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負け組奴隷生産職は『武具生成』チートで成り上がる ~無限に生産できる最強装備なら復讐も簡単です~ 作者:八神鏡
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第十三話 成り上がりに向けて

 セリスのドレスは想定より安くしか売れなかったが、とりあえず当面はお金に困らなくなった。

「……悪くないな」

 購入した衣服を着てみて、俺は一つ頷いた。
 選んだのは旅装束だ。フード付きの外套を羽織って自分の服を隠せるような恰好を選んだ。

 俺の『武具生成』スキルは、当たり前だが武具を装備しなければ効果が発揮できない。
 武具というのは四六時中装備しているとおかしいので、平時はこの外套で隠すことにしていたのだ。

 街には旅人も多く、俺と同じような恰好も珍しくない。
 怪しまれることもないだろうし、これなら緊急の事態になっても遅れをとることはないはず。

「バックパックなんかも必要だよな……地図やコンパスもあれば便利か。そうだ、保存食も購入しておこう」

 頭の中でリストを作りながら歩みを進める。
 自分のために計画を練るという行為はなかなか楽しかった。

 気分が高揚していたせいか、自然に足が速くなっていたらしい。

「ま、待って……」

 奴隷との距離が離れていた。
 声をかけられて、俺は足を止める。

 振り返ると、そこには先程まで俺が来ていてぼろきれを着たセリスがいた。

 毎日洗濯していたとはいえ、ずっと同じものを使わされていたせいかボロボロである。

 セリスには俺が着ていた服を与えた。奴隷だからというのも理由の一つだが、他にも『身分を隠す』という意味があったりする。

 彼女はなんだかんだ貴族の娘だった。
 一応は天才で顔も広かったし、知名度もある。

 そんな彼女を連れまわしていると、俺に不審の目が向けられる可能性があった。
 だから、あえて奴隷の恰好をさせた。これなら、セリスがセリスと認識されることはまずないだろう。

 まさかあのプロエリウム家の娘が、奴隷になっているなんて――誰が想像できるというのか。

「うぅ……」

 彼女はスタイルがいいこともあって、周囲からは奇異の目で見られていた。

 その視線がセリスは苦手みたいだ。
 俺の影に隠れるようにくっついてくる。それが煩わしくて足が速くなった、というのもあるかもしれない。

「その服、似合ってるぞ」

 一言、嘲笑ってやる。もちろん嫌味のつもりだ。
 すると彼女は、恥辱のせいで顔を赤く染めた。

「っ……」

 悔しそうに唇を噛むその表情が、俺の心をくすぐる。
 本当は何か言い返したいのだろう。でも、彼女は何も言えない。

 かつての俺のように、ここで捨てられたら生きていけないからだ。

 当初はセリスを奴隷にするのをためらったが、今は後悔していなかった。
 こうやって憂さ晴らしできるのなら、悪くない。




 必要な物品を揃えた後、宿をとることにした。
 セリスもいるので料金は二人分になると思っていたが、どうも奴隷は物品扱いらしく料金は一人分で済んだ。

 元奴隷としては複雑な気分だが、まぁいい。
 指定された部屋に入って身を休めることにする。

 今日泊まるのは大して高級でもない、ごくごくありふれた宿だ

 とはいえ、俺には十分すぎるほどに立派な部屋に感じる。

 奴隷だった時はずっと納屋のような場所で寝泊まりしていた。

 雨が降れば雨漏りするし、隙間風は入って来るし、冬場は寒く、夏場は熱かった。あの場所と比較すれば最高の場所である。

「あ、の……私は、どこにいればいい?」

 この部屋は一人部屋である。
 物品扱いしたセリスのベッドはもちろんない。

 居心地悪そうに身をよじる彼女に、俺はため息をついた。

「そうだな。お前はどこにいればいいんだろうな」

 やっぱり二人部屋にした方が良かったかもしれない。
 狭い部屋でセリスと二人きりというのは、少し圧迫感があった。

「とりあえずそこの椅子に座ってろ。寝る時は……また後で考えてやる」

「ええ……分かったわ」

 部屋に設置されている椅子に座るセリス。

 普通の貴族は奴隷を持ち運ぶ際、どこに寝泊まりさせているのだろうか。俺はずっと家の中に閉じ込められていたのでそのあたりがよく分からなかった。

 ……寝る時のことは後で考えよう。
 まずは飯から食べておくか。

「おい、バックパックからさっき買った飯を取れ」

「は、はいっ」

 びくびくしたセリスを使って、先程購入した食料を手に取る。
 食べ物を売っている店で、一番多く売れているらしい種類を買った。サンドイッチという食料らしい。

 なんとなく、クラウンが食べていた記憶もある。
 食べたことがないので味は知らないが、貴族が食べるほどなので悪くはないと思う。

「ほらよ、お前にも食わしてやる」

 自分の分を確保して、残りはセリスに渡す。
 奴隷だったので、彼女の食事量は把握していた。十分な量を与えてやる。

「……こんなに、いいの?」

 セリスは驚いたように目を大きくしていた。
 どうやら、普通に食事をもらえたことにびっくしりたようだ。

「私たちは、奴隷に……あまり、食料を与えなかったのに」

 そう。俺は産まれてから一度も満腹になったことがない。
 いつもいつも、質素で味気ない食事をしていた。

 だからセリスも、同じように扱われると思っていたらしい。

「俺をクラウンと一緒にするな。食事はきちんと与える……一応、奴隷も人間だからな。最低限の衣・食・住は用意するに決まってる」

「そ、そうですか。ありがたく、いただきます」

 彼女は何故か俺に感謝をして、サンドイッチを手に取ろうとする。
 そんな彼女を、俺は制止した。

「おい、食べることは許可したが……誰が手を使っていいと言った?」

「……え?」

 ぽかんとする彼女に、俺は容赦のない言葉を紡ぐ。

「奴隷の分際で、ご主人様と同じように食えると思っていたのか? 手を使って食うな。獣のように、這いつくばって食え」

 食事はきちんと与える。これは人として当たり前のことだ。
 でも、食事方法に関しては、奴隷として相応しくしてもらないと困る。

「お前が俺にさせていたことだ。忘れているとは言わせない……ほら、食えよ。汚らしく、獣のように」

 有無を言わさずに威圧してやる。

「は、い……」

 そうすればセリスは、涙目になりながらも地面に皿を置いた。
 そのまま、獣のように口だけで食事を始める。

 その姿を上から見下ろすのは、たまらなく楽しかった。

「汚い食べ方だな……元貴族だろ? 綺麗に食えよ」

「ご、めん、な……さい」

 理不尽な罵倒にセリスは身を震わせる。
 そんな彼女を眺めながら食べるごはんは、格別な味がした――
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