捌いていくぅっ!
「ポンピカ!ど〜だこれ!すげーだろ!」
「今日は、パパムイがやったわね!偉い!パパムイ偉い!」
「へへ〜!やっぱ狩りはいいよなぁ〜。ギギリカにも褒められたしなぁ〜」
「今日のパパムイは本当に凄かったわ!」
そんな下りがエンドレスに流れている中、
目の前に転がっているのは、象よりデカイドウ見ても哺乳類だけど、
明らかに前世なら古代生きていましたと言わんばかりの動物。
メガテリウムってやつにそっくりだ。
手に鉤爪っぽいのが付いてるし、
鼻とか顔立ちとかドウ見ても図鑑とかで見知った感じだ。
大きさも多分10m近い。
10mは言いすぎかな?少し小さいかな?
まぁ、でも、動物園で見たことの有る象寄りは明らかにデカイなぁ。
図鑑そっくりでビックリだ。
だけど、図鑑には乗ってなかった・・・匂い。
めちゃめちゃ臭い。
油臭い。
アンモニア臭までするんだけど・・・。
パパムイとかって、気にならないのか?
僕より鼻が効くし、耳も良いはずなんだけどなぁ。
「どうした?ポンピカ。鼻なんて押さえて」
「どうしたの?」
「ポンピカ。さっさと捌く準備しなっ」
バカップルは言うまでもないけど、
ギュギュパニがすごく怖い。
なんでそんなに最初からキレてるんだろ?
たかがナイフ一つでキレすぎだぜ?
ナイフだけにねっ!
つまんねっ。
さっさと、仕事しよっと。
ギュギュパニが怖いしね。
「パパムイ。他のやつは?弟子は?」
「ああ、アイツ等は先に小さい獲物を捌いてるぞ。向こうで」
なるほど。
話しながら手を動かす。
っていうか、このナイフ切れ味良い。
なんていうか前世のナイフ寄り滑りがいい感じがする。
剛毛で、カッチカチの皮膚なメガテリウム相手なのにスゥ〜っとナイフが刺さる。
しかもそのまま引けば綺麗に切れるし引っかかりもしない。
流石に骨は引っかかるけどね。
骨はキレないな。
だけど関節部分の腱とか筋とか軟骨っぽいやつとかはわりと力を入れれば綺麗に行く。
うん。出来は良いんだと思う。
僕のお手柄って言うより、コリャギュギュパニの研磨が上手いんだなぁ。
まぁ、それならそれでいいね。
刃物は危ないからね。
次々に切り分けていく。
結構、集中して出来た。
って言うのも途中から気にならなかったけど、
周りの声とかが聞こえなくなったんだ。
まぁ、気にしてはいないので、終わり際に周りを見ると、
皆がジロジロと僕の手元を見ている。
なんで?
「お、おい。ポンピカ?なんだそりゃ・・・クグナか?」
「なんでそんなに早く出来るのよ!あたしなんか皮が引っかかって刺さらないっていうのに」
「ふぅ〜。やっぱり、やっちまったねぇ・・・」
ん?
自分の手を見ると、ナイフっていうかナタだよなぁこれ。
包丁寄りの大きなナタにしか見えない。
でもナイフで作ったんだからナイフでいいかな?
「これ?ナイフだよ。クグナとたいしてかわらないよ」
「何処がだい!どう見ても違うだろうに!」
「ギュギュパニなにか知ってんのか?」
「アレ、ギュギュパニが作ったの?」
何時もどおり、皆わーわーと騒ぎ始める。
そんな中。
「なぁ?ポンピカ。俺にもそれ貸してくれねーか?つかいやすそーだよな?」
「パパムイ。気をつけてね?多分危ない物だと思うわよ。ギュギュパニの顔見ればわかるでしょ?」
「んなこと言ったって、ポンピカ見れば面白そうだろ?ギギリカだって使ってみたいだろ?ほら、そこの皮全然切れてねーんだしな」
「たしかにねぇ・・・でも、多分危ないわよ?」
「まぁ、どうせ、少し切れるクグナだろ?大したことねーってw」
「それならいいけど・・・」
多分、ギギリカが正解かなぁ?
まぁ、使い慣れるのはいいことだけどね。
僕はパパムイにナイフを渡す。
嬉々として、ナイフを使い始めるパパムイだったけど、
何故か突然ビタッと動きを止めた。
なんだろうと、疑問が出てしまう。
「どうした?パパムイ。切れなくなったか?」
「どうしたの?顔色悪いわよ・・・手でも切ったの?」
「・・・気づいちまったねぇ・・・パパムイでも気づくんだねぇ」
どういうことだろう?
ギュギュパニはなにがそんなに気に入らないんだろう?
僕が首を傾げていると、
パパムイが恐る恐る僕の方に顔を向ける。
なんだか泣きそうな顔している。
ギギリカじゃないけど、「大丈夫か?」と言いたい。
パパムイはそのまま何故かワナワナして若干震えている上に、
足がガクガクして、腰が引けてる。
完全にナイフが怖いものだという様子が見て取れた。
怖くないのになぁ。
「どうした?ホントに大丈夫か?」
「ポ、ポンピカ・・・コリャ、ダメダ・・・こえぇ・・・」
「パパムイ!大丈夫?」
「ポンピカ。いいからナイフを預かりなっ。もう腰が砕けちまってる・・・ったく、あたしの子供なのにだらしないねぇ・・・」
「そ、そんなこと言ったって、しかたねーだろ!ギュギュパニだって使ってみれば分かるぜ」
「あたしが研いだんだよ?わからないわけ無いだろう。まったく・・・あたしも使いたくないねぇ」
「・・・そんなに怖いの?このナイフっていうクグナが?」
ギギリカが興味を引かれたらしい。
パパムイの手からナイフをとって、メガテリウムの肉を捌き始めた。
「あら!このクグナいいじゃない!よく切れるわね?あたしは怖くないんだけど・・・これの何処がパパムイをそこまでにしたのかしら?」
ギギリカは普通に扱い始めた。
「ギギリカ!?お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫も何もなんともないわね?むしろ何がダメなの?よく切れていいじゃない」
「ギギリカは鈍感ではないはずなんだけどねぇ・・・触った者によって違うのかねぇ?」
「とりあえずさ?解体終わらせようよ。パパムイも今日は大きな手柄だったんだろ?そんな腰抜かしてないで、手伝ってよ。ってか。パパムイ達が僕を呼んだんだよね?」
「・・・ああ、わかったよ。 ギギリカ、そのナイフとかいうの怖えからポンピカに返してくれ。近くにいると動けなくなるぜ」
「あたしも簡便だねぇ」
渋々僕に返すギギリカの目が、
もう一本作れと言っている。
むしろ料理に向いてる包丁作るから我慢してね。
さて、なんやかんや有って、メガテリウムを解体し終わったけど、
この量どうするんだろう?
毎日パパムイやそのお弟子サン達がひっきりなしに獲ってくるわけだけど、
まぁ、一応冷暗所ってことで、採掘場の穴を冷暗所代わりに使ったりしている。
でもそこも時期いっぱいに成るだろうという勢いだ。
こんだけの量の獲物を獲ってくる事が出来るのもそうだけど、
よく獲物がいなくならないよなぁ。
つくづく思う。
いい加減、此の集落の周りから獲物がいなく成るんじゃなかな?
ってか獲物がこんだけ居て、よくウチの集落襲われるようなことがなかったよね?
なんかそこにビックリする。
「パパムイ。この肉どうするんだ?保存しておく場所有るの?」
「う〜ん。考えてないんだ・・・もう採掘場は入らないってベネネズに言われてるんだよなぁ」
言われてて獲ってきちゃうの?
習性?習性なのかな?
「ある程度加減しないと、そのうち獲れなくなるよ?」
「そ~なんだけどさー。俺、体動かさないと、頭回んねーんだよ」
回ってる所一回も見てないけどね。
「そっかぁ。じゃぁ仕方ないよね?」
「でも、どうすっかなぁ」
「パパムイ。これ食べれるだけ食べちゃって、明日から皆で騒ぐのはどう?」
その騒ぐってなに?
いつも騒がしいわけだし、変わらないってこと?
「騒ぐってなにするの?」
「ん?あれ?ポンピカ覚えてないのか?」
「忘れちゃったの?」
なんだろう?
僕なにか忘れたか?
「此の時期はほら・・・あれよ・・・雌から言わせないでよ・・・」
ギギリカがモジモジしてる。
ギュギュパニは知らんぷり。
パパムイは、少し恥ずかしそうにそっぽ向いてる。
なに?
雌から言い出せない?
騒がしいこと?
全然つながらない。
「ごめん全然思いつかない。なんだろう?」
「ったく、ホントそういう言うところだけ抜けてんだよなぁ。ポンピカ、そろそろ番が繁殖する時期だろ?」
はんしょく・・・?
交尾ってやつか?
・・・そうかぁ・・・。
全然頭になかったわぁ。
そうかぁ・・・。
確かに雌から言い出すのはダメなんだろう。
わかんないけど、そこら編は人間と同じなのね。
「交尾か・・・そうか。皆決った番がいるのかな?」
「ちょ!なんで口にだすのよ!恥ずかしいでしょ!」
「お、おい!ポンピカ・・・雌の前だろ?少し考えたほうがいいぜ?」
パパムイとギギリカが慌てる。
ごめん。僕その辺、疎いんだ。
ギュギュパニは余り感心がない様子。
いかにも「さっさと運ぶよ」っていいたそう。
ギュギュパニの睨みがまさない内に、
パパムイとギギリカにもさっさと手を動かせと促して、
集落の食堂まで持っていく。
一回じゃ終わらないのでついでに手の開いてるヤツを見繕って、
メガテリウムの肉を食堂に集めた。
皮どうするかね?
毛皮なんだけど・・・。
結構大きな皮が綺麗に獲れたんだよね。
ナイフのおかげでね。
パレンケに与えればいいか。
パレンケは革を与えれば鞣して、
自分で色々作ったりしてくれる。
毛皮使ったポーチみたいなの欲しいなぁ。
メガテリウムの毛並みって思いの外長いなぁ。
これで、ポーチ作ったら腰蓑みたいになりそうだなぁ。
まぁいいか。
僕ら素っ裸同然だから少しは隠す習慣付けなきゃなぁ。
ってか僕はよく素っ裸で平気だなぁ。
慣れって怖いね。