人と話すときは目を見て話せ!と見知らぬ円柱
「ちょっとー・・・。ちゃんと聞いてくれないと困るんだよ」
”なんじゃ?さっきから・・・今話さんとイカンのか?”
まぁ、今が一番なんとなくいいかなとは思っただけなんだけどね?
「まぁ、今がちょうどいいんだよ」
”うむー。其の下りは今しがた聞いた。要点を言え。ワシは踊りに夢中なんじゃぞ?”
なんていうか。
スキクって、色んな意味でハッキリしてるんだよね。
まぁ良いけど。
「まぁ、要点言えばさ?なんでこの集落の周りだけ、いろんな変化が起こってるの?」
”・・・”
どうやら、的を得たようだ。
精霊さんの顔がこっち向いた。
しかも真剣な顔だなぁ。
「要点を言えって言ったの精霊さんだろ?」
”ふむ・・・。恐らくだが・・・以前に第一のプンタがこの地下に眠ると言っただろう?”
やっぱりそれが原因?
「聞いたけど、プンタがなにかしてるの?」
”しているわけではない。 が、成ってしまったと言い換えたほうが良いか”
何を濁しているんだろう?
それはともかく精霊さんは気づいたんだね。
なんで前もって言わない?
「で?」
”ふむ・・・。なんと言えば良いかのう・・・この辺りは第一プンタの所有だった所だ。それは知っているな?”
「それは聞いた」
”その所有が賊のというか、侵略者の手によって一度は手から離れたのだ。だから管理がされておらぬ状態が数千年続いておる”
・・・いま、ちろっと数千年ってきこえたよ。
ちょっとまてよ・・・。
人間って、二千年程度でエライ進歩したよな?
それが、海を越えてまで来る技術を持つ人間達が、
数千年も放置状態だった場合もう既にとんでもなく文明レベルに差が出てるんじゃ?
あれ?
心のどこかで、将来的には、人間の世界へいって色々やろうか思ってたけど・・・。
ここでその望みが潰えたか?
「・・・お、おぉぅ」
”ふむ。まぁ、手放された所有地だが、この時期になって何かが引き金と成ったのだろうのう・・・其の所有が戻りつつ有る状態なんじゃ”
色々ツッコミたいけど・・・。
話の腰を折るのはよくない。
「ふ・・・ふーん。なるほどねー」
”ポンピカよ。お前は理解してると思うが、普通は此のような変化が起こらぬ。だが、事実起きている。それについては、ある程度考察はしたのだろう?”
「ああ、したんだけど、精霊さん関連だと思ったんだ」
”ワシか・・・まぁ、ワシも関わっていないわけではないのか・・・まぁ、其れは良いが、どうじゃ?こんど、第一プンタに会ってみるか?”
・・・やっぱり生きてるの?
地下で?一匹で?
「会えるなら会いたいけど・・・色々聞きたいわけだしね」
”話が出来るかは、ポンピカにかかっておるな・・・なんせ、第一のヤツは随分と他の生き物を寄せ付けぬ。マガや石とばかり心を通わせよるからな”
言ってる意味が色々不明。
・・・でもどうやって会うんだろう?
「どうやって会うの?」
”想いと生命力を使って、飛べば良いのだが、空ではない地中へ飛ばねばならぬ”
なるほど、潜るのね。
「なるほどね。でも地中じゃ先が見えないよね?」
”だから、ワシが案内すると言っておるのだ・・・話は聞かんといかんぞ?”
なるほど、精霊さんに案内されるのか・・・不安。
まぁ、それでも案内が無いよりマシかな?
「じゃぁ、お願いできる?」
”うむ。任されよう”
よかった。
やっぱり話をしたおかげでなんだか進んだ気がした。
”・・・いつまでそこに居るのじゃ?ワシは踊りに夢中なんじゃが?”
ああ・・・そうか、精霊さんって、欲望に忠実なんだね。
そのままでいいや。
見てて面白いからね。
「ああ、そうだね。じゃぁ、今度いいタイミングで声かけてよ」
”うむ”
うむと答えるけど、手はシッシと僕を遠ざけようとしてる。
本当にスキクってのは、思った行動や言動が表面にでるね。
僕はさっさとウウダギの元に戻り、
皆の宴をウウダギと堪能した。
中にはパレンケの音楽が気に入ったんだろうか?
ウウダギも踊りだしたりしたんだ。
本当に可愛かった。
ぴょこぴょこ足があがったり、
手が、クイクイ振られて、まさにぬいぐるみみたいな感じだったなぁ。
本当に幼い子どもを見てるような感覚だった。
其の夜は結構遅くまで、宴が催されることに成った。
皆、予定していた事は全部そっちのけで楽しんだようで、
なんと言うかストレスが解消されたみたいだなぁ。
集落の皆が笑顔だ。
新参のヴァレヴァレも笑顔で騒いでいた。
楽しそうだった。
宴の途中で、ウウダギが眠くなってしまったので、
僕は皆に其の旨を伝えて、さっさと就寝に着くことにした。
夜中。
まぁ此のタイミングで何かが起こるとなれば、
大体は精霊さん関連だ。
例にもれず、精霊さんに魂だけ起こされたわけだけど・・・。
「・・・さっきの今で行くの?」
「うむ。早いほうが良いかと思ってな」
「それって、プンタも知ってるの?」
「ふむ・・・。良い所に着目したな?プンタから呼んでこいと言われたのだ」
「なるほど・・・。でもこの状態だと考えてる事とかまる聞こえだろ?」
「そうでなくては困る。むしろ第一プンタは他の生物に会う事を極端に嫌うのだ」
「ふーん・・・引きこもりか」
「なんだその”ヒキコモリ”とは?」
「プンタのようなヤツのことだよ」
「ふむ・・・まぁ良い付いてこい」
精霊さんの後を付いて、一瞬で避難所までたどり着く。
まぁ、魂だけの状態だと、速さの感覚がついていかない。
知ってる場所へは、時間を掛けず一瞬で移動出来るんだからね。
ついた先ってのが避難所の丘なのは、
前に精霊さんが此の下にプンタが居るとかなんとか言ってたからわかる。
今、目の前には、丘の天辺にある石舞台の所だ。
まぁ、平たい石が有る場所だけど・・・。
ここからどうするんだろう?
「ん?こっから入るんじゃ。ここが入り口じゃからな」
「入り口?入れるところはないよ?」
「?何を言っておる。ヴァンに通れない場所など殆どないのだぞ?」
「・・・なるほど」
精霊さんがさっさと石舞台の上に登る。
手招きしてるので其の隣へ。
「では、ワシの手を掴み離れぬようにな?」
「離れたら地中に取り残されるのかな?」
「そうじゃな。まぁ、すぐに戻れるじゃろうが、圧迫感はかなりのものじゃ気をシッカリ持つことじゃな」
「なるほど」
僕は嫌々、精霊さんの手を握る。
「・・・ポンピカよ・・・・。 まぁ良い。行くぞ」
「はーい」
返事をした瞬間、辺りがズバーっと下から上へと黒い幕が上がってきた。
同時に物凄い質量が僕の体の中を通過する感覚があって、
肉体は未だに木の上で寝てるハズにもかかわらず、
吐き気とも言えない、窒息感とも言えないなんと言うか複合的な感覚が全身を駆け巡る。
正直気分の良いものではなかった。
色々な圧迫感はあっという間に過ぎ去った。
丘の平たい石舞台からここまでどのくらいだあったんだろう?
精霊さんの合図からあっという間だ。
ただ、不快感とそれが一瞬で開放に向かう爽快感が同時に襲ってくる。
「うむ、着いたぞ」
「・・・凄い感覚だった」
「うむ。慣れねば気が狂ってしまう者もおるからのう」
・・・始めに言ってほしいなぁ。
「はじめに言うては、試練にならぬであろう?」
「これ試練だったの?」
「うむ、ここまで耐えたのは、正直ポンピカがはじめてじゃなっw」
「いや、僕が初めてじゃないでしょ?精霊さんが一番始めだったんじゃない?」
「・・・そうとも言えるか・・・まぁ、これも旧き者が用意した物じゃからな」
「なるほど」
「さて、ここからは一匹で進むことじゃ。ワシはこの先へ進めぬ」
「えっ?最後まで案内してくれるんじゃないの?」
「ワシはこの試練の道を通れぬ。それ程の力はない。別口の特権と言うやつを利用するしか無いのじゃ」
「・・・じゃぁ、僕もそれでいいんじゃない?」
「何をいておる?自力でプンタへ目通らねば、意味がない」
「そういうものなの?」
「それ以外にプンタがスキクなどと顔を会わせるような事はせぬ」
「結構気位が高いね」
「・・・プンタじゃからな・・・己のやることが第一であるのじゃ」
「なるほど・・・つまり、この先一匹で進まないとダメなんだ? しかも、試練なんだ?」
「うむ」
「じゃぁ、今日はやめようかなぁ・・・明日も忙しいし」
「ここまで来てそれはなかろう?」
「でもでもだってー」
「其の下りはワシが昨日やったやつじゃ」
「知ってる」
「グダグダ言わず、さっさと進むんじゃ!しばらく時間はかかるからのう。ウウダギが心配せんようにワシから話しておこう」
「時間かかるの!?それこそ初耳なんだけど!?」
「仕方なかろう?既に夜明け近くじゃ。間もなくウウダギも起きよう・・・心配は掛けぬのじゃろ?」
「・・・ウウダギにはちゃんと言っておいてよね?何時も此の状態見ると”死んでる!”って騒ぐんだ」
「はははwそれは傑作じゃw死んではおらぬが、死んでるとはまさにw」
「笑いどころがわかりません」
「・・・う、うむまぁなんにしても先に進むほうが良かろう。お前が知りたい事もこの先に有るのpは間違いない」
「・・・わかった。進もう」
そう言って、僕は周りを見渡す。
ほぼ暗すぎて、夜目さえ効かない。
どーしろっていうんだよ。
どっちいけばいいの?
「さて、ワシはウウダギを安心させに戻る。ポンピカよ気をしっかり持っておれば、大事にはならぬから安心せい」
「・・・それって・・・」
「では、先に戻ろうかのう!はははは!」
そこまで言うと、サッと上の方へ流れるように消えていった。
ついでに聞き捨てならない言葉を吐いていった
「ワシの可愛いウウダギよ!まっとるのじゃぞぉ〜!おほぉっw」
だってさー。
・・・次会ったら取り敢えず一発殴ろう。
ウウダギは僕のウウダギなんだからねっ!
ってのはまぁいいとして・・・。
ふむ、こうやって真っ暗な中、
星明りもないと幾ら夜目が聞くと入っても見通せないなぁ。
・・・この状態って術使えるかな?
取り敢えず、こういう時のために光が必要だよね?
・・・光って言えば、術の中では陽の気を集めて、
陰の気に言霊や呪詛を用いて、陽の気を利用する方法のが有ったはず。
確かじーちゃんは”幻光”とか言ってたかな?
何でも似たような現象が墓場やなんかで起こることが有るってやつだ。
其の時に見るのは”人魂”とか”鬼火”とかいうらしいけど・・・。
まぁ、やってみるか。
気を集めるのは慣れている。
右手に陽の気を集める・・・暖かく感じる。
左手から陰の気を体内へと取り込む・・・これを言霊。
要は言葉の意味に力というか、ソレがそうなんだという強烈な思い入れをする。
意味を力にするには、一番手っ取り早い方法が思い込みや思い入れなんだ。
ソレがそうであると言う自己暗示にも至る程の強烈な思い込みは、
周りの認識さえ歪めることがあるって話だ。
陰の気に思い込み・・・。
光がある。
光は物を照らす。
現れる映し出す・・・。
その思い込みを乗せて陰の気を左手から右手へと流す。
僅かな陰の気が右手の陽の気へとまじり始めると、
あら不思議、少し淡い光が灯ったじゃん。
面白いなぁ。
じーちゃんの話では、精霊さんにも話したけど、
世の中は陰陽なんだそうだ。
全ては、そこの理解から変わるらしい。
事実、こっちの世界ではその気自体が効果を表す。
ある意味魔法と言えるだろうなぁ。
そんな事を考えている内に右手の中の”幻光”が消えてしまった。
・・・持続時間短くね?
やり方が間違ったかな?
もう一回やってみよう。
もう一回やってもすぐに消えてしまった。
ただ、気づいたことがある。
光が消えるのは陽の気が陰の気に押されて、
最終的には陽の気が逃げてしまったためだ・・・。
つまり、陽の気は継続的に集めなければならないわけだ・・・。
持続的な気の集め方って習ってないなぁ・・・。
まぁ感覚的には分かるからやってみよう。
試行錯誤がしばらく続いたけど、
結果、”幻光”は灯った。
淡い光から結構明るい光で、継続的にだ。
ただ、其のたびに継続して、
陽の気と僅かな陰の気を集めたりして流してやらないといけない。
ぶっちゃけ、結構面倒だけど、光が無いよりマシって感じかな?
さてさて、今僕が居る場所はすごく広い場所のようだ。
近くにギュギュパニが10匹いても抱えられそうもないほど大きな円柱が立っている。
上が見えない。
どのくらい高いんだろう?
”幻光”出てらしても先が見えない。
・・・まぁいいか。
これ、先に進むんだよね?
先と言われても右手に進むのかな?
左手?真っ直ぐかな?ヒョッとすれば後ろかもしれない。
ふむ、困ったね。
それにしても、この円柱・・・多分柱だろう。
前世でアニメとかに出てくるような、なんと言うか・・・柱だもん。
そして、材質についてだけど、
全然見当がつかない。
カーボン素材にも似てるし、だからといって、石材にも似てる。
光沢はそれ程あるわけではないけど、顔が映らないほどの光沢感はある。
色は、黒いんだろうか?若干青みがあるね。
ん?今気づいたけど、この柱にびっしりと楔形の文字っぽいものが彫られてる。
要所要所にカクカクの絵っぽい彫りもあるね。
この柱って文字を書いてあるモニュメントなんだろうか?
どこから読めば良いんだろう?
まぁ、楔形文字なんか読めないけどね。
それにしても不思議な素材だなぁ・・・。
重量感が伝わってこないのに見た目は重そうなんだよね。
不思議だなぁ・・・あっ!そんな事考えている場合じゃなかった!
先に進む件だった・・・。
さて、どっちに行こうかな?
壁があるなら壁を見つけると楽だなぁ。
取り敢えずわけも分からず精霊さんに連れてこられたけど、
理由なくではないだろう。
此の辺りがスタート地点であれば、きっと手近な場所に壁があるハズ。
四方へ今の場所を拠点に一定間隔で進めばなんとか把握できるかもしれない。
ソレで行こう。