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拳撃のシンデレラ   作者: なまくら
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ブクマと評価がついてる・・・・・・

なんかすみません。こんなあほ話で・・・・・・

化物かぼちゃの実と汁があたり一面に飛び散ります。

ひときわ大きなかぼちゃの破片が、最後にごんっと仙女の頭を直撃しました。

かわいそうに、仙女にとっても大きなたんこぶが出来ました。


「 ・・・・・あの、いかがだったでしょう 私の腕前は 」


心配そうに問いかける「 灰かぶり 」。


あほの子な「 灰かぶり 」は、己が王子様と戦う資格があるかどうか、仙女にかぼちゃ割りで腕試し(テスト)をされたと勘違いしているのでした。


仙女が頭を抱えてうずくまったのは、たんこぶが痛かったからではありません。

いかがなのは腕前ではなく、「 灰かぶり 」の頭の中ではないか、仙女は口まで出かかった言葉を、かろうじてぐっと飲み込みました。


大切な友人だった「 灰かぶり 」の母親の言葉を思い出したのです。

彼女は「 灰かぶり 」について、こう語っていました。


〝 あの子は薔薇の朝露のように愛らしくて、健やかで、賢くて、なにより心根がとても美しいわ。きっと天使様が身体の弱い私を憐れんで、宝物を私に授けてくださったのね  〟


病弱だった彼女は、それはそれは嬉しそうに褒めちぎったのです。


〝 ・・・・・ただ、ちょっと言動がアレなところだけが心配だけど 〟


残念ながら、思い出にはオチがありました。


そして、母親の懸念どおり、「 灰かぶり 」はすこやかにあほな子に成長したのです。

アレの進行具合はちょっとどころではありませんでした。

重篤患者です。即入院のレベルです。


「 いえいえ まだそう決め付けるの早いわ 」


仙女は頭を横に振って不吉な考えを追い払いました。


なんといっても大切な友人の忘れ形見なのです。

幸せになってもらいたいのです。


それに、たとえ見た目は重症でも、快癒の可能性は残されているはずです。

きっと手遅れではないはずです。


仙女は気を取り直して、「 灰かぶり 」のぼろぼろの服に、杖の先でさっと触れました。


「 さあ ! 舞踏会は貴婦人の戦いの場。それにふさわしい、皆が目を見張るような最高の衣装になるよう魔法をかけたげよう ! 」


不安を追い払おうとするかのように、仙女は声を張り上げました。


「 戦い・・・・ !  最高の戦衣装 !? まだ見ぬ強敵たちが私を待っているのですね !  」


「 灰かぶり 」が希望に目をきらきらさせて、拳を握りしめました。


いろいろ不穏な言葉が聞こえましたが、仙女は一切聞かなかったことにしました。


「 灰かぶり 」のぼろぼろの服は光のヴェールに包まれます。

そして、ため息の出るようなすてきなドレスに変わったのでした


ほどこされたレースの細工、刺繍の見事なことといったら、遠いペルシアの職人でもかくやと思われるほどの素晴らしい出来でした。

髪飾り、チョーカー、袖口には、お揃いの薔薇を模した飾りと瀟洒なリボンがきらめきます。


胸元(デコルテ)は抑えめの慎ましい開き具合ですが、胸につけられたやや高めにあげた三角飾り(ストマッカー)には見事な透かしの花模様が絡み合っており、それと相俟ってかえって清楚さと透明感を際立たせているのでした。


そして上から下に流れるドレスのプリーツの品の良さときたら、フレスコ画でたなびく、天の雲を思わせるほどでした

真ん中からのぞいている白が基調のペチコートの模様は、天国の白い砂浜の風紋のようでした。


それらすべてが「 灰かぶり 」の控え目に開いた胸元や手首の白さを際立たせ、見る者に、ドレスの下に隠された新雪のような肌を想像させずにはいられないのでした。


まさに仙女の自信作です。


「 灰かぶり 」は目を潤ませ、信じられないというふうに、両手で口を押さえて立ち尽くしていました。  

それを見て、仙女はほっとしまった。


〝・・・ああ、よかった ドレスで泣くほど喜んでくれるなんて嬉しいわ。ちゃんと女の子だったのね 〟


・・・・・いえ、男の()という性別です


「 なんて素敵な衣装 特に腰つきが・・・・・ 」


ぼうっと瞼を染め、感嘆の息を吐き出す「 灰かぶり 」。


「 そうよ。わかってくれて嬉しいわ。これほど腰が細く見えるドレスは・・・・ 」


「 これはまさに武道の型の矯正衣装 ! 特に腰を強く束縛することで、過度のねじれを封じるのですね ! でも、そうするとどうやって技の威力をあげれば・・・・ 」


仙女の言葉に気付かないほど集中して考え込む「 灰かぶり 」。


仙女は開いた口がふさがりませんでした。


こんなに美しいドレスなのに、「 灰かぶり 」は外側にはまったく興味がなく、腰を細くするための下着(コルセット)やスカート両脇を膨らませる骨組(パニエ)のみに目をやり、しかも動きを制限することで正しい武道の型を学習させる矯正具だと勘違いして、いたく感じ入っているのでした。


仙女の苦労も水の泡です。


もはや重篤どころか、とっくに臨終し、冥府魔道を闊歩していました。

誰が見ても手遅れです。

こんなあほの子の面倒をどうやって見ろというのでしょう。


「 体重・・・・重心を移動して・・・・そうか ! 」


仙女が頭を抱えて悩んでいる間に、「 灰かぶり 」に武の天啓がひらめきました。


「 ・・・これが無拍子 ! 」


仙女の苦悩をよそに、またひとつ、あほの子が武の奥義に開眼しました。

ガラスの靴をほったらかしに、裸足のまま、武の頂きに至る階段をマッハで駆け登っていくのでした。


「 ありがとうございます。では、お城に行ってまいります。王子様 今()いに行きます ! 」


比喩ではなく、せっかちな「 灰かぶり 」は実際に裸足のままお城に走っていこうとしました。


「 ちょっ、ちょっとお待ち !!  まだ途中だよ 」


あわてて引き止める仙女。


「 はい わかっています。武の道は終わりなき坂道です。我いまだ坂の途中なり 」


「 灰かぶり 」はまったくわかっていませんでした。

さすがの仙女も我慢の限界で、とうとう大声で叫びました。


「 用意のほうだよ ! 」


「 ああ。ごめんなさい。私ったら気ばかり急いて恥ずかしいです。つい喜びで我を忘れてしまって 」


羞恥に身をよじって赤面する「 灰かぶり 」。 


「 移動のときは鉄下駄が必須ですよね !  日常生活これすべて修行。初心忘るべからず ! さすが仙女さまです。私、慢心しておりました 」


感動のまなざしで「 灰かぶり 」に見つめられ、仙女はめまいがしました。


このまま話が進むと、ガラスの靴でなく、鉄下駄を頼りに想い人を探す羽目に王子様が陥ります。


「 馬 ! 馬車 ! 御者 ! それと馬車別当(べっとう)だよ ! 」


いつまでたっても話が進まないので、ついにしびれを切らして仙女が具体的に叫びました。


・・・・・そして、ねずみを馬に、かぼちゃを馬車に、とかげを別当に、魔法で変えたのでした。


「 ・・・・で、後は、御者用の大ネズミを一匹用意しなと言ったはずだけど、あんたは一体なにを連れて来たんだい 」


魔法でつくりあげた、御者だけがまだいない、六頭だてのとてもとても立派な馬車の前に立ち、仙女がたずねます。


六人の馬車別当も馬の口をとって、おすまし顔で馬の横で待機しています。


「 私の友達でマスコットのフェレットさんです。なついて可愛いです 」


肩にのせた動物の顔を「 灰かぶり 」は優しく愛撫しました。


「 どこがフェレットだい。それはクズリだよ ! 」


仙女が堪りかねて つっこみました。


小熊によく似た野獣が鼻づらにしわを寄せ、しゃーっとあたりを威嚇しました。 

北国で悪魔とおそれられるのも納得の、実にふてぶてしい面構えです。


フェレットはヨーロッパケナガイタチが品種改良されたもの。

そしてクズリも一応イタチ科ではあります ・・・・・ただし戦闘力特化の。


大型肉食獣にも怯まず立ち向かう、後退のネジのはずれたいかれっぷりは、まさに「 灰かぶり 」の類友にふさわしいものでした。そのうえ「 灰かぶり 」は頭のネジまではずれているので、よけい始末に負えないのでした。



お読みいただきありがとうございました!

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