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見回り


キョンシーの8匹を取り敢えず放置ってことで、

シシブブに会いに行った。


シシブブは何時もどおりケルケオの面倒を見ている。

他に3匹ほど、知らない顔ぶれが付き添っている様子。


イイオオは居ない。


「シシブブ調子はどうなの?」

「ん?ポンピカ。 あれ?ウウダギも一緒よね?」


「ウウダギはアンキロの所いってるよ」

「そう。 ほらっ!皆一応挨拶しなさい。アレがポンピカよ」


シシブブに居流されて三匹のスキクに挨拶をされた。

挨拶っていう文化がこの集落以外にはないらしい。

言葉はあるようだけど、毎度同じで、顔ブラが変わることもない生活環境では、

挨拶という習慣が育たないらしいんだ。


でも、この集落は挨拶が育った。

というのもウチの族長が変わったタイプらしくて、

目に止まった新しい事をすぐに取り入れる体質なんだそうだ。


・・・まぁ、インスピレーションを与えたのは、

僕が事あるごとに挨拶をするからだったようだ。


まぁ、いい。


挨拶されたので挨拶で答える。

その様子に三匹は目を丸くしていた。


「それで?今忙しいの?」

「忙しいわよ?でも手が増えたからあたしが何かしなきゃいけないってわけでもないの」


つまり、その三匹をコキ使ってますと言ってるよね?


「あー・・・。ウウダギにも言ったんだけど、あまり、無理はさせないでね?ウウダギの所の4匹農地一匹はさっき沈んだよ?」

「・・・4匹?ウウダギの所には8匹位居たはずよ?」


・・・あれが最初ってわけじゃないのか?


「・・・取り敢えずウウダギに休みを取らせるように言ったから・・・問題ないとともう」

「ウウダギは手下限とか、相手の体調や心情が分からないからね。そういう所気をつけないとだめよ」


まぁ、分かってます。

わかってるけど・・・。


「まぁ、いいわ。今ウウダギは休み入れてるんでしょ?」

「うん」


「でも、ポンピカ。あの子、もう少し休ませてあげなきゃだめよ?遊んでる最中も家の事やキカイとか言う物のことばかり考えてるみたいよ。程々にしないと周りがついてこれないわよ」

「・・・そうなの?」


「あんた、親でしょ?なんでわからないの?」

「・・・なんかすいません」


「はぁー。まぁいいわ。ソレより、ケルケオの子供が少し大きく成り始めてるわ、それと、時期は違うんだけど、親のケルケオも卵をもうすぐ産むわよ」

「えっ?なんで?」


「なんでって・・・雄が一匹入ってきたからじゃない。この間言ったわよね?」


そうだっけ?

ってかなんで入ってきたんだ?


「入ってきちゃうものなの?よくわからないけど・・・自分から束縛されに来るなんてとんでもない雄だね?」

「何言ってるかわからないけど。入ってきちゃったんだから仕方ないでしょ?皆一緒に飼うしかないわ」


「まぁ、そうだけど・・・ってかさっきからその小屋の上に居るのって・・・エルフィじゃない?」

「ん?そうね?でもなんか悪さをするわけじゃないし、放って置いてるわよ」


「エルフィって飼えるの?」

「まぁ、飼えるというか、適当よ?だって食べ物派自分でみtけるみたいだし、寝る所も邪魔にならない場所で寝るし、排泄も森に入っていって此の辺ではしないわね」


随分賢い動物だね。

まぁ、見た目がサルに近いから知能も高いのかもしれない・


「言うこと聞く?」

「どうかな?余りあたしはかまっては居ないわ」


まぁ、なんの害もないならいいか・・・そのままにしておこう。


その後ケルケオの子供連中をひとしきりかまって、

取り敢えず頭をツンツンされまくった。

ってか、もう僕の顔の位置より上にケルケオの顔が来る。

成長が早いのかもしれない。


やっぱりプンタの恩恵はここまでも届いてるんじゃないか?

親ケルケオも時期外れだそうだけど。卵を産むらしいしね。


シシブブと話し込んでいる最中にウウダギが合流した。

ウウダギはアンキロと楽しく過ごせたらしい。

顔が活き活きしてる。


「シシブブ。 ンダンダの所に行きたいんだけど、誰かケルケオで送ってくれない?」

「今は三匹とも出払ってるわよ?」


「卵産むのに動いていいの?」

「構わないわよ。ソレより動かないほうがケルケオの体に悪いわ」


「へー。そういうものなの?僕はてっきり、孕んだら安静にするものだとばかり思ってたんだけど?」

「最初の内は程々にすればいいけど、スキクとは違うからね。野生の動物は案外、耐久力があるのよ?」


「へー。勉強に成る」

「ポンピカが勉強に成るとか。初めてね?」


「そんな事ないよ。毎日が勉強だし、毎日発見の連続だよ」

「・・・へー。それは凄いのね。あたしは、生き物の事以外あまり手につかないけど」


「それはシシブブだからさ。そのおかげで、牧場が出来たんだ。頼もしい限りさ」

「そう?なら此のままでいいわね」


「まぁ、ソレでもいいけど、もっと動物も色々増やしたいなぁ・・・手も増えたんだし、その内食べれる動物を繁殖出来るようにすればいいね?畜産っていうんだけどね」

「・・・あんたソレが目的だったの?」


「パパムイだけに狩りさせるの可哀想だろ?」

「パパムイは狩りしか脳がないからでしょ?パパムイ自身ソレで成り立ってるんだから無理やり取り上げちゃダメよ?」


「あー。そういうことじゃないんだよ。食べ物として、飢えないようにって意味でね」

「・・・そう?まぁ、まだ先の話だとともうわよ?そんなに簡単じゃないからね?繁殖って」


「そりゃそうだろ。でもシシブブとその弟子なら出来るように成るだろ?」

「どうかなぁ?経験を積んでいくしかないわね」


「うん。僕もそれは必要だと思う。だから頑張ってね」

「まぁ、いいわ。ンダンダの頃に行くんでしょ?早く言ってきなさい。彼処、予想以上に広くなってるわよ」


・・・マジで?

ウウダギを見ると、

コクンとうなずいた。


そうかぁ・・・やりやがったかぁ。

ンダンダは根がいいやつで、おっとりというかガツガツしてない地味っ子だけど、

意外に中身がすげーんだよなぁ。

一回火が着くと、止まらないタイプなんだよね。


そうかぁ・・・。

火が着いちゃったかぁ・・・。


シシブブ達と別れ、

ウウダギを抱きかかえて、ンダンダの農場へと向かう。


途中、広場を通るんだけど、

子供連中がすごく騒がしい。

珍しくデデンゴが居る。


「あっ!ポンピカ!いい所に来てくれました!ウウダギも!」


デデンゴが半泣き状態で助けを求めてきた。

ってかあまり関わりたくない。

僕よりずっと大きいんだもん。


「・・・なに?どうした?ここに居るの子供だろ?」

「そうです!皆が無理やり僕を族長にするって聞かないんです!僕やなんだけどなぁ」


なんの話し?

そんな簡単に族長になんかなれないし成っても良いことないぞ?

苦労するだけだよ?ウチの族長見てわからないのか?


「・・・別に皆がデデンゴを族長にするって言ったって、決めるの族長なんだから意味ないだろ?」

「そう言ってるんですけど・・・」

「おい!お前!族長候補のデデンゴ様に無礼なやつだな!」


なんか突っかかってきた。

このパターンはダメなやつだ。

ウウダギが絡まれないようにしないとなぁ。


「おい!ベルルベ!ポンピカはお前を助けてくれたスキクだぞ!?そんなこと言うなっ!」

「はっ!そんなわけ無いだろ?俺を助けてくれたのは親だ!こんなヒョロヒョロのチビじゃない!」


「いやいや、僕がちゃんと見てたんだ!信じてよ」

「デデンゴ様がいうならぁ・・・でもデデンゴ様ならこんなヤツひとひねりですよね?」


「無理! 僕じゃどうにもならない!抱えられてるウウダギにも勝てないよ!」

「何言ってるんですか!?デデンゴ様は大きいじゃないですか!力だってそこらのスキクよりずっと強いじゃないですかっ!」


「だから、力とかじゃないんだよ!無理なの!絶対に!」

「デデンゴ様がやらないなら俺がやりますよ!見ててください!」


ほら、キタキタ。

一連の流れだよね?

さて、どうするかなぁ・・・。


「おい!お前!その抱いてるままでいいのか!」


やるつもりでいる。

後ろでデデンゴが手を加えてガタガタ震えてキョロキョロしてる。

そんなに僕怖い?

怖くないよね?ウウダギ?


・・・ウウダギ?


胸元、で喉を目一杯膨らませて、シャーっと息を荒巻くのは・・・まぁウウダギさんですけど、

かなりご立腹ですね。

仕方ない、少しなでてやろうか・・・。


「ウウダギ、ちょっと離れてて」

「ダメ!僕がやる!」


・・・えっ!?

イヤイヤ、ウウダギじゃダメだろ。

無理だって、普通のスキクより明らかに弱いんだから・・・。


「いや、だって・・・さすがに・・・」

「ヤダ!僕がやる!」


ウウダギ、ゲキオコですわ。

こうなると手がつけれないなぁ・・・。

まぁ、危なくなったら途中で割って入るしかないかぁ。


ウウダギを地面に立たせてやる。


「ウウダギ。くれぐれも怪我の無いようにね?」

「大丈夫。ウウダギ冷静!」シャーッ!


冷静じゃないよ、きっと。


「へっw なんだチビ!やろうっていうのか?」


ベルルベって確かベネネズの子供だよね?

なんかしっかりした子供って聞いてたんだけど・・・。

違ったのか?


そうこうしている間に始まったらしい。

ベルルベがウウダギに掴みかかろうとした。

それをウウダギが半身になって避ける。

流れるように押し出されていくベルルベの腕を、

ウウダギがすくい上げるように捻り上げる。


すると、あっという間にうつ伏せの状態へと押し倒されるベルルベ。

勝負が一瞬でついてしまったわけだ。


まぁ、そらそうだ。

今のは合気だなぁ。

僕の側で日頃から鍛錬の真似事もしながら、

僕の様子をつぶさに見続けているんだ。


物覚えの良いウウダギだからなぁ。

できちゃうんだろう。


ベルルベご愁傷さま。


「だから言ったじゃないか!あの親子はヤバイんだって!」


デデンゴの悲痛な叫びが耳に痛い。

っていうか、そんなにヤバイか?


うつ伏せで起き上がれないベルルベ。

ウウダギが、起き上がろうと力を入れる度に腕をねじり上げるので、

痛くて起き上がれない。


めが白黒してるんだよねぇ。

周りのギャラリーの子供スキクが何が、

起きたかさっぱり分からないと困惑している。


「デ、デデンゴ様!やっちゃってください!今です!」

「・・・ぇ・・・無理だよぅ・・・ウウダギだし・・・」


空無理だわ。

だって、デデンゴはウウダギが好きだもんね?


「ぐぅ・・・皆!やっちゃえっ!」


ベルルベの合図に戸惑う子供スキクも多いようだけど、

10匹ほど、ベルルベの指示を聞いたやつが居る。

流石に10匹を相手にするのは無理だろう。

僕が割って入るしか無いかなぁ・・・でも、

子供の喧嘩に親が出るっていうのもカッコが良いものではないよね?

どうするかなぁ。


「やめろっ!ウウダギに手をだすなっ!」


デデンゴが出てきた。

凄いなぁ。

デデンゴあの巨体で、

10匹をなぎ倒したぞ。

力強くない?もう大きいスキクより強そうだけど?


デデンゴの気迫に押されて、

残りの子供たちも更に尻込みしてしまった。


「デデンゴ・・・」

「ウウダギ!大丈夫か!」


そう言って、ウウダギに手を伸ばした瞬間。

デデンゴが宙を舞った。

腕を中心にぐるんと一周して、

そのまま仰向けに地面へ叩きつけられた。


まぁ、そうだろう。

あんなに不用意に手を出せば激オコのウウダギがほっとかない。

とばっちりだけど、仕方ないだろ?


「デデンゴ邪魔」


ウウダギだなぁ。

全然、デデンゴが恋心を抱いてるってことを知らない。

可愛そうなデデンゴだなぁ。

でもデデンゴとウウダギが番に・・・無理だな。

ウウダギがその気じゃない。


空を見て、涙ぐんでるデデンゴが不憫で仕方ない。

ベルルベどうでも良い。


さて、ひと悶着終わったみたいだなぁ。


「ベルルベ良いかなこれで?デデンゴ、取り敢えずがんばれ」


ウウダギの喉袋は普通に戻ってるので、

さっさと手を掴み抱っこしてンダンダの方へ歩き始める。


行く途中後ろを振り返ると、ベルルベが泣きじゃくり、

デデンゴも男泣きのように天を仰いでいた。


まぁ、子供の喧嘩だ、こんなもんだろ。


「それにしてもウウダギが合気出来るように成ってるとは思わなかったよ。カッコよかった」

「! ホント!?」


「うん。よく出来てたよ。偉い」

「へへ〜。うん!ウウダギ出来る!偉い!」


ニッコニコのウウダギが可愛いから、

不問に付します。


ウウダギを抱きかかえたまま、ンダンダが居るとされる牧場へとついたんだけど・・・。

この風景は予想してなかったなぁ。

だれ?これ許可したの・・・。


ちょ・・・森無いじゃんか。

どんだけ開拓したんだよ。


点々と小屋がある、

果樹園がぼちぼち見えて、

腰ぐらいの苗だろうか?いや、彼処のは実が成ってる。

そういう種類だろうなぁ・・・。

あっちの植物見たこと無いなぁ。


どんだけ手を出したんだろう。


前々から畑一色だと歩きづらいだろう?と言っていたのだ。

だからだろう。

どまんなかに太い道。

それも、ケルケオ車がすれ違えるほどの広さだ。

ソレが通っていて、脇へと碁盤の目のようにあぜ道が通っている。


これも凄い進歩だなぁ。


ウウダギと一緒に口を開けてボケェーと見てると遠きに粒ほどの影が見える。

あれってケルケオ車だろう。


そりゃそうか、もうお昼だもんなぁ。

まぁ、でもそう考えると偉いよね?

ちゃんとお昼になれば、集落の広場に戻るんだ。

めんどくさがらないところが美徳だね。

ンダンダの良い所だ。


ケルケオ車が来るまで待とうかな。


近づいてくるケルケオ車もうめんどくさいからK車とかでいいんじゃないか?

だめかな?

そのケルケオ車には荷台が連結してある。

何時作ったのかさっぱりだけど、

実にいい感じで繋がってるなぁ。

ってかケルケオって連結してる箱にヤサイが沢山積まれていてもへっちゃらなんだね。

更にケルケオ車の方にはンダンダの他に3匹乗ってるんだけど・・・。


そう言えば、ケルケオ車で一度に10匹位集落まで運んだよね?

意外に力が強いのかもしれないなぁ。


「あれ?ポンピカどうしたの?」


間が抜けてるんだよねぇ。

ンダンダって。


「あー。畑っていうか農場はどう?どんな感じ?明らかに広いよね?」

「うん。手が増えたからね!広くしたよ!凄いでしょ」


どう、ツッコもうかなぁ・・・。

結論は広げすぎるなと釘を刺したい。


「う〜ん。そうだね。広いと良いよね」

「うん。これで毎日ヤサイが食べれるよ!皆餓えずに済む!」


そりゃこんだけ広きゃねぇ。

まず食べ物に困らないだろう。

ヴァレヴァレから来た連中はここに来た2日くらいは、

肉しか食べなかった。

だけど、3日目にも成ると食べずには居られない様子だった。

今ではヤサイが好きな個体も増えた。


うん。ヤサイは美味しいからね。

ぶっちゃけ血の味に未だに慣れない僕としてはその方が良いかな。


ってかよく見ると、ブルググが居る。

そう言えば、ブルググは最初からヤサイを食べていたなぁ・・・。


「そうか。食べ物に困らないのは良いことだよ。でも少し広げすぎには注意してね」

「どうして?」


「だって、明らかに埋立地の面積より大きく開梱しちゃってるよね?向こう見えないよ?」

「うん。木の根っこが邪魔だったけど、手が増えたから広げるの楽だったよ」


「いや、楽とかそういうのじゃなくてね?余り広げすぎると、周りの生き物とかいろんなのに影響が行くから気をつけてね?」

「そうなの?でも・・・多分大丈夫だとともう。動物も何事もなく暮らしてるってシシブブが言ってるし」


そうなの?

これだけ開梱すれば、イノシシとかサルとかシカとかさぁ?

そういうのの生態系崩すだろ?

崩れてないのか?

シシブブの見立ては正確ナノ走ってるけど・・・。


「そんな顔しないで大丈夫だよ。僕も心配だったから前もって広げれる場所とか確認したんだ。少しガタガタだけどねwそれでも結構育ちそうな地面に出来たよ」


結構神経使いながら開梱してるのか・・・なら問題はないか・・・な?


「そう?ならいいか」

「それよりさ?面白そうな木を見つけたんだよ。植えたらすぐに実をつけたんだ。食べるとなかなか美味しかったよ」


そういって、ンダンダがズタ袋に詰まってる実を見せてくれた。

・・・オリーブにしか見えないです。

オリーブか・・・。


「これだろ?前言ってた油だかなんだかが取れるっていう実」

「憶えてたの?」


「もちろんさ!見つけた時これだっ!って思ったよ」

「へー。でもオリーブが手に入るなら、色々料理が楽しくなりそうだ。美味しいものが沢山作れるよ」


「おー!楽しみだ!ギギリカに油の作り方教えてあげてよ」

「うん。いいよ」


「すぐ作れるの?」

「いや、道具をベベビド辺りに作ってもらわないとなんとも言えない」


「そっかぁ・・・」

「でもオリーブはそのままでも美味しいから大丈夫さ」


「そうだね!コレからお昼なんだ。戻るでしょ?」

「うん。戻りたい。乗せてくれる?」


「もちろんさ!」


そして、ウウダギと一緒にケルケオ車の方へと乗り込む。

奇しくもブルググの正面に座ってしまったけどね。


終始無言のブルググ・・・。

ああ、そうだった。

まだ、禁じてたわ。

どうしようかなぁ?

許可出す?


どう思う?ウウダギ。


ウウダギに目をやると、

首を横に振る。

ダメらしい。

なんでだろ?

まぁいいや。


「そう言えば、ブルググっていうんだろ?そのスキク」


ンダンダが話しかけてきた。

運転手しながら話しかけるってすごいなぁ。


「そうだよ。でもよく知ってるね」

「ああ、僕の所に自分から来たんだよ。ヤサイも食べ慣れてるようだしね。気になってエネルルに聞いたんだ」


へー・・・。

ブルググはヤサイが好きなのか・・・。

肉しか食べない習性だったのになぁ。

なんか色々ありそうだな、ヴァレヴァレって。


「もうすぐ着きそうだね」

「うん」


「こっからは、僕とウウダギは歩くよ」

「いいの?ちゃんと送ってくよ?」


「いいんだ。少し歩きたいんだ」

「そっか、まぁ、お昼もうすぐだから間に合うように来てね」


「うん」


僕とウウダギはケルケオ車を降りる。

ウウダギは「なんで?」っていう顔をする。

だけど、ブルググの前だといたたまれないんだ。


少し、離れたい。


ウウダギと並んで手を繋いで、

皆の居る広場まで散歩がてら歩いた。


こう言っちゃなんだけど、

この集落はすごく発展している。

以前の僕が卵から孵ったばかりの頃と比べると、

別世界になっている。


族長はどう思ってるのかなぁ?

なんだかんだ言って、

この集落で一番長く時間を過ごしたのは、

やはり一番年上の族長なわけだしね。


ウウダギも並んで仲良く歩くのは嫌いじゃなかったみたいだ。

終始ニッコリしてる。可愛い。


広場に着くと、大鍋に大きな肉の塊を、

ボンボン投げ込むギギリカの姿が見える。

大鍋の脇に多分雌だろう。

数匹のスキクが右往左往してるんだ。

多分料理を学んでるはず。


まぁ、何はともあれ、

その肉の大きさにビックリするばかりで、

食べ切れるのか?と疑問に思うほどの大きさだ。

入れ過ぎじゃないかなぁ?


そんな光景をぽかーんと見ていると後ろからパパムイに声をかけられた。


「ポンピカ。すげーだろ?あの肉」

「ああ、デカイね?どうしたの?」


「今日デカイ獲物が獲れたんだぜ」

「一匹で?」


「そんなわきゃないだろwどうやって運んでくんだよ」

「そりゃそうか・・・やっぱりパパムイにも弟子が出来たの?」


「おう!そりゃなっ。10匹ついてきたぜ」

「10匹かぁ・・・。やっぱり狩りは人気あるのかね?」


「そんなコタ知らねーよ。ソレよりまだ、沢山あるんだ。処理したいんだが、量が量だからなぁ。ソーセージにしても、クンセイにしても余っちまうんだ。食べきれるか分からねぇ」

「100匹居るのに?食べきらないの?」


「どーだろうなぁ・・・。倉庫に大量の保存肉があるんだ。だからこれが次食べるまで保つか分からねーんだよ」

「なるほど・・・。じゃぁ、他にも消費しなきゃいけないってわけだね?」


「ショウヒ?・・・ああ。食っちまわないといけないんだ」

「じゃぁ、もっと保存が効く状態の物を作るかケルケオ辺りの餌にするかだな」


「ケルケオには食わせられねーよ。大体シシブブが許さねーしな」

「そうなの?」


「シシブブは、食べ物に厳しいんだ。俺が何かいうとその何倍も言い返してくるんだぜ」

「そうかぁ。シシブブらしいな・・・。じゃぁ、保存が効く物に変えなきゃいけないのか」


「だからポンピカに何かないか聞いてるんだ」

「なるほど・・・。例えば完全に乾燥させて、ソレを粉にして携帯しておいて、食べる時にひとすくい口に含んで、水を飲めばお腹の中で膨れるっていう話を聞いたことがあるよ」


「乾燥かぁ・・・肉を乾かすのか」

「そうそう」


「いいな。ソレやってみようぜ」

「うん。干す場所は風がよく当たる場所とか良いかもね」


「わかったぜ」


気づいてたけど、あえて言わなかった。

というか言わなかったけど、

話の途中からパパムイの後ろにギギリカが来ていた。

というか雰囲気はプンプンしてる感じだ。

尻尾が揺れてる。


「お?どうしたんだ?ポンピカ?話し聞いてんのか?」


未だに気づかないパパムイ。

ちょっと笑える。


「パパムイ。ちょっとこっち向きなさい」


ギギリカの言葉にビクッ!と跳ねるパパムイが笑える。

ニヤニヤが止まりません。


ギギリカの方を向き直るパパムイ。

尻尾が何処に居れば良いのかわかりませんとでもいいそうなほど、

挙動不審だ。笑えるw


「パパムイ。あんたのところに10匹ついってったわよね?」

「ああ・・・そうだぞ・・・」


「なんで雌ばかりなの?」

「そ!それは仕方ないだろ?だって連中、雌ばかりじゃんか」


ん?そうなの?

僕は匂いとか形とかでスキクの雄雌の判断つかないんだ・・・。

前情報でエネルルが雌だと知らなきゃ、

あの話し方だと雄だと思っちゃうしなぁ。


ってか、そうか、雌ばかりなのか。

ふとウウダギを見る。


首をくねっと曲げて「なに?」って顔に書いてある。


「いい気なものね?あたしが居るのに他の雌と狩りですって?」

「そ、そりゃ、しょうがないだろ?弟子とかなんだしさぁ・・・」


バチーン!


すごくいい音で、ギギリカの尻尾ビンタがパパムイの太ももに直撃した。

ウウダギの尻尾も痛いけどギギリカのはなおさら痛そうだ。

ありゃ骨逝ってるかもしれん。


思わず両膝をついてしまうパパムイ。


「いっつー!なにすんだよ!」

「あたしっていう雌が居るのになんで他の雌と仲良くするの?」


「そ、そりゃ・・・仲良く・・・なぁ?そうだろ?ポンピカ」


僕に振らないでください。

取り敢えず顔をそっぽ向けとこう。


「ほら、ポンピカだって、違うって言ってるようなものじゃない」

「くそっ!ポンピカめ!」


「ポンピカめっ!とか言ってる暇が有るならあたしに一言無いの?」

「・・・ギギリカ・・・」


「はい・・・?」

「すまねぇ。俺はギギリカだけだ・・・」


「ちゃんと心込めて言って」

「俺にはギギリカしか居ないんだっ!」


若干涙ぐんでるパパムイが・・・、

少し、ほんの少し可哀想だなぁと思わなくもない。


いや、思わない。


「そう。じゃぁ、いいわ。今後も狩り行くときはちゃんとあたしに声掛けるのよ?いいわね?」

「お、おう。ギギリカに言う」


「はい。じゃぁ、パパムイに一番大きなお肉あげる。元気出しなさいね」

「おおおおお!いいのかっ!?いいのかっ!?ありがとう!ギギリカ!さすが俺のギギリカだっ!」


ヒャッホーィと嬉しがるパパムイはなんと幸せそうなんだろう・・・。

あんだけ怒られてたのになぁ・・・お肉で気分が良くなるなんていいやつだ。


パパムイに恨まれたら取り敢えず肉与えよう。

きっと忘れてくれそうだ。


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