修行とヴァレヴァレ観察
ベネネズ達と離れてから数日が経つ。
僕は、相変わらずシャ・グギの巣で野宿しながら修行を行っている。
どんな修行かと言えば、
じいちゃんに教わったサバイバル訓練から、
体操や他には、本格的に格闘術を身にしみつける為に、
まずは套路を意味を考えながら行っている。
あと、木人を作った。
思いの外簡単だった。
と言うか、この辺の木々はずいぶん柔らかく感じる。
小さい獲物を解体するために持ってきた3センチほどの刃渡りのナイフ。
これで削れてしまったんだ。
まぁ、穴を開けてちょうどいい感じの枝をぶっ刺していけばいいだけの簡単な作業だった。
木人は基本体の部位を強くする目的で使われる物だ。
もともと鱗で覆われている僕らザーザースには余り意味がない。
木人ならぬ石で出来た石人とかならまぁ、効果があるだろうと思う。
でも、木人は体の部位を鍛える他に套路と合わせ、
その技を体に染み込ませるという作業が出来る。
要は技や技の意味を理解するだけでは、
本当の意味で理解したとは言えないんだ。
何も考えず体が自然にその動きを行う。
これが通常の状態。
何も考えず相手の動きに完璧に対応出来る。
これが理想だ。
詰まり、何も考えないで水の様などんな形にでも変化できる状態を常に保つ。
これで、普通ということに成る。
僕はまだ、何かをやってやろうとか、
何処を攻めれば突破できるだろうと考えてしまう。
達人は何も考えずに適切な対応を自然に行う。
僕はそこを目指したほうがきっといいんだと思う。
ザーザースの中に居て、
格闘術が使えるのは恐らく僕だけだ。
ならば、僕が開祖と成るのは決定事項だ。
スキクが、ザウスが僕の格闘術を身につけたらどうなるだろう?
きっと、平和がもたらされる。
なぜそう思うかと言えば、格闘術は兵法ともなるし、
要は「戦わずして勝つ」とか、
そういうたぐいの活かす技を身につけれるからだ。
そうすれば、皆相手の機微を理解して、
思いやりを持った社会になれる可能性が高い。
だって、危険な物が有っても対処を皆が自然に行えると成れば、
悪い考えのやつが仮に暴れたとしても、
皆が皆、それに対応する事が出来、
あっという間に沈静化するだろう。
まぁ、今考えたのは理想なんだろう。
でも僕がより高みを望まないと、
正直じいちゃんに申し訳ない。
じいちゃんには孫が先立ったっていう思いをさせてしまったんだ。
余り考えないようにしてたけど、やっぱり申し訳ないなぁ。
少しでもじいちゃんの功績をこっちの世界でも受け継ぎたい。
正直そういう気持ちが強い。
他はただの理由づけにすぎない。
じいちゃんの技を皆に教えたい。
そして、広めたい。
きっとじいちゃんは「悟、そんな事せんでもええ。気にせんぞ」と言うに違いない。
でも僕が納得できないんだ。
じいちゃんが好きだった。
色々教えてくれた。
その技が、その知識がこっちの世界に来て、僕を救ってくれた。
どうしようもなく、
お返しが出来ないかと考えてしまうんだ。
今回僕の体が随分と変わった。
それは吉兆だと思った。
より理想とする体に成った気がする。
前世では、どちらかと言えば小さかった。
満足にじいちゃんの技を習得できない事も多々有った。
今の体なら多分出来る気がする。
体は細いけど、筋肉トレーニングを行い。
套路を行い。
ストレッチを行い。
修練を積む。
きっとソレが後で良い事に成ると確信できる。
ならば、一心不乱に取り組むべきだ。
考えは捨てよう。
基本はきっちり、
毎日取り入れよう。
幸い、スキクは物覚えがいい。
体に染みつきやすい。
ならば、取り組もう。
まぁ、考えすぎるのは僕の悪い癖だ。
しっかし、何でこう事あるごとに心のもう一個の方の声が聞こえるんだろうね?
昨日からしきりに「呼べ」とか「叫べ」とか色々伝わってくる。
余り踊らされるのは好きじゃない。
なので「黙れっ」と一喝してやったら黙った。
今は静かにしている気がする。
数日はそんな感じで過ぎていく。
食事に関しては、特に困ったことはない。
というのも、僕は基本草食なわけで、
シャ・グギは肉食。
そうなると縄張りには、
食べれる手付かずの野菜がゴロゴロ自生している。
僕はそれを煮たり、焼いたりとちょっと工夫は必要だけど、
バリバリ食べている。
思いの外水気が多い野菜たちが多くて嬉しい。
フレッシュな気分がホント心地いいね。
タンパク質に困るんじゃないか?
そう思う人も多いと思うけど、
意外に木の幹の中や朽木の割れ目に居る虫の幼虫が美味しい。
クリやキノコっぽい風味がする。
食感は分厚い皮で守られているクリーミーな汁と言えば分かるかなぁ?
まぁ、ミルクの親戚とか思えば全然美味しいと思う。
焼けば、そりゃサクサクしてたり中にはカスタードクリーム位甘くて、
風味もそっくりの虫も居たりするんだ。
水も崖の裏側の辺りに滲み出ている場所が有った。
そこは、少し苔が青々とした幻想的な場所に見えたんだ。
そこには水たまりが有って、とても澄んでいた。
一口飲むとハーブ水の様に青さが鼻に抜ける。
ミント水の様に清涼感がある。
とても美味しい水で嬉しい。
まぁ、環境的には不自由しない場所ではある。
枯れ木も多いから手刀で割って、
巻きにして焚き火をしたりもしている。
まぁ、シャ・グギの死体を片付けたので、
とても衛生的にも良いと思う。
あのままじゃ匂いがきつくて僕が先に参っちゃいそうだったけどね。
さて、修行は続く。
まる一日を套路に費やしたり、
枝で作った棒を槍に見立てて振り回し、
筋肉トレーニングをしたり、
いろんな事をした。
一週間ほどで、僕の身体の脂肪が引き締まり、
ガリガリに成っていた身体もあっという間に細マッチョ程度には成った。
スキクだからか?
成長が著しい。
こんなに体が代謝して大丈夫か?と思う。
代謝で分かったこと、
僕はやはり爬虫類系統だなぁーと熟思った。
何故かと言えば、脱皮したんだ。
初めて・・・。
そして、僕の脱皮は服を脱ぐ様に古い皮が剥がれたんだ。
・・・記念に崖の所に貼り付けてある。
ちょっと感動したからね。
脱皮の抜けた皮の大きさでコレまた理解できたことがある。
僕の体、多分2m近い・・・いや、越えてるかもしれない。
以前は150cm前後だったのに・・・、
その筋肉量で急に成長したから体がガリガリだったんじゃないか?と思った。
多分そうだ。
こんだけ身体の変化が著しいと、
本当に腰を落とすだけでもバランスが以前と違うため、
動きに大きい誤差が出る。
今はそれを修正するための修行なんだとハッキリと理解したわけだね。
まぁ、脱皮の後は身体も順調に筋肉量が増えているし、
何より筋肉の質が以前よりタフだなぁと思う。
長時間の動きに耐える。
具体的に言うと、
重いものを持ち上げるトレーニングをしていても乳酸が溜まらない。
そんな感覚だ。
後は走り込みをしても、
丸一日走っていても一切息が乱れないで、
しかも全力疾走なんだ。
正直心肺機能が著しく強くなった気がする。
外側がこんだけ変化したんだ、
内側も変化してるだろうと思ったけど、
内側のほうが化物じみてる気がしないでもない。
以前は技を使わないと石を割ることが出来なかった。
まぁ、手刀で割るわけだけど、
筋肉の出力と鱗の硬さ、骨の丈夫さが合わさって、
力技で、難なく割ることが出来る。
多分、ギュギュパニより力が出るんじゃないかなぁ?
こりゃ本当に化物じみてきた。
ウウダギが見たら泣いちゃうかもしれない。
困るなぁ・・・。
ってかウウダギはどうしてるだろう?
・・・。
そうだ!
精神の修行もやる予定だ。
なら、魂を飛ばす訓練もするわけだから、
一度集落を覗こう。
ウウダギが心配だしね。
崖の下、シャ・グギの寝床で、座禅を組む。
もう僕の身体は、スキクのソレじゃない。
なので、人間のように足を組むことも容易と成った。
座禅を組む。
心を開放する。
身体から自分が抜け出る。
何時もの感覚だ・・・。
いや、感覚が少し違う。
違和感がある。
と言うか違和感が魂にひっついていると言うか。
まぁ、視覚として実際に其処に在る訳ではないだろうけど・・・。
ククルカンと思われる巨大な偶像が僕の横に居る。
現界では見上げるほどのククルカンで有ったが、
今こうして見るとそれほど大きいものだとは思わない。
感覚から言えばククルカンが縮小したと思えるほどだ。
「・・・」
ジッと僕を見つめている。
その様子から分かる。
今まで僕の奥底で、
何やら命令口調で指示出してたやつ・・・君だよね?
どうやらそうらしい。
そして多分このククルカンも今現在はヴァンなんだ。
魂だけに成ってしまって、
それでもコアトルとしての習性?的ななんやかんやで、
未だに僕に恩義せがましく何やらしてくるんだろう。
この間「黙れっ!」って一喝した件からこっち、
殆ど何も言わなかった・・・。
意外にビビリかもしれない。
・・・どうやらビビリではないって首を横に振った。
心の中とは言えちょっと言い過ぎたかもしれない。
でも話しかけるのは場合に寄るよね?
まぁ、いいや・・・。
精神の修行がんばるぞっと・・・。
周囲の気を体内へ取り込む。
はじめ違和感が有った。
というのも、気づいたら今までの陰陽の配合と言うかバランスが、
此の体になってからマッチしない感じなんだ。
調整に少し時間が掛かったけど、
何とか割合を見つけれた気がする。
大まかだけど此の方向でいいと思う。
気の取り込みには十分注意を払うべきだ。
なぜなら間違ったバランスで気を取り込むと、
体の方に弊害が出たりする。
そのため、自分の気のバランスをまずはじめに熟知することが再優先事項なんだ。
現在の体にマッチした気の分配を分かったつもりで居ると、
後々少しのミスが溜まっていき、何処かで爆発しかねない。
気のコントロールは結構シビアだったりする。
此の体の事を分かっていないのに、
コレでいいという事はないだろう。
当面コレでいいだけだ、
少しずつ調整していこう。
・・・それにしてもククルカンのヤツ・・・邪魔だなぁ・・・。
ずっと僕を見てるし、視線が刺々しい・・・。
やっぱり黙れって言ったの気にしてるのかなぁ?
気にしてるから黙ってるんだろうけどね。
圧力が半端ない。
・・・?
違う?
何が違う?
どうやら、何かいいたそうだ。
果たして僕に伝わるか不明だけど、
取り敢えず黙れを撤回するか・・・。
「ということで、喋ってもいいです」
・・・?
喋らないの?
「なんか何時みたいにこう・・・呼べっ!とかいわないの?」
・・・。
ジッと見つめてるだけだわ、
まぁ、ほっとこう。
そう言えば、この体に成ってから、
魂を離脱させた事がない。
今回が初めてなわけだ。
一回ヴァレヴァレの様子でも見ようかなぁ・・・。
前回意識だけで言った時追い返されたけど、
今回はどうだろう?
魂なら強度は意識体より強いはずだ。
でも、あの黒ヤギ猿はソレだけで強そうに見えたよね?
あれ、相手にしちゃいけない輩だと思うけどなぁ・・・。
まぁ、様子は見るべきだろう。
取り敢えず前回近寄った当たりより少し手前にまで魂を移動させる。
相変わらずククルカンは無言でついてくる・・・少し気持ち悪い。
ここからゆっくりと近づいていくわけだ。
徐々に目的地へ。
意識体で此の辺りを見た時はサイケデリックな色鮮やかな世界だったけど、
魂だけでの視界としてはより現実の世界に寄っていて、
まぁ、サイケデリックではない。
若干明るくは見えるけど、
恐らく現界の方では此の辺りは枯れている場所かもしれない。
木々の生命力が視覚として見えているにすぎないのかも・・・。
造形的なものを見ると枯れているようにしか見えないからだ。
木々の幹枝は見えるが葉が一切ない。
燃えた後でもない。
何かあるのだろう。
まぁ、原因はヴァレヴァレとしか思えないけどなぁ。
此の辺り生存権としてはヴァレヴァレの生活範囲なわけだしね。
ソレがこんなに荒れているわけだし・・・。
ウチに来たヴァレヴァレの連中はこんな中で生活してたのかな?
コレじゃ、食べ物もうまく獲れないだろう。
意識体で来た時は多分、
印象世界でしか捉えられなかった為にここまでは把握できなかったんだ。
まぁ、ウチに逃げてくるのは当然だな・・・。
此の分だと残ったヴァレヴァレの連中はもしかしたら絶望的かもしれない。
十分な食べ物もなく、
十分な安全も確保できない。
コレじゃまともで居られない。
さて、集落らしき影が見えてきた。
以前の黒いドーム状の何かに覆われているようには見えない。
そして、以前居た黒ヤギ猿も見当たらない・・・。
でもなんか違和感がある。
大きな何かが周囲にあるような・・・。
圧迫感がとても強い。
もしかしたら、あの黒ヤギ猿は意識だけの存在で、
此方の世界と言うか現界にも影響を出せないんじゃないかな?
ならば、なぜ意識体のあんなのが居るんだろう?
まぁ、考えても答えはわからないだろう。
っていうかククルカンの様子が可怪しい・・・。
「なんか気になる?」
僕の問いに対し、
なんか響く様な声っぽいもので、
『混沌』という意味が頭にスッと入ってくる。
混沌ってなんだろう?
正直何を言ってるか相変わらず分からない。
集落の中を覗くか・・・。
黒ヤギ猿が気になる。
見えない意識体だとしても、
此方に影響を及ぼさないとしても・・・。
あれだけの存在感だったんだ。
多分何かあるに違いない。
あんな物が自然発生で出現して、
なおかつこのヴァレヴァレをあの様に守護するとも思えない。
誰かの人為的と言うか作為的な何かがあるだろう。
集落はそこそこ大きい全景をしている。
閑散とし、枯れまくってる木々の荒野と言える場所に、
木製の柵で囲いを作っただけの範囲だ。
遠くからでも見える小さな家々、
木々を束ねて作っただけのテントの様な作りだ。
中央にウチの集落と同じく集会場の様な場所が設けられている。
多分彼処に族長が居るわけだ・・・。
・・・居るよね?
ある程度の範囲がと言っても、
集落を中心としてかなりの範囲が荒野とかしている。
何故だろう?
気脈と言うか地脈と言うか、
要は気の流れが滞ってたりすれば、
多分時間でこんな状態にならなくもない。
または陰陽のバランスが極端にどちらかに偏ると、
やはりバランスが崩れてまともではなく成る。
森、特に木々は紛れもなく生物だ。
事、生物に至ってはその発生の根源は気であるとされている。
まぁ、じいちゃんの話からだけで、実際はどうだか知らない。
でも、こっちの世界で気を扱えるように成って分かることもある。
気は全てに充満しているわけで、バランスはともかく気、其の物は消失しない。
ヴァレヴァレの集落の気の流れと言うか全体的なバランスは魂の界から見て、
明らかに陽の方に傾いている。
詰まり日照りや、疲労や過活性状態だ。
何位しても生き物が健やかに育まれる場所ではない。
だけど陰の気がまったくないわけでもないし、
本来ならバランスを取るべき量が何処かに行ってしまったのか?
僕の目からみて拙い見識でも、
バランスは良くない。
・・・陰の気がどこかで消費や停滞、もしくは反らされていたりと、
なんやかんやされてるんじゃないかな?
恐らくだけどこのエリアで、
小さい生き物は育たないだろう。
成長に必要な休息がとれない状態だ。
そう言えばウチに駆け込んだヴァレヴァレの連中の子供等は、
非常にガリガリでヤバイ状態だったなぁ・・・。
もしその状態がこっちで続いているなら、
多分もうこの集落に子供は居ないだろう。
だからといって交尾はすれど、
子は生まれてこないだろう。
つまり・・・この集落は既に崩壊しているわけだ。
もしエネルル辺りがコレを知ったらどうだろう?
もうこれ、僕がなにかやる前に終わってる可能性の方が大きいよね?
よしんば、生きてるスキクが居たとしても食べ物もなく、
飢餓で、まともに動けないんじゃないだろうか?
なにがコレをそうしたんだ?
ヴァレヴァレの族長がザーザースに対して敵意と言うか、
そういうものを持ち合わせているのはブルググあたりの話からも伺える。
ヴァレヴァレ族長の仕業か?
・・・考えていても仕方ない。
もう少し中を覗いてみよう。
集落の柵の当たりまで近づけた。
此方の界から見てだけど、生き物が見当たらない。
スキク一匹見当たらない。
現界ではないので、
生活感とかそういうのは全然読み取れない。
でも、なんだか不穏。
一言で言えばその言葉が頭をよぎる。
静まり返っている。
普通なら生き物の吐き出す気の乱れが辺りを漂っていたりと、
結構暑苦しい状態だったりするんだけど、
ここは砂漠にでも放り出されたかのように何もない印象だ。
此の辺りの陽の光の当たり方がなんか痛い。
陽の気が活性化しすぎて、
増幅効果とでも言うのか天井知らずに加速してる気がする。
自然に影響が出るほどのバランス崩壊現象は聞いたことがない。
じいちゃんは、良く言ってた。
自然界の気のバランスは必ず整うらしい。
ソレが崩れたのであれば、
人為的な何かの仕業であるそうだ。
そして、この人為的っていうのは、
やった本人は意図しなくても起きる事が多々あるそうで・・・。
まぁ、簡単に言えば大昔の京都で疫病が発生して当時の帝が困り果てるという話がある時期に、
多数の妖怪、詰まり”妖”の類というものが現れるという話だ。
それを引き起こしていたのが当時の民であり、
意図せずにそういう現象を引き起こしてしまう状況であったらしい。
陰陽のバランスを崩すとそこには”妖”が発生するという逸話なんだそうだ。
つまりだ、ここの”妖”は・・・きっとあの黒ヤギ猿だ。
どんな習性かは知らない。
”妖”っていうのは”鬼”と混同しがちだけど、
どちらかと言えば、現象に近いらしいんだ。
”鬼”は物が成る。
”妖”は起こる。
そういうことだ。
昔、鵺という妖怪が現れたという物語を聞かされた。
平家物語だったかな?
まぁ、頭が猿で、胴体が狸で、手足が虎で、尾が蛇だっけか?
そういう表現だったけど、文献だかのなかにある鵺の正体は、
喚子鳥って言われている。
それは僕の知ってる動物で言えばカッコウの事だそうだ。
僕がいいたいのは、容姿は余り重要じゃなく。
その当時に起きていた現象を動物に例えた結果、
いろんな動物が混じって、
小さい子供への教えや注意喚起の意味も込めて恐ろしくしたんだ。
大きな風が吹き、風なりが起き、
雷雨が降り、稲光が舞う。
風なりがカッコウの声に似ており、
人を喚ぶ様に聞こえるから喚子鳥なのだそうだ。
嵐は当時では大きな災害に成る。
そのせいで死んだ人が出れば、
放置されて疫病が発生しやすく成る。
嵐はいろんな表現で捉えられた。
だから鵺なんだ。
詰まり、今回のこのヴァレヴァレに起こっている現象で、
もし、何らかの”妖”が現れるのであれば、
それはこのヴァレヴァレの中で何かが起きつつあるわけだ。
思考が長くなったけど。
こりゃ放置してもいいんじゃないかと思うけど。
精霊さんが見つからないと話が進まない。
僕の目からみて精霊さんがこの集落に居るとは、
思えないんだけどなぁ?
ククルカンは分かるかな?そういうの?
無言で首を横に振っている。
ただ、集落を見つめてなにかに気づいたのか、
毛が逆立つような雰囲気を醸し出したかと思うと、
突然僕の心の中に大きく『呼べ』、『コアトルを呼べ』といい始める。
なんだろう?
正直、命令はされたくないんだよ。
オブラートに包むとか出来ないかなぁ?
『呼べ』
・・・こっちの話聞かないよね。