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スター誕生

掲載日:2019/05/05

「みんな!今日は来てくれて本当にありがとう!


次の曲がラストになります!


聞いてください『永遠の夢』」




「「「「「「「「「「わああああーーーっ」」」」」」」」」」






こうして無事に公演は終了した


波乱万丈のトラブルがあったけど、無事に終了して良かった








時間を6時間ほど戻す


あれは今日の朝のことだった




「え?飛行機が止まった!?」


ホテルのレストランに朝食 ~特設ホールでバイキング~ を取るために1階まで下りて行くとマネ(マネージャー)さんが血相を変えて教えてくれた


手に握ったスマホが潰れないか、と心配するほど握っていた


まあ、こんな一大事はめったにあるものではないしね?






なんでも東京の飛行場でエンジントラブルのため飛行機が滑走路で立ち往生したのだとか


おいおい勘弁してくれ


マジで思った


あたしのコンサートはどうなるんだよ


計6か所での全国ツアーが始まって三か所目でいきなりのトラブル発生だ





・・・ツアーというものは魔物が住んでいる、というのは業界あるあるだ


神様はわたしのことが嫌いなのか?


そう思った


ツアー前に神社でお賽銭入れてお参りしたはず


神社じゃなくって、お寺にした方がよかったのかな?






全国ツアーというのは毎日やるものではない


いくらなんでも機材の設営がすぐにできるものではないからな


おまけに平日よりも土日の休日の方がチケットが売れやすい


・・・平日にやって売れ残ったら大損害だからな、ホールの賃貸料は結構高いんだよ





だから土日の午前と午後に1回づつの計4回で元を取ろうとする


・・・アイドル(わたし)の疲労は全く考えていないな、アイドルをなんだと思っているんだと愚痴りたい





アイドル(わたし)は金曜の早朝に現地入りをしてラジオとテレビをはしごして1日中宣伝をする


ラジオは計10番組、TVはスポットとインタビューを含めて計6番組だ


朝から晩まで延々と笑顔で宣伝すると顔が引きつってくる





ついでに(たいして美味しくない)御当地グルメを


「美味しく頂きました(ニコッ)」


とか言って地域密着のコメントを言って高感度を上げるという営業付き





・・・働き方改革はどこに行った!、と大声で言いたいぞ




昨日は宣伝だけで一日が潰れたね


夜になってようやく解放されそこそこのグレードのホテル ~売れてきたのでビジネスホテルはちょっと前に卒業した~ でぐっすり寝た




朝になって


さあ今日は本業のコンサートだ!歌いまくるぞ!


と歌だけ歌っていれば良いということに喜びながら朝食を取るために1階まで下りて行った


そうしたらこの修羅場が待っていた




昼の公演まであと6時間


機材はすでにトラックで昨日のうちに運び込まれている


その設営スタッフも今日の早朝というか夜中から設営するために昨日の夜から現地入りしている


ここまではOK




残りのバックダンサーと演出家さんとか、当日からでも良い人間は経費削減のため朝一の飛行機で来ることになっている


その人達が全滅だ


幸いなことにバックバンドのみんなはすでに現地入りしていた


地元なのでこの機会にライブハウスでコンサートするのだそうだ


先週の私のコンサートが終わった途端、地元に戻って凱旋コンサートをしていたそうだ




・・・こんな幸運は普通はあり得ないからね


楽器の移動はスタッフ任せでチューニングもスタッフ任せだよ


バンドマンは最後の仕上がりの確認するだけ


だから当日入りだよ


2時間も延々と演奏 ~それもノーミス必須~ だから余計の仕事はしない、というかさせて貰えないんだよ


地元開催でよかった




そうすると足りなくなるのがバックダンサー



え?


後ろで踊ってるだけだからいなくてもよい?





違うんだな


そりゃ下手な踊りをされるくらいなら居ない方が良い


でもそこそこうまいバックダンサーがいると映えるんだよ




コンサート会場のステージは広い


動いているのが私とバンドマンだけだと寂しいものだ


いくら私が歌っても隙間は埋められない


・・・埋められるのは大御所だけだね






マネ(マネージャー)さんが


「(あとのことは私がするから朝食を)食べてきて」


と言ってくれた





わたしは素直にバイキング会場に行くことにした


マネさんを信じて後のことは任せる


わたしはわたしの仕事をするだけ





朝食を食べる


昼夜のコンサートができるように体調管理をする


ボイトレ(ボイストレーニング)をしてコンサートで100%の力を出せるようにする


柔軟体操をしてコンサートでキレッキレのダンスを踊れるようにする


コンサートの手順を覚える


それが今のわたしの仕事だ





マネさんもうちの事務所の社長も、コンサートスタッフもみんな頑張ってなんとかしようとしてくれている


無事にコンサートができると信じて待つだけ







ホテルで朝食を食べた後、身支度をして ~今日も止まりだから荷物はそのまま~、会場入りをした


居ても立っても居られないのでいつもよりも早く入って控室で待つことにした





<リリリ~ン、リリリ~ン>


いきなりスマホが鳴った


画面を見るとボイトレ(ボイストレーニング)をしてくれている先生からだった




「はい、サキです!お待たせしてすみません!」


思わず立って頭を下げながら電話に出る




・・・礼儀に厳しい先生なんだよ、つい目の前に居るつもで電話にでちゃう


他の生徒も同じだって言っていた






「おはよう、サキさん、そちらは大変そうね」


生徒だからといって横柄な態度はとらない


生徒にも丁寧な言葉使い


でもそこが恐ろしい


・・・だってボイトレになると鬼になるんだもの





「はい!現在、スタッフの皆さんが頑張って下さっています」


わたしも丁寧な言葉使い ~いつもの若者言葉は使わない、使ったら一発でアウトだから~ を返す




「それでバックダンサーの目途はついたのかしか?」


先生の質問にまだらしいですと答えた




・・・しかし先生は何でも知っている


わたしに盗聴器でもつけているのかと心配になる


いや、業界の人脈が凄くって連絡がすぐにいくだけなんだろうけど




「そちらには私の知り合いが居ます、番号を教えるので一度(電話を)かけてみたらどうかしら?」


先生が言った




なんでも東京に出てきた時にだけだけど先生がレッスンをする生徒がいるのだとか


一応、地方アイドルでデビューしているらしい


ああ、だから先生は『知り合い』と言ったんだ、と思った


一人前扱いだね


デビュー前の子なら、教えている子、と言って一段低い扱いだからね


業界用語では私の妹弟子になるわけだ




・・・先生の前では言わないよ


だって『デビューしたのならばもう一人前と扱います』だから


妹弟子だからといって顎で使おうものなら・・・考えたくないです(ガクガク)





「ではごきげんよう」


そう言って先生が電話を切ろうとするので


「はい!ありがとうございました!」


頭を下げながら最後の挨拶をする






そして疲れ果ててイスに座る


・・・電話一つとっても礼儀に厳しい先生だからね


もうコンサートを終えた気分だよ




っと、そんなことは言ってられない


マネさんに電話、電話





先生から紹介を受けたけど話をしちゃっていいか?、ってね


この業界、礼儀というかケジメが大事


一度の不義理で消えたアイドルは多いからね




マネさんが社長とかと話した結果、バックダンサーがつかまりそうもないのでOKが出た


・・・マジやばい雰囲気


断られたなアウトっぽい






<ルルルルル>


先生から教えられた番号に電話をしたのだけど着信音だけが鳴り響く


早く出て欲しい





「はいお電話ありがとうござます、フラワーズのヒロです、お待たせしてすみませんでした」


返事が返ってきた


ああ、この丁寧な受け答え


先生の生徒だわ


そう思った


・・・この一大事にこのボケた反応、あたしのあたまは大丈夫かね




「(ボイトレの)篠島先生の生徒のサキです、先生から紹介されました・・・」


現状を説明して、可能ならばバックダンサーをして貰いたいとの要請をする




「・・・」


返事が無い


こりゃダメか?


そう思った時


「了解しました、フラワーズ5名、喜んでバックダンサーをさせていただきます」


との返事が来た


よかった!



隣で聞いていたマネさんは飛び跳ねて喜んだ後、事務所の社長に電話をするためスマホを持って廊下に出て行った





「もし(5人で)足りないようでしたら、よろしければウチのウイズ(二軍)をお使いいただけないでしょうか?」


私の妹弟子が言ってきた


デビュー前なのですがバックダンサーの経験は多いです、だそうだ





コンサートの三列目なら多少、踊りがズレても問題ない


っていうかだれもそこまで見ていない



一列目のアイドル(わたし)


二列目のフラワーズ(妹弟子とその仲間達)


三列目に二軍の子達


になる


実際に観客から目が行くのは二列目までだ


三列目はその前の列の人間に邪魔されてろくに見られないのが通説だ


・・・下手すぎれば三列目だろうがバレバレなんだけど、そんなことはないよね、多分?




これでコンサートができる


そう喜んだんだけど、そう簡単に問題は解決しなかった


だってこの時点で開演4時間前だもの





同じ市内にいるとはいっても臨時のバックダンサーが来るまでに時間がかかる


フラワーズ5人と2軍の20人の全員が時間に間に合うとは思えない


また、到着したからといってすぐに踊れるわけではない


全12曲の振付を覚えることと、演奏の順番、それとステージに入るタイミングと立ち位置、退場のタイミング


やらなければならないことがたくさんある


あ、バックダンサーの衣装を忘れいた






そう言えば振付の先生も飛行機だっけ?


だれが振付を教えるんだ?


・・・わたしは自分の分しか覚えていない






マネさんが青い顔して入ってきた


どうやら私と同じことを思いついたらしい





いちおう社長の方のOKは取れたとのこと


向こう(妹弟子)の事務所との調整は完了した、だった





一難去ってまた一難


何もできずに時間だけが過ぎて行くのに焦りまくった





そんな中、残り4時間というところで救援フラワーズが到着した




<コンコン>


ドアをノックする音がした




「どうぞ、入って」


誰だろう?スタッフか?そう思って声をかけた




「「「「「「失礼します」」」」」」


そう言って次々に人が入ってきた





入ってくるなり一列に並ぶ


いや人数が多いので三列だ




「先程は電話で失礼いたしました、フラワーズのヒロです」


先頭の少女が挨拶をしてきた


ああ、この子が妹弟子か




「こちらがリーダーのアユです」


そう言って隣に立つ少女を紹介してきた




「フラワーズのリーダーのアユです、本日はお声をかけていただきありがとうございます」


そう言って頭を下げる


それに合わせて総勢25名が頭を下げる



・・・体育会系というやつ?


私には理解でない世界だ





「お時間がないので僭越ながら私、ヒロがお話をさせていただきます」


踊りはウチ(フラワーズ)のミキがネットで有料配信されているコンサートの動画から拾いました


あと、バックコーラスはそこのヒロが拾いました


それをこれからみんなで覚えます


私はスタッフから歌の順番とか移動とか待機の場所とかの詳細を確認します


衣装についてはフラワーズ(うち)の手持ちの衣装がもうすぐ届きます


その中から仕える物をピックアップして使います


時間が無いのでこれからすぐに動きます


ヒロはここに置いておきますので連絡係に使ってください


他に何かありますでしょうか?


無ければこれで失礼いたします




そう言って頭を下げると他の者も頭を下げた





ドアに一番近い者がドアを開ける


開いたドアから一列になって部屋を出る


そして出た者から順に廊下に一列に並ぶ


リーダーのアユが廊下に出て頭を下げると他の者も頭を下げる


そうしてドアが閉まる





「・・・ナニアレ?マネージャー?軍隊?」


見てはいけないモノを見た気がしたので妹弟子に聞いた





「すみません、フラワーズ(うち)のリーダーですから」


妹弟子が済まなそうに言った


あれが普通らしい




・・・頭おかしいんじゃないのか


アレにバック(ダンス)を任せて大丈夫なのだろうか


そう思ったわたしは常識人(のはず)







<リンリンリン>


妹弟子の携帯が鳴った


「リハの用意ができたから来て!」


だそうだ





「なにそれ?さっき出て行ったばかりだよね?」


そう言うと


「リーダーですから」


妹弟子が肩をすくめていった


どうやらこれが普通らしい





いや絶対に違う


声を大にして言いたい


・・・今からキャンセルってできないかな?




ためしにマネさんに聞いたら『出来ない』って言われた


だよね





しかし気になったので妹弟子について行った


妹弟子が付いた途端、バックダンスのリハ(リハーサル)が始まった





・・・今回のツアー用にアレンジしたバージョンのダンスを踊っていた


オカシイのは妹弟子あんたもか!





後で聞いたら通常のダンスの練習の素材にわたしのツアーのバックダンスを使っているとのこと


有名な振付師の作品だから勉強になるんだとか


ちょっと素人には難しいがダンス担当のミキが一度収得してコツをみんなに教えているそうだ


ちなみにわたし以外のアイドルのツアーも同様に教材になっているとのこと


そこまではいい


『憧れていますから!』とおべんちゃらを言えばナアナアでなんとかなるだろう


・・・業界人なんておだてれば簡単に木に登るからな




ところがここからが問題だ


現役アイドルのコンサートを題材に選んだ本当の理由


地方へツアーに来た時にトラブルがあったりした時に代役ができるようにするため、だそうだ


言いだしっぺはリーダーのアユ




今まで100回以上、いろんなアイドルのコンサートをコピーしたそうだ


そんでもって今回の仕事を拾った、というわけだ





なにそれ?


頭おかしいんじゃない?!


叫んだわたしは間違っていない、はず





あるかないか判らない、いや絶対になさそうなものを無駄だと思ってもやるリーダー


それについていくメンバーと2軍


絶対に頭がおかしい





今回は全国ツアーのためにいつもの振付から結構替えてある


全12曲分


ツアーは先週から始まったばかりでネットへの有料アップは数日前


それを地元開催だからというだけですでに覚えて完コピ




ゲネプロ(直前の通し)は時間がないので詰めに詰めた


それでもコーラスの部分だけは心配なので抜き出しでやった





・・・歌担当の妹弟子ヒロが完璧にコーラスを合わせてきたのは判る


先生の弟子だもの


先生は厳しいからね


別名、月影先生、だもの




しかしド素人とまでは言わないけれど、実力が不足しているメンツを引っ張ってなんとか聞けるようにしていたのはどうなのよ


そう言いたい




演劇担当のマヤとやらは『舞台でのアドリブで慣れてますから』


楽器担当のエリとやらは『即興のセッションは得意ですから』


ダンス担当のミキとやらは『群舞で相手に合わせるのはデフォルトですから』


だと言っていた


・・・聞かなければよかった




唯一、リーダーのアユだけは『(ダンスが)ズレたりしたらすみません』と殊勝な事を言っていた


まともな人がいてホッとした


って、あんたが一番おかしかったんじゃん!




・・・なんかコンサート前に疲れたよ






まあ、イロイロあったけどなんとかコンサートは無事に終わった


え?


衣装の件はどうなった?


なぜかそろっていたよ


妹弟子達フラワーズだけでなく2軍の分まで!


それも今回のコンサートに合わせてしつらえたようなやつが!


・・・理由?聞いてないよ、っていうか聞けないよ!





当然ありますが、何か?


とか平気で言いそうだよ、あのリーダー





とりあえず昼の公演が終わったのでほっとした


飛行機で来る人達は新幹線やらタクシーやらで駆けつけることになっている


なので夜の公演はなんとかなる





・・・ほっとしたね


この24のCTUばりの集団と縁が切れるかと思うと







だから別れる時、思わず言ってしまった


「登っておいで!テッペンで待っているから!」





数年後、(フラワーズは)本当に登ってきた


そんでもってわたしを追い越す勢いだった





・・・言ったことを後悔したね

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