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負け組奴隷生産職は『武具生成』チートで成り上がる ~無限に生産できる最強装備なら復讐も簡単です~ 作者:八神鏡
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第十一話 服従していた家への復讐 その三

 魔族討伐の失敗。
 王家より直々に受けたクエストは達成できなかった。

 そのことに王は激しく怒ったようで、逃がした戦犯には厳しい処罰が下ったらしい。

 可哀想なことに、戦犯となったその貴族は私財を全て失ったとか。いや、それでも罰金として科せられた額には届かず、金の工面に奔走することになったようである。

 生産職の奴隷を養うこともできなくなり、家も土地も売り払い、更には辺境の領地へと左遷させられることになったとか。

 本当に哀れで、涙が出てきそうだ。
 まぁ、この涙は『喜び』によるものなのだが。

 戦犯はもちろん、クラウン・プロエリウムである。
 俺としては、もしかしたら勇者パーティーが戦犯になる可能性があると危惧していた。

 しかし勇者パーティーは王家から信用されていたためか処罰も軽く、その分の罪を着せられたかのようにプロエリウム家の処罰は重かった。

 新参ということもあって切り捨てられやすい立場にいたから、というのもあったかもしれない。
 なんて無様なんだろう。元ご主人様の身が不憫でならなかった。

 あれから……魔族をしっかりと逃がしてから、俺は姿をくらました。
 プロエリウム家から離れた振りをして、やつらの凋落っぷりを楽しんでいたのだ。

 もちろん、隠密用の装備で姿は見えなくしていただけで、実際はずっとクラウンの隣にいた。
 この数日、クラウンの憔悴っぷりを鑑賞するのは面白かった。

 そろそろそれも飽きてきたし、クラウンも疲労のせいか寝たきりになりつつあった。
 退屈なので、ここらでクラウンとはお別れすることにしたのである。

「よう、ご主人様。お別れの挨拶に来てやったぞ」

 クラウンの寝室で、俺はおもむろに兜を脱いで声をかけた。

「っ!? 貴様……!!」

 俺を見て、クラウンは怒りに形相を歪ませる。

「よくも……よくもぉおおおおお!!」

 我を忘れて殴りかかって来るが、残念ながら今日も俺はしっかり武具を装備していた。
 生身のクラウンに殴られても、まったく痛くなかった。

「おい、今どんな気持ちだ? 今まで馬鹿にしていた奴隷にまんまと騙されて、私財を失い、借金まみれとなって、家の名をこれでもかと言うくらいに穢したお前は、どんなことを考えている? なぁ、教えてくれよ」

「黙れ! 貴様さえいなければ……貴様さえ、言うことを聞いていれば!!」

「……最後に一つ、いいことを教えてやる。お前がゴミみたいに扱ってた生物はな、立派な『人間』なんだよ。普通に生きる権利があるんだ。たかだか生まれや能力で、差別されるなんて理不尽だと思わないか? あんなに酷い扱いをしていて、恨まれていないとでも考えていたのか? なんとも、幸せな脳みそを持ってるよな」

 憎い。俺は、プロエリウム家を心の底から恨んでいる。
 奴隷として生まれても、やっぱり俺は人間だ。

 普通に生きて、幸せになる権利だってあるはずなのに――こんなやつに使役されるような人生はごめんだ。

「感謝しろよ……お前は殺さない。生きて、どうか苦しんでくれ。お前が息を吹き返して再び成り上がれそうになった時、俺は絶対に邪魔しに行ってやるから。お前をこれから、死ぬまで苦しませてやるから」

「――――!!」

 怒鳴り散らすクラウンは、最早人間の言葉を喋っていなかった。

「汚いんだよ……俺に触るな」

 最後に軽く殴り飛ばしてから、俺はクラウンの部屋から出て行く。
 最後まで背中に浴びていた罵詈雑言が、たまらなく気持ち良かった。




 さて、これでようやくプロエリウム家とお別れすることができる。
 ここでの生活はとても苦しかった。もう忘れてしまいたいくらいである。

 さぁ、これからが新しい人生のスタートだ。
 心機一転、幸せになれるように頑張っていこう。

 そう、思っていたのに……

「ま、待って! 待ちなさい……ちょっと、待って」

 屋敷から出た俺の後を、彼女が追いかけてきた。
 クラウンの娘、セリス・プロエリウムである。

「どうか、お願い……私も、連れて行って。あなたの作ってくれた武器を失ってから、震えが止まらないの。助けて……私に、武器を作ってください」

 彼女は震える手で俺に縋りついてきた。
 ああ、そういえばこいつの武器には面白半分で『中毒の呪い』というものをつけていたっけ。

 クラウンの不幸が楽しすぎて、セリスのことはすっかり忘れていた。

「なんでもするわ。だから、お願いします……」

 弱々しい声でセリスは俺に慈悲を乞う。
 なかなか、立場も分かっているようだ。クラウンのように威圧的な態度はない。

 今のセリスは、俺より下の存在だ。
 ただ俺に縋りつくだけの、哀れな乞食だ。

 今まで俺を見下していたやつを見下すのは、なかなかいい気分だった。

「プロエリウム家はどうするんだ? この家での幸せを捨てるのか?」

「もうダメなのっ……どうせこのままなら、父は私を見ず知らずの他人の家に嫁がせる。金のためなら父は私を売るわ……だから、あなたについて行かせてっ」

 なるほど。中毒症状もあるが、家が危機というのもセリスにとってはよろしくない状況のようだ。

 そういえばクラウンとセリスはあまり仲良くなかった。いつも素っ気なかったし、クラウンなら実の娘だろうと平気で売りそうである。

「…………」

 正直なところ、セリスは憎いし恨んでいる。
 こいつにされたことはクラウンと比較すると軽いが、だからって許しているわけではない。

 でも……いや、だからこそ。
 こいつを隷属するのは、悪くないと思った。

「奴隷」

 ぽつりと、思い浮かんだ言葉を口にする。

「俺の奴隷になるなら、連れて行ってやる。どうする?」

 今までは俺が奴隷だった。
 でも、今度はセリスを奴隷にしてやろうと、そう考えたのだ。

 少しでも難色を示したら連れて行かない。
 そう考えていたが、思いのほかセリスは俺に従順だった。

「はい。奴隷でも、なんでもいい……助けて、ください」

 言ってもいないのにセリスは俺に頭を下げる。
 相当な不安感に襲われているのだろう……なんて気持ちが良いことか。

「――っ」

 言葉にできない陶酔感と恍惚感が俺を満たしていた。

「舐めろ」

 本当に服従するつもりがあるか確かめるために、靴を差し出して命令を下す。
 貴族だった彼女にとって、その行為は屈辱的なものだっただろう。

 だが、追い込まれたセリスは、一切のためらいもなく俺の靴を舐めた。

「これで、いい?」

 びくびくした顔が、俺を高揚させる。

 いい。悪くない。
 こいつは俺の奴隷として、そばおいておこう。

 そしてしっかりと、今までされてきた分のお礼をしてやる――と、そんなことを思った。

「ああ、いいだろう。俺の奴隷として、連れて行ってやる」

 こうして、俺はセリスを奴隷にした。
 プロエリウム家のことはすべて忘れてしまいたかったが、まぁいい……セリスで鬱憤を晴らすこともできるのだ。

 これからの人生、なかなか楽しめそうである――
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