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えっ・・・?結構重くない?


「さて、ブルググ。禁を解くよ。族長やエネルルから解いてくれと言われたんでね」

「・・・」


今、目の前にブルググが座っている。

座りながら僕を見上げる。


何を言いたいか全然わからないけど、

なんとなく、禁を解いてほしく無さそうな顔してるなぁ。

事情が有るのかもしれないけど・・・さて、どうなることやら。


食事を終えて、

ンダンダ一行に話をして、ブルググを借りると言い含める。

族長の元へブルググを連れて行くと、エネルルと同伴しているギギリカの他に、

シシブブと何故かギュギュパニまで居る。


ウチの雌連中はなんでか、仲間意識が強い。

ギュギュパニなんか種族違うのにこういう時は何故か参加する。


・・・まぁいいか。

雌率が高い気がするけどなぁ・・・。


あっ!

そう言えば、ンダンダに番が出来た。

いや、できたと思う。

お相手は、ヴァレヴァレから来て、ンダンダの弟子として行動を始めた雌だ。

植物が好きで、特に花が大好きだそうだ。


・・・まぁ、ンダンダは物腰も柔らかい方だし、

心根はとても穏やかで優しい。

ピッタリだとおもう。

ただ、お相手の名前、言われたけど、

どうやら僕は余り関わらない相手だとすぐ忘れてしまうらしい。

なんて名だか覚えてないんだ。

言われれば思い出すと思うけどね。

・・・まぁ、僕に関係ないか。


話がそれた。


なんだかんだこの一ヶ月ちょっと、

ブルググは言葉を発する事ができず過ごしてきたんだ。

器用だよね?

言葉を発せなくても意思を伝える事がなんとなくできたんだ。

結構、努力家かもしれない。


エネルルからの前情報で、

今回、キョンシーを出現させるトリガーを引いたのは、

ブルググで間違いない。


そして、ヴァレヴァレの指示でも有るわけで、

ブルググはヴァレヴァレの傀儡、もしくは使者だ。


エネルルが言っていた事で、

ヴァレヴァレが昔、

この大陸に攻めたか迷ったかして来たとされる、

侵略者とやらで、更にその記憶があり、

あまつさえ、その影響を受けているのがブルググで、有る場合、

結構な確立で、禁を解いた後でトラブルが起きるはずだ。


まぁ、流れから言えば、起きないはず無いんだ。


さて、僕で鎮圧できるかなぁ?

毎回トラブルが起きると僕が出張るのも本当は良くないんだよね。

ウウダギが絡めば、やぶさかじゃないけど、

他が絡むなら余り乗り気ではないのも確かだ。


だけど、族長から今しがた、

よくわからないけど「ヤレ」とでも言う圧を受けました。


仕方ないから、気を練る。

声に気を乗せるっていうのは、

思いの他、神経を使うんだ。

ぶっちゃけると乗り気じゃないと時間がかかる。

丁寧に気を練る。


禁を与えた時はノリノリだったからすぐだったけど、

今、注目されている中でそれをやらねばならないのは、

緊張が邪魔をする。


まぁ、ついでに、今みたいに要らないことも考えてしまうわけだ・・・。


『ブルググ。汝の禁を須らく解く』


声に上手い事、

強い気が乗った。

意外に美声な僕の声。


いいね。

禁は解けただろう・・・。

あれ?


目の前のブルググは、

なんだか、額にシワを寄せて、必死に耐えているようなぁ・・・。


「族長。ブルググ。実は喋りたくないんじゃないか?なんか事情が有るかもしれないんだけど・・・?どう思う?なんで、禁を解くのに耐えてるんだろう?多分、余り耐えると、此の後再度禁を解くのに手間かかるよ?」

「ふむ・・・。エネルルは心当たりがあるか?」

「・・・ブルググ。責はしない。私はただ、親がどんな考えでやったのかを聞きたいだけだ。お前には罪はない。何とかキンとやらを受け入れてくれないか?」


ブルググがまだ粘っている。

余り粘られても困るので、仕方ない。

強制は嫌いだけど、

念を強く入れるかなぁ・・・。


「ブルググ。わかった。無理しなくていいよ。禁を解きたくないんでしょ?じゃぁ、これを見て」


ブルググの側まで寄り、

ブルググの右側面へと姿勢を変える。


右手で、手元にある葉っぱをブルググへと見せる。

ブルググはその話を信用したようで、

その葉っぱへと意識が行ったのを確認。


その隙に左手で、

ブルググの頭へと死角からそっと触り、

首の付け根、体の中心の脊椎と頭部が接合する部分に有る点穴へと、

気を流す。


ここへ気を流すと、首から上と下で、意識が薄くなる。

多分、小脳が近く、そこには運動能力を司る部分が多いため、

筋肉の収縮なんかも全て外側からコントロールできてしまうんだ。

意識がハッキリしようが、この付け根へ触れられてしまうと、

訓練してない者は、抵抗が出来ない。


よく後頭部をバットで殴られたり、

当たりどころが悪いとか言われる部分が、

ほとんどの場合この小脳へのダメージだ。


僕が今使ったのは、

手品とかでよく行われるミスディレクションからの小脳へ気を送り、

抵抗力を削ぐ行いだ。


まぁ、術者に触られた時点で、

慣れてない者に抵抗する術はないんだけどね。


「あ”っ・・・ぁ・・・」


ブルググが声を出した。

禁の解呪を受け入れざる負えないんだ。

本人が望もうと望まないとに限らずね。


ごめんね。

結構酷いやり方だけど、

こうでもしないと収拾がつかない。


「ポンピカ。 また、やりおったか・・・」


族長はなんとなく分かったらしい。

エネルルは目を潜めた。

ギギリカは「?」ってかんじで首を傾げてる。


ギュギュパニ、及び、シシブブに至っては、

ものすごく睨まれてます。


左手をブルググの頭部からそっと退かす。

すると、今まで目だけが中を舞っていたブルググに、

急に意識が戻ったようなそんな表情で僕を見上げてきた。


「ごめんね。随分卑怯な手段を使っちゃった。でも、ブルググ。言いたくないことや、言わないほうが良いことも有るけど、ずっと黙りですごせるほど、甘くはないよ。まぁ、禁を施して今に至った僕が言うことじゃないけど、エネルルや被害を受けた他のスキクへの説明はしておこう。じゃなきゃ誰も納得しないさ」


それっぽい話をした。

でも、禁を施した僕が、ホント言うような言葉じゃないなぁ。

なんか自分の事、棚に丸っと乗っけちゃった気がする。

少し恥ずかしいなぁ。

まぁ、何はともあれ、喋れるようには成っただろう。


「ブルググの禁は解いたけど?エネルル。聞きたい事とか有ったんだろ?」


エネルルに目配せをすると、頷いて近づいてくる。

一応何か有ってはマズイので、ブルググの首元から手を放すことはしていない。


トラブルが起きるとすれば、

多くの場合、ブルググの立場のヤツから仕掛けるだろう。

だって、そういう流れだよね?

まぁ、警戒はするけどね。


「ブルググ・・・。 言葉を使えるんだな」

「・・・。 ええ」


エネルルもその答えで、

取り敢えず、安心したように見える。


「ブルググ。親は・・・。ヴァレヴァレは何と言っていた?今回の件は何が目的だったのだ?」

「ヴァレヴァレは・・・。 ヴァレヴァレはザーザースを憎んでいます」


ん?エネルルの質問に答えていないんだけど・・・。

まぁ、いいか。

でもザーザースを憎むとは?

あれか?元人間で殺されたからとかか?

それ言うなら、攻めてきた向こうが悪いだろう・・・言いがかりな気もする。

いや、まてよ?もし、迷い込んだ末に居場所を作るために、

領土を得る手段だった場合は、果たしてどうか・・・?

いや、それでも攻勢を取った側に問題が有るだろう・・・。


いや、憶測がそのまま推測になってるなぁ。

悪い癖だ。


「ブルググ。もう一度聞く。 親は・・・何を考えて今回の事を起こした」

「エネルル様。私も今回の件は聞いていません。ただ、役目だけを言い渡されただけです」


「っ! それでは、答えに成っていない! 知っていることを話せ!」


エネルルが掴みかかったので、右手で制した。


「・・・」

「なぜ知っていることを話さない! 私はそんなに信用がないのか?! ヴァレヴァレより私の方がまだ正常だろう! なぜ私ではダメなんだっ!」


僕の制しを跳ね除け、更に飛びつこうとするエネルルを今度は、

ギギリカが後ろから羽交い締めにして止めた。

エネルルは喉を大きく膨らませて、

シューシューと物凄い威嚇音を出している。


意外に喧嘩っ早いなぁ、エネルル。


「ちょっと口を挟んで良いか?」


族長が言葉を挟んできた。


「ブルググよ。エネルルは今回の旅で、様々な物を失った。その責任は自分に有ると言ってきかん。じゃが、二度と同じ過ちを起こさぬために、お前が知り得る事を聞いておく必要が有ったのだ。理解できるであろう?」


・・・?

まぁ、分かるけどさぁ?

そんな事言ったって知らんと言うだろぅ。

僕ならそうするけどね。

ブルググの肩持つわけじゃないけど、

エネルルではその質問の答えを聞き出す事は出来ないと思うなぁ。


まぁ、時間が解決するだろうけどね。


「・・・わかりました」


やっぱりザーザースって・・・いや、スキクって素直だなぁ。

僕だったら、黙ってたなぁ。

やっぱ僕はスキクじゃないなw。


「エネルル様も知っている通り、ヴァレヴァレ様は種を違える者です。元がヒムノスと言われる生き物である事が大きく関わっています。」

「それは知っている!今回は何を考えていたのかを聞きたい!」


「聞かなくても分かるでしょう・・・。我々は捨てられたんですよ。ヴァレヴァレは多くの意にそぐわないスキクを一度に始末する事にしたんだと思います」

「・・・そ、それでは・・・なぜお前や私が・・・」


「エネルル様。エネルル様は既にヴァレヴァレから目を付けられておりました。今、こうなっては確信を持ちましたが、どうやら私も目をつけられていたんだと思います」

「・・・な、なぜだ・・・私はともかく、お前はヴァレヴァレの意思を継ぐ者だろう・・・」


「そう見えておりましたか? ・・・ならば、ヴァレヴァレがやはり私などより知略に長けていた・・・ただそれだけでしょう」

「・・・お前はずっと、隠し通していたとでも言うのか」


「・・・お恥ずかしい話ですが・・・」

「くっ! そうか、私もお前も捨てられたわけだな・・・運が悪ければ、あそこで死んでいたわけか」


「いえ。 死ぬより恐ろしい事に成っておりました。 恐らく、古代に行われた呪術の一部が執り行われていたのです。 あのままですと、あそこに居た皆が意思を持たぬただ、ヴァレヴァレに操られるだけの生き物に取って代わっていたはずです」

「・・・その術をお前は、実行したのだな・・・何故だ?知っていたのであれば止めれただろう」


「・・・はっw。 ・・・簡単にいいますね。 止めれるならば止めていましたよ。 いや、止める努力はしていました。 極力ね・・・」

「止める努力だと?」


「なぜ私が殆ど食事を摂らなかったかわかりますか?皆に食事を摂らせないようにしたのもそうです・・・」

「アレは、持ってきた食料が少なかったのだろう?」


「そんなわけ無いじゃないですか・・・そもそも、ヴァレヴァレの指示で用意した食べ物には呪いのかかった物やジンまで宿した物までありました。 ・・・気づいたのは、集落を出てからでしたが、なんとしてもジンだけでも取り除くためにと、捨てたんです」

「・・・」


「ジンを宿した物は全て捨てる事が出来ましたが、惜しむべきは、呪いの入った物です。食べた者が必ず呪いに罹るとは限りません。ですが、結果から見れば食べた全スキクにその可能性が生まれてしまいました。そして、まぁ、例の8匹が呪いに罹りました」

「では、なぜお前が儀式を進めたのだ・・・アレがなければ、そもそも8匹は呪いに罹らなかったはずだ」


「逆ですよ。アレをやらなければ他の皆があの状態、もっと悪い者に成っていたでしょう。誰かに押し付けなければ、他の全てがダメに成っていたのです」

「・・・」


うーん。

でも、あの儀式って、エネルルにその魂っていうか呪いを押し付ける様なやつだったよね?

ソレにその際に狂気にかられて皆もキョンシーと言うかヤバイ状態になて暴れだすような・・・?

そんなやつじゃなかったっけか?精霊さんがそれを利用して、侵略者を撃退・・・ん?


おい・・・。


侵略者の生まれ変わりとか言ってたよなぁ・・・ヴァレヴァレ。

その時の被害者か?

いや、そもそも被害者だからといって術を見分けられるとは・・・。

つまり術を見分けられたとすれば、

その侵略者ってのは、それなりの知識がなければ判断が出来ないだろう?


つまり、侵入者に術に精通したやつが居たんだ。

ソレがヴァレヴァレだ。

そんでもって、恨みが篭った魂がスキクに転生して、今に至るのか・・・。

なぜ今までの転生で似たような事が起こらなかった?

もっと酷い事が起きても可笑しくないだろう・・・なぜだ?


まぁ、それはわからないか・・・。


それより、ブルググはエネルルにその呪いを押し付けて、

他のスキクを全て救おうとしたってことか。

でも、そこに僕らが割って入ったのか?


でも、既に8匹がキョンシーに変わっていたよな?

ブルググは側で見ていただけだし・・・。

なんか腑に落ちないなぁ。


「・・・話では、例の8匹は儀式の途中で変わったと聞いた」

「あの8匹は既に死んでいたんですよ。ヴァレヴァレから出る前に・・・中身が空っぽだったんです」


「・・・そ、そんな馬鹿な!ヴァイヴァとは何度も話をしたぞ?なぜだ?」

「話をした?本当にそう思いますか? 二匹だけで会話をしましたか?その時私は何処に居ました?」


「・・・お前の前でしか会話をしていない・・・」

「アレ等の操る糸は既に私の手にはないのですが、あの時アレ等の操り糸は私の手の中でした」


「そんな・・・では、あれはどうやって・・・そもそも、そんな物が手に有るのなら何とか出来ただろう?」

「出来なかったんですよ。出来なかったので最後の手段として、アレ等を術の要にして、貴方に全てを押し付けようとしたんですがね・・・」


う〜ん?

他にやり方、有ったんじゃないかなぁ?

まぁ、後の木阿弥だろうけど、

タラレバも良くないなぁ。

しかし、そう考えると、ブルググもそこそこ術に精通してるって事か。

あの8匹って操作出来たんだね。

知らなかったけど、それより、ブルググはエネルルと何か有ったのか?

呪いを全て押し付けるようなそんな感じだったしなぁ・・・。


「・・・私はお前に何かしたか?恨まれるようなことは、していないはずだ」

「ええ。そうです。私には、行わなかったですね・・・私には」


「どういう事だ?」

「私の番。覚えていますか?」


「いや・・・」

「そもそも、ヴァレヴァレでは、ザウスとスキクで親の取り合いが行われていたんですよ。オルガに従う者とヴァレヴァレに従う者、どちらかに属さないと、生きていけない集落でした。この集落とは違う。あちらは全てに置いて、自由がなかったんです」


「ソレがなぜ私と関係が?」

「私の番、ビススはオルガ派でした。というか、オルガに育てられたので自然とそちらに付きました。対して私はヴァレヴァレ派です。しかし、番になってしまった。そうなると、片方へと実を寄せ直さなければいけないんです。そうでなければ、生きていけない。・・・私とビススはヴァレヴァレ派に着いたわけです」


「・・・もしや・・・いや、それでも・・・」

「思い出しましたか?あの時貴方は幼かった。だけど、ヴァレヴァレの指示だとしても貴方は拒否出来たはずだ!なのにそれをしなかった!何故です!?なぜあの時拒否してくれなかったんですか!?拒否してくれさえしてくれれば・・・ビススはまだ生きていた。生きていたはずです」


う〜ん。

重いなぁ。

どうしよう。

僕こう言うの苦手なんだよなぁ。

根っから軽く生きるつもりだからなぁ。

スキクってこんなに重い事考えるんだろうか?

パパムイを見習って欲しい。


ヴァレヴァレってのは結構重いヤツラばかりかもしれないなぁ。

この集落でやっていけるのか?


ってか・・・。

ブルググとエネルルは相容れない感じかなぁ?

話の方向が重すぎて、痛いんだけど・・・。

族長も妙に真剣な面持ちだし、

シシブブもエネルルを羽交い締めにしてるギギリカもなんか真剣。

・・・ギュギュパニはなんだか、胸元のオルガを握ってブツブツ言ってるし・・・。


どうやって、決着漬けるんだこれ?


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