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負け組奴隷生産職は『武具生成』チートで成り上がる ~無限に生産できる最強装備なら復讐も簡単です~ 作者:八神鏡
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第三十六話 過去は変えられない

「あなたが嗜虐的に笑った時、私はとても救われた気がしたわ。どんなに酷い扱いを受けようと、それで構わない……私はそれだけのことを、あなたにしてしまったのだから」

 セリスはそう言って俺に頭を下げる。
 そして彼女は媚びを売るように、俺の靴を舐めてきた。

「アーム……私はあなたの、奴隷です」

 だからこいつは逃げなかったと言う。
 逃げるチャンスがあっても、そもそも逃げるつもりがなかったのだと俺に伝えていた。

 しかし、どんな言葉を言われたところで、俺は彼女を許すつもりなんてなかった。

「今でも……お前のことを、できることなら殺したい」

 思わずつぶやいてしまった本音の言葉に、セリスはびくっと体を震わせる。
 彼女は俺の顔を見て、怯えていた。

「わ、私が……あなたにそんな顔をさせてしまったのだと思うと、取り返しがつかないことをしてしまったことを、強く実感します」

 怖い、というわけではなかったらしい。
 どちらかというと、この態度は罪悪感によるものだということなのだろうか。

「死ね、と命じるなら……死にます。もう不要だと言うのなら、死んでも構わない。でも、できるなら……あなたに殺されることを、望むわ」

 その、卑屈な顔が――かつての俺と重なった。
 奴隷だった時に惨めな自分が脳裏に浮かんで、俺は我を忘れそうになった。

「なら――殺してやる」

 跪く彼女の首に手を伸ばして、強く絞める。

 この細い首を絞めるのは二度目だった。前は体を差し出されようとした時に殺しかけたのだが……あの時よりも、今の俺は衝動的だった。

 こいつを殺して過去の自分を忘れる。
 奴隷だったあの時の記憶を抹消する。

 セリスを殺して、それから新しい人生を歩むのもいいかもしれない。

「あはっ……ありがとう、ございます。ごしゅじん、さま」

 今回の彼女も、あの時から大分変わっていたようだ。前は息が苦しいともがいていたのに、今は首を絞められて嬉しそうに笑っていた。


こいつにはたくさん傷つけられてきた。
 セリスを見るたびに、俺はかつての自分と向き合わなければならなくなる。そんな毎日を終わりにするのも、悪くないかもしれない。

 そんなことを、考えていたのだが。




「アーム。落ち着いてくれ……君は彼女を殺しても、過去の自分をなかったことにはできないよ」


 でも、やっぱり彼女はそれを許してくれなかった。 
 隣からそっと俺の手を握ったのは……レイラである。セリスの首を絞める手に、彼女の温もりを感じた。

「――っ」

 反射的に力を緩めた。レイラの存在を思い出して、急に思考が冷えた。
 彼女の前でだけは、なんとなく醜い自分を見せたくないと――そう思ったのである。

「……むしろ、彼女を殺した程度のことで君は過去を振り切ることなんてできないだろう? だったら、安易に殺すべきではないと、ぼくからは言わせてもらおうかな」

 レイラの言葉は、正しかった。
 そうだ……セリスを殺したところで、俺は奴隷だった過去を捨てることなんてできない。

 もう、過去は変えられないのだから。

「落ち着いてくれ、アーム……君は、君が思っているより心優しい人間さ。彼女を殺すことで得られるのは本当に幸せかい? むしろ、殺したことによって君が苦しむ可能性はないかい? そのあたりは、大丈夫なのか……冷静になって考えてみてくれよ」

 ――たとえば、セリスを殺したとしよう。
 今この瞬間はスッキリする可能性はあった。でも、ふとした時にこいつを思い出した時に、俺はどんな感情を抱くだろう?

 きっと、幸せな気持ちにはならないはずだ。

 ……よくよく考えてみると、俺がセリスの父親であるクラウンを殺さなかったのは、あいつを苦しめるためだった。

 ただ死ぬだけでは足りない。クラウンには惨めに生きて、苦しんでほしいと思って生かしたのだ。

 セリスも同様である。
 だから、まだ過去を振り切れてない今、彼女を殺すのは得策ではないのかもしれない。

「それに、彼女には利用価値もあるのだろう? どうしても殺したいのなら、もう止めないけどね……」

 苦笑がちに紡がれた言葉に、俺は手の力を完全に緩めた。

「っ……殺さないの?」

 セリスが残念そうに声を発する。
 そんな彼女に、俺は吐き捨てるように言葉を返した。

「俺の奴隷として……お前は、苦しめ。死んで楽になんてさせない」

 あと、そもそもセリスには利用価値がある。
 勇者たちへの復讐に、彼女は必要だ。

「俺が幸せになるまで、お前は不幸なままでいろ」

「……はい、ご主人様。私はあなたの、奴隷です」

 だから俺は、彼女を生かすことにしたのである――
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