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ブルググとの話しと、咒言


「ガフとして、ラマナイ様に仕えていた日々は実に充実していたが、ラマナイ様はこれと言って、我々に術や儀式を見せてはくれなかった。おかげで我々は寝る間を惜しんで、呪術について議論したものだ・・・しかし・・・」


どうしよう。

ずっと語ってる。


僕は、皆が来るまで、取り敢えず暇を潰せればいいかな?程度で付き合ったんだけど、

結構大きい失敗だったらしい。

これならエネルルに付き合ってたほうが良かったかもしれない。


”ふむ・・・確かに生まれ変わる儀式をした後、余りおおっぴらには術も儀式も行わぬことにしたのを憶えておるなぁ・・・しかし、それも僅かな間であったはずじゃぞ?コヤツがガフであった期間はそれ程長くはなかったのやもしれぬな?どう思う?ポンピカよ”


・・・なんで精霊さんは、さも自分の事について僕へ「どう思うか?」と問いてくるのだろう?

どうして僕が精霊さんの事について知ってなきゃいけないんだ?

そんなの自分で解決してください。

ホント理解に苦しむ。


取り敢えずステレオで、あっちの言い分やこっちの言い訳を聞いてる気分で、

どっちの話しも頭に入りません。


「なぁ?ブルググだっけ?」

「パパムイ。今は俺の話を聞け。でないと後悔するぞ」


取り付く島もない・・・。


「精霊さん・・・。アレどうなってんの?少なからず精霊さんの関係のスキクだよね?なんとかしてよ」

”そういわれてものう・・・。ワシは別にガフなど欲しくはなかったのじゃ。当時の第一が勝手につけた連中だからのう”


こっちも取り付く島がない。


しばらく、僕は大人しくした。

ずっと語り続ける二匹にもううんざりだ。


方や、「ガフとはどんなに凄い役なのか」という事を質問もし無いのに永遠と喋り、

方や、「ワシは此の様な連中に大したことはしていないから余り話を聞かないでも良いぞ」的な事を繰り返す。


なんだろう・・・。

エネルルでもいいや。

早く起きてくれないかなぁ・・・。


いや、流石にそれは身勝手かなぁ。

ってかよくこんなのと3週間も旅できたよね?

エネルルって実は凄い忍耐強いスキクなんじゃないか?


終いには生贄だもんなぁ・・・ん?


エネルルが生贄かぁ・・・。

あの状況でそう思えるということは?


あれ?あの儀式は他利的な陣形をしてなかった。

つまり自利的な陣形だ・・・。


ほう?

ご利益のある儀式を自利するなら分かる。

だけど、危害を自利するのは?

ありえないよな?


こんな所まで旅をして・・・何を持って自決を選んだ?

自決じゃないと僕は直感したからこそ、

エネルルが生贄だと見たんじゃないのか?


ふむふむ。

二匹の同じことを言ってるようで、

わけがわからない話しを雑音と言うか、

右から左へと受け流してると、なんだか頭が働く気分だ。


なかなか良いミュージックじゃないか?

うんうん。

さて?ここで考えつくのは、やはりエネルルが被害者。

さりとて加害者がアノ陣形を作っていた多くのスキクかと考えても、

結局其の中の8匹は異常をきたした。

儀式を中断させてしまったけど、

もしアノまま儀式が進んでいたら多くのスキクが、

アノ8匹のように正気と言うか中身が剥離する結果に成ったはずだ。


つまりエネルルを囲んでいたスキクも被害者だ。

となると・・・。


なるほど。

ヴァレヴァレの族長、もしくはこのブルググが当人だ。


そして、今雑音の如く話を垂れ流している眼の前のスキクが首謀者である可能性があるな。


「・・・で、あるからして。ラマナイ様が僅かでも執り行った術は、まさに奇跡!・・・そう奇跡と申しましょうか・・・今思い出しても心が震える瞬間だったのです」

”うむうむ!そうじゃ。確かに昔は良かった・・・うんうん”

「話の途中悪いけど、ブルググがこの儀式やったの?」


「・・・パパムイ?話しを聞いていましたか?」

”そうじゃぞ!ポンピカ!聞いておけ!ワシがどれだけ凄かったかをなっ!”


なんで、いつの間にかブルググの側に立ってるんだろう・・・。

精霊さんは状況が把握できないのかな?


「えっ?聞いてないよ?」

「なっ!」

”なにっ!”


なんだろう?

なんで同じ反応するの?


「取り敢えず昔話はどうでも良いんだ。それに精霊さんは僕の弟子って事に成ってるよね?なんで弟子の凄さが師匠に影響するんだ?よくわからんのだが?ってかブルググも少しはこっちの話も聞け。そもそもなんでこんな所まで来てこんな儀式をしたの?僕らの集落に危害をもたらすのが目的なのは明白だぞ?ヤんのか?」


取り敢えずメンチ切っておいた。


そこまですると流石に精霊さんは黙った。

が、ブルググは黙らなかった。


「なんだその口の聞き方は!そもそもお前らの集落で虚偽がまかり通っているのがほったんだろう!そんなもの粛清されてしかるべきだっ!」


言うに事欠いて嘘だと決めつけてるんだよねぇ。

終いには、僕の側に居るヴァンをラマナイではないと言ってのけるし・・・。

随分頭のネジがどっか行っちゃってるスキクだなぁ。


まぁ、いいや。

なんだかめんどくなってきた。


「精霊さん。面白い術を見せるよ」

”なにっ!早くみせろっ!”

「何を言ってるんだ?お前は・・・そもそも呪術をしっかりと理解してからの話だろう・・・全く・・・これだからわからんヤツとは話があわんのだ・・・」


どうやらブルググはウンタラカンタラとうるさいので、

気を練り込み。

喉の奥へと貯め込む。


念を切る。

しっかりとした意味。

現象をありありと、細部まで頭で描く。

この術に限っては伝える土台としてのイメージが柱である。

紡ぐは言葉・・・。


『天地より万物に至るまで氣を持ちえず生じる者無き也』

『須らく、言を発するを禁ず』


僕が今使った術は道教の一部で行われていた咒言とか言うやつだ。

日本風に言えば言霊とかかな?まぁ、言霊は神道系の術らしいけど、

どちらもシャーマニズムから来る原理的な術だ。

さて、効果は出てるかな?


「・・・」

”・・・”


どうやら言葉を話せないようだ。


「どう?面白いでしょ?精霊さん」

”・・・”


精霊さん。ものすごくビックリしてる。

ついでにブルググは何がどうなったのかさっぱりわからない様子で、

体をクネクネしたりとせわしなく動く。

終いには、目で僕の方へ「何をしたっ!」とでも言ってる。


でもさっきボーラで捕獲した際に、

何かヤラれても困るので、手も縛っておいたんだ。


ブルググはもがくしかできないよね。

これでしばらくはうるさく無さそうだ。


「精霊さん?どう?」

”・・・”


精霊さんもなんだかせわしなく口や喉を触っている。

声が出せない事が不思議でならない様子。

・・・そりゃそうか。ここでは、「須らく」と使ったんだ。

聞いてる者、気による耐性がない者には、

たとえヴァンであろうとも効果が出てしまう。


気が通っていれば、効いてしまうというのがメリットでありデメリットでもあるんだよね。

まぁ、いいや。


ってか精霊さんだけでも戻そう。


『汝、ラマナイ・イツッアの禁を解く』


すると、


”・・・ぬ!喋れる!何故じゃ?たかが言われただけでなぜワシもかかった?何じゃこれは?面白い!非常に面白いぞ!どうやった?ポンピカよ!”


なんだか、術にかけられたって言うのに嬉しそうだなぁ。


・・・咒言は、あまり多様したくない。

最終的に誰とも会話ができなくなるからだ。


「まぁ、これが咒言っていう呪術の一種だけどね。言葉が通じないとまず使えないんだ。他にも制限は色々あるけど、それ程難しくない術なんだ。ただ、使いすぎると、きっと術者に良い影響は出ないっていう代物。確かに面白いけどね」

”ふむ・・・ジュゴンというのか”


精霊さんはしきりにやり方を聞いてくるけど、

あえて教えることはしたくない。

だって、おばけ同然の精霊さんが咒言を使えてしまったら、

まぁ、良いことはないだろうしね。

もう少し分別とかつけてくれるなら素直に教えても良いんだけどなぁ。


そんな事を考えている最中も、

声が出なくてしきりにもがいているブルググが目に映る。


「ブルググさぁ?あなた達の対応と言うかやり方は余り良いものとは思えないけど、理解してるよね?理解してなかったらなおさら悪いんだけど・・・。まぁ最終的にはヴァレヴァレの族長が指揮してるのはなんとなく分かるけど、それでもやり過ぎじゃないかな?オルガクルガだって、まぁ、叱りつけに来て命を落としたわけだし・・・まぁ、ヴァンとしては残ってるけどね」


僕の話をしばらく黙って聞いてたブルググだったけど、

話し終わるとすぐにまた逃げ出そうと色々試している。

これと言って何か成ったわけではなく、

ただ、モニュモニュと動いてるようにしか見えない。


なんだかんだ言って、結構夜に成っちゃってるんだよね。

まぁ、明日には皆くるだろう。


ブルググが這ってどっか行っても面白くない。

まぁ、エネルルと紐でくっつけてるから遠くへはいけないだろうけどね。


”のう?ポンピカよ”

「どうしたの?」


”そのジュゴンとやらはワシには教えてくれぬのか?”

「えー?・・・さっきの話し聞いてた?使いすぎるとそもそも会話が全て咒言になっちゃって、声を発する事がとても危険に成ってしまうんだよ。下手に身につけるとそうなるらしい。だから精霊さんのためにもまだ教えるわけには行かないんだよ。精霊さんはまだ物を動かすくらいでしょ?今やるときっと良い結果に成らないよ」


”ふむ・・・ではお前についてゆけばゆくゆくは数々の術が使えるように成るのじゃな?”

「どうだろうね?教えれるものは増えていくと思うけど?確証はないよ」


”それでも良い。うむ。なかなか気に入ったぞジュゴンとやら・・・言葉だけで術と成せるとは・・・”


えらく気に入ったご様子。

まぁ、危なっかしくて使わせないけどね。


さて、皆が来るまで一眠りしようかなぁ・・・。

精霊さんが居るんだし何か有ったら起こしてもらえばいいよね?


精霊さんに見張りを任せて、僕は少し離れた位置の木の上で就寝についた。

翌朝、辺りが少し霧が出ていた。

この熱帯の地域で霧って相当可笑しい。

若干寒気がするくらい気温が下がっているのに気づいて起きた。


「精霊さん?可笑しくない?なんだか寒いよ?」

”おお、起きたか。 寒い?”


もしかして、精霊さんは気温が分かんない?

でも肉体がなきゃ気温は関係ないだろう。

それにしても霧が出るくらいと成ると、相当のはずなんだがなぁ?


「精霊さん?霧が見えるでしょ?」

”ん?起きてすぐに変なことを言うのう・・・キリとはなんだ?昨夜から変わったところはないぞ?”


ん?精霊さんの目では霧が発生してない?


「精霊さん。彼処に有った木はみえる?」

”指差す方向の木じゃろ?見ておるぞ?何ぞ変わったことでもあるかのう?”


精霊さんには見えるんだね?

僕は指さした方向に目を向けても霧で見えない。


結構ガッツリ霧がでてる気がする。

さっきよりずっと濃くなってる。


空を見上げる。

太陽はまだ登りきっていない。

でも曇りというわけでもない。

この此の辺りは常に快晴である。

今見上げる空も快晴だけど、

地面から霧が出てるんだろう。

少し地面の方へと視線を下げると、

すぐにきりで見えなくなる。


”ポンピカよ?さっきからなんじゃ?変じゃぞ”

「あー。これ地面かなぁ?精霊さんは霧って知らないんだよね?」


”あいにく知ってはおらぬ。なんじゃそれは?”

「空中に漂っている水が、冷やされて、発生したりする気象現象なんだけどね」


”ふむ・・・今一ワシでは理解ができそうにないな。 で?それがどうした?”

「僕の目では霧が出ていて遠くの物が白いモヤモヤに覆われて見えないんだよ」


”・・・ワシには見えるぞ?どの辺から見えぬ?”

「何処らへんって・・・其のへんから徐々に見えなくなるかな?」


”ふむ。おかしなこともあるものじゃな?”

「精霊さんが生きていた頃には寒くなる時期とかあった?」


”・・・あった。 が、それは旧き者の手によって直ったはずじゃが?”


・・・直った?

多分。この星が地球に似た星だとして、

それでもこの熱帯雨林がそこまで特別だとは思わない。

多分、旧き者は星をコントロールするくらいの文明なんだろう。

じゃなきゃ、天候を操作したり出来ない。

「直った」ではなく「そうした」なんだろう。


「なるほど・・・。その時に使った施設っていうか建物とか道具ってある?」

”・・・此の近くにか?”


「なんで此の近くだと思うの?」

”・・・そんなもの・・・。此の近くにあるからに決まっておるじゃろ?お前は第一と話したんじゃろ?聞いておらなんだか?”


そんな詳しいことまで来てる余裕ないでしょ。

まぁ、いいかな。


日が徐々に登り始めると、

辺りの空気が暖かく成っていき、

霧が嘘のように晴れていった。


やっぱり霧だとおもう。


「霧が晴れたっぽいから、取り敢えずヴァレヴァレの連中を診ようか」

”特に変わったことはないじゃろう。ワシが見ておったしな”


まぁ、変化が有ったら一番先に騒ぐタイプの精霊さんは信じてますよ。


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