新しい食べ方と嵐が来るぞ!
スキクは基本雑食なんだけど、好みで言えば肉が好み。しかも丸呑みだ。
だけど、族長と僕、あとは一部の年配スキクはなぜか好みが草食。
何かの原因が有るのか知らないけど、何故かそうなんだ。
パパムイもギギリカも肉が大好き。
パパムイなんか、この間、小さい鳥を丸呑みしたくらいだ。
ちゃんと消化出来るのか不安だよ。
ウウダギはどうなんだろう?
ウルグズは外見からして、そして習性からして、肉食なのは分かる。
と言うと、与えられては居なかったが、拾って食べる物は肉になるだろう。
やっぱり肉の方が好きなのかもしれないな。
族長が草食なのが助かった。
食べれる草とか木の実なんかの種類を良く知っている。
僕は族長の元に引き取られてからというもの、
食べられる物は何かとか色々教わったんだ。
中でも、僕のお気に入りはやっぱり果物。
熱帯雨林という事もあってか、南国とまでは行かないけど、
やはり甘い実がそこら中に実っている。
皆、美味しい実が生っているのに食べようとしないんだ。
変だよね?
甘いのになぁ。
手近な実を船に転がせて、近場の木に登り、葉っぱをむしり取る。
そう言えば、胡椒の葉って、何処に生えてるんだろう?
乾燥した葉っぱの形には覚えが有るんだよね。
もしかしたら他の葉っぱや、実なんかにもなんか効果があるかもしれないな。
でも、毒だったりすると始末に終えない。
あまり、勝手に毟ったりしないで、採ったものは族長に見せてOKを貰ってからだな。
一通り、食べる分の植物は確保した。
これぐらいで十分のはず。
船で、丘へと戻る。
「ポンピカ戻ったのか?」
「パパムイ。うん。」
「魚は焼けた。俺が焼いたぞ凄いだろ?」
「へー。凄いね。」
「へへーw俺も学ぶんだぜ」
「なるほど。もしかしたら、パパムイは体や手を使うことが好きなのかもしれないな」
「なんのことだ?」
「いや、こっちの話。それで?ウウダギは?」
「そうだ、其の事なんだけど」
「ん?なんか有ったの?」
「多分、ウウダギは魚が好物だ。魚を見る目が熱心なんだよ」
「へー」
なるほど、変わり種だったのか。
この集落に魚の味を教えたのは僕だけど、それも先日の事だ。
それまでは、祭りとかそんな時に偶然川に打ち上がっている魚を採ってくるのが昇るくらいだった。
半分腐った状態の魚を好きと思って食べるスキクはあまり居ないだろう。
やはり、新鮮な肉のほうが人気が出るのは当然だな。
この集落のスキクは年に一回祭りをやる。
だけど、出し物や踊るとかそういうことはしない。
ただ、みんなで、集まって、皆が採ってきた食べ物を食べるだけ。
火を怖がる習性のせいで、キャンプファイヤーもやらない。
本当に地味なんだ。
なにが祭りか分からなく成るほどにね。
僕とパパムイはウウダギとギギリカがまつ小屋へと向かう。
「しっかし、本当に草が好きなんだな?ポンピカは」
「美味しいよ?」
「そうかなぁ〜?血の味もしないだろ?」
「僕はその血の味が好きじゃないんだよ。生臭くて鼻の奥に残る感じが嫌なんだ」
「へー。それが良いんじゃないか?肉なんてどれもそうだろ?」
「・・・もしかして、パパムイは動物を狩ったら血抜きとかする?」
「ん?血抜き?何だそれ?」
「あー。そうか、血抜きしないのか」
「其れするとどうなるんだ?」
「血の臭いが少なくなるんだ。食べやすく成るよ。」
「そうか?血の味しないと、肉じゃないだろ?」
「う〜ん。まぁ好みかな」
「そういうもんか?」
「多分、そうだと思う」
「ふーん」
そんな話をしながら小屋に着く。
「ただいま。ソーセージはどんな感じ?」
「何回か水をとりかえたわよ?塩っぱそうだったから」
「おー!さすがギギリカだ。それで良いんだ」
「そう?なら良かったわ」
「ポンピカ。ソレ何?」
「これ?」
ウウダギが僕が持っている黄色くて大きな木の実を指差す。
この木の実は実に甘い。
皮を剥いて、果肉を齧ると至福の甘さなんだ。
だけど、欠点が有る。
この実の皮は非常に渋い!
それも口が曲がるほどに。
・・・渋いんだけど・・・渋いのか・・・なるほど。
この皮をウルグズの皮を鞣す薬液として使えるかもしれない。
酸化したこの皮は皮事態が長いこと分解されずに残る性質が有るからな。
多分出来ると思う。
やってみようか。
まぁ今は食事だな。
「この実は甘いんだよ。」
「実?」
「そうだよ。ウウダギは食べた事無い?」
「ない」
「じゃぁ。食べ方を教えるよ。」
「うん」
そういって、全員で、食卓に着く。
ウウダギは僕の膝の上だ。
可愛いから。
僕は皆の分の木の実を皮を剥いて渡す。
ウウダギにもまるまる一個わたした。
「ポンピカ。俺はこんなに食べないぞ?これ渋くてキライなんだ」
「あたしも渋くて食べれないわ」
「二匹とも、それは誤解だよ。まぁ食べてみれば分かる」
そういって僕は二匹に実を勧めた。
恐る恐る。匂いを嗅いで、二股に分かれた舌でもってペロっと舐めて確認する。
舐めた事ではっきりとわかったのだろう。
二匹とも顔を見合わせて、実にかぶりつく。
「・・・美味い・・・甘い・・・美味いぞ?これ」
「なんでよ?あたし前に食べた時はもう口の中がザラザラに成るくらい渋かったのに・・・」
「この実は、皮が渋いんだ。だから皮を取ると中身だけが食べれるんだよ。中身はとても甘いでしょ」
二匹とも僕のことばを聞いてない。
実をガブガブとかじっている。
「ポンピカ。」
膝の上で僕を見上げるウウダギが食べて良いのか?と催促している。
「ウウダギも食べな。美味しいから」
うん。と頷いて、小さい口で実にかぶりつく。
すると、ウウダギの目が大きく見開かれる。
次には、実と僕を交互に見て、何かを言おうとしたのだろうか?
アウアウと口が言ったかと思うと、木の実にむしゃぶりつく。
美味しかったんだろう。
今までに食べたことがない実なんだと思う。
それを見てると、僕までお腹が空いてきた。
僕も齧りつく。
ねっとりとした表面へ歯を立てると、かじった端から果汁がこぼれ落ちるほど出る。
甘さは濃いけど、全然しつこくない。
前世で言うマンゴーに似た食感で、味も似ている。
ただ、サーっと口の中から甘さが消えるので、しつこく感じない。
すごく良い果物だと思う。
僕は一個食べ終わると、まだ食べているウウダギを見る。
顔中ベタベタにしながらまだ、一心不乱に食べている姿が可愛くて仕方ない。
本当に子供のようだ。子供なんだけどね。
「なぁ?ポンピカ?」
「なに?」
「これもっと無いのか?」
「気に入ったの?」
「ああ、こんなに美味かったのか・・・」
「そうよね。皆なんで食べないのかしら?」
「さっきも言ったけど、皮が渋いんだよ。だから木の実が好きなスキクは皆、皮を剥いでから食べてるよ。」
「そうだったのか・・・面倒だけど、皮は取った方がが良いな」
「そうね。これも皆に教えたら?」
「どうだろうね?皆、面倒くさがって皮ごと食べると思うよ?」
「なるほど。そうかもしれない」
「でも、わたしは、皮剥いてでも食べるわ。こんなに美味しいのに」
「気に入ってもらえてよかったよ。」
僕がそう言ってる間にウウダギが食べ終わったようだ。
ベトベトの顔をこっちに向けて、どうしたら良いか悩んでる。
「ポンピカ」
「ウウダギ、顔を洗いな?ベトベトだよ」
「水?」
「そう、水」
ウウダギは水が怖い。
ウウダギに限らずスキクは皆、水が怖い。
一部水を克服してる。僕ら三匹以外はだけどね。
ウウダギにも水を克服してもらいたい。
速いうちから練習させるのは良いことだと思うんだけどなぁ?
でも、まずは水で顔を洗う事を教えなきゃ。
そう思って、木の器に水を張って、ウウダギの前に出す。
どうして良いのか分からずに、木の器と僕を交互に見ている。
「ウウダギ。こうやって、手で少しすくって、顔のベタベタを落とすんだ」
といって、ウウダギの顔に少し水をつけて、ベタベタを落とす。
すると、ウウダギはビックリしたような顔をして、固まる。
この姿を一言で表すと、「きょとん」だ。
目をぱちくりしてる。
「水怖くないでしょ?まだ、ベトベトが残ってるから自分でやってみな?」
「うん。」
見様見真似で、顔を洗うウウダギ。
すくった水のほとんどが指の間から流れ落ちてるけど、
なんとか、洗えたようだ。
洗い終えたウウダギの顔はなんだかスッキリとして居る。
いつもよりツヤツヤしている気がする。
「ねぇ?ポンピカ」
「なんだい?」
「ウウダギの顔、綺麗になってない?」
「なってると思う」
「もしかして・・・この実って、鱗とか綺麗に成ったりするとか?」
「あー。なるほど、そういうことか」
やっぱりギギリカは雌なんだ。
綺麗なものが好きだし、綺麗に成りたい。
スキクの美的センスは良くわからないけど、雌は特に鱗の輝きに気を使う。
多分、人間で言う美容のことだろう。
そう考えると、たぶん果肉の部分より皮の部分の方が、効果が有る気がする。
試しに、僕は剥いて貯めておいた、木の実の皮を手の甲に乗せて、
暫く経ったら剥いでから良く洗ってみた。
案の定、メチャクチャピカピカした。
それをギギリカに見せると、皮をよこせと言い始める。
「ねぇ!それ!どうやったの?ねぇ!あたしにもやってよ!皮ちょうだい!」
「ちょ!まってよ!この皮は他にも使えると思って、とってあるんだから!」
「ポンピカ。ダメダ。こうなってるギギリカは絶対止めれないから」
諦めろと、パパムイが言う。
渋々だけど、皮をギギリカへ渡す。
ギギリカは嬉々として頭の上とか鼻の上に皮を張って、じっと経過を待っているようだ。
でも、ギギリカ、僕の予想だとやりすぎはダメだと思うよ?
マンゴーも酵素のお陰で、色々できたんだ。
だけど、やりすぎてかぶれる人も居たんだからね。
「ギギリカ、やりすぎないでね。多分、やりすぎると痒くなるはずだ」
「そんな!」
「やり過ぎなきゃ良いんだよ。時間はちゃんと調節したほうが良い」
「わかったわっ!」
元気よく答えたけど、分かってないだろう。
だって、もう既に、ムズムズしてるような動きをしてるから。
「ポンピカ。」
顔を洗って綺麗なウウダギが何かを催促している。
何だろう?
「魚」
魚が食べたいらしい。
ソーセージより魚か、パパムイが言ってることは本当だったみたいだ。
「じゃぁ、焼いた魚に少し塩を振るよ。」
「ああ!魚には塩だなっ!」
パパムイは塩っぱいのイヤダと言っておきながら塩っぱいものが好きみたいだ。
「胡椒の葉は?」
「俺は、塩だけでいい。雄なら塩だろ!」
なにが雄なら塩なのだかわからないが、取り敢えず納得したふりでごまかした。
「ギギリカは?」
「あたしは胡椒の葉も欲しい」
ギギリカは既に皮を剥ぎ取って水で洗い流していた。
メチャクチャツヤツヤした顔で、胡椒が良いと言う。
なんだかなぁ〜。
「ウウダギはどうする?」
「塩と胡椒ほしい。」
ちゃんと要求を言えるように成った。
偉い。そして可愛い。
僕は三匹の魚にそれぞれの好み通りの味付けをして、渡した。
三匹は美味しそうに齧りつく。
パパムイなんか、頭からバリバリと音を立てて噛み砕く。
そしてある程度圧縮したら丸呑みした。
「うめぇ!やっぱりいいな!塩は!」
塩っぱいのがキライなパパムイは塩が大好きです。
「ねぇ。ポンピカ」
「ん?」
「胡椒以外にもこうやって食べれる草とか実が有るんじゃないかな?」
「有ると思うよ。」
「やっぱり・・・。」
「それに、さっき食べた実と混ぜて、塩で少し味を付けても美味しいかもしれないよ」
「なにそれ!凄い!」
「今度やってみよう」
「その時はあたしが一番に食べるわっ!」
「う、うん。そうして欲しい。」
食いしん坊発言でした。
「ポンピカ」
「ウウダギどうした?」
「実」
「実がほしいの?」
うんと言う。
どうやらウウダギは魚より、実のほうが好きみたいだ。
ってことは、植物系なら好きかもしれない。
そう思って、僕が食べる用にとってきた葉っぱとかを出してみた。
「ごめんね。実はもう無いから、葉っぱたべよ?」
「うん」
そういって、白菜の様な食感のする葉っぱを渡す。
ウウダギはじっと見てからバリバリと口に入れていく。
シャクシャクといい音を立てる。
「どお?葉っぱおいしい?」
「うん。」
ん?今一な反応だ。
どういうことだろう?
もしかして、甘い物は別腹的な?
魚より甘い物が好きだけど、葉っぱより魚のほうが好き。
そういう事かな?
「ウウダギ、こっちの葉っぱはどお?」
僕が別の葉っぱを渡す。
こっちは、キュウリの様な匂いとアロエやサボテンの様に皮が厚くて、中がみずみずしい奴だ。
ウウダギは首をかしげて、受取り、そしてまたシャクシャクと食べる。
「こっちのほうが、いい」
なるほど、水気だ。
水気の有るものが好きなんだ。
となると・・・メインのソーセージは不評かもしれないな。
「ポンピカ、そろそろ、例の奴食べよーぜ」
パパムイからの催促来ました。
塩抜きしているソーセージを枝に刺して、焚き火に近づける。
暫く焼いてい居ると、中から油が滴り落ち始めた。
いい匂いもする。
「ポンピカ!もういいんじゃねーか?なぁ!」
パパムイの催促が酷い。
まだ、表面しか焼けてません。
しっかり中まで火を通したいんだよ。
少し、まとうか。
「もう少し待とう。」
「お、おう」
ソーセージの表面にカリカリした焦げ目が出始めた。
油によってフライ状態になっているんだ。
頃合いだろう。
いい焼き頃のソーセージを一本パパムイに渡す。
「俺からでいいのか?」
「毒味はパパムイからで」
「毒味ってなんだよ!・・・まぁいいけどさ」
そういって、いつもの奴がきた。
「あちぃ!」だ。
熱くても我慢するように、齧りついたあと喉へ流し込む。
「うめぇ・・・塩がいい感じだ。美味すぎる。前食べたのより美味いぞ?なんでだ?」
そんな事を言い始めたもんだから、ギギリカから催促の眼差しがキツイ。
諦めて、ギギリカにも一本。
そしてウウダギにも一本渡す。
僕は、もう少し焼きたい。
ギギリカはいつもの様に熱が下がるのを待っているのかと思いきや、
我慢ができなかったのだろう。
いきなり齧りついた。そして「あつい!」といって、そのまま口の中で転がしてから喉へ流し込む。
「おいしい!凄い!なにこれ?なんで?前と味が違うよ?」
ふむ、多分熟成されたんだとおもう。
塩もいい感じに調節されてるんだろう。
塩抜きは完璧だな。
ならウウダギが食べても塩辛くはないだろう。
「ウウダギ、熱いからね」
「うん」
ウウダギは、いきなり齧りつくようなことはしない。
頭が良いからだ、熱いって分かってるんだろう。
食べたいと言う欲望に抗うだけの理性があるんだ。
いい子だ。
さて、僕はっと、もう焼けたかな?
でも此のまま食べるのは熱いだろうし、塩っぱいかもしれない。
なら、葉っぱを巻いてたべよう。
さっきウウダギに食べさせたのとは違う葉っぱを取り出す。
この葉っぱはキャベツに似た弾力と味が薄いのが特徴。
口の中を休ませる時に食べていた葉っぱだ。
脂っこい肉を食べた後とかに食べるとスッキリするんだよね。
葉っぱを巻いて、端っこを齧る。
じゅわっと、油が溢れ出る。
葉っぱがその油を受け止めて、いい感じに塩気を調節してくれている。
なかなか、正解なチョイスだな。
パパムイとギギリカが言っていたとおり、肉の味が濃く感じる。
干す事で熟成したんだろう。
うん。これは美味しい。
だけど、刺激が足りないな、胡椒の葉をかけてみようか。
胡椒の葉を砕いて、巻いた葉っぱとソーセージの間にふりかける。
そのまま口に運んだ。
葉っぱのお陰で熱くない。
そして、胡椒の刺激がとても心地が良い。
これは、十分料理と言えるだろう。
美味いな。癖になりそうだ。
「ポンピカ!・・・おまっ!」
「酷い!なによ?その食べ方!」
えっ?
そんなに変だったのかな?
スキクは単一で食べるのがしきたりとかそういう感じかな?
ウウダギは何を言ってるのかわからないという感じで、見守っている。
う〜ん?なんで酷いのかな?
「そんな食べ方が有るなら早く言えよ!」
「そうよ!あたしもそれで食べたかったわ!」
あー。食いしん坊なだけだった。
そうか、たしかにこんな食べ方したことないだろう。
そもそも、数日前にソーセージが美味しいってはじめて知ったんだろうしな。
料理の概念がないんだ、そうなるだろう。
「う〜ん。じゃぁ、明日はこういう食べ方しようか?」
「勿論!」
「おう!きっとだぜ!」
二匹ともどうやらお腹いっぱいなのかもしれない。
口だけが欲しがってるようだ。
ウウダギはどうだろう?
普通のスキクと同じ量たべてるわけだしな。
こんなに小さいスキクなんだ、きっとお腹いっぱい・・・。
なんて可愛いんだろう。
お腹がぷっくり出ちゃってるじゃないか!
食べすぎたのか?
「ウウダギ。食べ過ぎか?お腹大丈夫か?」
「うん。まだ入る。」
えっ?小さいスキクって凄いな!?
まだ入るのか、でも一年前の僕は確かに食べても食べてもお腹がいっぱいにならなかった。
大きくなってから満腹感を感じたのを覚えてる。
そうか、スキクは早く体を大きくするために小さい時は消化器官が強いのかもしれないな。
なるほど、勉強に成る。
それに、僕は自分の子供を飢えさせたりしたくない。
食べれる時に沢山食べておいて欲しいと思ってる。
これでいいかな。
食事が終わってから寝るまでの時間が随分あったので、
そのまま皆で勉強をすることにした。
ギギリカとウウダギはとても物覚えがいい。
特にウウダギは、天才だと思う。
一度話したことを一語一句覚えていて、聞き漏らしがないんだ。
凄い。
ギギリカはウウダギほどじゃないけど、とても良く覚える。
反復練習をするとすぐに慣れて身についてしまう。
ただ、パパムイがどうしても追いついてこない。
覚える気がないんだ。
全く集中しない。
だけど、やっている時コツを掴んだ。
それは、物の使い方とか体を動かす様な事については、
此の中でウウダギと同じくらい集中して覚えるんだ。
その事に気づいてからは、体を動かす事を含めて、
物語を聞かせたり、「字を書くのはこうやってやるんだ」とかいいながら
枝をクネクネ動かしたりして体に覚えさせた。
算数なんかも音読しながらだと覚える。
意外にノリノリで覚える姿は、まさに小さいスキクとかわらなかった。
途中から、三匹が踊りながら計算を音読している姿は実に滑稽だったけど、
ウウダギが可愛く踊る姿は必見だった。
夜遅くに成ると、ウウダギが最初に眠くなってしまった。
次にパパムイの集中力が切れて、ギギリカが眠気を我慢できずに突っ伏す。
それを見た僕はやっと解放されたと思って、其の場へ倒れるように寝てしまった。
次の朝、カラリと乾燥していた。
夜中のスコールの量が少なかったみたいだ。
外に出て確認すると水位も随分と下っている。
だけど、油断はできない。
この雨季の特徴で、期間の中程になると、一度雨の量がへるんだ。
だけど、この後とんでもない量の雨と暴風の風が吹く前兆なんだ。
それを雨季が終わったと思い這い出てくる虫や小動物がいる。
この地で、暮らしている動物は大体が、その事を経験上知っているけど、
虫は頭が足りないので、勘違いしてしまうんだ。
それと、よそから移動してきた動物は此のことを知らない。
なので、この時期に移動してきた動物は間違いなく死に至るんだ。
たとえ、牛ぐらいある大きな動物でも死に至る。
つまり雨季が本格化するというわけである。
今までの暴風程度であれば、
僕らが住んでいるこの小屋も耐えることができたけど、
本格化したスコール、いや、台風と言っていいだろう。
には、かなわないだろう。
集会場もこの時期だけは、警戒心でいっぱいに成る。
族長の話に居れば、近くの集落で、この時期に集会場の屋根が吹き飛ばされて、
集落がほぼ、全滅したという話を聞かされた事が有る。
つまり毎年、一大事なわけだ。
困った事に僕らは、ギギリカの”ジン”を期に住居を移してしまった。
それにこの小屋も急遽作ったものだ。
なんとも成らないだろう。
でも、僕には秘策がある。
これは、どうしても本格化する前にやって置かなければならない事だ。
後手に回ってしまったが、やるしか無い。
今日は珍しくパパムイもギギリカも小屋から出ていっていない。
どうやら、状況が変わった事に悩んでいるようだ。
毎年に事だから気づいてもいいんだけど・・・。他の事は言えないな。