ンダンダ探しと謝罪したい。
「ウウダギ。次はンダンダに会いに行こう」
「うん」
「畑も凄いことに成ってるんでしょ?」
「凄い?普通」
そうか、そうだった。
ウウダギは普通じゃない状態しか知らないから普通の基準が違うんだった。
・・・って事は、普通じゃないって事だね。
理解しました。
「畑近いんだよね?」
「う〜ん。近いけど遠い」
謎掛け?
なんか掛けてた?
「近いの?遠いの?」
「近い。遠い」
理解が出来ません。
でも多分理由はあるんだろう。
行けば分かるさ。
「最初に作った畑の場所じゃないんだよね?ギギリカがそんなこと言ってたよね?」
「うん。でも同じ場所・・・。でも遠い」
わかんない。
「方向は合ってるよね?」
「うん。合ってる」
方向が合ってるならいいかなぁ・・・。
ところで、ンダンダには迷惑掛けてないよね?
掛けるところが想像つかない。
「ンダンダは精霊さんの迷惑被ったかな?」
「う〜ん・・・。普通」
わかんない。
なにが普通?
まぁいいか。
畑に着けばいいんだしね。
製材所から結構すぐに畑には着いたんだ・・・。
ぶっちゃけ、製材所から見える距離にあるんじゃないかな?
製材所の周りの滝や川、岩や木々で塞がれているだけでね。
製材所から少しの距離で開けた場所について、
一番最初に思うこと・・・。
あぁ・・・やっちゃってるなぁ・・・。
・・・まぁ、分かるよ。
ウウダギが言ってるその、「近くて遠い」理由。
謎掛けじゃなかった。
畑は近いんだよ。
畑はね。
多分ンダンダが居る場所が遠いんだ。
取り敢えずなんでこんなに広い場所を作った?
どうやった?
正直、ココを広げる労力があったら、
埋立地の建築手伝ってくれればいいのになぁ・・・。
どんだけ広いんだよ。
じーちゃんの持ってる畑と田んぼ合わせてもココまで広くない。
どう見ても一角が果樹園みたいな場所があったり、
まぁ、青々と茂っている芋類だろうなぁ・・・その植物。
それに豆類だろうと思われる蔓科の物が、
3メートルはある支えにびっしり巻き付いた列が一角を占めていたり、
彼処は、お米の木だね。
前見たときは2メートル無い位の高さでアレだったんだけどなぁ。
今見てるの幹が結構太くなってる。
高さも多分こっから見て正確じゃなくとも4メートルはある。
二階建ての家の天井くらいの所まで伸びてるんだ。
しかもひと株じゃないそれが等間隔に連なってる。
・・・これ収穫するのってンダンダ一匹って事無いよね?
一日で収穫は絶対ムリだよ。
じーちゃん家に言った時、
「悟、手伝え」って言われて、何か色々やらされた気がする。
気がするっていうのも、いまいち記憶にない。
大したことやってないからなんだけどね。
それでも疲れたっていうのは憶えてるんだ。
・・・それにしても広いなぁ。
さて・・・ンダンダはどこ?
「ンダンダは何処?」
「多分あっち。小屋ある」
小屋もあるのね。
なるほど、って事は収穫した物を保存する施設も・・・、
これほぼ確実にウウダギなら設計してるなぁ。
冷蔵保存かな?
それとも乾燥かな?
長持ちさせるんだよね?
乾燥かな?其の方法しかウウダギは知らないはずだ。
畑のあぜ道をひたすら歩く。
しばらく歩いた。
っていうか歩いていて気づいたけど、
この土壌、畑の場所はもうフワッフワ。
絨毯とかよりも柔らかい。
足が取られて歩きづらい。
更に果樹園の横を通ると、
今度は地面がわりと硬めで、
しっかりした土壌のようだ。
作り分けしてるのかな?
それともプンタパワーの影響かな?
プンタと話した時、確かあのトーテムの影響でって言ってたはずなんだけど、
どう見てもトーテムの範囲外なんだよね。
どんな仕組みなんだろう?
既に以前あった畑は、
現在の畑の端っこの一角でしかない。
そして、そこにトーテム群があったわけだから、
ココではないのは確かだ。
目で見てもトーテムはない。
そうなるとプンタパワーが関係してないってことかな?
まぁいいか。
最近「まぁ、いいか」が心の中の口癖だ。
だって、今考えても仕方ないんだもん。
考える材料がない。
これはコレとして憶えておくしか無いだろ?
さてさて、ウウダギさん?
まだ小屋まで距離ありますか?
チロッとウウダギを見ると何やら悩みながら歩いている。
急に止まって周りを見てみたり、
匂いをスンスンしてみたり、地面をジーッとみたりして、
「あっち」とか「こっち」とか言ってる。
僕はわからないので、ウウダギの後に着いていくしか無い。
それにしても、のどかだなぁ。
なんていうか見たこともない虫が飛んでいたり、
小さい小動物がウロウロしてたりするけど、
植物に悪さをしてる雰囲気が一切ないんだよね。
葉っぱが枯れていないし、
虫食い状態でもない。
葉っぱに毒でもはいってるのかな?
そんなことさえ考えてしまう。
まだ歩いている。
結構、時間がすぎてるんだけどなぁ。
このままだと採掘場には寄れないなぁ。
今日はここで打ち止めかな?
そんな事を考えた時だ。
ウウダギがビタッと止まって、
僕の方をジッとみて、こんなことを言う。
「ポンピカ。 ンダンダわかんない」
なるほど。
迷ったんだね?
ンダンダの場所が掴めなかったのかな?
それとも小屋の場所が分からなくなったかな?
「取り敢えず小屋の位置はわかるの?」
「分かる、少し歩く、あっち」
指差した方向に少し黒い影がある。
建物だ。
アノ大きさは本当に小屋だね。
僕もスキクの端くれなので、まぁ、目がいいわけだ。
でもこれ、一キロはあるからね?
あそこまで、歩くの?
ウウダギは元々体力がない。
無いんだけど、僕と一緒に成ってから随分体力がついたんだ。
同い年のデデンゴには全然かなわない。
筋力もない。
でも、3週間ぶりに会ったウウダギは随分体が出来ているようで、
まぁ小さいわけだけど、それでも今じゃ、
普通の成体スキクよりは少し劣るくらいの体になっている。
雌って言うことも考えれば、許容範囲だろう。
本当によく育ってくれたなぁ。
嬉しい。
感慨深く、ウウダギの挙動を見ながら後を着いていく。
まぁ、不格好だけど、木造の小屋がある。
ドアが引き戸。
なんでスキクはドアを引き戸にするんだろう?
今度、ウウダギに聞いてみよう。
どうせこれもウウダギ設計だ。
外から小屋の雰囲気や様子が見て取れる。
明らかに誰も居ない。
ンダンダは多分仕事でどっかに行ってるんだろう。
この広い畑の何処に居るのかが全くわからない。
「ウウダギ。この小屋で待ってれば、ンダンダ戻ってくるんじゃない?」
「小屋。 あまり使わない。 ンダンダ忙しい」
なるほど。
そもそも好きくはそこら辺で寝たりするからね。
つまり外が家みたいな生態だからなぁ・・・。
家に居つくってことがないのかもしれない。
でも集落では、ハンモックを使って定位置で生活したりする。
ふむ、僕は前世の習性というか中身が人間だから変には思わないけど、
根っからの好きくはもしかしたら考えが違うのかもしれない。
まぁ、小屋の使い方だけ見て、それを考えても仕方ないんだけどね。
さて、ウウダギとンダンダ探しだなぁ。
「ンダンダの匂いはわかる?」
「さっき、探した。居なかった」
じゃぁ、今何処に居るかわからないわけね。
スキクは嗅覚にも優れている。
人間以上に嗅覚は良い。
犬ほどではないけどそれでも細かい匂いや匂いの強弱、
それに方向というか場所的な連想が容易に想像出来るんだ。
人間、前世の僕でも、
誰かが屁を透かしたとしても大体コイツだ!と分かるのと同じ。
スキクは、それが結構広い範囲でしかも場所の特定まで出来るほどだ。
ただ、僕はその機能というか認識が違うためだろうか?
あまり機能しないんだ。
其の原因はきっと中身が人間だからだろう。
まぁ、ウウダギがいれば、不便には思わないしね。
今回は、その機能を使っても、見つけれなかった。
そうなると考えられるのはほぼ二択。
離れていてわからないか、
そもそもこの辺りに居ないかだ。
どちらも大きく分ければ居ないとなる。
ならば、どうするかといえば・・・。
「ウウダギ。ンダンダは毎日食事に戻ってくるよね?」
「うん」
「じゃぁ、その時に話せばいいかな?どうせ、精霊さんはンダンダに迷惑掛けてないでしょ?」
「・・・う、うん・・・」
言いよどんだぞ!
ウウダギさん?
何か知ってるの?
「ちょ・・・ちょっとまとうか?精霊さんなんかンダンダにやった?」
「うん」
素直に「うん」だってさっ。
正直なウウダギだから良かったよ。
そうかぁ・・・何かやったのか。
「なにやった?やらかした?」
「ンダンダの大切なヤサイ、全部食べた」
被害でてるじゃーん!
おーい!精霊さーん!
「精霊さん・・・随分酷いことしてるね?」
「畑、あそこ、掘り返した」
迷惑一つじゃなかった。
「もしかして、他にも?」
「うん。暇だと、イタズラする」
そーとーやらかしてそーだ。
どーしよう。
もしかして、一番迷惑掛けてるんじゃないか?
なんか申し訳ないなぁ。
「ポンピカ。探そう」
ウウダギが自発的に言うもんだから、
否定できない。
探すことに成った。
ただ、どう探せばいいかわからない。
取り敢えず、畑全体を歩いて見回るしか無いだろう。
ンダンダも作業しているならいつかぶつかるだろうしね。
小屋から東側には、100メートルも行けば森にぶち当たる。
どうやら区画整理の知識が浸透しているのか、
畑の形は長方形で、更に用途別に区分けしてるらしい。
ウウダギが言うなら間違いないだろう。
そうなると、長方形かぁ・・・。
今のはなしだとさ?
一番長い辺が残ってることになりそうだなぁ・・・。
つまり最低でも片道2キロ以上歩くみたいだ。
開けていてば、2キロくらいなら目で見つけれそうだけど、
流石に果樹園が視界の邪魔をする。
要は、歩いてぐるっと回るしかなさそうだな。
今日これで終わりのつもりだったけど、
これ、今日で終わらなそうだなぁ。
素直に集落で待ったほうがよくないか?
でも迷惑掛けてるんだよね?
暇だとちょっかいだすってどういうことだよ・・・。
子供かっ!精霊さん。
ウウダギがズンズンと先に進んでいっちゃう。
まぁ、速度は早くないけど、何か手がかりがあるわけでもないのに、
なぜそんなに真っ直ぐ歩くんだろう?
「ポンピカ。この草、新しい」
ウウダギが道すがら育てられてる最中のヤサイについて話し始めてる。
ただ、僕もはじめて見るタイプの草だ。
「これは?どんな味?」
「味・・・辛い。でも、面白い」
わかりません。
辛くて、甘いとか、
辛くて塩っぱいとかさ?
そういうのだったら、大体想像がつくけど、
味じゃない表現がついちゃうのは、どうかと思うよ?
まぁ、ウウダギがそう言うならそうなんだろう。
きっと面白くなる草なんだとおもう。
・・・。
「ウウダギ興味が湧いちゃった・・・。生で齧っちゃっていいかな?」
「ンダンダに怒られる」
だめだってさ。
仕方ない。
ンダンダと会った後に話せばいいか。
また歩く。
今日は、きっと歩数計で言えば、2万歩は歩いてそう。
長い。
もう昼になっちゃってて、お腹も減ってる。
そう言えば、昼食どうした?
まだウウダギも摂ってない。
昼食、食べたいなぁ・・・。
あれ?
「ウウダギ。もしかしてだけど、ンダンダは昼食摂りに戻ったんじゃないか?」
「・・・」ハッ!
パックリ口が開いてる。
気づいてなかったっぽい。
「・・・一度戻ろうか?」
「うん」
気を取り直して、集落に戻ることにした。
なんで気づかなかったんだろう?