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対策と儀式の中断


翌朝目覚める。

すぐに支度をして、目的地を目指す。

手元の袋に入っているナッツ系の実を幾つか口に入れて、

朝食として、動き始めた。


「精霊さん。夜中変わりはなかった?」

”うむ。しかし、生きるという事は幸せでは有るが、不便でも有るなぁ”


「どうしたの急に?」

”ポンピカの体を使わせてもらったじゃろう?”


「うん」

”その時は、やはりワシも眠気を感じてのう。生きてる者と変わらず睡眠を必要としたのじゃ”


「ほうほう。それは面白い」

”しかしじゃな?またヴァンへと戻ると、やはり、睡眠は必要ない。これは面白きことじゃとおもうてな。と、同時に睡眠は生き物にとって、弱点ではないかと思ってしまうのじゃ”


「まぁ、そう言われればそうだけど、睡眠のおかげで頭の中が整理されたり、身体の調子を整えたりと、色々してくれるんだよ。身体自身がね」

”しかしじゃぞ?ヴァンにはそれが必要ない。比べようもなかろう?”


「まぁ、それだけ聞くとそう思えてくるけどさ?でも逆に考えると、ヴァンは変化しないってことでしょ?現に精霊さんは数千年変化してないって話だよね?」

”うむ。確かに・・・。しかし機会が有れば成長もするのじゃ”


「でもその機会ってのはさ?精霊さんだから出来たんじゃない?僕に会ってから変わり始めたんでしょ?」

”ふむ・・・それは、そうじゃ。不思議じゃのう・・・なぜじゃ?”


「多分、ヴァンは生き物に反応するんだよ。だから、たまたま認識できた僕の側に居ることで、変化が起こったんだと思う」

”ふむ・・・。そうか、たしかにそれはそうかもしれぬ。ヴァンはヴァンだけで、成長せぬのか・・・ワシとて、確かに数千年狭間を漂っていたが、お前に会うまでは希薄な存在だったやもしれん”


「まぁ、精霊さんが良ければ僕の側に居てくれてもいいよ?ただ、悪さしなきゃだけど」

”ふふふ。それは、ワシとて願ってもない申し出じゃ。ウウダギもきにかかるでな”


「ウウダギには、あまりちょっかいかけないでね?僕のウウダギなんだからね!」

”いいではないか。ワシにとっては子孫も同然じゃ。かわゆうてならん”


まぁ、いろいろ、こんな感じでくだらない話をしているけど、

そこそこの距離を稼げる。

流石に今日一日頑張って、目的地にたどり着くかどうかだなぁ。

全力で行って、運良くたどり着いたとしても、体力がなきゃ意味ないしね。

確かに、早くしなければならないわけだけど、到着してすぐに動けなきゃ本末転倒。

何かが起こってしまってからでは確かに遅いかもしれない。

でも仕方ない。


なぜなら、僕は正直それ程重要じゃないと思いに至ってるからだ。

100匹ものスキクが動ける状態でウチの集落に合流したとしよう。

まぁ、当初はそれでも良かったんだけど、

それはある程度、健康で且つ問題がないスキクであるならばというだけである。


そして、おととい狭間を飛んで合流組の様子を見る限り、

きっと、ろくなスキクは居ないんじゃないかと思ったんだ。


まぁ、他者を見た目で判断してはならない。

そう言って前世は育てられたけど、

第一印象って重要だよね?


少なからず、

間もなく狂気に駆られるかもしれない精神状態のスキクと、

集落を盛り上げていこうとは思わないんだよね。


ベネネズには悪いけど、精霊さんが考案したこの魘魅は、

本当に厄介この上ない。


なので、正直、僕自身が考えているのは、

合流組の何割かが仲違い無いし、狂気によって暴走してくれて、

最終的に抵抗力の高い個体が残ってくれればいいなとは思っている。


まぁ、流れや、ちょっとしたエネルルの話しから察すれば、

ヴァレヴァレの族長は、性格が邪悪と言っていいレベルだ。

自分の子供さえ、贄として送ってくるんだからね。


そして、それに考えが至っているって事は、

少なからずスキクに有るまじき、虚実が分かるヤツなんだ。


虚実はこの集落でも多分僕だけが分かるんだと思う。

正直すぎるし、疑うこともない、更にウソを言わない。


まぁ、運良くエネルルが生き残ったとしてもどういう処遇に成るかは、

余り考えたくもないなぁ。

いい方向には行かないだろう。


本当に厄介な一手を初打で指してきたなぁ。

さっさと、大きい集落にしちゃえれば言うこと無いんだけど、

そもそも、連絡できた集落がヴァレヴァレってのも結構痛かったなぁ。


さて、色々と精霊さんとの話と僕自身で悩んでいたりと、結構脳内は忙しかった。

目的地への道程には問題がない。

まぁ、普通に疲れるってだけだなぁ。


何にしても、今現在僕が足早に移動している場所。

集落から一日は歩いているんだけど、

この場所が凄いなぁ。


草原って言っても草は僕の背位有るんだけどね。

そんなのがびっしりと生えている。


地面の凹凸もそのせいで見えづらい。

だけど地形の起伏は見て取れちゃう。

西を見れば丘、東を見れば遠くに森、

来た道を振り返ればどこまでも草原。


目指す目的地を向けば、まぁ、森が鬱蒼としている。


精霊さん曰く、

此の辺りには獰猛な動物は余り居ないらしい。

まぁ、精霊さんの情報は大抵古い。

なので、余り宛にはしないけど、

心の持ちようは軽いなぁ。


警戒は怠らないけどね。

それでも今の所は動物を見かけていない。

何故だろう?


本当に見かけないんだ。

可笑しいなぁ?って思うんだよ。

だって、集落の周辺は結構動物が居るからね。

こんな距離移動したら、動物の痕跡がすぐに見て取れるはずだ。

整備されている前世とは違う。

未整備の土地なわけだし、

僕らは動物と大して変わらない生活をしてたわけだしね。

動物が僕らを見て逃げるようならその気配だって分かるようなもんだけどね。


気配すら無い。

う〜ん。


恩恵かなぁ?

プンタの不思議パワーが関係してるのかなぁ?


色々疑問が浮かぶ。

まぁ、動物に襲撃を受けない分、楽です。


結局、山あり谷ありな地形ではあったものの、

順調に距離を縮めて、ようやく数時間の距離まで差し掛かる。

既にもう夜だ。


道中、腰袋の中に有る木の実は食べ尽くしたので、

食べれそうな野虫を捕まえては頬張っておいた。

若干青臭くて不快な匂いが出る芋虫を食べたときはビックリしたけど、

まぁ、食べれないことはなかった。

やっぱり美味しい虫は、甲虫類かもしれない。


生で食べてもバリバリといい音を立てる。

中がジューシーで物によってはものすごく甘かったりするしね。


大体は、油分が強くて、少しイガイガするけど、

まぁ、虫はそんなところかな。


エビやカニ、バッタやクモはやはり別格に美味しいと思う。


話が逸れたけど、無事体力も維持したまま、目的地周辺へとたどり着いたんだ。

さて、次の行動を取らないとね。


「精霊さん」

”なんじゃ?もう寝るのか?”


「まぁ、そうなんだけど、明日の朝早いうちにヤツ等に奇襲をかけるよ」

”ほう。100ものスキクを一網打尽にできると?”


「まぁ、そういうわけじゃないけど、多分大半が混乱するだろう」

”ふむ”


「まぁ、それとは別にだけど、今のうちにウウダギに僕の伝言を伝えておいてほしい。出来る?」

”うむ。それは問題ない。できるぞ”


「じゃぁ、ウウダギに明日の朝一番に皆して、此の場所までケルケオ車で来てくれって言っておいてほしい。あと、最低50匹2日分の食料は持ってきてほしいっても言ってほしい」

”うむ。わかった。ならばすぐに出かけよう。ウウダギが待っておるからのう”


「う、うん。取り敢えず暑苦しくするとウウダギに嫌われるからね?気をつけてね」

”なんじゃ?ウウダギは暑苦しいのが好きではないのか?ポンピカとのやり取りを見てワシもそうしておったのにのう・・・”


・・・僕が暑苦しかったのか?そうだっけか?


まぁ、結構心外な事言われた気がするけど、

ウウダギは嫌そうにしてないからきっと精霊さんがイケないはずだ。


そんな事を考えている間にさっさと精霊さんは消えてしまった。

移動は一瞬だ。

つまりもうウウダギに連絡が行っているはず。


こうしておけば、まぁ、制圧したあとに安全な状態でウチの集落の皆を迎え入れることが出来る。


う〜ん。

今回は意外に頭使うことが多くて厳しいねぇ。

そもそも僕は一対多数はそこそこ出来ると思うほうだけど、

100人空手ならぬ100対1喧嘩は無理だ。


言葉上だったらなんとでも言えるんだけど、

実際にやろうと思えば、体力がまずついてこない。


前世で100対1をしろと言われて引くに引けないならやることも出来たかもしれない。

でも、いまはスキクだ。

まだ、身体の使い方も成れているわけじゃない。

手加減は出来ないし、多分ミスがかさなって、早々に自滅するだろう。


まぁ、条件が揃えば、100も出来なくないんだけど・・・。

そんな状況を今ここで作れるかと言われると無理だ。


まぁ、何にしてもや利用は幾らでも有るけど、

実際に出来る事はそれ程多くはない。


しっかり体力だけでも回復に努めよう。

おやすみ。



”ポンピカよ。起きろ。そろそろ時間じゃ”


結構寝た。

スッキリ爽快。

まだ、周りは真っ暗だ。


隣に精霊さんが居るのが分かる。


「精霊さん。僕どのくらい寝た?」

”ふむ。そこそこじゃ。それよりも伝言はウウダギに伝えたのじゃ”


「ありがとう。さて、体力も充実してる。そろそろ行こうか?」

”うむ。先程様子を見てきたが、依然として動こうとはしていない。むしろ、予想しておらぬ方向に儀式が進んでいるようじゃな”


「・・・予想していないってどんな?」

”ふむ、一度自分で見てみてはどうじゃ?ここからじゃとすぐにたどり着くはずじゃしな”


そりゃそうだ。

精霊さんに探ってもらわなくても自分で狭間を飛べば近いじゃないか。


ウウダギにだって、知らせるのも僕一匹で出来たなぁ。

あれ?精霊さん連れてこなくても良かった?


まぁ、いいか。

役に立ちそうだと思ったわけだしね。

実際、役には立ってるしね。


自分が狭間を移動出来るというのは本当に便利だ。

今の所、精霊さんと集落の一部のスキク以外、

精霊化した僕を見ることが出来るスキクは多分居ないだろう。


そう考えると、かなりのアドバンテージだと思う。

要は、相手の場所が判ればそこへ飛んでいって、

話なんかを直接聞いたり見たりできちゃうわけだからね。


しかも、気づかれない。

これがデカイ。

さらに気づかれないから対抗手段も皆無なんだ。


一方的じゃない?

何か有ってもそうやって事前準備出来てしまうわけだからね。


なるほど、

もっと有効活用していこう。


精霊さんの提案に乗っかって、

僕はすぐにヴァンの状態へ。


目と鼻の先に居る連中の元へと飛んだ。


真っ先に目についたのは、

なんと言うかエネルルが平たい石台の上に寝ている周りに、

今にも気が狂いそうなほど、目が血走ってるスキクの集団が、

その石台を放射状に囲んで、

ひたすらエネルルへと叫んでいる光景だった。


ひと目でヤバイ状況と分かる。

そして、その塊から少し離れた辺りに、

この間エネルルと会話をしていた雄と思われるスキクの姿がある。


どういう事かさっぱりだけど、

精霊さんが変な方向というか予想した以上に変わった状況になっているのが、

薄気味悪くも有る。


隣に居る精霊さんにどういう事か聞いてみたいなぁ。


「む?なんじゃ?分からぬのか?」

「どういう事?どうしてエネルルがあんな事に成ってるの?」


「恐らくじゃが、狂気にかられる者の想いをエネルル一匹に押し付ける儀式なのじゃろう」

「どういう事?そんな事してエネルルは何がしたいのかな?」


「どうも、こうもなかろう?一匹の狂気でさえ、抑えられぬから狂気なのじゃぞ?それを100匹近い者の狂気を押し付けられようなどと自ら申し出るわけなかろう?恐らく、外に居るあやつらに唆されたに違いない」

「ふむ・・・。エネルルってのは向こうの族長の子供何だよね?なんで犠牲にならにゃならんのだろう?」


「ふむ、其の辺はワシにもわからぬ。じゃがな?あんな事が成功するはずなかろう?溜まりに溜まった狂気がどの様な事に成るか・・・ワシとて恐ろしゅうて気が変になりそうじゃ」

「へー。精霊さんでも彼処まではしないってこと?」


「うむ。あれでは操ることは出来ぬだろう。つまり、目的を果たせず自滅する他ないということじゃ。命を使う儀式じゃぞ?それ相応の効果というか成果が期待できねばやる意味はないじゃろう?」

「まぁ、言われてみればそうだけどね?」


「ねぇ?精霊さん」

「なんじゃ?」


「これ止めるには、皆に寝てもらうのが一番だよね?」

「・・・まぁ、出来るのであれば、それでも良いじゃろうなぁ?其の様な手が有るのか?」


「まぁ、出来なくないんだけど、下手すると僕まで巻き添えになってしまいかねない」

「・・・まぁ、余計な争いが避けれるのであればそれでも良いのではないか?」


「そうだよねぇ・・・取り敢えず戻るわ」

「うむ。ワシも戻ろう」


一瞬で自分の体に戻れる。

とても便利。


今起きている遠くの事が、すぐに見てとれる。

つまり、千里眼と変わらない。


幽体離脱みたいな芸当だけど、

これはとても有益な芸だなぁ。

芸で片付けれないかな?

なんと言うか術だよね?


「さて、少し準備しよう。ヤバイ状況ってのは分かったけど、準備なしではどうにもならないからね」

”ふむ・・・。さっき言っていた眠らせる秘策か?”


「うん。ちょうど袋の中に幾つか術に使える材料が有るんだ。うかつに使うとこっちも被害が出るから使いどころが難しくてねw」

”ふむ・・まぁ、良かろうワシは、ヤツ等の様子を見ていればよいか?”


「うん。なんか変化が有ったらすぐに言いに来てほしい」

”うむ。心得た”


さっと姿を消す精霊さん。

なんだか・・・使えるじゃん!

なにこれ?精霊さんの株が僕の中で急騰してるんだけど?


とても使い勝手がいい。

なんだろう?

なんで?


まぁいいや。

まずは、例の気絶するキノコの乾燥したものを持ってるんだ。

丈夫な葉っぱに包んで、少しの量だけどね。

乾燥させてるから量が少なく見えるけど、

実はパパムイが使ったやつより多いんだ。

乾燥させちゃったせいで、かなり縮んだんだけどね。

それを葉っぱにくるんで袋の中にしまってあるんだ。

他にもンダンダに教えてもらった傷を直す葉っぱとか、

まぁぶっちゃけアロエっぽかったんだけどね。

それでも乾燥させれば呑み薬にも成るらしい。

知ってるんだったら前もって教えてくれと言ってしまった。


さて、用意するのはこの乾燥キノコを粉にするってだけだ。

粉にして吹きかければあら不思議、どんなに強がった相手も一瞬に落ちる。

因みにパパムイで実験してるから確かだ。

ただ、其の時に僕も巻き込まれて、

2時間ほど気を失ったけどね。

今と成っては笑い話だ。


・・・最近のことなんだけどね。

ああそっか。皆は3週間前の話なのか。


色々ごちゃごちゃしてるなぁ。

まぁいいや、取り敢えず石にこする付けて、

出るカスを葉っぱの器に貯め込む。

此の時気をつけないといけないんだ。

少しでも粉が鼻に入れば、僕が此の場所で失神する・・・。


結構危険な作業なんだよねぇ。

なので念の為ウウダギが用意してくれてる布をマスクにして、作業してます。


一通り、粉にした。

それを小さな木製の小箱へと入れる。

何時でも使えるように成った。


さてと・・・あとは、あの外側に立っていた一匹だ。

アレを先になんとかすれば、儀式中のヤツ等は僕を認識できないだろう。

さて、そろそろ行くか。


目的地へ足を踏み出す。

すると、精霊さんが僕の横へと現れる。

何か有ったのかな?


”マズイぞ・・・ありゃマズイなぁ・・・マズイ・・・”


マズイしか言ってこない・・・。


「何がマズイ?」

”既に儀式の効果が出始めておる。外周の数匹は既に正気を失い始めたのじゃ”


・・・それマズイなぁ・・・精霊さんじゃなくてもマズイってそれ。


「もうすぐ現場に着くと思うけど・・・間に合いそう?」

”どうじゃろうなぁ・・・。まぁ、運が良ければと言った所かのう”


それほぼ、ダメなやつじゃん。


まぁ、仕方ない。

少し急ごう。


木々の中をひた走る。

すると、目的地の周辺へとたどり着いた。


エネルルが居る石台は木々が開かれた草原のどまんなか辺りに有る。

それを取り囲むスキクはざっと見ても残り全部と言って良い。

ただ、一匹、その塊から少し離れて、儀式を見守っているスキクがいる。


狭間から見た光景と一致している。


それと現界で分かることだけど、

エネルルは気を失っているのだろうか?

動こうともせず、石台にうつ伏せだ。

呼吸は見て取れる。生きているのは理解できた。


今現状で、狭間から見たときとの差が有るとすれば・・・。

精霊さんが言ったとおり、明らかに可笑しい動きを見せるスキクが出てきているという点だ。


可笑しい動きというのは、

エネルルを囲って放射状に整列して並んでるのとは、

別に8匹が皆から少し距離を置くようにブラブラと徘徊している。


ブラブラというのもなんと言うか、

ゾンビ映画のゾンビそのままのような動きだ。


輪から離れている雄のスキクの事は見えないのか?

不自然に避けている様子だ。

あの雄なにかしてるんだろうか?


見た目だけで言えば、

ブラブラゾンビは、全てが雄に見える。

雌っぽい特徴は見受けられない。


色々不思議な光景だけど、

確かに異常事態だと思われた。


さて・・・取り敢えず、彼処に立っている雄を眠らせるか。


僕はそのまま草むらを雄の後ろ手へと大きく迂回してから、

音を立てず近づく。


雄は、なにかに集中しているようで、

僕の気配を感じる事が出来ないでいるようだ。

まぁ、僕もバレるような近づき方はしたつもりはないしね。


真後ろまで、腰を落として近づくと、

腰の袋から例のキノコの粉をひと摘み。


それを雄の後ろから、

静かにフッと摘み吹く。


キノコの粉が吹いた息に乗って、

雄の鼻へと入っていくと、

忽ち雄は気をうしなって其の場に崩れ落ちる。


崩れ落ちるのも考慮済みだ。

多分映画でもそうだけど、

ゾンビってのは音や匂いで判断するっていうのが定番だよね?

眼の前に居るブラブラゾンビ連中に気づかれないために、

崩れ落ちる瞬間雄の両脇を担いで、

ゆっくりと音を立てずに其の場に寝かせた。


草原と言ってもやはり草が僕の背と同じか高いくらいだ。

音を出してしまう可能性も有ったけど今回はなんとか穏便に済んだ。


ブラブラゾンビ達は、まだ数を増やしては居ない。

あの状態はいったいどんな状態なんだろう?


とても興味が有るけど、

あれが触れれば牙を向くたぐいのソレだということは、

なんとなく分かる。

今は触れないでいこう。


僕は先へと進む。

ブラブラゾンビ達は、随分と動きにムラがあり、

歩いていたり、止まって居たりとバラバラだ。

隙きを突くのは容易だ。


すぐに放射状に整列している外周までたどり着く。

近くに居ると耳が痛くなるほど、わけのわからない叫び超えが響いている。

正直、耳が痛い。


まぁいいや、さっさと眠らせよう。

僕はさっきの雄と同じ様に手短に居る集団へと、

手に取った僅かな粉をフッと吹きかける事で、

意識を刈り取っていく。


粉は十分有る。

僅かな量で大勢が気を失うほどの物を

小さな袋一個分は有るんだ。

多分100や200程度の生き物なら眠らせれる。


惜しげもなくフッ、フッと吹きかけていく。

バタバタと倒れていく。

其の中で、一番に気をつけるのは、風向きだ。

強い向かい風が来たら其の時点で僕も気絶するからだ。


結構神経をすり減らす作業だなぁ。

なぜかエネルルの側でそんな僕のやり取りを見ている精霊さんが・・・。

まぁ、例にもれず馬鹿笑いしてるんだけどね。


ホントに緊張感が無いおじいちゃんだ。


ブラブラゾンビは倒れていく仲間を目に移してもやはり何も行動を起こさない。

ただ、ブラブラしてるだけだなアレ。


一通りエネルルを囲んでいた連中は全て意識を刈り取れた。

残るは、外周の外で、ブラブラの連中だけど、

あんなに体が細くて、力が無さそうで、無防備な連中なんて、

すぐに沈められるだろう。


さっさと収拾つけよう。


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