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負け組奴隷生産職は『武具生成』チートで成り上がる ~無限に生産できる最強装備なら復讐も簡単です~ 作者:八神鏡
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第三十五話 セリスの贖罪

 扉を開けた俺を見て、セリスはへなへなと崩れ落ちた。

「生きてて……良かった」

 膝をついて目元を拭う彼女の気持ちが俺には分からなかった。

「……どうして、ここにいる?」

「す、すいません……あの、前の宿は高いので、こっちに移動してました。私一人のために、ご主人様のお金を必要以上に使いたくなくて」

「本当にそうか? 俺の荷物を盗んで、どこかに行くつもりじゃなかったのか?」

「そんなこと……できません。だって、私は――あなたの、奴隷だから」

 かつてセリスは高圧的な貴族の娘だった。
 しかし今は、俺の奴隷という身分を自ら受け入れているように見えた。

「その、勇者たちに、ご主人様が死んだと言われて……でも、彼らの言葉は信じられなかったの。でも、あの宿は少し高いので、店主に伝言だけお願いしてこちらに来ていました……ごめんなさい」

 セリスは俺の気分を害したと思っているようだ。聞いてもいないのにこの宿に来た経緯を説明している。

「毎日、ギルドとか……近くの外界とかで、探してました。見つけられなくて、ギルドからも死んだと報告されたけど、やっぱり死んだとは思えなくて……帰りを、待ってたの」

「お前、勇者たちが保護しようとしてくれなかったのか? 一応は貴族の娘だから、あいつらはお前を助けようとしたんじゃないか?」

「……何か、言われたような気はします。でも、彼らは父と同じ目をしていたから、信じたらダメだと思ったの。勇者たちは、貴族だから……その、ご主人様の装備を借りて、逃げました。ごめんなさい」

 俺の装備とは、ストックしていた隠密用のヘルムのことだろうか。

 確かに俺の荷物もこの部屋に持ち込まれていた。その中に隠密用の装備もある。これをセリスは借りて、勇者たちにばれないよう行方をくらましたようだ。

 とはいえ、セリスは前の宿屋で伝言を残しているみたいだし、ギルドにもよく顔を出しているようなので、彼女の居場所が把握されていないということは考えにくい。

 だが、勇者たちも然程セリスのことを気にかけているようではないみたいだ。逃げるのなら放置しておこうという考えなのかもしれない。

 ……今の状況は、俺にとってかなり都合が良かった。

 色々と気になる点はある。
 こいつがどうして俺に執着しているのかは疑問だが、そこは別に知らなくていいだろう。

 大切なのは、こいつが利用できるかどうかだ。セリスの考えなんてどうでもいい。

 そう思っていた。
 でも、そうやって俺とセリスの関係を曖昧なものにすることを、彼女は許さなかった。

「ねぇ、君はどうしてアームの奴隷であることに拘っているんだい? 侮辱され、嘲笑され、酷い扱いを受けていたのに……今回、逃げようと思えば逃げられただろう? 勇者たちに助けを求めたら、君はまた貴族としての身分を取り戻せたかもしれない。それなのに、どうして奴隷であることを望んでいるんだい?」

 ――魔王、レイラは俺とセリスの歪んだ関係を見抜いていた。

 俺が見て見ぬふりをして、それからセリスには自覚がなかったであろう、この異常な状況を……レイラは許容してくれなかった。

「少なくとも、アームが生きていることを喜ぶくらいには……何か、彼に対して思っていることがあるんだろう? そこはハッキリしておくべきだと思うよ。このままだと過去を清算できずに、いつか後悔するんじゃないかな?」

 この子は……やっぱり、頭がいい。
 俺が未だに過去を引きずっていることを彼女は察していたようだ。

 プロエリウム家の『奴隷』だったという過去は、セリスを見るたびに蘇る。
 過去を振り切れてないという証明が、セリスという存在なのだ。

「あなたは……確か、魔族の人?」

 セリスは一応、魔王の顔を見たことがある。魔族殲滅戦の時に一瞬だが対面した時のことを覚えていたみたいだ。

「ああ、ぼくは魔王のレイラだ。縁あってアームと出会ったのさ……君たちのことは全部聞いている。その上で、第三者として意見を言わせてもらったよ。気分を害したならすまないね」

「……いえ、その通りだと思うわ。私は、ご主人様の奴隷であることを、望んでいるのかもしれない」

 そしてセリスは、本心を語った。



「私は、ご主人様に……たくさんの、酷いことをしてきた。だから、これからの全てを、ご主人様に捧げて――償わなければならないの」



 その言葉に、俺は言葉を失ってしまった。
 まさか、こいつがこんなことを言うとは思わなかったのである。

「知らなかった……自分が、酷いことをしている自覚なんてなかった。貴族しか見てこなかったから、奴隷はバカにするのが普通の扱いだと考えてたの。でも、ご主人様はとても苦しんでいた……あの時、父を嘲笑うご主人様を見て、私は自分のしてきたことの意味を理解したわ。こんなに、彼を傷つけてたんだ――って」

 セリスは自らが着ているぼろ布を握りながら、俯いていた。

「それに、奴隷になってみてようやくわかったの。奴隷って、とても苦しいのね……みすぼらしい服を着て、美味しくごはんも食べられなくて、寝る時も窮屈で……こんな風にご主人様を扱ってたのかと思うと、胸が痛くなった」

 だから彼女は、奴隷であることを甘んじて受け入れていると言う。

「今まで傷つけていた分、これから私は一生をかけて償います……許してほしいとは思っていません。でも、もしよければ、私を使い捨ててください……たくさん、傷つけてください。じゃないと私は、自分が許せない」

 ――その説明を聞いて、俺はやっぱり何かを言うことが出来なかった。
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