挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
負け組奴隷生産職は『武具生成』チートで成り上がる ~無限に生産できる最強装備なら復讐も簡単です~ 作者:八神鏡
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

13/58

第十二話 復讐を果たした後

 復讐は果たしても虚しいだけという説がある。
 そんなことに身を費やすより、もっと別にやるべきことがある――というのが、一般的な常識のようだ。

 きっと、その説を唱えている奴らは復讐なんてしたことのない、脳みそが幸せな連中なのだろう。

 復讐を果たすと虚しい? 普通に嬉しいに決まっているだろ。
 自分を苦しめていた相手が苦しむ姿は言葉に表せないくらい最高である。

 終わった後には虚しさなんてあるわけない。達成した、という満足感しかなかった。

 クラウンの落ちぶれる姿には本当に楽しませてもらったものだ。

 さて、ひとまずの復讐を果たしたわけだが、ここで無気力になるほど俺の人生はまだまだ幸福に満ちていなかった。

 今まで、奴隷として惨めな人生を送ってきたのである。

 ――成り上がる。
 俺の目標は、幸せになることだ。奴隷から成り上がって一定の地位を築き、誰もが羨望するような幸福を手に入れてやる。

 生産職だろうと関係ない。
 人間は誰でも幸せになれるのだと、俺が証明するのだ。

 この『武具生成』スキルがあれば、なんだってできるはずだ。

 そのために、まずはギルドに行って『冒険者』になる登録をした方がいいだろう。
 俺のスキルはどんなことだってできるはずだが、やっぱり『戦闘』に一番向いている。

 冒険者としてクエストをこなし、お金を稼ぎながら知名度を広めて名声を手に入れたいものだ。
 そこまでいけば、自ずと地位も手に入るだろう。国も腕のいい冒険者は優遇している。

 勇者パーティーくらいになれたら、俺の人生は成功と言ってもいいはず。

 とはいえ、ギルドに行くのは明日にしておくか。
 そろそろ日が暮れる。今日はどこかの宿に泊まるか。

「……そういえば、金がないな」

 と、ここで俺は自らの失態に気付く。

 しまった……憔悴するクラウンを観察するのが楽しすぎて、当面のお金をどうするか考えていなかった。ここ数日は屋敷の食料を勝手に食い漁っていたし、『買う』という行為にまで考えがいたらなかった。

 せめて屋敷にいる時に思い出せていたら盗めていたのだが。

「さて、どうするか」

 屋敷から出て、俺は街中を歩いていた。
 貴族の邸宅が並ぶ区域と違って、このあたりはかなり賑やかである。

 店という、品物やサービスをお金と引き換えに提供しているところが多数並んでいるのだ。

 店にいる彼らは、貴族公認の『商売人』である。生産職でこそあるが、『食料関連』だったり『道具関連』だったりと有用なスキルを持つ者たちばかりだ。

 貴族はこうやって自らが保有する一部の生産職を『商売人』として特権を与え、お金を稼いでいる。
 彼らは自らの雇用主である貴族のためにお金を稼ぐ代わりに普通の人間として生活できているようだ。

 羨ましい限りである。
 俺も、もしクラウンが寛容だとしたら、こうやって商売人いなっていたかもしれないな。

 雇い主であるクラウンに多少お金を献上する必要はあっただろうが、それはそれで平凡な幸せを甘受できたと思う。

 まぁ、現実はそう上手くいかず、俺は地下牢に監禁されてしまったわけだが。

 ともあれ、お金の問題を解決しなければ。

「……おい」

「っ! は、はいっ」

 呼びかけに応えたのは、先程から俺の隣でびくびくしているセリス・プロエリウムだ。
 いや、もうプロエリウム家からは逃げ出したわけだから、ただのセリスと表現した方が正しいか。

 俺の奴隷となった彼女は、以前までの高圧的な態度を忘れてしまったようで、今はとても臆病な表情になっていた。俺に何をされるか分からないから怯えているのだろう。

 この顔は好きだ。
 見ていて、心が落ち着く。

「お前、金持ってるか? 家から何か持って来ているか?」

「い、いえ……ごめんなさい。何も、持ってきてないわ」

 一応、元とはいえこいつは貴族だった。
 お金を持っていると期待したが、残念な結果に終わったようだ。

「使えないな」

「……ご、ごめんなさい」

 まぁ、しょうがないと言えばしょうがないだろう。
 何せプロエリウム家はクエスト失敗の賠償金を払うために借金まみれだった。お金なんてあるわけないか。

「いや……お前、金目の物持ってるじゃん」

 しかし、俺は気付いた。
 セリスは今――高価なドレスを着ている。

 恐らくは貴族の娘としての価値を落とさないために、クラウンは衣服を奪うことはしなかったのだろう。

 だが、今のこいつには不要な服だ。

「その服を売れ。しばらくの生活費にはなりそうだな」

 ちょうどいい。
 そう思って命令したが、セリスは困惑したように目を伏せた。

「でも、その……私の服が、なくなるわ」

「ああ、そうか。奴隷にも服は必要だよな……だったら、俺が着ている服をやろう。俺は新しいの買うから」

 今の俺は、プロエリウム家から支給されたぼろきれを身にまとっている。
 みすぼらしい恰好だ。でも、プロエリウム家は、この恰好が奴隷にはお似合いと思っていたらしい。

 だから、セリスも同じような恰好をさせてやろうと思った。

「…………」

 無言のセリスに、俺はニヤニヤと笑いかける。

「嫌か? 自分たちが奴隷にしていた仕打ちだろ? 今はお前が奴隷なんだから、大人しく言うこと聞けよ」

 こんなことを言ってやれば、セリスは頷くほかないわけで。

「分かったわ……売って、きます」

 彼女は身を震わせて、ドレスを売ることに頷いたのだった。
 よし、これで当面は金に困らなくていいだろう。

 悪くない門出だった――
お読みくださりありがとうございます!
よろしければ、評価やブックマークをしていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ