材料とテント
取り敢えず、近場に狙っていた見知っては居ないけど、
使えそうな草かなぁ?があるんだ。
疑問符がでてしまうのは、
単にそこら辺に生えている木々と同じくらい背が高いからだ。
細い幹がずーっと上の方まで葉っぱや枝冴えなく、
そのまま真っ直ぐに5mから10mはあるんじゃないか?
生えているんだ、色は随分と青に近い緑をしている。
珍しいよね?
そして、群生してるんだ。
パッと見でわかるほど丈夫そうな幹だ。
だって、ひょろっと一本上に伸びているのに倒れない。
しかも風が吹いても上の方だけが揺れて、
下はそれ程揺れてない。
つまり柔軟性もこの重量を支える丈夫さも備えているのがひと目で分かる。
なかなか無い植物だと分かるので、
これならテントの骨組みにぴったりそうだなぁと目をつけていたんだ。
迷わずその群生地へと向かう。
近くに行くとなんだかこの草?から随分いい匂いがする。
フラボノイドっていうの?なんかそんな感じのやつだ。
それにしてもデカイなぁ・・・。
見上げちゃうんだけど・・・。
まぁいいか。
それより根本の方を一本切ってみよう。
手に持ったクグナで、ジリジリと草を刈ってみる。
幹、やはり固い。
まるで竹の様に硬く、細さは笹並だろうか?
この植物、竹の仲間かな?でも節がないんだよね。
まぁ、いい。
骨ブレイカーで、切れるかチャレンジ。
傷は着く。
でもブレイカーはあくまでも骨で出来てるからなぁ。
この硬さだとやっぱり金属必要そうなんだけどなぁ。
「なぁ?ポンピカ」
後ろからパパムイに話しかけられた。
「お前、新しいクグナ持ってないだろ?ギュギュパニから預かってるぞ渡しそびれちまったな」
そんな事を言って、ギュギュパニの新しい作品が手渡された。
「・・・これ、クグナじゃないよね?」
「ん?そうか?」
まぁ、形が形だ。
ぶっちゃけよくホームセンターとかに置いてあるような、
折りたたみ式のノコギリに反対側が刃物になってますっていうようなものだ。
ノコギリ部分は小さく尖った石を細かく並べているようで、
ノコギリとして使いやすそうだ。
反して、ナイフの部分だけど、
これは大雑把に作ったのかな?
余り切れそうに見えない。
・・・ナタ。
そうだなぁ。
ナタに近い感じがする。
ナイフ部分と細かい石をしっかりと繋げている中央の木材だけど、
見たことがない木材だなぁ。
触った感触は密度が高そうで、
なんだろう?比重が重い気がする。
多分固いんだろうね。
黒光りしてる部分があるし、
木目が見て取れる。
石ではない。
明らかに植物だ。
まぁ、随分とこった物を作ったなぁ。
「まぁ、いいかな。これもしかして、ンダンダも使ってる?」
「ん?よく分かるな?ただな?俺なんかはそのギザギザしてる所が邪魔なんだけどな。だからギュギュパニもそのギザギザの無いヤツをくれたのさ」
そういって、背中のホルダーから取り出して見せてくれる。
・・・うん。ナタだね。
そうか、藪とかを切り開くにはナタが役に立つもんね。
でも細かい解体とかには使えないだろ?
「それで、狩りしてるの?」
「は?んなわきゃねーだろw。こんなデカくっちゃ解体に使えないだろ?解体用のクグナはこっちだ」
そう言って、腰にあるホルダーから小さなクグナを見せてくれる。
細かい作業に向いていそうな、刃先が細いクグナだった。
まぁ、ナイフだよね・・・うん。
「へー。僕もそれほしいなぁ」
「ギュギュパニに言ってくれよ。俺じゃ作れねーからな」
ご最も。
今度頼もっと。
「パパムイはコレから狩りだろ?」
「もちろん」
「この辺の動物に詳しの?」
「くわしかねーけどな、そこそこ似てる所もあるから問題は無いと思うぜ」
流石だなぁ。
本当に狩り専門だなパパムイって。
「ポンピカもさっさと休める所作ってくれよ。俺も頑張るからさっ」
「うん」
こうして、パパムイが森の中に消えていく。
さてと、ノコギリで切りますかねぇ。
目の細かいノコギリ部分を使い、
ギリギリと音を立てながら遅いけどしっかりしている草を切っていく。
ナタでも良かった気がするけど、まぁいいか。
バッサバッサ切り倒せる。
ちょっと楽しい。
それにしてもこの草・・・。
葉っぱが独特だなぁ。
余り見たこと無い草だ。
なんだか紅葉?いや。
赤くないんでね。
青緑の紅葉っぽい感じで、
紅葉よりずっと大きい。
草なのは分かる。
すーっと伸びた先っぽの方で別れて葉っぱがついて若葉も丸まって、
育っている感じだ。
試しに一本、根元から薄皮を裂いてみると。
真っ直ぐ裂けていく。
綺麗に繊維が並んでいる証拠だ。
コリャ使える草だな・・・。
一本の草からそれはもう長い紐がドンドン取れる。
しかもこの裂いた皮。
引っ張る力に対しとても強く見える。
ぶっちゃけ僕の力じゃ幅5mm位の皮を引っ張って切ることが出来ない。
それくらい強い。
まぁいい。
今回はテントの骨組みに使うんだった。
この裂いた皮を利用して紐としても使えそうだ。
取り敢えず、ありったけ目に止まるヤツを切り倒して、
骨組みとして使った。
手で、地面を堀り、
切ったテント草をそこに突っ込んでいって、
ネイティブアメリカンとかの住居テントっぽいヤツ。
それのデカイやつを作りたい。
なので、長い草が必要だったと言うか、
この草見てからこのテントを思いついた。
最初に穴をドンドン円状に開けていって、
次には草を頂点に沿って円形に並べていき、
交点を草から取った革紐でがっしりと編んでいく。
編み終わったら、真ん中の交点へ、
少し長めの木をつかって、
真っ直ぐに立てていく。
この草、
たぶん中は空洞か、もしくはスカスカなのかもしれない。
すごく軽い。
・・・断面は・・・空洞じゃないな。
中心は決めの細かいスポンジって感じだ。
草はやはり軽い。
纏めても僕一匹で軽々と持ち上がるんだ。
長い柱を中心に傘のようにして、
長く伸びる枝上のテントの足を地面へ埋めていく。
あっという間に骨組みが出来上がった。
・・・梯子でも無いと一番上に手が届かないなぁ。
まぁいいや。
取り敢えず、後は大きな葉っぱでも敷き詰めれるようにすればいいだけだ。
意外に簡単だったなぁ。
「ポンピカ」
ウウダギが声かけてきた。
「どうしたの?」
「この家、崩れる。ダメ」
・・・建築家のウウダギ先生のおメガネにはかなわなかったようだ。
「どうすればいい?」
「石必要。もっと硬くする」
今一分からない。
石・・・石?
「どうしたのー?ウウダギ」
「僕の仕事終わった。ポンピカの手伝いする」
ギギリカが来た。
「あたしも一通り済んだわ。手伝えるわよ」
「ギギリカ。あそこ持つ。僕こっち持つ引っ張る」
「はいはい。 ・・・あれ?これ石無いと倒れるわよ?ポンピカ」
「それ、僕言った」
・・・なにそれ?
石?何にどうやって使うの?
なんの石?
ぽかーんとしてる間にウウダギがテントの外の柱をずらしたり、
テンションを少し調整したり、
ギギリカが何処からか持ってきたりした拳大の石を、
テントの柱の周りに置いたりと、
今一僕では分からない事を始めた。
「なによ?ポンピカも手伝いなさいよ」
「あ、ああ。そうなんだけどさ?もう屋根作るだけだろ?」
「・・・そうね。じゃぁ、あたしが肩車してあげるわよ」
「?なんで肩車?」
「そんなの決まってるじゃない!屋根をつけるなら、上の方やる時手が届かないでしょ?」
「いや、そうだけど・・・」
「ギギリカ。屋根。肩車いらない」
ウウダギがそんなことを言い始めた。
僕は思わずどうやるのか疑問だったので・・・。
「どうやるの?」
「長い木使う。屋根作る。長い木にかけて屋根かける」
・・・なるほど。
先に屋根を作っておいて、かけてしまえばいいのか。
ウウダギ天才じゃんw
「へー。そっちのほうが簡単そうね?肩車重いし、それでいきましょう」
ギギリカも賛成見たい。
三匹で長い皮から作った紐に、
瘤を作って、そこへと枝を横に刺しては、
枝へ、大きな葉っぱを結びつけていく。
屋根部分に成る、長いシート状の物が出来た。
ウウダギが長い木を見つけてきて、その先を二股に加工。
それにシートを引っ掛けて、組み上がっているテントの屋根へと引っ掛けた。
下の方でゆらゆらしているシートの先をテントの骨組みに固定。
それの繰り返しで、あっという間に出来上がる。
結構大きなテントで一基大体10匹超えるくらい入りそう。
なので、そのまま10基作らないといけない。
材料は問題ない。
骨組みはすぐに作れる。
三匹ならすぐに組み上がると分かってるけど、
それでも今日一日が潰れそう。
・・・正直もっと簡単な作りにしたいなぁ。
結局、7基のテントを作り終えると、
30匹ほど届けたチームが戻って、
もう辺りは暗くなっていたために、
今日はこのままということに成った。
まぁ、食料はあるし、
パパムイが大きめの鹿に似た獲物を引きずって来たので、
それを食べようという話に成った。
この鹿もどき。
角があるんだけど、
この角、なんか節が目立つ感じのやつで、
結構長く、頭の後ろの方向へと耳元からまっすぐ生えている。
なんと言うか、鹿というか、
ジャングルに居るオカピーみたいな容姿だけど、
多分違う気がする。
不思議な感じだなぁ。
点穴をした連中は意識を取り戻していない。
ついでに、キノコの効果がきれたエネルルは静かにしている様子だったので、
暴れないならそこでおとなしくしててねってことで、事なきを得ている。
今の所指示には従っている。
ブルググだけど、エネルルが起きたタイミングで、何か悟った様子で、
モニョモニョすることもなくじっと、考え込んでしまっている。
もちろんブルググの”禁”は解いていない。
なので、発言できない。
僕の居ない所で、
どうやらエネルルがブルググに話しかけてる様子だそうだけど、
”禁”が有ったからではなく、そもそも喋りたく無さそうだそうだ。
食事時、70匹ほど居る失神者へ喉ポンポンで食事を与えていく。
結構重労働だなぁ。
ウウダギよくこの数を短時間でさばけるよなぁって思ってたら、
喉ポンポンの技が進化してた。
ウウダギは既に片手に食べ物を掴み、
逆の手で喉の辺りの側面、どうやら顎骨と頭蓋の付け根のへんだろうか?
そこらをポンと一回叩くと何故か勝手に口が開いてしまうらしく。
開いた瞬間に持っていた食べ物を投げるように放り込んで、
最後鼻の頭をペちんと叩く。すると閉じるらしい。
そして次の者の所へ行ってしまう。
正直早すぎる。
ウウダギ一匹で殆どの餌やりが終わっちゃうんだからね。
今は、メンバーがそれぞれのテントに分かれて、
監視の元、一日を終えている。
ウウダギは、もう既に働き者だし、
立派な大人と言って良いんじゃないかな?
十分な動きが出来ていると思うんだ。
・・・そろそろ、親から離れてしまうんだろうかなぁ?
でも一年ってまだ、随分残ってるんだよねぇ。
どうなるんだろう?
「ポンピカ」
「どうした?」
「起きてる。エネルル。ご飯食べる?」
「出しても食べないの?」
「うん」
「・・・困ったね?」
「ポンピカ。話す。食べる」
「そう?僕が話せばいいの?」
「うん」
相変わらずウウダギとの会話がこんなもんだ。
でも分かるからいいね。
ウウダギと、エネルルの所に行く。
足と手が縛られて居るだけで、
既に起きてから半日は経ってるんだ。
僕の方を見てから視線を下に落とす。
「ご飯食べないの?ちゃんと肉だよ?」
「・・・お前がポンピカだったのか・・・」
「あれ?僕の名前ってヴァレヴァレにも届いてたの?」
「お前が元凶なんだろ?」
「元凶って言われてもねぇ。そんなことよりご飯食べなよ」
そう言って、火を通した肉に塩を振って、
胡椒の実の粉末をパッとかけてやた物をだした。
鹿肉焼きみたいなやつだね。
鹿肉、さっき食べたけど、意外に美味しかった。
やっぱり草食なのだろうか?
頭蓋の歯も平らな歯だったしね。
ほぼ草食で間違いないだろう。
やっぱり哺乳類は美味しいわ・・・。
ちょっと前世思い出しちゃうもん。
他の調味料作れればいいなぁ。
なんとしても醤油と味噌はほしいなぁ。
砂糖も何とか作れるんじゃないかなぁ?
サトウキビによく似た細い竹っぽいやるは見つけてあるんだ。
割ってしゃぶるとまぁ、甘いっちゃー甘かったしね。
砂糖も作れそう。
塩もある。
大豆もある。
米っぽいのもある。
麦っぽいのもある。
うん。
醤油も味噌も作れるね。
木製の倉でも作ってみようかなぁ?
「何をボーッとしている?私の問いに答えてくれないか?」
「・・・なんか話した?ちょっと妄想にふけってしまった・・・。で?なに?」
「・・・本当にオルガクルガを殺したのか?」
「んー?まぁね。殺ったけど?」
「・・・やはり信じられない・・・どう見ても私より小さく弱くみえる・・・」
「そう?そう思うならそれでもいいんじゃない?別に僕は強さを自慢したいわけじゃないしね。挑発めいた話しされても何も響かないんだよ。まぁ、集落に行ってギュギュパニに話しするといいよ。僕はめんどくさいのは嫌いなんだw」
エネルルが睨んでくる。
僕の後ろから声が聞こえた。
「ポンピカ。ちょっときてー。なんか外で大きな何かが動いたわ」
ギギリカだ。
急いでギギリカの所に。
窓とは言わないが壁が上と下しか繋がって無いものだから、
すき間から自由に外が見れる。
外は真っ暗。
星の明かりで、近くにあるテント群は見て取れる。
隣のテントのすき間からパレンケが外を注視している様子が見て取れた。
・・・あれ?なんか来るの?これ?