解けかけたはみ出してる内臓とかがビクビク言い始めてたり、

骸骨となってる顔がカタカタと下顎を鳴らしたり・・・。


これ、板のシーソーとか振動とかそんなのじゃない気がする。

これ、ヤバイやつじゃないか?

魔法陣はほっといた方が良くないか?

精霊さんは放置でいいんじゃ・・・。


コアトルさん?

これ無理だって、

ここまでやったんだから妥協しようよ。

僕そろそろ無理、限界だって!


ホラーとかスプラッターは僕苦手なんだよ!

幽霊とかはまぁ、分かるんだけど、

どうして死体が動くような話が有るのか理解できないんだよ。


特にゾンビは無理!

臭いし、汚いし、何より怖い!


どうしよう。

視界の端っこで倒れ込んでた遺体が、

変な体勢で半分起き上がってる気がするんだ。


魔法陣を叩く度に動く。

止めると止まる。


やっぱやめようよ。

これ手を出しちゃダメなやつだよ!コアトルさん!

コアトルさん?


入り口の方を見たら、

コアトルさんが逆光で睨みを効かせているのは見えるけど、

その後ろになんか影が・・・。

数体のスキクらしき影・・・っていうか明らかに変な影だ。


動いてるけど、さっき調べた時にも分かってる。

生存してるスキクは居なかったはず。


・・・参ったなぁ。

コアトルさんは気づいてないのか?


コアトルさんの後ろの影の群れが少しずつ集会所へ押し寄せてる気がする。

此のままだとコアトルさんが餌食に成るぞ!?


ん?

コアトルさん・・・。

餌食にしようかな?

仕返ししたいしね。


独力で解決できないくらいなら要らないかなぁ・・・。


取り敢えず、

魔法陣は崩そう。


ガッツッ!ガッツッ!ガッツッ!

ガシッ!


ガリガリガリ!

ガリガリガリ!


ゴッ!


床板を壊せた!

さぁ!どうだ?


僕が入り口を振り返った瞬間視界の端で棍棒を振り下ろしてきたご遺体を見た。



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