合流間近と族長の後継
朝。
いつものように起き、
太極拳の套路をこなし、
いつものように食事へ。
ウウダギも今日は套路をこなしていた。
昨日は出来なかったのにすごい。
食事に行くと、
いつもと違い、
族長が少し段差の高い位置で立っており、
対面する形で、皆が勢揃いしている。
ギュギュパにも居る。
デデンゴが凄い成長していて、
ビックリだ。
もう既にギュギュパにに近づく勢いで大きくなってる。
一言で言えば異常だ。
スキクは子供のうちからあんなに大きくならないはずなんだけどなぁ。
身体もごつい。
しかも腕が長く。
更に足は若干短く感じる。
実際は屈伸してるから長いんだろうけど、
真っ直ぐならないで中腰みたいな立ち姿だ。
猫背。
スキクは首が人間よりもずっと長い。
猫背のせいで、バランスが危ういんじゃないかな?
尻尾も太くて長く。
バランスを取っているようだ。
すげー。
バルバルも似たような状態だった。
ベネネズは昨日見たけど、体がゴツくなってるだけで対して変わりはない。
どうやらなにか集会みたいなのが始まるようで、
僕とウウダギの二匹を待っている状態だったみたい。
誰か呼びに来ればいいのにね。
僕が皆の後ろに並ぶと、
族長がウンと頷き、
言葉を発した。
「揃ったようだ。では話そう」
いつも騒がしいスキクだけど、
どうやら族長の話しにはちゃんと耳を傾けるようで、
合流組のバルバル達もしっかり一員に成っているようだ。
・・・あれだなぁ。
もうヴァレヴァレのヤツラとか言えないな。
多分僕以外のスキクは、既に一員と見ているようだし、
何より僕に説明する時以外、
ギギリカの様子からすると、ヴァレヴァレとか言わないからね。
僕も認識を改めないといけないのかもしれないな。
「皆のもの。もうすぐヴァレヴァレの連中がこの集落へと到着するようだ。家の建築を急がねばならぬが無理はするな。それに手が増えると思えば家の建築も捗るだろう。また、ギュギュパにから以前話が有った、マガの精製とやらの件。これも手が増えるという事で、ヴァレヴァレも混ぜて使うことに成る。」
そこまで言うと、少しざわつく。
僕が立っている位置で一番近いのがオルギュスやセルセル、イヂジン、そしてヒュルルだ。
何やら緊張している様子で居る。
「皆のもの。そう騒ぐでない」
「よいか?くれぐれも争いは避けるように心がけてくれ。特にポンピカ。お前が関わると死者が出てかなわん。貴重な手じゃ。しっかり心に刻むがよかろう」
そう言った瞬間。
皆が僕の方を見る。
なんで注目するんだ?
僕こそ争いが嫌いなんだ。
そんなのは百も承知だよ。
「さて、まずはポンピカの案では有るが理にかなっているため、進めなければならぬ事が有る。幸い皆、しっかりと文字の読み書きも体得しておるようだ。数字についてもまぁ、大小関わらず最低限は学んだと思う。であれば、ヴァレヴァレが合流した後、その指導にあたる様小さい集団を設けることとする。集団の長はワシが決めるが、異存が有れば気兼ねなく言うてくれてかまわん。皆で手分けして、集落を盛り上げようと思うがどうじゃ?拒否する者がおるならそれもワシに報告するよう願おう。対応する」
族長はちゃんと族長をしてるなぁ。エライエライ。
さて、話は終わりかな?
まだ皆が解散しない。
族長がまだ話すのか?
「さて、本題じゃ。ギュギュパにとイイオオから聞いた話では、ポンピカがラマナイ様と入れ替わっていた件で、不満が出たのは分かっておる。しかし、一時的なことであろう。また、そのようなことが起きたとしても事前にポンピカには言ってある。皆のもの安心してくれ。以上じゃ」
最後の本題って・・・なんで僕が精霊さんと入れ替わっていた件なの?
そんなに集落に衝撃が走ったの?
さっきから僕をジロジロ見る・・・前の連中。
ヒュルル?昨日話したよね?
イヂジン?セルセルは取りません。趣味じゃありません。
オルギュス。
そんなに哀れんでくれるな。
そしてなんでパパムイが笑いを堪えてる?
どこに笑いが有った?
そんな事を思っていると、ウウダギが僕の横っ腹をツンツンする。
顔を向けると、小さく呟いた。
「昨日、セイレイサンきた。ちゃんと話す」
なるほど。
やっぱり賢い。
僕はウンと頷き、
手をあげた。
「族長。昨日僕の所に精霊さんが性懲りもなく現れました。なんかー、集落から2日位の距離まで来てるようです。今は精霊さんをこき使って、偵察させてますけど、いかがでしょう?」
すると、族長が一瞬、
何やら嫌そうな顔に成ったけど、
気を取り直したようで、
言葉を返してくる。
「わかった。 皆も聞いたように間もなくのことだ。昨夜、鳥が来た。その内容と一致していると思われる。皆引き続き心して各々万進してくれ」
その言葉で、族長が手を振る。
集会が終わった。
族長が手を振ると、集会終わりの合図だからだ。
皆各々の食事スペースに移動して、
ギギリカは大鍋へ。
配膳とまでは行かないけど給食係なわけで、
頑張り始める。
僕もギギリカからウウダギの分も渡され自分の位置へと向かう途中、
族長が僕を手招きしているのが分かる。
ウウダギを見る。
ウウダギも、ウンと頷き二匹で族長の元へと進んだ。
早く飯食いたい。
「で?族長なに?」
「ふむ。まぁそこに座れ」
二匹で並んで座った。
ズズナドが族長の分も持ってきて、隣に座った。
ズズナドってそんな立ち位置だったっけ?
せっかちで頭が硬く、短気で弱虫だったはずじゃ?
・・・我ながらずいぶんな言いようだなぁ。
余り他をとやかく言うのは良くないよね?
余り考えないでおこう。
「さてじゃ。何から話そうか」
「何が有るの?」
「そうじゃな?昨夜か?ラマナイ様が訪れたのは」
「まぁ、あのスキクはココらへんをブラブラしてるからね。暇に成れば来る」
「まぁ、そいうでない。曲がりなりにも偉大なお方なのだ」
「ただのお祖父ちゃんだよ?」
「まぁ、それでもだ」
「・・・わかった」
「そうだな・・・。まずは2日の距離と言っておったようじゃが?」
「ああ、そうらしいよ」
「どの様な対策を考えておる?」
「そーだねぇ。まぁ基本てたとこ勝負かもしれないけど、今の所、精霊さんに見張らせてるから変化が有ったらすぐに分かる状態だよ?その上でだけど、攻撃的なら当然防御するし、攻撃的ではないのであれば、まぁ、仲良く出来るだろうとは思ってる」
「その場で対応するのか・・・。少々安易ではないか?」
「そうかな?いつもそうしてるんだけど?」
「そうなるとまた同じことの繰り返しにならぬか?」
「・・・耳が痛い」
「なるほど・・・対策が出来るのはラマナイ様の話が有ってからと?」
「基本そうなると思うけど?なにか腑に落ちないの?」
「何も対策をせずに、そのまま一員として良いものか・・・少々不安では有る」
「いいたいことは分かる。分かるけどまずは信用をして、状況を見るほうが良いと思うよ」
「そんなものか?」
「まぁ、多分ネックというかなにか仕掛けてくるなら、向こうの息がかかってるやつだろう」
「・・・」
「なにか引っかかる?」
「いや、鳥の件だ。鳥の便りでも2日と言っていた。つまり、こちらに来る中に鳥を使う者が居るのだ・・・言わんとしていることが分かるか?」
「・・・なるほど。つまり来る連中の中には鳥。つまり向こうの関係者がほぼ確実に居るって言ってるよね?」
「そうだ」
「流石だね!族長もちゃんとウソとホントの見分けが出来始めてるじゃん。お祖父ちゃんなのに」
「ポンピカ。一言多いのではないか?」
「まぁ、それは良いさ。それよりその話は多分、正解だろう。そうなると防衛に傾いたほうが良いか?昨日精霊さんの話を来たときはこちらから迎えに言っちゃえば、リスクが少ないんじゃと思ったんだけど・・・」
「・・・迎えか・・・なるほど!それは盲点じゃったな!」
「迎えに言ってもこっちに着くのが遅れるわけじゃない。だけど一日は様子を見る機会が生まれるはずだよ」
「その一日に見極めると」
「それしかないかなぁ?あとは強硬手段に成ると思うんだよね・・・万が一ウウダギが標的に成れば、多分また僕意識飛ばしちゃって、今度は合流組を潰しかねない。小さいスキクも居るだろうし、余り凄惨な事はしたくないんだよね」
「ほう!?ポンピカがか?」
「そうだよ。僕ほど平和で何もない生活をしたいスキクは居ないと思うよ?」
「・・・まぁ、そういうことにしてこう。 所で集落はどうであった? こう言ってはなんだが
、ワシの目から見ても目まぐるしく変わっている」
「僕も昨日目覚めたばかりだ。精霊さんに体乗っ取られてる間は記憶が共有してないみたいでね。仰天続きだよ」
「そうか。それはプンタと関係有るのか?」
「・・・結構エグい所ぶっ込んできたね? まぁどうやって察したかしらないけど、まぁプンタは恩恵を与え始めてるみたいだよ。加護は力がなくて出来ないみたいなこと言ってたかな?」
「なるほど・・・。数千年ぶりの恩恵か・・・。この集落は恵まれておるようじゃ・・・」
「どうしたの?なんか歯切れがよくない」
「ワシも歳なんじゃぞ?そろそろワシの代わりが生まれても良い頃合いなのだ。そう考えると次の繁殖期位からは注視せねばならぬからな・・・ここに来て数が増えると有れば、ワシも仕事が増えるということだ。老体には何より答えるからのう」
「そっか、でも次の族長も同じ考えの族長とは限らないんだよね?だって、まだ死んでも居ないしね」
「意思を継ぐ程度の族長はまだ、あの世に沢山おるぞ?だが、ワシと敵対とまでは行かないが、よく思っておらぬ者が選ばれれば、どうにもならん。ワシが選ばなければ良いという問題でもないからのう」
「選任は自動的なの?」
「自動的というのとは少し違うかもしれないが、選ぶ候補が絞られてしまう事が多い。じゃから選ぶ候補が一匹しか居なければそれを選ばざるおえんわけじゃな」
「めんどいね」
「じゃが、もしワシの意思を継がぬ者が族長になった場合。この集落はどうなってしまうのか・・・。ここまで育っている集落が衰退してしまう事は、ワシとしては悲しくも有るからのう」
「ふむ・・・。じゃぁさ?この際だから、別の選択肢を設けたらいいんじゃない?」
「ん?別のとは?」
「集落から族長候補を正当に選んで族長にしてしまえばいいんだよ。そうすれば意思を受け継いでくれるでしょ?別に生まれ変わりにこだわらなくてもいいじゃない」
「しかしそれでは、過去からの知識が継承されぬであろう?」
「・・・多分だけど、この集落に限って言えば、既に過去のどんな環境よりも変わっちゃってると思うし、今後ドンドン変化が激しくなるよ?そうなると、過去の記憶を保持し続けている個体は淘汰されかねないと思うけどね?ましてや、その個体が頭はってしまうならなおさらだと思うけど?」
「なぜじゃ?過去の記憶や経験が活かせぬのか?」
「活かせるけど、実際族長だって感じてるって言ったじゃないか?目まぐるしいって・・・分かる?言ってる意味」
「・・・!?ワシはそのうちついて行けぬ・・・そう言っておるのか?」
「そうなんだよ。多分、僕だって僕の知識以上の事を起こし始めればついていけなくなるんだ。その理由は今有る固定した知識と経験が新しい事に対して懐疑的に成るからだよ。いままで良いと思って、実際良かった経験が有る時点から最悪と評されるんだ。そうなると、もう自分のアイデンティティーっていうか、自分が否定された気分に成って、新しいことを受け入れなく成るんだ。つまり取り残されるわけだね」
「・・・そうか・・・。今までは先祖と言うか過去のワシが体験経験を積んできた事柄も新しい時代には役に立たず。しかも害悪とさえ言われかねんと言うわけじゃな? 確かに溜まったものではないな」
「そうなんだ。僕も生まれ変わりみたいなものだけど、それでも今有る知識や技術が集落に浸透してしまえば、お払い箱に成る。むしろその方が集落と言うかスキクやひいてはザーザースのためなんだよ。僕一匹なんてたかが知れてるっていうのはそんな理由なんだ。永遠なんて有っちゃいけないし、有ったとしても時代遅れでくだらないことなんだ」
「・・・しかしそうなればラマナイ様が施した。呪術である生まれ変わりはどうなる?害悪にしかならぬと?そういっておるのか?」
「旧き者がその術の基本を作ったみたいなんだ。精霊さんはそれを言われたとおりやっただけで仕組みは知らないってさw。だけど旧き者の思惑がどう有れ、この仕組みは今までは役に立ってきたかもしれないけど、この先文明というものが育った場合役に立たなく成るよ。日夜新しいものが生まれ、新しい技術が育ち、更に突拍子もない出来事が起こる時代が必ず来るよ。そうなれば過去にしがみついた連中は、新しい環境に慣れた多数に駆逐されるだろ?新しい者からすれば時代遅れで、役に立たないんだ。だったら役に立つ者を残すのは、生物的に自然だと思うよ?」
「・・・そうか・・・。ではワシはどうすればよいだろうか?空きなからずワシは知識や経験、意思を引き継ぎたいと思っておる。じゃが望まない者に矯正は出来ぬ。更に意思を継がぬものには尚の事だ」
「だから、選任をしっかりやって、集落の中から真っ当に選べばいいんだ。そして、それまでの内にしっかり文字や形として、記録を残せば、その記録が族長の代わりになるだろ?既にこの集落は文字も数字も把握できるくらいに成ってるんだ。いいじゃない?自分の思いがちゃんと引き継がれるんだ。しかもその書を読めば複数がそれぞれの意思でそれぞれの思いで引き継ぐ。いいことだと思うけどね?それじゃダメなの?」
「なるほど・・・。ではワシは自分の知識を書に纏める。これを先に行なえといっておるか?」
「そうかな?その方がいいと思うよ。しっかり書き残せば、悔いもないでしょ」
「なるほど・・・。ワシの知識が形に残り、文字を読める者なら誰でも受け継げる・・・素晴らしいではないか!なぜその話を先にせぬ?」
「え?前から書類は残したほうがいいようなこと言ってなかった?それに秘密の内容とかも書き残すと成れば、それなりの仕組みを考えないとね?資格がなきゃ読めないとかしないと秘匿は出来ないよ?」
「・・・初耳だらけじゃ・・・が、わかった。それは真っ先にやることとしよう。さすれば、わざわざ意思を継がぬ者を選ばなくても良いことに成るな」
「そうだよ。それでいいんじゃない?」
「ふむ・・・わかった。 それからじゃが、埋立地の所は既に家を経てれる状態じゃろ? 進めてもらえぬか?」
「あー。わかったよ。それはウウダギに協力してもらわないと無理だからね。ぶっちゃけ僕より既に
頭が良い。親冥利に尽きるよ」
「ほう。それは凄い」
「あとは、貯水についても進めないとね。彼処にできてる櫓っていうか樽だけど、水は溜まってるようだけど使ってないでしょ?水綺麗でしょ?なんで使わないの?」
「ああ、あれか・・・。パレンケが進んで作ったやつだ。ポンピカが教えたやつじゃろ?綺麗な水を作れるからとスミを作っておったしな」
「いや、それそうだけど、なんで使わないの?」
「あれから出る水じゃが、少量な上に綺麗すぎる。味は格別じゃが・・・使い慣れておらぬ」
「だから使わなかったの?」
「うむ。使い道に迷ってしまうのだ。何よりアノ大きさで、一日に出来る量がこの器一杯が精々じゃからな」
「・・・思ったより少ないね? じゃぁ、違う方法を考えてあげるよ。 もっと純粋で、綺麗な水を作れるし、量も作れるからそっちが良いかな? いや・・・きっとあれは不純物が多すぎて目が詰まってるんだろう・・・前もって・・・」
「まぁよい。その件も進めてくれ。この集落は既にワシが知る限りの過去のどの集落よりも未知じゃ。お前からすると原始的とか評すが、ワシとしては良い方向にこのまま進んでほしく有る。尽力してくれると助かるが?」
「言われなくてもやるよ。僕自身、もっと生活を豊かにしたいからね。何よりいろいろ楽しいことをやり続けたいしね」
「そうか。わかった、その辺は願おう」
「はいよ」
結局食事の時間ずっと喋りまくった。
最後に急いで口の中に放り込んで、さっさと食事を終わらせた。
っていうかウウダギは話は聞いてるけど、さっさと食事を済ませてたみたいだし。
なんと言うかキッチリマイペースだなぁ。そこが良いんだけどね。
食事が終わりギギリカと少し料理の話をした後、
さて、次は何処に向かおうか考えていると、
ギュギュパにを先頭にして、
集団が僕に話しかけてきた。
「あれ?採掘場行くんじゃないの?オルギュスとか埋立地は?」
全部で五匹、
ギュギュパに、バルバル、ベネネズ、ヒュルル、オルギュスだ。
「いや、マガを作るって話だったろ?憶えてないのかい?」
ああ、そう言ったっけ?
もっと先立ったような気もするんだけど・・・。
「そう?今からやるならやるけど・・・」
「何だい?しりごみかい?」
「いや、2日後にはもしかしたら合流するわけでしょ?」
「・・・ああ、確かにそうだねぇ。それがどうしたんだい?」
「手が開いてるなら一日くらいは体動かしておこうかなぁ?って思ったんだけどなぁ」
「・・・やり合うのかい?それは避けるんじゃな方のかい?」
「まぁ避ける為にこっちから迎えにでちゃおうかと思ってね。同伴者見つけたかったんだ」
「ふーん。 バルバルお前ついてってみるかい?」
ギュギュパにが突然バルバルを指名してきたけど・・・。
正直苦手なんだよなぁ。
結構頑固なイメージだし、
何よりノッてる時のバルバルは口調から態度からガラッと変わるみたいで、
コントロールできそうにないです。
「えっ?・・・流石に俺で良いんですか?」
「ポンピカに一番絡んだのはお前だろぅ?なのに余り最近じゃ会話もしない。あたしゃそれじゃダメだと思ってたんだよ。どうだい?」
「ギュギュパに様がそういうのでしたら・・・」
ずいぶん嫌そうな顔をするなぁ。
バルバルが前に出ようとした時、
ギュギュパにの後ろから、オルギュスが押しのけて出てきた。
「俺が同伴します。良いですか?」
「オルギュス?大丈夫かい?尻尾がまだ生えてないだろう」
「ええ、大丈夫です。最近、尻尾がない状態が染み付いており、この際尻尾はいりません」
「・・・尻尾がなきゃ逃げれないんだよ?良いのかい?」
「かまいません!」
今僕はスキクの尻尾の利用方法について一例を知った。
逃げるために自切してトンズラするためのものだったの?
まぁ・・。普通のトカゲもそう使うけど・・・。
それで良いのかなぁ?
まぁ、僕的にもバルバルよりヒュルルやオルギュスの方が話しやすい。
オルギュスは尻尾なし仲間だしね。
そう言えばシシブブは綺麗に生えてたなぁ。
早くないか?
もしかして、不思議パワーが牧場じゃなくシシブブの尻尾に入っちゃった?
そんなわけないよね?
「まぁ、そういう事だねぇ。オルギュスでいいかい?」
「えっ?僕に選択権あったの?」
「当たり前だろう。で?残りのヤツでマガの作業を進めれるかい?」
・・・動力源が水車、しかもエアーポンプを作らないとダメだしなぁ。
まずは手頃な銅辺りからはじめて金属になれさせよう。
その後、鉄の精製所を作ろうかな?
「ちょっと待って、鉄精製の前に金属に慣れてもらいたいんだ。だから、簡単に小さい炉とコークスだけで作れる銅から始めよう。作り方はウウダギが知ってる。ウウダギに任せちゃっていいかな?」
ウウダギを見ると、コクンと小さくうなずいた。
「じゃぁ、オルギュス以外はウウダギについて言ってくれる?」
「あいよ。 じゃぁ、ウウダギ行こうかい」
「うん。スイシャ行く。近くで作る。水無いとダメ」
「へぇ。水がないとねぇ?」
そんな事を話しながら、オルギュスを僕の元に残し、
五匹で水車の方へと向かうのを見送った。