こ・く・は・く
最近、同じクラスの近藤しずかと……よく目が合うようになった。
近藤しずかは……僕と目が合うと、数秒間固まって、ぽっと赤くなったのち目をそらす。
背後から視線を感じる事だってあるから、やっぱこれって……気があるとしか思えねぇ。
彼女と視線が合うようになって、調度今日で一ヶ月になる。
毎日毎日、嬉しくて……カレンダーに印をつけてるから確かだよ。
カンカンと、チョークが黒板を滑る音を聞きながら、俺は頬を熱くして机三つ分向こうに座る、彼女の横顔を眺めた。
黒く艶やかな髪を後ろに束ねたその横顔は、目鼻立ちがハッキリしているとは決して言えない。
日本人特有のノッペリした顔立ちに、ふっくらした頬……。
けど、よくよく見ると普通にかわいい。
細い目は、切れ長でクールだし、低い鼻は小づくりでかわいいし、唇だってほんのりピンク色だ。……なんかそれは言い過ぎかなぁ? うっしっしっ。
好かれてるって思うと、意識しちゃうから……いけないや。
いやぁ、でもさ、やっぱ……かわいいよ。
どうしよ俺、告白しちゃうかな? いやいや、やっぱりここは彼女からでしょぅっ!
「終わりっ、ここテストに出るからー」
え?! マジかよ、聞いてなかったし。
やる気の無い教師が、チャイムの鳴る前に授業を終えた。
間も無く鳴った終業チャイムのあとも、俺はノートを必死で写す。テストは大切だもんね、授業はどうでもいーけど。
へっへっへっ、次の授業も楽しみだなぁ。
「やべ、間違えたっ」
近藤さぁ〜ん、早く告白してよぉ。
「いや違う違う、『連用形』」
俺は、こんなにも待ってるからさっ!
「ハートじゃねぇ、丸だ丸」
「おぃ、お前ブツブツきめぇぞ……」
隣の席の田中君が、机を気持ち向こうにずらして、そう言った。
「ごめんごめん」
「いや……。それより、呼んどるぞ?」
田中君の視線の先には……なんと! 近藤さんが居るじゃないっ。
俺はガタンと椅子を後ろにやって、できるだけクールに、教室の隅の近藤さんの元へ歩いて行った。
「な、何だよ? 近藤」
ぶっきらぼうな俺の声に、近藤さんは真っ赤っか。
「あ、あのね……」
やっぱアレだよね? コレって告白だよねっ。ズボンのチャック開いてるよとか、そんなの違うよねっ。
「あたし、森田君の……」
ちなみに森田は、俺の名だ! テヘ。
「後ろに憑いてる方が好きなの!」
「え?」




