テリトリーへの侵入開始
「おぉ・・・?本当に生き返るんだな・・・」
第一声がそれ?
集落へと魂を飛ばして、オルガに色々聞いてきたわけだけど、
ウウダギが言っていたようにどうやら魂を飛ばすと、
傍から見ると死んだように見えるらしい。
ティティムは初めて見ることだったので、
本気でビックリしている様子だ。
「まぁ、傍から見るとそう見えるらしいね。僕は死んでないから大丈夫です」
「ああ、話には聞いていたけどなぁ。流石にどうしようか困り果ててたぜ」
まぁ、そりゃ仕方ないでしょ。
さて、話をすり合わせましょか?
そもそもムベンベってのが一定の動物だというのが間違いだったって言うことが、
オルガの話からわかった。
そして、今回オルガが話の発端なんだけど、
時間経過がある程度進んでいるために、
当初オルガが見つけたシャ・グギである可能性が不明である点。
さらに、そもそもシャ・グギっていうのが、
どれを示すのかという話もしなきゃなぁ。
最悪、適当に見繕った大型の動物の子供を拐って行くほかない。
シャ・グギが現在何なのかという確定が無いためそれを証明する術もない。
オルガも当時はというような事を言っていた。
つまり、一定していないというのは理解されている周知なのだろう。
一番の問題は、
もしオルガが発見したシャ・グギを僕らが発見した場合。
ソレがシャ・グギであると確定出来るかどうかだ。
其の点ティティムの腹積もりと言うか、
ティティム次第ってところでしか無い。
色々問題が有るなぁ・・・、
と、つくづく思う。
まぁ、いいや。
「ティティムに聞きたいんだけど」
「なんだ?生き返ってすぐにオレへの求愛か?オレは雄は勘弁だぞ?」
本気で言ってるんだなぁ。
冗談って基本的にザーザースは言わないしね。
「求愛に見える?」
「生き返ると、どうなるかなんてオレは知らないからな」
話が進まない。
ギュギュパニもそうだけど、
なんでギュギュパニと言うかオルガの家系の雄はアホばかりなんだろう?
まぁ、種族が違ってもアホなんだ・・・パパムイといい、ティティムといい。
まぁいいや。
「まぁ、話を聞きたいんだ」
「だから何だよ?」
「オルガが言っていたシャ・グギってのはさ?二本足で走る頭のデカイ動物何だろ?」
「・・・なんでソレ知ってんだよ」
「なんでって今さっき聞いてきたからだよ」
「今さっきって、お前死んでただろ? 天に昇って聞いてきたのか?」
話し進まない。
「ぅ〜。話が進まないんだよ。取り敢えず話を聞かせてくれと言ってるんだ」
「お、ぉぉ。なんか怒ってるな?大丈夫か?」
なんだろう?
どうして空気を読んでくれないんだろう?
「オルガが見つけたのってかなり前なんだろ?今も生きて無いかもしれないよね?」
「シャ・グギがか?」
「いや、シャ・グギは生きてるだろうけど、オルガが見つけたシャ・グギが生きてる保証はないよね?」
「・・・ぁあ。そうだな、オレが生まれるずっと前の話だって聞いたからな。死んでるかもな」
「もし、死んでた場合、僕は”問題”をどう解決すればいいかな?」
「・・・難しいなぁ・・・。だが、シャ・グギは残るだろ?」
「そうなんだよ。シャ・グギ自体は残るんだ。だけどそのシャ・グギがどんな動物かはわからないよね?」
「ん?シャ・グギはムベンベで決まりだろ?」
だーかーらー!
そのムベンベってのはそもそも正体があやふやなのがダメだろと言ったばかりだろ!
「・・・ティティム?話し聞いてた?」
「ん?聞いてるぞ?」
「だから其のムベンベってのがそもそも正体不明なのがダメだろう」
「ムベンベは正体不明じゃねーぞ?」
・・・僕の認識違いだとでも?
「じゃぁ、ムベンベってどんな動物なんだよ」
「そりゃ、色々だなっ」
う〜ん。
んー?
やっぱり正体不明だよね?
「だから、具体的にどんな形してるとか、そんな習性だとか言える?」
「形かぁ・・・。形は二足で走るのもいれば羽が生えてる奴も居るって話だ、首が長いときも有るって聞くな」
あー。
今の言い回し、
オルガと同じだ。
詰まりそれを含めて一匹の種類と認識してるんだ・・・。
もしくはこの世界独特の僕が知らない動物の可能性もある。
今言ったティティムの通りの動物が居る可能性も有るってことだ。
でも、自分で言ってて疑問に思わないのか?
二本足で走るのもいれば・・・と場合分けしてるわけだし、
羽が生えている奴も居る・・・”も”っていってるんだ。
二種類の特徴を言ってるんだけどなぁ・・・。
恐らくは、その文言纏めて一個の生き物と認識してるんだろう。
口伝しかないザーザースの弊害とも言えなくもない。
まぁ、話がそれすぎた。
「なるほど、取り敢えず話はわかった。ティティムはもし新しいシャ・グギを見たら分かるんだね?」
「そりゃ分かるだろ」
どうやって?
すごく聞きたい。
けど、これ以上ほじくり返すといいことが無さそうで辞めた。
「じゃぁ。シャ・グギのテリトリーに入ったら僕とティティムでまずは行動しよう。そんでシャ・グギを見つけたら”問題”の通り、僕だけで対処するってことでいいかな?」
「ああ、オレは最初から其のつもりだぞ?」
なんだろうなぁ。
ホント言葉が伝わらない。
まぁ、いいや。
此のまま進もう。
オルガから話を聞いてから4日目の昼前くらいだ。
草原のちょっと森よりの場所を通過している最中に急に皆が立ち止まった。
皆って言うとアンキロが一番最初に立ち止まったんだ。
しかも急に・・・。
続いて、ティティムが武器を構えて止まった。
それに続いて、アンキロ車の中に居たベネネズとベルルベがサッと車から顔を出して、
しきりに辺りの匂いを嗅ぎ始めた。
反応出来ないの僕だけっていう・・・。
「ティティム?どうした?」
「おい?気づかないのか?」
すごく鼻をスンスンと可愛い音を立てて周りの匂いを嗅ぎ始めてる。
それに習って僕もすんすんしてみたけど・・・何もこれと言ってわからないんだが・・・。
ちょっとこの雰囲気に気まずいものを感じるけどなぁ。
やっぱり僕の鼻は皆ほど良くないみたいだ。
神妙な顔でスンスンしまくる三匹と、
足を止めて、警戒を続けるアンキロの様子を僕はただ見守る。
「ポンピカ」
やっとティティムが声を掛けてきた。
「シャ・グギのテリトリーだ・・・。匂いがヤベェ!」
僕は匂いで判断できないんだよっ!
ってか、嗅いだこともない匂いをどうやってシャ・グギだっていえんだよ!
って、ツッコミたいなぁ。
「そ、そうか・・・。近そう?」
「いや、近くはねぇ・・・。だけどコリャ、狩りの時に通る決まり道だ。何時鉢合わせするかわかんねぇぞ」
そこまで分かるの?
「・・・因みにだけどさ? なんでここが通り道だってわかんの?」
「お前わかんねーのかよ!この強烈な匂い・・・こりゃマーキングの習性が有るぞ」
いやいや。
わかんないんだよ。
だから聞いてるし、更に初めての習性っぽい話をしてないか?
大丈夫か?頭。
「取り敢えず、鉢合わせしないように十分気を付けて進もう」
「いや、無理だな」
即答で拒否が来た。
「どうして?」
「アンキロつったか?あれがここから先進まねぇ」
納得。
「じゃぁ、ここからは僕とティティムの二匹で進もう。テリトリーだって言うなら遠くはないでしょうしね」
「・・・なんでオレなんだよ・・・」
じゃぁ、なんのために来たんだよ!
「・・・この前付き合うっぽい話し、してなかったか?」
「お、ぉう・・・なんか声が低くなったな・・・こえぇ」
「ティティム。ポンピカはキレかかってます。流石に駄々こねるとマズイですよ」
「オレもそう思う。ポンピカがキレるとマズイです」
ダメ押しにベネネズとベルルベが同じことを言う。
「お、おぉ。なんかすまねぇな・・・。まぁ、アレだ。オレは思ったことすぐに言っちまうからなっ。勘弁してくれ」
それは知ってる。
「じゃぁ、シャ・グギの所まで探すの手伝ってね」
「ああ。わかった」
なんか素直になった。
急に・・・。
ちょっと睨みが効き過ぎたかもしれない。
結局、ベネネズとベルルベとアンキロを残して、
持てる量の荷物だけ持って、移動し始めた。
ティティムの話では、
テリトリーの通り道とか言うものから少なくとも1日以内の距離程度しか、
最大でも移動しないって話だから、
下手するとすぐ近くに巣が有るかもしれないし、
すぐ近くに狩場が有るかもしれない。
行ってみなきゃわからないってことだね。
スキ車と三匹はテリトリーより少し離れた場所に一時避難することに成った。
少しって言ってもテリトリーがどの様な形で形成されているかは不明だけど、
来た道を一日ほど戻るという案で決着したんだ。
そんで、僕らはと言えば、
ティティムが結構な荷物を背負っている。
登山用リュックみたいなものをパレンケが作ってくれた。
入れ知恵は僕だけど、やはり革製品はパレンケが優秀。
多分、ティティム一匹で、僕の食事一週間は保つかな?
そんくらいの物が入っている。
まぁ、何日掛かるかわからないけど、
それでも食料は多いほうが良いよね。
足りなくなったら其のへんの草や狩りをしてやり過ごせばいい。
寝床もハンモックが二セットある。
問題は無さそうだ。
後は細々した物を僕が持っている。
火付け石とか、他にもナイフ類もそうだし、
本当に細々したものだけを僕が持っている。
武器面ではティティムはお気に入りのポールウェポンだし、
僕は狩りも僕がやるので、改良型クロスボウに接近用に刺突剣と、
カランビットナイフ、ブレイカー、後は中距離で離れても使えるようにと言うことで、
一文字手裏剣って所でなんとかしようと思っている。
刺突剣は完全に刃を潰している。
刺すだけが仕事だ。
それに表面に少しざらつきが残っている。
これは毒を付着させてもちゃんと残るようにって細工だ。
更に刺した後、出血を促すために血を流させる溝も彫り込んである。
後は、まぁ、草や細い木々なんかを倒したりするためのナタだけかな?
ナタは重さが手斧くらい有る。
まぁ、若干手斧寄りの作りだとは思うけどね。
それでもナタ特有の逆反りが入っている。
僕は力が無いから基本ナタは武器として使えない。
振り回せないからだ。
なので伐採くらいにしか役に立たないなぁ。
こんな感じで装備類は問題無さそうだ。
さて、進むかねぇ。