表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/174

鋼のナイフできちゃった。


確か、銅にニッケルとか混ざると青銅だっけ?錫だっけ?あんまりよく覚えてない。

っていうか、随分この銅って色が緑だよねぇ・・・。


さっき溶かした感触だと、扱っているのは僕が知っている銅じゃない気がするんだよなぁ。

なんていうか、前世の銅って全部茶褐色で純度も高かったはずだ。

でも鉄を溶かしたついでに出てきたこの銅もどきは、きっと不純物まみれだ。


さっきも思ったニッケルや錫なんかももしかしたら混じっているのかもしれないなぁ。

確かアルミニウムも青銅に成るんだったか?

それも入ってるかもしれない。


なんだかんだ言って、斑な銅だよなぁ。

多分鉄も入ってるだろう。


まぁいいか。

加工できなくないし、

ギュギュパニに渡した試作の鋳造模型もいい感じに硬かった。


そうなると・・・多分アレが作れるだろうなぁ。

作りたいなぁ。


ナイフ。


正直クグナだとスパッと行く感覚がないんだよね。

と言うか細かい作業が出来ない。

僕以外の皆はそれでもそれで当たり前の顔で色々やりこなしてるけど、

現代っ子だった僕からしたらもっと「良いものを」ってのが当たり前だったからね。


金属で刃物作るのは多分ヤバイだろうと思うけど、

生活が楽に成るなら・・・作るっきゃないよね。


それに持ってきたインゴットらしきものの中には鉄もある。

鉄もまだ、不純物が入ってると思うんだ。


でも、出来は良いように見える。

インゴットって言うけど結局、製鉄のときにでたノロを固めただけなのと、

言われたタイミングで冷やして引きずり出した鉄塊でしかないんだからね。


なんだかんだ言っても鉄があるんだ・・・よくここまで出来るように成ったよなぁ。


鉄、多分炭素が多いはずだ。

融解温度と、比重から鑑みて、

たたらで、出来上がったこの鉄はそこそこ鋼に成っている可能性がある。


温度調整は恐らく完璧だろう。

何故なら、僕らスキクはピット器官のおかげで温度がハッキリと分かるんだ。

離れていてもあそこが暖かい、熱い、冷たい。この場所は、ここが寒いとかわかってしまう。

どうやって説明すればいいだろうか・・・。


目隠しした頬の近くに冷たく冷やした物を近づければ、

冷気を感じるだろう?

それの強化、いや、強化と言うかハッキリと何度って具合で分かるんだ。

スキクに何度と言う温度の知識は僕が教えた限りしか持ち合わしていない。


だから、それも踏まえて言うと、

この鉄は多分不純物が少ない方。

あくまで方だ。


きっと前世の知識人がいれば、

製鉄ももっと楽で、失敗が少ない仕事が出来たはずだけどなぁ。


ないものはない。仕方ない。


さて、ナイフ作ろう。

鉄で、鋼で。


手元の鉄塊は炭素が多く含まれてるような気がする。

鉄と鋼の違いとは?って、学校で習った。


素材学は、工業科の僕としてはちゃんとやった科目なんだ。

まぁ、全部やったわけではないけど、

それでも材料の事はよく知ってなければ機械が作れないんだ。

ソレに、鉄と鋼は、前世では当たり前の物で、

趣味でカスタムナイフを作っちゃうような人も居た。

そんな趣味に生きる人の中にじいちゃんもいるわけで・・・。


当然農機具とかもじいちゃんは手作りしたりしてた。

もう何でもやった。

じいちゃんは、作れれば何でも作ったからねぇ。


まぁ、その側で僕は作り方を色々知ったわけだ。


「さてっと、多分これが鋼に最も近いかなぁ?色艶っていうか多分磨けば幾らか分かるかな?」


少し砥石でこすり、鉄塊の地肌を露出させる。

若干斑だけど、しっかり溶けて混ざったんだと思う。

鉄と鋼の違いっていうのは炭素量だ。

他は極微量な元素が入ってるかどうかなわけだけどね。


確か鉄は炭素保有量が0.02%以下で純鉄と呼ばれ、

鋼が0.03%位から2%位だっけかな?

炭素が多すぎると、硬く成る代わりにもろくなる。

炭素を多く含んだ鉄を2.1%位から7%弱位までの物を銑鉄というんだ。


因みにそれ以上炭素が入るとセメンタイトとかグラファイトとか言われる合金に当たるんだ。

まぁ、鉄なんだけどね。

因みにセメンタイトとかって磁性があるって聞いたなぁ。

磁性っていや磁石が作れるかなぁ?

磁石ほしいなぁ・・・。

でも天然の磁石って弱いって話聞くしなぁ。

モーター作れれば良いなぁ。

流石に無理かなぁ。


話が逸れた。

どっちにしても、もろくて使いどころが絞られてしまうと聞いた。

セラミックの一種だとか先生が言ってたような気がする。

必要ないから余り話してくれなかったっけなぁ。


削った地肌はじいちゃんに見せてもらった鋼に酷似してる。

若干色味が黒く感じなくもない。


もしかしたら炭素量が多いのかもしれないなぁ。

ここは鍛金で、炭素を下げるしかないか。


他の鉄も見て、純鉄が有れば混ぜよう。

なんとなくできれば良いんだしね。

最悪この硬そうな鋼を芯に使えば、

刀と同じ様な作りのナイフが出来ると思う。


「さて、コークスなら熱の心配しなくて良いのが利点だよね。あとは焼き物で作ったこの器類でなんとか合金出来ないかやってみよう」


数個、地肌を見てみると純鉄に近い地肌を持ったやつが数個あった。

だけど、じいちゃんが見せてくれた鋼に相当する地肌の鉄塊は3個ほどしかなかった。

グラムになおせば3キロくらいかな?


どうせ、ギュギュパニとかじゃまだわからないだろうし、

この鋼もどきを全部使っちゃおう。

三個あるんだし、ナイフが幾つ作れるかなぁ・・・。



その後、一心不乱にじいちゃんと作ったナイフを思い出して、

1本ほどの刀身を作っては見た。

鋼は随分まだ余ってるけど、

僕がちょっとの時間で出来るのはこれが限界だ。

重さにすると、200gも使ってないように思える。

それなのに結構長く、薄く出来上がった。


感触としてはやはり少し炭素が多いんだと思う。

あと不純物が多い気がする。

変な粘り気があったし、

磨いても居ないのに若干青みがかってるしね。


鋼を溶かせるなら鋳造したっていいんだけど、

炭素量のコントロールをするために昔の人は、

鍛金をはじめたんだそうだ。


要は、刀とかを作る時ハンマーでトンカントンカン叩くのは、

作り込みするのもそうだけど、叩く回数とか色々と経験上で、

炭素量がどのくらいだとか、色々とあるんだそうだ。

僕はそこまで詳しいことはわからないけど、

じいちゃんがトンカントンカンやってるとき、聞いたんだ。


「じいちゃん。なんで火花がでるの?」

「ん?ああ、こりゃな、炭素だぞ。炭みたいなもんだ」


「炭?なんで炭があるの?鉄でしょ?」

「ん?う〜んまぁ、そうなんだがなぁ。炭素なんだそうだ。ワシにもわからんがなっ!」


じいちゃんもよくわかってなかったらしい。

でも高校の先生のおじいさんが刀匠をやってる人だったらしくその話をした時、

叩いて炭素量を調節するのと同時に形を作るのが刀鍛冶なんだそうだと聞いた。


まぁ、さっき僕がやってたのはそんな事を思い出しながらだったわけだ。


叩いて形を整えただけのナイフの刀身。

これを研磨していけば、取り敢えず刃物には成る。

あとは、最後に焼入れして刃部分をより硬質化させることで、

カミソリみたいな鋭利さを出すんだ。


「ポンピカ。なにしてるんだい」


突然うしろから声かけられた。

ビックリして振り向くとギュギュパニが数匹のスキクを連れて入ってきていた。

ってか皆地べたであぐらかいてるから多分結構前に入ってきたんだろう。

気づかなかった・・・。


「・・・ナイフ作ってたんだ」

「ナイフ?クグナみたいなものだな?」


「まぁ、そうだけど・・・」

「ふむ、ならそれもあたしが磨いてやる。貸してみなっ」


ギュギュパニに渡して大丈夫かな?

勘が良いギュギュパニの事だ。

鋼のナイフなんか渡した日にゃ・・・やばくないか?

僕怒られるよね?


でも今のタイミングで渡さない分けに行かない。

どうしよう。


「どうした?なんか気になるのかい?」


う〜ん。

仕方ないかぁ・・・。

僕より研磨はギュギュパニのほうが上手いしなぁ。


渋々、渡した。


ギュギュパニは腰のベルトに幾つもの仕事道具を吊り下げている。

その中にはすぐに研磨をほどこせるようにと小さめの砥石を何種類科分けて持ってるんだ。

その内の荒い砥石へと唾を吹きかけて湿らせると、

ジョリジョリといい音を立てて研ぎ始める。


ナイフも作りの段階で、刃部分の傾斜を作ってある。

指示をしなくてもギュギュパニはそこが刃の部分だと判断したのだろう。

迷いもせずその所だけを磨き始めた。


周りのスキクは僕に集中していた視線を、

ギュギュパニに移して、ジーっと見据えている。

中には自分の手で真似るように動作してるヤツまででてきている。


しばし、時間がすぎて、

最も細かく艶を出すのに使っている砥石を圧が居だした時、

急にギュギュパニの動きが止まった。


そして、ギロッと僕を見る。

バレたっぽい。


「・・・や、やだなぁ・・・大の雌が、か弱い僕を睨むなんて・・・ショックで死んじゃいそうだよ・・・」

「あたしゃ、何も言ってないんだけねぇ・・・」


「そ、そのナイフは、狩りに使うようだから別に大丈夫だよ?僕悪くないよ」

「誰が悪いとか言ってないんだけどねぇ!」


声が怖い!

どうしよう・・・。

研いだその耐性のまま、僕が睨まれ竦んでるところを周りが、

あぐらをかいたまま首をコチラに向けて、頭にはクエッションマークだわ。


カオス


「あんた、こんな物どうしようってんだい」

「ナ・ナ・ナ・ナイフ位いいだろぉ?皆の役にたつよ?」


おもむろに研ぎ終わったであろうナイフの刃の部分に親指を当てて、

少し引くような素振りを見せて、更に眼力が強くなる。


「・・・切れすぎる」


言葉数が少なくなるのは、

きっと、整理がつかないからだろう。

どうしよう。


バンッ!


突然、建物のドアが開いて、パパムイとギギリカが入ってきた。


「おー!ここにいたか!探したんだぞぉ〜?ポンピカ」

「ねぇ!今日はパパムイがかなり大きい獲物とってきたんだけど、解体手伝ってくんない?」


なんでそんな事をいきなり言うんだ?

それって、狙っていってるの?

そんなの・・・ナイフ使えって言ってるようなもんだろっ!


「・・・さっそく使うつもりなんだね?ポンピカ」


声が怖い!


ギュギュパニの声怖すぎて、ふるえる。

やっべぇよ!


ギュギュパニに刃物もたせるとダメだって!


「聞いてんのか?ポンピカ。早く解体しよーぜー」


お前が聞いてんのか?だよ?

借りにもお前の親がドス聞かせてるのに、なんだそのアホ面!


「あれ?ギュギュパニどうしたの?怖い顔して」


ギギリカもパパムイといるとポンコツが感染るのか?


「・・・使うんだねぇ?」


使うって言うしかないよね?

言わせたいよね?

自分で磨いたものね!


「はい・・・。使います。柄もすぐに用意出来ると思います・・・」

「おいおい。どうしたんだぁ〜?ポンピカ」

「ホント、どうしたの?ポンピカ」


あー。

あれだなぁ。

パパムイとギギリカが番で子供出来たらさぞ、

アホアホ家族ができそうでほのぼのしそうだなぁ。


クグナ用の柄は幾つもベベビドの所に有るので、

場所が近いのも有るからさっさと用意する。

そんで、ギュギュパニが指でつまんで離そうとしないナイフを強引に引っ剥がして、

柄も付いたナイフの出来上がり。


若干大きさを見ると・・・ナイフより大きいかもしれないなぁ。

これナタくらいの長さに成ったなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ