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道中


馬車。

通常ならば馬が車を引く乗り物だけど、

今僕が乗っている?

いや、業者をしているっていうか、

なんだろう?


まぁ、操縦しているというのが正解かな?

取り敢えず今後ろの車部分をゆっくりだけど、

引いて進んでくれている。


車を引いているのがアンキロだからかなぁ?

イマイチ言うことを聞いてくれる素振りがない。

まぁ、分からないでもないよ?

だって、足元おぼつかないよね?


ぶっちゃけると森の中で、馬車ならぬアンキロ車は不便だ。

ケルケオが一匹に一匹必要に成ると思うと、

貸し出せないと言われたんだ。

シシブブにだけど・・・。


最近シシブブの情緒が不安定だ。

シシブブだけじゃない。

ギギリカも不安定だし、

パチャクケチャクもまぁ、不安定である。


その原因は分からないでもない。

知識としてはあるし、

去年卵を孕んだ雌は皆似たような事に成っていた気がする。


多分人間でも似たような事に成るんだと聞いた気がする。

まぁ、僕は男だったし、

関係ないと思っていたから「へぇー」程度にしか頭に入ってなかったんだ。


でも実際はこんなに面倒いとは思わなかった。


ある日、パパムイにちょっと頼みごとをしようと、

パパムイとギギリカが居る場所へと向かうと、

ギギリカがハンモックに寝そべりながら・・・。


「パパムイ。クダモノちょーだい」

「ギギリカ・・・。食べ過ぎだぞ・・・」


「いいのよ!お腹の子が食べたいって言ってるの!良いから持ってきてよ!」

「お、おぅ。お腹の子じゃ仕方ねぇか・・・」


こんな感じで、パパムイがパシ等されてる。

はたまた、シシブブとイイオオの所に行けば・・・。


「イイオオ〜。今日も頑張ってるねぇ」

「・・・お、おう。そうだな」


シシブブがイイオオの尻尾の傷口の近くを指でグリグリしながら、

何やら甘えてるような雰囲気であるが・・・。

シシブブのうっとりしている眼差しとは打って変わり、

イイオオはものすごく緊張している様子で、ビシッと座っている。

今にも冷や汗をかかんとする様でだ。


「あたしぃ〜。プブきらぁ〜い。イイオオはぁ?」

「えっ!? え・・・えっと・・・」


「あたしぃ〜。プブ嫌いなんだけどなぁ〜」

「ちょ・・・え!?・・・。 あ、ああ!俺もキ、キライだ」


「そぉ〜?良かったぁ〜。毎日!毎日!生臭くっていやだなぁ〜って思ってたのぉ〜」

「おぉ?・・・。 ぉお!そうだな!しばらくはプブは辞めにしよう」


「はぁ〜。お腹すいたなぁ〜」

「・・・」


「はぁ〜ぁ〜。お腹すいたなぁ〜」

「・・・な、何が食べたいんだ?」


「う〜んっとー。何でも良いわぁ」

「そ、そうか・・・何か料理が残ってるかもしれない見繕ってくる」


「そぉ〜?いてらっしゃ〜ぃ」


こんな調子をしばしば見る。

因みに此の会話だと、シシブブにプブ意外を持っていくと取り敢えず尻尾の怪我が拡大する。

プブでも気に入らない種類だと、

コレまた尻尾ではないが噛み傷が増えるという最悪のノロケである。

正直、見ていられない。

シシブブは情緒が不安定に成ると多分他者を傷つけるタイプらしい。

いつもの姉御とは違う。甘えるし、駄々もこねるし、難解な答えを要求する。

怖いっちゃ怖い。関わりたくない。

・・・未だに牧場の小屋の天辺にイイオオの尻尾が干からびて刺さったままだし・・・。


他にもパチャクケチャクに至ってはちょっとした事ですぐにパレンケの取り合いをする始末。

二匹とも本気で「シャー!」とか「ギィー!」とか暇さえ有れば、「グルルルル」と言っていたりする。


正直ウウダギの情操教育には向かない。

なので極力ウウダギには見せないようにしたい・・・。

したいんだけどなぁ・・・。


なんでかウウダギは雌達の行動を目で必死に追っていたりする時がある。

多分自分の時はどうなんだろうと考えているんだ。


まぁ、しばらくウウダギにお婿さんは迎えてほしくないのが親心ではあるなぁ。


現在このアンキロ車に乗ってるのは、

僕とティティムとベネネズとベルルベの四匹だ。


まぁ、この四匹が乗って荷物を積んで、

かなり重量があるにもかかわらず、

生後、半年程度のアンキロ一匹がソレを引いてるんだ。


幼いのに頭が下がる。

アンキロすげぇな。

そりゃ若干ふてくされるだろうなぁ。

片割れは、ウウダギに甘え放題なはずだしね。


それにしても、

舗装や整備されていない道っていうのは、

なんでこう、車の進みが遅いのかね?

まぁ、分かってたことだけど、

それでも大量な荷物を持ち運ばなきゃ行けないんだ。

車は必要だ。


う〜ん。

予定より遅い移動なのもいただけないねぇ。


「おい、ポンピカ」


話しかけてくるっていうのは大抵ティティムだ。

他の二匹は余り僕に話しかけない。

かなり嫌われている様子。


「なに?」

「此の前から言ってんだけどよ?やっぱり無理か?」


この間からっていうのは、

どうやらティティムはウチの集落が気に入ってしまったらしく、

ギュギュパニどうこう関係なく、住み着きたいといい出しているのだ。

ぶっちゃけ、ギュギュパニやギリュリュソレに族長の真ん前で「帰りたくない!」と叫んだほどだ。


相当、”ト”ってところよりいいのか?

いや、そう言えば、ティティムもギュギュパニと同じ種族で、

例の戒めと言うかなんと言うか決められた事が有って、

何処かの知らない集落に派遣されてしまう可能性もあるらしいって事だ。


らしいって言うのもそもそも生まれた集落が有るならそこに戻されるはずなんだけどね。


まぁ、なんやかんやあって、何故か僕に願い出ているんだ。

なんでだろう?

集落の決定権は族長呑みのはずだけどなぁ?

頭弱すぎて理解出来てないのかな?


ってか、まともなのが居ないパーティーに成ってないか?


こんなんだったらケルケオ一匹借りて、僕一匹で旅立ったほうが楽だったかもしれない。


まぁ、シャ・グギの強さっていうか、

T-REXを狩るの無理だと思うけどなぁ?

皆、ホント何考えてんだろ?


はぁ・・・。


「前も言ったけど、集落の決めごとは族長が決めるからさ?僕じゃ判断できないよ」

「そんなことないだろ?あの集落の族長は実質お前だろ?ウウダギだって似たようなこと言ってたじゃねぇか」


ウウダギにティティムが「この集落は誰が作ったんだ?」って聞いてるのを見た。

ついでにウウダギがなんの為も無く「ポンピカ」と即答したのにビックリしたけど・・・。


僕は作ってないよ。

そうウウダギにいいたかった。

でも満足そうに答えてるウウダギの横顔見たら言えなかった。

その結果、毎回こういう話をかけてくる・・・。


「まぁ、ウウダギはそう言うだろけど、僕は本当に何もしてないんだよ。基本族長に伺いを立ててはいるけどね?」

「それは、聞いてるさ。 でも実際は、お前が指揮してるんだろ?」


「まぁ、要所要所ね?殆どは皆、独自で頑張ってるんだよ」

「へぇ〜・・・。まぁ、もしだけどよ?俺が今回の旅で活躍出来たら考えておいてくれねぇか?」


「考えるって?」

「俺もお前の集落に住みてぇなってな」


「・・・まぁ、住むのはご自由にどうぞと言ってるじゃん。ただ、ティティムやギュギュパニの一族は取り決めが有るんでしょ?他の集落に派遣されたりするんじゃないの?」

「・・・オレ・・・。 一族抜けるわ」


何いってんの?このトカゲ。


「・・・えっ?」

「一族抜ければ自由だろ?」


一族って種族抜けれないだろ・・・?

あれ?頭おかしくなりすぎちゃってるのか?

パパムイの方がなんぼかいいぞ?


「・・・そう簡単に抜けれるの?」

「無理だなっ! アッハハハハハ」


だめだ。

コイツやべぇ。

関わっちゃいけない感じの頭の足りなさだ。

パパムイの記録更新しちゃってないか?

いいのか?

ザウスだろ?


オルガも草葉の陰で・・・いやギュギュパニの胸元で泣いてるぞ。


こんな調子の旅がここ一週間続いている。

正直シャ・グギに会う前に僕のメンタルが壊れそう。

既に悲鳴をあげている。


これ、討伐どころじゃなくね?


「ポンピカ。そろそろ野営しよう」


珍しくベネネズが、声を掛けてきた。

確かに日が落ち始めている。


今日もそこそこの距離しか進んでない。

まぁ、期限が決まっているわけじゃないしね。


アンキロ車を止めて、

アンキロに其の辺の草を食べさせ始めると、

僕らは野営の準備を始める。


「ベネネズとベルルベで寝床準備してもらっていい?ティティムは周辺警戒お願い。僕は食事作る」


サクッと皆に指示出しして、野営を進める。


ベネネズ達二匹は、ハンモックを掛ける場所を確保するために手近な木へと昇っていく。

ティティムは、ご満悦で自慢のポールウエポンを持って周辺に目をやっている。


まぁ、この木々が密集する中で、長物は無用の長物でしか無いんだけどね。

ティティムが気に入って手放さないんだ。

まぁ、草原くらいにでれれば役に立つと思うけどね。


さて、ご飯つくろっと。


材料は、手近で獲れる野菜っぽい植物と、

塩漬けで持ってきた肉だ。

塩漬けの肉ももしかしたら持ってきた分を消費しちゃうかもしれないなぁ。


香辛料系は別に保存して持っている。

なので、肉が足りなくなったら狩りをするしか無い。


大ぶりの銅鍋に具材を入れて、

ただ煮込むだけの料理だけど、

肉は塩漬けなので前処理で川が有れば流水に漬け込んで、

川がなければ、ボウル代わりの器に水を張って漬け込んで塩気を取る。


野菜もとってきたままだとよくわかんない菌や虫なんかが居たりするので、

よく洗う。


まぁ、普通のご家庭でやっている事を僕もやるだけだ。


味付けも塩漬け肉の塩気と香辛料を少し入れれば、

出汁っぽいものを使わなくてもお肉や野菜もどきから出る味で十分美味しい。


野菜もどきは、ぶっちゃけると野草だ。

えぐ味や、苦味、それになんって言うか渋かったりするけど、

それもちゃんと洗ったり、水にしばらく漬けておけばそれだけで取れたりする。


水って偉大だよね。


そんなこんなで手早く食事を作り終えると、

手が開いたベネネズとベルルベが食事を摂る。

続いて、ティティムが食事をする。

最後は僕だ。


片付けもそうだし、

出した物とかもしまったりするのはどうやら僕の役目らしい。


就寝時間に成るまでは、皆、思い思いに過ごす。

大抵は、くっちゃべってたりするけどね。


野営は早く段取ってその後すぐに寝る。

朝は早く起きて涼しくちょうどよい気温の内に歩き始めるっていうのが定石なようだ。

正直そういう知識は僕よりこっちで原始生活している連中の方が分かっているっぽい。


時計がないから体感時間だけど、

就寝はだいたい夜の7時くらいには既に寝始める。

起きるのも大体夜中の3時くらいだ。


僕は人間の頃の習性が抜けきらないので、

普通に頑張っても6時位に起きるのが限界だけど・・・。

まぁ、3時だと寝ぼけてるんだわ。


そんな感じで、旅が続く。

かなり進んで居るはずだけど、

一向に近づいている気がしない。


ベネネズやティティムは此の辺りの地形の事や生息動物の事を何故かよく知っている。

なので、どんな事に注意していればいいか分かるらしいけど、

僕はそういうの全然ノータッチだったらしく・・・、

まぁ、気にしなかったから知らなくて当然なんだけどね。


まぁ、お世話に成ることがすごく多い事に気づいた。

まぁ、確かにそうだよね。

一匹で生きていけるほど、この森は優しく無いってことが分かるよ。


アンキロを起こして、車とドッキング。

アンキロ車を引いてもらい出発。

ぎこちない道、窮屈で細い道なんかは、障害を何とかどかしながら進んだ。

おかげで、獣道ならぬアンキロ街道が出来ているような状態だ。


「なぁ?ダメか?」


またティティムが話しかけてくる。

あいも変わらず同じ事を・・・。


「帰ったらさ?今回の件で活躍したからって話すから・・・それでいいんじゃない?」

「ん?どういう事だ?」


「だから、族長に役に立ったから集落に居残ってもらえばいいでしょって言ってあげるよってこと」

「おお!そうか!それいいな!オレもあのフロってやつはどうしても恋しくてな」


えっ?

ウウダギにこっぴどくやり直し喰らって作り上げた風呂・・・。

気に入ったんだ?

へぇ〜。


「オレがあんだけ根気を入れて作ったものは初めてでな・・・ありゃ最高の出来だ!」

「ああ、ウウダギも渋々合格にしてたけど・・・」


「ああ、ウウダギがそれでも合格って言ってくれたんだ!すごい事だぞ?」

「そうなの?」


「ウウダギは、ぶっきらぼうだが、信用出来るスキクだ。絶対にミスを見逃さない上にちゃんと出来るまで付き合ってくれるぞ」

「へー。初耳」


「まぁ、アレほど出来た雌は久々に見たなぁ・・・ザウスだったらギュギュパニなんかより番に成りたいくらいだぜ」

「・・・そう?でもウウダギにはまだ早いかなぁ。親としてまだ番は許可できないなぁ」


「ははは。 ポンピカ!そう目くじら立てるな!スキクなんだ、とったりしやしねーよ」

「あー。うん。まぁいいや。取り敢えずそろそろ地形も変わってきそうだよ」


「森を抜けるのか?」

「そうみたい。やっと少し速度が稼げるかもしれないなぁ」


「草原だよな?」

「まぁ、草原って言えばそうだけど、草は生え伸び切ってるし、岩も石もゴロゴロ有るからね」


「このアンキロになら問題ないだろ?」

「問題ないと思うけど・・・どっちにしても森の中より前見えないからね?」


「あー。たしかにな。草は背が高いからなぁ」

「取り敢えずさ?草原の入った辺りで一度休憩しようか」


「間に合うならそれでもいいぜ?」

「ベネネズ達もそれでいいよね?」


ベネネズ達もその言葉に頷いて返してくる。

ここ二日かんベネネズとベルルベの反応があまり良くない。

なんかあるのか?


後で聞いてみよう。


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