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色々見回り


ウウダギにそれとなく、皆を休憩させてあげてねって言っておいたけど、

言ってる側から設計に関わってた、4匹のウチの一匹が倒れた。


「大丈夫か?」


と、僕が声をかけても他の3匹はため息を吐いた後、

なんの感動もないまま一匹を何処かに連れて行った。

そして、戻ってきてまたウウダギの側で何か設計を一生懸命学んでいる。


正直狂気じみてる。

ウウダギ大丈夫じゃ無さそうだ。


流石に異常だと思ったのでウウダギに「いいから皆休ませなさい」と告げる。

ウウダギは「うん。わかった」とそっけなく答えたかと思うと、

皆に向かって「コレからおやすみ。ちゃんと寝る。ご飯たべる。元気取り戻す」。

そんな事を言うと皆、糸が切れた凧のようにその場に崩れ落ちてしまった。


まぁ、この状況から見ると、

ここ数日徹夜だったな・・・この連中。


限界は自分で考えてくれ。

ウウダギはそこ管理できないんだ・・・。


ウウダギは僕と一緒にいつも寝ているし食事もしている。

ウウダギだけ時間を作っているのかな?

どういう理屈で、今倒れてる連中が徹夜したのかが不明だけど、

取り敢えず、寝てれば回復するよね?


そんなに急いでも仕方ないんだ。

だから、程々でいいんだけどねぇ。

ウウダギは極端なところがあるからなぁ。


結局何時もどおりで、

僕の側にウウダギがついて歩く。

可愛くヒョコヒョコしてるから僕的にOKだ。


次に向かったのは、シシブブの居る所だ。

ウウダギもアンキロに会いたいだろうしね。

まぁ、集落の中なわけで、会いづらいことはないんだ。

ソレにウウダギは暇さえ有ればアンキロの様子を見に行ったりする。


「ウウダギ?アンキロはいいの?」

「ん?アンキロ見に行く」


牧場の手前でウウダギに話描けるとさっさとアンキロの厩舎というか、

アンキロ自体が野っぱらにそのまま放牧状態で、過ごすので、

まぁ、囲いだけの牧場へと走っていった。走って・・・。


ウウダギは大きくなってから意外に素早い動きが出来るんだ。

体力と筋力は同年代の同性スキクと比べても少ないほうだ。

でも、足の速さや器用さとか実を動かす速さとかがとてもスムーズで効率的。

何より本当に早い。迷いがない。


なもので、あっという間にアンキロ厩舎へと向かっているわけだ。


僕はといえば、ケルケオも気になるんだけど、

例の8匹が放牧されている場所へと向かう。


牧場の一番奥手側にその一角がある。

そこが見える場所まで来ると気づいた。

一匹世話をやいているスキクがいるようだ。

鱗の模様がハッキリ見て取れないので、誰だかわからない。


スキキョンとか前は言ってたけど面倒なんでキョンシーと最近じゃ言ってる。

ウウダギが首をかしげるのでそうしたんだ。

まだ理解が今一らしい。


取り敢えず、そのまま進んでいる。

右手の方にケルケオの厩舎と放牧場が見える。

右手の場所は子供用で、その奥手側にもう一個大きめの放牧場がある、そっちは大人用だ。


キョンシーの放牧場へと近づくとそこに立っているスキク・・・。

見かけないスキクなのでヴァレヴァレ組の一匹だろう。


「君、誰だい?」


僕が後ろから声を掛けると、

ビックリしたのか僕の方をすぐに振り向いた。

振り向いたはいいけど、なんだか驚いた様子で、

色々と戸惑いというか、状況が飲み込めない様な雰囲気だ。


「君、ヴァレヴァレから来た中の一匹だよね?」


答えが帰ってこない。

立ち尽くして、オロオロしたままだ。

会話、キャッチボールが出来ない。


「う〜ん。そのキョンシー達に用なのかな?」


そこまで言うと首をかしげる。

まぁ、そうだろう、キョンシーなんて言葉はスキクの中にはない。

僕が前世で知り得た言葉をそのまま使ってるにすぎないわけで、

当の眼の前に居るスキクには、理解も想像もつかないだろう。


「ああ、その8匹は中身が体から離れちゃっててね。理性的な思考はもう出来ないんだ。だから皆の中に居ると迷惑がかかると思って、やむなしで、ここに集めてあるんだよ・・・」


そうすると眼の前のスキクは慌てて、

後ろのキョンシー達を振り返る。

そして、一匹のキョンシーを指刺して、


「ヴァイヴァ!ヴァイヴァ!」


と、鳴いたというか叫んだ。

まぁ、流からどうやらそのキョンシーの一匹はヴァイヴァとか言う名前らしい。


「あー。知り合いかな?でも多分君の事は憶えているだろうけど、正常な判断は恐らく出来ないと思うよ?だからこそ中身が外にでたんだからね」


すると、また僕の方へと顔を・・・。

涙ぐんでる。


あー。

これあれだ、番の一匹じゃないか?

相方がキョンシーに成っちゃって、ここに運ばれてきて、

一週間探した結果ここに居たとかいうオチ。


そりゃきつそうだなぁ。

今居るキョンシーは全て雄だ。

恐らく苦痛に強い雌と比べて、

雄はすぐに自分を手放してしまうらしい。

なんかそういう話をなんとなく前世で聞いた。


まぁ、ナンノコッチャだけど、

どうやらそのヴァイヴァ成るキョンシーと親しい関係のスキクなのだろう。


辛いよなぁ。

もし、ウウダギがこんな感じになったら、

そりゃ気が狂いそうなほど乱れるだろう。


むしろ眼の前の・・・キョンシーが雄ならこのスキクは雌だろう・・・は、

随分辛抱強いか、なにかだ。

涙ぐんでいるところを見ると戻してくれと言ってるのかなぁ?

流石に脱魂して、キョンシーに成り果てているヤツを戻す方法はしらないよ。


もし、戻すなら・・・。

まぁ、招魂ってのが出来るっていう話もあるから・・・。

僕は方法知らないなぁ。

まぁ、空っぽの部分に鬼が入らないように呪符を作るくらいしか出来ないかなぁ。


「あー・・・。申し訳ないんだけど、僕が現場に駆けつけたときにはもうその状態だったんだ・・・。残念だけど戻す方法は僕ではわからないよ。だけどこれ以上酷い状態にしない方法は知ってるから何とかしてみるけど・・・ソレでいいかな?」


そこまで言うと、眼の前のスキクは首を傾げてしまった。

今、首を傾げた仕草がウウダギににていた気がする・・・。

なんだろう?

幼い感じがする。


・・・あー。

なるほど、番じゃないんだ多分。

眼の前のスキクは恐らくヴァイヴァキョンシーの子供だ。


・・・今年生まれた子供なのかな?

ソレにしては随分と体が出来上がってる。

成長が早いのか?デデンゴみたいに・・・。


「ヴァイヴァ!ヴァイヴァ!」


・・・そうか・・・そういう事か。

今の感じでわかった。

体はもう大人だ・・・心というか多分頭がまだ子供なんだ。


「そうか。ヴァイヴァが気になるんだね?」


ウンウンとうなずく。

ほぼ確定。

受け答えが今一出来ないのは、まだ幼い感じだからだ。


「ヴァイヴァとお話出来ないのが辛い?」


ウンウンという。


「でも、今日は一度皆の所に戻ったほうがいいよ?僕はポンピカ。ヴァイヴァの面倒は僕が見てあげるからね」


ジーっと僕を見る。

やはり瞳の奥がウウダギに似ている。

幼い感じがする。


なにか納得したのかもしれない。

ウンとうなずくと、走って皆がいそうな方向へと向かっていった。


見送った後、

キョンシー達に向き直ると、

一匹、ヴァイヴァというキョンシーに変化があるのに気づいた。


今、走っていった恐らく子供のスキクの後ろ姿をジッと見ている感じで突っ立ってる。

目の焦点が合ってないので、見えているかは謎だけど、

何処かに魂の残滓でも残っているのだろうか?


僕の目から見て、ここに居る全てのキョンシーは綺麗サッパリ魂が抜けている。

それはもう、ものの見事にぽっかりと抜けきっているんだ。


流石に残滓はないだろう・・・と思うけど、

この反応を見るとやっぱり何処かに残ってるのかなぁ?

でも、吸血衝動とかそういうのが起きるっていうのが定説のキョンシーが、

ここまでおとなしいってのも多分違うんだろう。


未練が残ったり、なにかすればやっぱり生きるために体が栄養を欲するわけで、

残滓が残れば未練も残って、未練が残れば本能が暴走する。

結果、栄養を欲した体が手近な動物へと噛み付く、

すると口の中に広がる血、一番最初に体に吸収される栄養。

だから吸血なんだと思うんだ。


まぁ、吸血の話はどうでもいいか、

それより完全に魂が抜けきって、残滓すらない体は、

本能も働かない状態なんだ。

だから、何をするでもない。

ただ、ウロウロしたり、ボケーッとしたり、

食べのもについても口に入れなければ、食べもしない。


本能が働いてないんだ。

ソレが残滓がない証明のはず。


でもヴァイヴァは憶えているんだろう。

やっぱり脳が記憶を持っているからかな?

それなりの反応をするのか・・・。

新しい発見だと思う。


それはどうでもいい。

このヴァイヴァどうしようかなぁ・・・。


考え事をしていて気づけなかった。

後ろから突然声をかけられたんだ。


「ポンピカ。なにをしている?」


雄よりは幾分声が高い。

急いで振り返るとエネルルがいる。


「あー。ねぇ?ヴァイヴァっていうのか?このスキク」

「ん?ああ、そうだな。ヴァイヴァだ」


「さっき、一匹のスキクがヴァイヴァに会いに来てたんだ・・・」

「・・・なるほど。恐らく、ビィビィだ。何時まで経っても成長しないスキクなのだ。既に5年も経っているのに未だにヴァイヴァを親としたっているんだ」


なるほど。

まぁ、そういう個体も居るだろう。

健康に育ってくれるのが唯一の幸いといえる。


「ポンピカ・・・」

「ん?」


「お前がポンピカなのだな・・・ギュギュパニとボロンガから話は聞いた」

「ぇ・・・?どんな話?変な話じゃないよね?」


「・・・本当にお前がオルガクルガを?」

「エネルルって結構話し聞かないスキクだね?今の話しの流で質問?」


「・・・私はこんな風にしか話せないのだ」

「へぇ・・・。でもシシブブやギギリカとは随分親しそうに話してたよね?」


「・・・それは同性だからな。私も緊張はしないで済む。それに比べてお前は同性でもなければスキクからも逸脱しているそうだな?」

「えー?そうかなぁ?僕普通のスキクだよ?むしろ良いスキクだともうけどね」


「そうか・・・良いスキクか・・・。そうなると私やブルググは随分悪いスキクと言うことだな」

「なんか心当たりが有るの?もしかしてこの集落にちょっかい掛ける件の事なら皆ソンな事思ってないと思うけどね?僕だけの考えであれば、元、そちらの族長のヴァレヴァレが随分厄介そうだとは思うけどね」


「・・・親のヴァレヴァレもただのスキクではないと思う。子供の私から見ても明らかに異質だ」

「まぁ、それはなんとなく分かる。それより何かあったのか?聞きたいこととかさぁ?」


「そうだな・・・。この集落は随分変なことを始めているな?全てお前が始めた事だと聞いた。本当か?」

「そうだね?全部とは言えないかもしれないけど、本当だよ」


「そうか・・・」

「聞きたいのはそれだけ?」


「いや、もう一つだ。今ここに居るスキク達だが、こんな状態の者を見たことがない。だがどうやらお前は知っている様子だった。これはなんだ?」

「何だっていわれてもねぇ。概念的な話が入るから正確に理解できるかわからないよ?それでもいい?」


「構わない。話を聞かせてくれ」

「まぁ、いいならいいけど・・・。端的に言えば、中身が外に抜け出しちゃった状態だね」


「中身?・・・もう少し詳しく願えるか?」

「んっと、魂っていう話は分かるかな?・・・ってか精霊さんも最初は分からなかったんだから分かるわけ無いか・・・ヴァンっていう言葉は分かる?」


「すまぬ。どちらも知り得てはいない」

「まぁ、魂って僕は言ってるけど、生き物にはさ?心というか中身が有るんだよ。ソレが魂っていう物で、その魂っていうのが有るから自分を自分と認識できるんだと思うんだ」


「・・・続けてくれ」

「そして、その魂っていうのが、ある条件下、今回は特に生命の危機的環境が継続される状況っていう物にさらされた結果だと思うんだけど、そのせいで耐えきれなかったスキクの一部の魂が逃げたんだよ。自分を守るためにね」


「逃げた?自分を守るため・・・?」

「不思議に思う?」


「ああ、不思議だ、そのタマシイとやらは逃げるというと、どこに逃げたんだ?どうやって・・・ヴァイヴァはここに居るし、逃げてはいないだろう?」

「いや、中身が逃げたんだよ。エネルルは中身を目で認識は出来ないだろ?」


「・・・中身、確かに見えないな」

「そう、普通見えないんだ。見えない状態のヴァイヴァであればその中身が、体をすり抜けて何処か安全だと思える場所へ逃げたんだよ」


「・・・体?タマシイというのは、体とは関係ないのか?」

「あー。想像出来ないかな?器の中に水を入れたとするよね?」


「うむ」

「その器を体、中の水が魂ってことだね」


「・・・なるほど。さっき概念だと言ったのはそういう事が有るかもしれないという話か?」

「いや、事実有るんだよ。・・・この世界ではね」


「この世界?」

「そこは後々はなすよ。ただ、肉体と魂っていうのは別物だって憶えてほしいかな」


「ふむ」

「そして、魂っていうのが表にでちゃって肉体が取り残されると、通常は野獣の様に暴れるんだ・・・だけど、このスキク達はその野獣としての魂さえ抜けきってしまったんだろうね。何もしないだろ?」


「・・・治るのか?」

「恐らく治らない。治らないけど時間をかければ何とかは出来ると思うんだよねぇ・・・僕がもっと呪術に精通していれば良かったけどなぁ」


「ラマナイ様の話が以前出たな?死してなおも現れるのだろ?」

「あー。精霊さんのことか。まぁ、たまに出るよ。最近はどこほっつき歩いてるかわからないけどね。最近見ないんだよねぇ」


「ラマナイ様は偉大な呪術師だったはずだ、お前の言うタマシイとやらも分かるのだろう?ならば、ラマナイ様が元に戻す手段を持っているのではないか?」

「いや・・・多分のぞみは薄いと思うなぁ」


「なぜだ?」

「えーっと・・・精霊さんの呪術より僕の呪術の方が造詣が深く、高度で、効果が出るからだよ」


「・・・お前は偉大な方よりも上だとでも言っているのか?」

「う〜ん。言っちゃえるかなぁ・・・だって、精霊さん。僕に術教えてくれって毎日ひどかったからなぁ」


「・・・」

「まぁ、そんな感じで、このスキク達の件はしばらく放置かな」


「しかしそれではピィピィが、可愛そうではないか?また来ると思うぞ?」

「・・・まぁ、他に仲のいいスキクはいないの?遊んだり出来るスキクとかさぁ?」


「ピィピィにか?」

「そうそう」


「・・・恐らく居ない。何故なら既に大きいスキクだからだ・・・遊ぶなど、大きいスキクがすることではない」

「・・・それってヴァレヴァレだったらでしょ?」


「・・・ああ」

「じゃぁ、そんな規則はなしだ。この集落は食べ物も多いし何より自分が出来ることをやればソレだけでいいんだ。だって、そうだろ?自分の出来ない事を一生懸命やっても僕らスキクは身につかないじゃないか」


「この一週間、私も様々な事に挑戦したが、これと言って惹かれるものがなかった・・・ギギリカは雌なら料理とやらが出来ないとダメだと言ったり、シシブブは優しさは相手の間違いを正せる心だとかわけの分からぬ事を言ったりする・・・流石にソレを言われれば私は族長の・・・親の過ちを正すことなどしてこなかった。困惑するばかりだ」

「へー。結構、しっかり話をしてくれてるんじゃないかな?ギギリカもシシブブも」


「それは分かっている。だが・・・」

「居場所がないって言ってるのかな?」


「!・・・そ、そうだ、ソレが一番的確だ」

「まぁ、それなら今そんな顔してこわばっているより、色々諦めて、もっとゆる〜くやっていきなよ。コレから興る色々な事柄の中にきっとエネルルが求めている事が有るかもしれない。まだほんの数種類しか始まってないんだ。だから、焦らないでもいいよ。もし、自分が好きなことが有るって言うなら教えてよ。僕の方でも考えて見るから」


「・・・好きな事・・・」

「そう。好きなこと」


エネルルが突然だまり始めてしまった。

僕は今すぐでなくてもいいからしっかりと考えておいてくれと言って皆の元に帰るよう言い含める。


エネルルはエネルルで、この集落に適応するのに必死なのかもしれない。

まぁ、仕事を与えるのは出来るかもしれないけど、

ソレが本当にエネルルがやりたいことかと言われれば疑問しかない。


エネルル自身がやりたい事を見つけるか、

惰性からの仕事の中から見つけるとか、

いろんな選択肢はあると思う。


少し、放置でいいかなぁ?

僕はめんどくさいことを後回しにする性格だったようだ。


まぁいい。

エネルルも居なく成った。

ピィピィとか言うのも居ない。

ウウダギはまだ帰ってこない・・・ってか僕の場所分かるかな?


まぁいいや。

さて、眼の前のキョンシー達だ。

呪符でも作ってやろうかな?



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