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作業と勉強


「さて、作業やろうか。皆手伝ってくれるって言ったよね?」


ボケーッとして、食べたソーセージの味を思い出していた二匹に向かって声を掛ける。

ハッとした顔で、何度も頷いたパパムイとギギリカをみて、取り敢えず今日の作業内容を伝える。


「まずは、ウルグズの皮を鞣すよ」

「ポンピカ?鞣すってなんだ?皮なんか何に使うんだ?」


「パパムイって狩りをするのに知らないの?皮は敷物にするんだよ。」

「ギギリカもパパムイもちがうよ。皮はちゃんと手を加えると、着るものや袋やいろんなものに作り変えることが出来るんだ。」


「へぇー。」

「敷物じゃないの?」


「まぁみててよ。色々と使えるってことが分かるから」

「うん。わかったわ」


「ウウダギは僕の側でまずは色々見て学んで欲しい。できる?」

「うん。」


こうして、ウルグズの皮を岩場から引きずり下ろし、

水にひたして、表面をふやかす。

油が浮いてくる。


皮の下の所に脂肪が固まっていたり、薄い膜が有ったりと腐る要素が沢山有るので、

僕は平らな岩の面に皮を敷いて、そこに平たい石の角を使いこすりつけるように削り始めた。

僕一人では、削ぐ作業に時間がかかるので、三匹にも手伝ってもらうことにした。


薄い部分をドンドン削っていく。

すると、余分な部分が取れた綺麗な生革ができあがった。


コレを岩塩を砕いて作った濃い塩水に浸した。

これでしっかり防腐効果が出れば嬉しいんだけどなぁ。


「ポンピカ?どうして、こんな面倒な事をしなきゃいけないんだ?」

「パパムイは使われてる皮がどうなるかしってるでしょ?」


「ああ、長いこと使ってると、変な臭いがしたり腐って穴が開くからあまり好まれないんだ。」

「そうね。確かに腐ってしまうことが多いわよね。」


「僕がやった事は鞣すっていう作業で、腐らなくする事なんだ。こうして、塩水に漬け込んだ後、天日に干すんだ。そうすると、塩の効果で腐らないまま乾くんだよ。」


「塩って腐らなくできるの?」

「そうだよ。ギギリカ」


「ポンピカ。どうしてくさらない?」

「ウウダギ。不思議かい?」


「うん」

「塩はね。腐る要素を取り省く効果があるんだ。味もあるから色々と使えるんだよ。」


ウウダギは、ポカーンとした顔で僕を見つめる。

ギギリカは、何かを考えている様子。

パパムイは、次の作業はなんだ?とでもいいたげな顔だ。


だけど、もう結構いい時間だ。

今日は出来ることも無いだろう。

明日は、ウウダギを水に慣らす事をしていこうかな・・・

それとも、もっと学習に集中しようか悩む所だ。


「さて、作業も終わったことだし、ご飯食べて明日にしようか?」


「俺は構わないけど・・・なんか物足りないな」

「あたしは、ちょっとやりたいことが有るわ」

「眠い。」


まぁ、ウウダギは寝なさい。

子供なんだからちゃんと寝ないとダメです。


そう思って、ウウダギを寝かしつける。

その後、ギギリカが何かをしたいと言ったのに便乗して外へと出ていったパパムイを追った。


「二匹共なにやってるの?」

「ポンピカ。あのさ?塩は腐らなくするんだよね?」


丘と水の際で、ギギリカが岩塩を砕いては粉にしている。


「うん。」

「魚も腐らなくなる?」


なるほど、なんとなくわかった。

ギギリカはさっき僕が言った事から塩を使えば、

保存食が出来るんじゃないかと考えたようだ。


「おお!凄い。ギギリカは頭いいいね。そうだよ。塩をしっかりと振って、それを天日干しすると保存食になるよ。」

「そっか。天日干しってなに?」


干すってことは知っていても、天日に干すっていうことはまだわからないか。

でも、塩を使った魚の処理には沢山手法があるはずだよ。

簡単に思いつくのは漬物みたいに漬け込んじゃえばいいんじゃないかな?


「お日様にあてて、乾燥させることだよ。」

「ふーん。でも雨季じゃ乾燥はしないよね?」


「そういう場合は、塩に漬け込んじゃえばいいんだよ。」

「漬け込む?」


「そう、塩を沢山使うんだけどね。」

「なるほど。」


「ギギリカはどうしたかったの?」

「う〜ん。塩を魚に使えば腐らなく出来るかな?って思っただけよ」


「そうか。うんうん。手伝うよ。」

「ありがとう。」


「パパムイは?」

「いまね。船で、魚とってる。」


「こんな夜に?」

「うん。」


流石に危ないんじゃないかな?

いくら夜目が効くからって、

夜に灯りもなく船を出すのは流石にやりすぎじゃないかな?


まぁ、大事にならなきゃいいけど、戻ったら一応パパムイには言っておかなきゃね。


「ギギリカ、もし、岩塩を砕くのに苦労するならこうするといいよ」

「ん?」


ギギリカは一生懸命地面に有る石に手に持った岩塩を、

叩きつけて割れた岩塩を更に叩きつける方法で粉々にしている。


コレでは効率が悪いそれに飛び散る。

僕は木で出来た底の深い器を持ってきて、器の底に平らな石を置く。

そして岩塩を平らな石の上に置いたら手に石を持って叩き割る。


あっという間に叩き終わると次に下に溜まった細かい岩塩を、

また平たい石の上に置いて、今度は手に持った石を押し付けるように力を掛ける。


すると石と石の間に溜まった岩塩が圧力で砕かれていく。

それを繰り返すことで、より細かな岩塩が出来上がる。


一連の動作を教えると、わかったらしくて、二匹で大量の塩を作ることが出来た。


ちょうどパパムイが帰ってきた頃だった。


「パパムイおかえり・・・どうしたの?ビショビショだけど」

「いやー。船で釣りするのは大変だった。バランス取れなくて水に落ちたよ」


なるほど、たしかにそうだ。

まぁ釣りが出来るほどの耐久力が有るわけじゃないしね。

船も改良とかしたいところだな。


「で?釣れたの?」

「ああ、ただ、沢山魚が居る所は見つけたんだけど、どうやっても釣れないんだ。なんとか釣った魚もこの通り2匹が限界だったよ」


そういって、パパムイが船から二匹の大きな魚を引きずり出す。

長さが僕と大差ないんだけど、よく獲れたね?


「随分大きいなぁ」

「見たこと無い魚だね?」


「そうなんだ。昼と夜で、泳いでる魚の種類が違うんだよ。新発見だぞ!」

「確かに興味深いわね」


「でもパパムイ。夜は釣りに出ないほうがいいよ。バランスもそうだけど、流されたら戻れなくなるからね」

「ああ、確かにそうかもしれないな。俺も甘く見てたのかもしれない。必要じゃない時はもう夜に釣りはしないさ」


パパムイも夜の釣りは危ないということを学んだみたいだ。

何にしても夜は動きが制限される。

当然、不測の事態に見舞われれば対応が遅れるしね。


「ギギリカ、塩をどうやって使うか考えたかい?」

「う〜ん。干すのが出来ないからやっぱり漬け込むしか無いよね?」


まぁ当然のことだけど、確か塩を使うと大量の水分が出るはずなんだ。

それをどうするかだけど・・・

それにあまり遅くまで作業するとスコールが来る。


なにか、うまい事出来ないかな?


陰干しみたいに小屋の中へ干せればいいんだけど・・・

だけど、通気性がどうしても悪いし、

湿度が高いこの辺りだと何方にしてもや利用がないような気がするんだ。


それにこんだけ大きな魚を捌いて、漬け込むにしても相当の量の塩が必要に成る。

どうするかな・・・

大急ぎで、小屋を増築するか?

出来ないな・・・明日なら出来る。

んー。


塩を刷り込んで、取り敢えず一晩放置してから、通気性の良い小屋を明日作ろうかな?

それが良いかもしれない。

雨よけも風よけも考えておこう。


「ギギリカ。漬ける方法は今の所実用的じゃないかもしれない。そもそも漬け込む器がないから」

「あっ。たしかにそうだね。じゃぁどうしようか?」


「明日、コレを陰干しっていう方法で干す事にしよう。其のための小屋も作ろう」

「それは良いけど、今はどうする?朝までに臭くなっちゃうよ?」


「それだけど、臭くなるのは内蔵が死んで腐るからなんだ。だから内蔵は今とりだしちゃって、魚全体に塩を刷り込んで置こう。後は、小屋に入れておいて明日作業しようよ。」

「うん。わかった。そうしましょ」


「ホント、ポンピカは物知りだな」

「これも前世の記憶だよwそんなに特別な事をしてるわけじゃないんだ」


「へぇ〜。まぁ俺は、狩りが専門だからな。魚もキッチリ捕れるように頑張るよ。」

「うん。そうして欲しい。パパムイは下ごしらえしたら小屋へ持ってくの手伝ってね。」

「パパムイ。頼りにしてるわよ。」


「お、おう!任せろ!」


魚の首の辺りから石のナイフを突き入れて、お腹を縦に割いていく。

いつも思うことだけど、石のナイフって、斬りにくい。

結構コツが必要なんだ。

一気にスパッと切れるわけじゃないので、何回も切り直さなければならないんだ。

それもゴリゴリと。


爪の方が切りやすいんじゃないか?


今は、大きな魚だからそれほど身に傷はつかないけど、

小さな魚だとやはり内蔵だけを取り出すという作業は大変なものに成る。


もっと鋭利で、丈夫な刃物がほしい。

切実に思う。


それと、明日小屋が出来たら粘土を探そう。

どっちみち石窯みたいなものは作らないといけないわけだしね。

鍋がないとどうにもならないしなぁ。


あー。それに炭も作らなきゃ火力が出ないか・・・

たしかサバイバル系の動画が動画サイトに出てたのを見たこと有る。

無人島で、一人生活するスタイルの動画だった。

持っていったのはナイフのみっていうやつで、その動画では回数を重ねるごとに木でできた家からはては粘土を使って瓦まで作って炭も作って、と凄い状態だったのを覚えてる。


炭だ。

炭・・・あの動画では簡単にやってたけど、

木を土の上に山の様に重ねてその周りを藁みたいな草で覆って、

藁の外側を土で覆う。

そして、煙と火が逃げる様に山の天辺に穴を開けて、

下から火を起こす。

火が着いて、中の木が十分に燃えたら土でまた蓋をするんだ。


確かそんなことだったはず。

作業な数日罹るだろうけど、やってやろう。

どっちにしても粘土は必要だ。


「よし。取り敢えず内蔵は全部取り省いた。ただ、この魚は鱗が着いてるんだね・・・鱗も取りたいけど出来るかな?」

「あたしは構わないよ?」

「スコールはまだ来そうにないから大丈夫だろう」


「わかった。じゃぁやっちゃおう。」

「うん。」


鱗も取ることにした。

この魚はどう見てアマゾンとかに生息している鱗が着いた魚にしか見えない。

歯はそこまで鋭くないけど、顎が丈夫そう。

鱗はびっしりと継ぎ目が無いほどついている。

取るのも一苦労だ。


石のナイフじゃ間に合わないと思って平で大きな薄い石をギギリカと二匹で持って、

バキバキととっていく。


なかなか想像していた鱗取りとは違っていたけど、

鱗が禿げると夜だと言うのに月明かりに照らされた皮はピカピカ光って見えた。

鱗も随分厚い物だった。

これ何かに使えるんじゃ?と思えるほどの物だった。


一通り作業が終わり、小屋の中へと魚を担ぎ入れた。

硬い木で作ったフックを使って、少し突き出ている岩の下に二匹の魚を吊るす。


「小屋の中ならスコールが来ても大丈夫だから、塩を刷り込む作業はここでやろう」

「うん。」

「それ、俺も手伝えるか?」


「パパムイも手伝ってくれる?」

「任せろ!」


パパムイは何かやってないと落ち着かない性格らしい。


僕らは、三匹揃って、沢山砕いた塩を一生懸命刷り込んだ。

塩まみれに成る魚。

刷り込まれた先からポタポタと水分が抜けて地面に落ちてくる。


「この汁。臭くないか?」

「臭いわね」

「臭いね」


パパムイが言ったとおり、非常に臭いがキツイ。

でもどうにもならないだろう・・・。


「ねぇ、ポンピカ。今日は此のへんで終わりにしない?あたしそろそろ眠たいわ」

「俺も眠くなっちまった。」


「そうだね。じゃぁここで終わりにしよう。取り敢えず塩はしっかり刷り込んだと思うし」


こうして三匹はウウダギが寝息を立てている横に川の字をかくように揃って寝ることにした。

僕は寝る時、ウウダギの隣へ陣取って、ウウダギの寝姿を観察する。

可愛い。

ホントに無垢な子供を見ているようだ。

いや、無垢な子供なんだけど・・・姿がやはり人ではないからな。

でも僕はスキクなんだ。やはり、同族だからかな?可愛く見える。


可愛いなぁ。


ウウダギをなでながら僕は眠りについた。



次の日、僕らは遅く起きた。

前日遅くまで作業していたからだ。

体が疲れていたようだ。


ウウダギは僕らが起きるよりもずっと早くに起きていた。

だけどやることがないので、小屋の中でジッとしていたようだ。


僕らが起きたのを見て、一緒に動き始める。

ウウダギにも何か一人で出来る事を教えてあげないとダメだな。

何もしないと詰まらないだろう。


とは言え、取り敢えず小屋の増築をしよう。

昨夜からひどく魚の臭いがする。


あの垂れた汁はどうやらアンモニアが大量に入っているようで、ツーンとするんだ。


「ポンピカ。あれなに?」

「あー。昨日ウウダギが寝た後、魚を捌いたんだ。それで、干物でも作ろうと思ってね。」


「干物?」

「うん。魚に塩を刷り込んで、干すんだ。そうすると保存食になるんだ」


「ふーん。」

「ウウダギは今日起きてから何もしてないんだろ?つまんなくなかったか?」


「朝は騒ぐと怒られる」

「もうウルグズはいないよ。騒いでも怒らないよ。」


「ホント?騒いでもいい?」

「まぁ、ヒドすぎるのは誰でもやだと思うけど、それは程度によるよ」


「わかった。」

「ウウダギ。取り敢えず皆で外に出よう。今日は、小屋を増築するんだ。干し物専用の小屋を作るよ。」


「わかった。手伝う。」

「ウウダギには、見ながら学んで欲しい。それと手伝うならウウダギが出来ることを見つけたから教えるよ。」


「わかった。」

「じゃぁ外でようか」


ウウダギは、あまり言葉が発達してないのかもしれない。

必要な言葉を覚えたのも自力だから抜けてる所が多いみたいだ。

それに自分の事を言わない。


僕とか俺とか私とかを言わないんだ。

多分、ウルグズが自己を主張するようなことに対して厳しかったのかもしれない。


其の辺も変わってくれると助かる。


「取り敢えず、パパムイとギギリカの二匹で小屋に使う木材を取ってきて欲しい。」

「いいぞ。任せろ」

「わかったわ。」


「ウウダギは、僕が取ってきた蔓の皮を細く割いて、編み物をしてもらうよ」

「あみもの?」


「まぁ、見てればいいさ。」

「うん」


「それじゃ行こうか。ウウダギは少しまっててね」

「わかった」


パパムイとギギリカは揃って船で先にでていく。

僕は、近場に有る蔓から皮を沢山刈り取っては、丘へと運び込む。


一段落すると、ウウダギの所へ行き、蔓の皮を細く割く方法を教える。

スキクには人間とは違い、鋭い爪が備わっている。

まぁ、それほど大きくない。

猫の爪の様なものだ。

見た目は、はっきりとトカゲの爪なんだけどね。


爪を使えば、細かいことが容易に行える。

なので、ウウダギでも出来る。


「ウウダギ、こうやって細いのを沢山作ってて欲しい。」

「わかった。やる。」


ウウダギが、見様見真似で始める。

なかなかに覚えが良い。

一束割いた頃には、僕より細い糸のような物まで割いた。


これは、これで凄いな。

糸を作る手間が省ける。


「ウウダギ其のくらいでいいよ。」

「うん」


「次はね。今割いた皮をこうやって編むんだ」


皮糸を三本取ると、端っこを足でつまみ。

垂れた三本の内端っこの糸を真ん中へ編んで、

また三本の端っこを真ん中にと三つ編みをしていく。


「こうやって行くんだ。出来るかな?」

「わかった。やる。」


ウウダギが三本の皮糸を取ると、足に挟み。

三本の端っこを真ん中へ、また三本の端っこを真ん中へと繰り返していく。


凄い記憶力と器用さだ・・・

正直ビックリしている。


たぶん同じ歳の小さなスキクには出来ないだろう。

ウウダギはずば抜けて頭が良いんだ。

これは凄いぞ。


僕の記憶をしっかり伝えれば何でも出来るようなスキクになるかもしれない。

将来が楽しみで成らない。


一束編み終えるとウウダギは僕に向かって顔を向ける。

クリクリとしている可愛い目だ。


「ポンピカ」

「上出来。凄いなウウダギは」


「・・・うん」

「自身持っていいよ。きっとウウダギは特別に頭が良いんだ。だからこれからは僕がちゃんと色々と教えていく。立派なスキクに成れるようにね!」


「うん。ありがとう」


僕はウウダギの頭を優しくなでた。

ウウダギは、目をつぶり、撫でられる感覚を感じているようだった。


「さて、続きだ。」

「うん」


「次は四本だよ」

「よん?」


「ウウダギは、数を数えれるか?」

「数えれる。1,2,3・・・イッパイ」


そうかぁ・・・。

ウルグズさぁ・・・ちゃんと数位教えておけよ。


「良いかい?数っていうのはそれが幾つあるかって事を言葉にしてるんだ。」

「うん」


「僕が数えるから覚えてね。」

「わかった。」


こうして、突然だったけど、算数の勉強を始めた。

はじめは、小学校一年生位の物からと思ったけど、其の前に数がわからなかった。

なので、数の数え方を覚えるまで一緒に声を出しながら数えていった。


一回目で記憶して。

二回目で、すでに覚えている状態だったのでコレまたビックリだ。


さすが小さい頃のスキクは記憶力が飛び抜けてるな。

それに輪をかけて、ウウダギは頭が良い。


すぐに小学校一年生の勉強に入れた。


スキクには文字の文化がない。

だから、僕は前世の文字文化を取り入れざる終えなかった。

なので、地面に文字を書きながら教えていく。


数字くらいは一発で覚えた。

”あいうえお”も”カタカナ”もすぐに覚えたけど、

漢字は流石に大量に有るので、限界がすぐに来た。

でも恐らくすぐに覚えるだろう。

まぁ気長に行こう。


暫く勉強に費やした。

すると、二匹が戻ってきていたのに気づいた。


「ポンピカ?何してるんだ?」

「”文字”と”数字”を教えていたんだ。」


「ふーん。」

「何よパパムイ?数、いえるっけ?」


パパムイはあまり数とか頭を使う事には慣れてなさそうだ。

ギギリカは知っててパパムイに話しを振ったんだな。


「俺?1・2・3・・・イッパイだっ!どうだ?言えるぜ」

「・・・パパムイ本気なの?」


ゲッソリした様子のギギリカであった。

確かに僕もパパムイは頭を使わないと思ってたけどここまでとは思わなかった。

もしかすると、集落の殆どがこんな感じじゃないかと危惧してしまう。


「えっ?俺はこう教わったんだけど?」

「そうなのね・・・」


ギギリカの憔悴も分かるけど。

其の話を振ったのはギギリカだ。


「なんだよ!ギギリカは数いえるのか?」

「勿論じゃない。いい?1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・・・イッパイ!」


胸を張って、パパムイに10までの数を言い放つギギリカ。

なんで最後は皆「イッパイ」なのだろうか?


「すげぇ!そんなに言えるのかよ!」

「どうよ?すごいでしょパパムイ!。ポンピカどお?」


得意げな所すまないけど、ウウダギは既に億の位まで読めて、言えるんだけどなぁ。

そして、なんで僕にフルのかがわからない。


「えっ?なんで僕にフルの?」

「だって、ポンピカはウウダギに数教えてたんでしょ?」


なるほど、これは困った。

ギギリカの得意げな所申し訳ないけど・・・。

流石になぁ。


「うん。そうだけど・・・」

「もしかして、ポンピカもパパムイみたいに3までしか言えないの?」


まさかなぁ。

そもそも「イッパイ」ってことがわからない。

何だろう「イッパイ」って?

数えれませんって言ってるだけじゃないかな?


「いや、そういうわけじゃないんだ・・・」

「ならどうしたのよ?」


困ったので、ウウダギに勉強の成果を実演してもらおう。


「・・・ウウダギ。100まで数えれるよね?」

「うん。出来る。」


「・・・100?それって何?」

「ギギリカ。10が10個有る時の数。」


僕が言うより先にウウダギがギギリカに教えた。

ギギリカは「えっ?」っていう顔をしている。


「100は、こう書く」


さらにウウダギが地面に”100”と文字を書く。


「ウウダギ?何を描いてるの?」

「100だ。」


ウウダギはそっけなく答える。


「100?」


困惑するギギリカ。


あー、どうしよう。

フォローしなきゃ。


「ギギリカ。ウウダギには、”文字”も教えたんだ、そして”数字”も教えたんだ」

「それって、ポンピカの知ってる事のやつ?」


「そうだよ。僕は、数が幾つ有っても数えれるよ。ウウダギも慣れればそうなるよ。」

「・・・ずるい!あたしにも教えてよ!この際だからパパムイにも教えて!」


なるほど。

そう来たか。

じゃぁ取り敢えず小屋作ったら勉強会開きましょう。


「わかったよ。でも今は、小屋作るほうが先だろ?」

「いいわ!あたしイッパイ手伝うからね!パパムイも来なさい!」


終始パパムイは頭をひねるだけでよく分かっていなさそうだった。

完全にギギリカの尻に敷かれてる。


言われるままに「お、おう」とか「う、うん」とかしか言えてないし。

仕方ないだろう。


その後、ウウダギに4本編みの方法を教えて、沢山編んでもらっている間。

僕ら三匹で小屋を作る。

岩のへこみや割れ目を生かして、風に吹き飛ばされないような作り。

雨が上からだと流れて中へ入れない様に傾斜をかけた。

この中なら、風通しは良いし、湿気も必要以上に上がらないだろう。


ここまでやるともう真っ暗に成っていた。

ウウダギはある程度編み終わると、眠いと言ったので、寝かしつけておいた。


僕ら三匹は昨日干しておいた、魚を新しく作った小屋に飾り、再度、塩を刷り込んでおいた。

其の際、ギギリカが注意深く魚の鮮度をチェックした結果、腐っては居ないようだった。

ただ、水気が凄い抜けてしまっていると言っていたけど、それが狙いだからOKです。


あと、ウルグズの皮もついでなので干しておいた。

塩抜きまで出来てるし、大丈夫だろう。

ただ、タンニンがないから保存効果がわからないけど。


なにはともあれ、寝る時魚くさく無くて済む。

それが何よりだ。


寝床へと三匹で戻る。

ウウダギが寝息を立てている。

可愛い。

なでてやりたい。


「ポンピカ。早速勉強よ!」

「えっ!俺、寝たいんだけど・・・」


「パパムイは此のまま頭が足りなくていいの?!」

「それは、イヤだけど・・・」


「じゃぁ、少しでもポンピカに教わるわよ!」

「お、おう」


こんな調子で、勉強会が始まる。


暫く、文字の勉強をした。

はじめて覚える事なので、試行錯誤しているようだけど、ギギリカはものの見事に覚えてのけた。

パパムイはイヤイヤだったからか、そこまで覚えることが出来なかったけど、成果が無いわけじゃなかった。

次に、数字と数について教えた。

これもギギリカはすんなりと覚えた。

だけどパパムイはもう眠さが限界だったようで、居眠りしてしまった。


パパムイが完全に寝てしまったので、其の日の勉強は終了となった。

明日は、何をしようかな


・・・そろそろスコールが来そうだ。

寝よう。


僕はウウダギの横へと寝そべり、ウウダギを優しくなでながら就寝に着いた。


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[良い点] ちびキャラ達が頑張ってるみたい。可愛い。 [気になる点] 前世って言ってよかったの?話したっけ。
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