サルが来た。と、変な煙
すき間から外へ顔を出す。
もう結構いい時間で辺りは真っ暗。
星の光と月明かり。
もう眠いんだよねぇ。
「ポンピカ何か居る?」
「う〜ん。見えないんだけどー」
「ギギリカ見た。僕見てない」
「まぁ、ウウダギは見てないよね。なんだろうね?」
「ちょっと!そっちじゃないわよ!ぎゃくの外側!」
それ先に言ってよ。
反対側へと向かう。
森の近くの側だ。
集落へと続く道の奥。
ケルケオは、外につないでるんだよね。
でもケルケオの声はしない。
隣のテントの横に三匹のケルケオの丸っこい背が見える。
寝てるな。
・・・?なんか違和感あるなぁ。
まぁいいか。
ん〜?
森の方だけど、月明かりも届いていないみたいでここからじゃハッキリ見えない。
夜目が効くと言っても限界はあるしね。
ん?なんか動いた。
影が見えた。
なんか居る。
「どうよ?なんか居るでしょ?」
「・・・う〜ん。ハッキリとは見てないんだけど、大きいのかなぁ?影っぽいのは見えたよ」
「そう?あたしが見た時はとても大きかったわよ」
「そうなの?でもケルケオも警戒してない様子だけど・・・大丈夫なんじゃない?」
「そうかなぁ?・・・余り知らない土地ってなんか不安なんだよね」
「そう?そういう物かな?僕はいまいちわかんないや」
そう言って、外に出していた顔を中に戻す瞬間。
目の端っこのほうで何かハッキリと捉えた。
「ポンピカ?どうしたの?固まっちゃって」
「・・・大きくない。大きくはないけど、集団だ」
「集団?なにが?」
僕が目の端っこで捉えたのは、
今までに見たことがない生き物だ。
近いと言えば、サルかな?
ニホンザル位の大きさだと思う。
昔じいちゃんの家の畑に隣接する電線にサルが居て、
畑の作物盗っていっちゃうの見たんだ。
あのくらいの大きさだ。
暗くて詳細は分からない。
だけどニホンザルほどの大きさに、手足が長く、
目が顔の殆どを占めている様な感じ、
鼻は殆ど無く、口も小さい。
それに反して耳がやたらと長く大きいし尖っていた。
体毛があるのか微妙だ。
色がまずわからない。
素っ裸かもしれない。
「多分。サルだ」
「サルって前ポンピカがいってた生き物よね?」
「そうそう」
「ふ〜ん。危ない生き物?」
「う〜ん。基本臆病で、自分より大きな獲物にはちょっかいをかけないハズ」
「そう?じゃぁ問題ないわね?でもなんであたしは大きく見えたのかな?」
「集団でまとまってるのを見たよ。多分んそれを見間違ったんだ」
「そう?じゃぁ、別に何もしなくていいわよね?」
「そう思おうよ」
「そっか」
そんな話している間に、外からシャクシャクと音がする。
凄い、沢山の音だ。
「ポンピカ。音」
「さっきのサルが外で何か食べてるんだよ」
「わかった」
「うん」
取り敢えず一安心・・・のハズ。
だって大きい影とか見てないしなぁ。
しかしあのサルなんなんだろう?
「騒ぎは収まったのか?」
エネルルとの話が残ってた?
まぁいいや。
暇だし、話そう。
「なんだっけ?」
「なんだっけではない。お前が元凶だという話だ」
「あー。そうかもしれないね。否定はしないよ。殺ったことは殺ったしね」
「そうか・・・。ブルググはどうなっている?これもお前だろ?」
「エネルルって、口調が雄だよね?雌に見えないんだけど・・・もう少し可愛くしてくれれば僕も話しやすいなぁ・・・」
「くっ!私を侮っていうのかっ!問に答えろっ!」
すごく怒り出した。
どうしよう・・・。
「ポンピカ。あたしが話そうか?」
「ギギリカ・・・お願いできる?どうやら頭に血が昇っちゃってて僕じゃ手がつけれないんだ」
「私は血など昇っていないっ!そもそもブルググはどうなっているのだっ!」
「だってよ?ブルググってそこで黙ってる雄よね?どうしたの?」
「えっ?ちょっと呪術つかって、発言を禁止しただけだよ?」
「・・・そんなこと出来るの?」
「うん。できたからこうなってるんだけど・・・」
「だそうだけど・・・。エネルルとか言ったわね?ポンピカはこんな感じのスキクなの。何処かぽやっとしてて掴みどころがないのよ・・・皆こんなもんかと思ってるから余り言い立てても何も帰ってこないわよ?逆に怒る羽目に成るわね」
凄い言われようだなぁ。
まぁ基本めんどくさがりなのが行けないのは知ってるんだけどね。
ここはギギリカに任せるのが正解かな?
そんな感じでエネルルとギギリカが話し始めてる。
其の横でボケーッと僕とウウダギが突っ立っていると、
テントにシシブブが入ってくる。
「ちょっといいかしら?ポンピカ」
今度はシシブブからお熱い話ですか?
「なに?」
「さっき外に居た生き物見た?」
「ああ、サルみたいなやつね?」
「”サル”?なにそれ? まぁいいわ、アレはエルフィっていう生き物よ。集団で植物を食べて生きてるのだけど、基本森の木々の上から降りてこないのよ・・・可笑しいのよ」
・・・え?
じゃぁ、なにかに追い立てられたってことか?
「じゃぁ、おん出した何かが居るってこと?この近くに」
「あたしはそう見てるわ」
・・・ギギリカは大きい影を見たって言ったなぁ。
「ギギリカは大きい影を見たって言ったけど・・・。見間違いじゃなかったかもね」
「そうなの?ギギリカに聞いてみるわ」
「そうしてください」
そうすると、シシブブがギギリカとエネルルの会話に割って入っていく。
しばらくボケーッと眺めていると、なんだか眠い。
もういい時間だなぁ。
「ウウダギ寝ようか?もう何もないよね?」
その言葉に、ウウダギが首を横にブンブン振っている。
何かあるのだろう。
眠気で頭の鈍った僕には検討もつかないんだけどなぁ。
眠いなぁ。
「ポンピカ。一回外」
「えー?外でろってこと?」
肯定するようにウウダギが首を振る。
仕方ないかぁ。
ウウダギが言うんだったら動かないわけには行かない。
少しよろついた感じで、歩み始める・・・?
あれ?なんでヨロヨロしてるんだ?
周りを見る。
なんだか起きているスキクは皆楽しそう。
そして、足元がおぼつかない。
まるでお酒に酔っているかのようだ・・・。
隣のウウダギも何故か僕の横にいて、僕の手をギュっとにぎって俯いてる。
?・・・もしかして何か焚き火にヤバイものでもくべたか?
ここはマズイんじゃないか?
ウウダギをこんな中に居させるのは避けたい。
ヨタヨタする足を無理やり踏み出して、
倒れるようにウウダギをつれて外へとでた。
「へへー。ポンピカー。いっぱいぃ」
完全に酔っ払ってる。
「ううらぎ・・・。らいりょぶか?」
「へへへ」
だめだ!僕のろれつも回ってない!
意識はハッキリしてる。
でも体とかが言うこと聞かない。
なんと言うか麻痺してるようなのに近いな。
外の空気をしばらく吸っていると、
他のテントからもイイオオが倒れて出てきた。
様子を見ると、
倒れて起き上がろうとしても腕に力が入らないのか、
ずっとうつ伏せでジタバタしてる。
あっちのテントでも同じ現象がでてるってことか・・・。
他のテントもパレンケがパチャクケチャクを抱えて出てきた。
幸いあの三匹は早く気づいたのかもしれない。
パレンケは動ける様子。
パチャクケチャクは今一意識があるのかわからない。
様子を見ている間、少しの時間で酔が覚め始めている。
「パレンケ大丈夫か?」
喋れる。
「ええ・・・」
「何が原因だと思う?」
「多分このテントの材料が原因です。先程、生葉を焚き火に放り込んだら、ものすごく異臭のする煙が立ちました。それで急いで出てきたんです」
このテントの草の葉っぱかぁ。
そう言えばエルフィとか言うサルは外に集めていた葉っぱを狙ってきてたな・・・。
関係あるのかな?
「・・・でも僕のテントでは、葉っぱは燃やしてないはずだけど・・・」
「火の番はだれが?」
「パパムイ」
「・・・今、パパムイは?」
「多分中で、酔っ払ってると思う」
「ヨッパラウ?ってなんですか?」
「こんな状態に成ることを酔うっていうんだ」
「・・・ではパパムイは中でそのヨウという状態だと思います。ギギリカも中ですか?」
「ああ、ギギリカとパパムイとあと、シシブブが来た直後だった」
「じゃぁ、雌陣は全滅ですか・・・」
「・・・ウウダギも雌なんだけど・・・」
「・・・そうでしたね。でもまだヨウ状態ですね?」
「子供は基本耐性が無いって話だからなぁ。まぁしばらくはこんな状態かもしれない」
「じゃぁ、パチャクケチャクもしばらく動けないですね」
「だとおもうよ?」
「困りましたねぇ・・・」
「おー・・・い。ポンピカ、パレンケ・・・てー貸してくれないか?起き上がれねぇ」
イイオオの意識がまともっぽい。
二匹でイイオオを座らせる。
「シシブブも今、中か?」
「済まない」
「この状態は知ってるか?」
「酔っ払ってるんだと思う」
「・・・そうか。これは治るか?」
「時間で治る」
「体に問題は?」
「基本起きないはずだ」
「なら、しばらく俺等だけでも外で回復を急がせよう」
「ソレが懸命そうだ」
「そうですね」
こうなるとンダンダとかベネネズ辺りは完全に酔っ払って中に居るのかもしれない。
こうなるとは思わなかったなぁ。
酔っ払う葉っぱだとは思わないじゃん。
「こりゃ、収拾つくまで、動け無さそうだなぁ」
「仕方ないだろ、こんな事は初めてだからな・・・。?少し体が動くように成ってきたぞ」
「ポンピカ。どうします?中の皆は」
「づしますもこうも無いなぁ。自力で出れないヤツラはそもそも放置しか無い」
「そうですよねぇ・・・」
「シシブブも放置か?」
「イイオオには辛いだろうけど、心房してほしいなぁ。どっちみち酔っ払うっていう状態は治るから」
「そうか・・・俺が今中へと行っても結局俺も倒れちまうだろう・・・二匹揃って倒れちまうなんて洒落にならないからな」
僕とイイオオ、パレンケは少し落ち込んでしまった。
ウウダギは酔が少し覚めてきたみたいで、フラフラと僕の方へと近づいてくる。
「ポンピカ。へん」
「うん。酔っちゃったね」
「よっちゃった?」
「そう。多分このテントの葉っぱが燃えると、変な煙が出るんだと思う。ソレを吸い込むと酔っちゃうんだろうね」
「ふーん」
「ウウダギはもう大丈夫そう?」
「うん。でも眠い」
「そうか。じゃぁ、外だけど、僕の側で寝ていいよ」
「わかった」
ウウダギは僕のお腹の所にしがみついて寝息を立て始めた。
正直僕はこのまま歩いたり出来ない。
動けなくなってしまったなぁ。
「ポンピカ。悪いが俺も眠気が強い。寝ちまうがいいか?」
「どうぞ。僕も寝るけどね」
「じゃぁ、しばらく僕が焚き火を起こして起きてますよ」
パレンケはこういう事が出来るからいいやつだ。
出来るスキクってやつだな。
「悪いね。起きたら僕パレンケが睡眠とってくれよ?」
「其のつもりですw」
いいやつだなぁ。
僕もウウダギを布団代わりではないけど、
お腹に乗せたまま仰向けで寝始める。