プロローグ
8月の熱い日差しが照りつける中、俺、安田善事は外回りの営業のためひどい汗をかきながら住宅街を歩いていた。
生きるのが面倒だ、この日本に生まれて成人を超えてからは仕事をし家に帰り簡単な飯を作って惰性でTVを見て寝る。そんな生活をずっと続けている。
ストレス発散のためゲームをしたり、動画を見たりするが、やりたいことがないから惰性でやってるだけだ。
最近動画投稿サイトで見た「やりたいことをやろう!」なんて簡単に言う有名な実業家の言葉が胸に刺さってしまった。
あ〜子供の頃はやりたいこと、いや興味があるものすべてのことに目を輝かせて全力を出せていたと思う。
ただ俺はとにかく飽き性だった。しょっちゅうやりたいことを変えて極めると言うことができなかったんだ。
「ふ〜とりあえず後1件くらい回ったら休憩でもするか」
とある一軒家の目の前に立ってインターホンを鳴らす。
「はーい」
女性の声が聞こえた。
「あ〜どうもわたしく株式会社アストラという会社の安田と申します〜。最近流行りのBIIT式携帯インビジのご紹介に来ました。」
BIIT式携帯、十数年前に開発された技術 Brain implant information terminal 略してBIIT
脳に埋め込むマイクロチップの情報端末携帯だ。
さすがに発表された当時では脳内に埋め込むと言うこともあり、抵抗感があったようだが有名人や有力者などがこぞって宣伝することで、一般市民が飛びつき爆発的に復旧した。
リアルタイムに知りたいことをいつでもリサーチできる夢の機械だ。
それからはスマートフォンなど使用していた時代以上の情報社会になった。
「はぁBIITですか?使ってますけど」
「あ〜いえいえ今までのBIITと違ってこのインビジは値段もお安「いえ結構です」」ガチャ!
こんなもんだ、BIIT式携帯の復旧率は子供を除いたら90%を超えるらしい
その上会話の最中にも誰でも情報を得ることができるため皆判断が早くなってしまった。
そんなご時世に訪問営業など難しいに決まっている。
やばい泣きそう。
もう面倒だ何もかもやめちまおうかな〜と考えていた時にそれは起こった。
いきなり地面のコンクリートが裂けた。
ん、裂けた?裂けてる?ナニコレ
浮遊感とともに恐怖がこみ上げてくる。
え、な、死ぬの?こんな、なに、もして、ないの、に
目の前が暗くなりそこで俺の意識はなくなった。