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第33話 極貧の青年時代を送ったコンキスタドール、エルナン・コルテス

エルナン・コルテスは、1485年にスペインのメデジンで生まれました。


この地方ははん乾燥地帯で農業がしづらく、人々は簡単な放牧で生計を立てていました。

スペインでもっとも後進的な地方と言ってもいいでしょう。


コルテスの一家は『イダルゴ』と呼ばれる下層貴族階層でした。

これは貴族と平民の間にある身分で、日本語に訳すと『郷士』でしょうか。

決して高い身分ではありません。


コルテスの父はいくさで手柄を立て、一家の社会的上昇に成功しましたが、すぐにレコンキスタは終了。

戦場という職場を失いました。


コルテスは父親の命でサラマンカ大学に入り、ラテン語と法律の基礎知識を身に着けました。


彼は、法律の学士過程を半期でやめてしまうと、様々な仕事をしながら生計を立てました。


当時のスペインで、イダルゴ(下層貴族階級)がより良い生活を手にするには、レコンキスタに参加して手柄を立てるしかなかったのです。


しかし戦争が終わり活躍の場がなくなると、彼らが人がましい生活を送ろうとするならば、イタリアに行くか、アメリカ大陸に渡るしかありませんでした。


1504年、コルテスはカリブ海のエスパニョール島サント=ドミンゴスに渡ります。


当時のエスパニョール島はゴールドラッシュに沸いており、労働力はいくらあっても足りない状態でした。


そのためスペイン人たちは、奴隷集めのための戦争を始めます。


その中でコルテスは手柄を立て、エンコミエンダ(奴隷主としての資格)を手にします。


そして事業経営をしながら、エスパニョール島の権力者の間を上手に泳ぎ回って人脈を作り上げました。


その結果、アステカ王国征伐隊に参加します。

アステカは当時の中部アメリカ大陸に存在した大王国でした。

その国王はモクテスマ2世。


やがてコルテスは征伐隊の中で味方を集め、独立部隊として行動し始めました。

加えて現地の人間を通訳として雇い、アステカ王国と対立しているトトナカ族やトラスカラ族を仲間に引き入れました。


すぐさまアステカ王国の首都テノチティトランを攻略し、75日間でこれを陥落させました。


アステカ王国の国王アクテスマ2世は、民衆に撃ち殺されたとも、コルテスの部下に殺されたとも言われています。


コルテスは、アクテスマ2世の娘を愛人とし、テノチティトランの跡地にメキシコシティを築きました。


彼はホンジュラス遠征に失敗し、スペインに帰還。

スペイン国王に謁見する権利を得て、侯爵のくらいと広大な領土を賜りました。


その後コルテスは、カリフォルニアや太平洋の島々への遠征計画を立てますがことごとく失敗。


スペインに帰り、北アフリカのアルジェ制服戦に参加しますが、1547年にセビリヤで死亡します。



エルナン・コルテスは、昔はヨーロッパ文明をアメリカ大陸に広げた英雄として評価され、現在は残虐な侵略者として扱われることが多いようです。


彼は悪人だったのでしょうか?

私はこの人物を称賛しないし、断罪もしません。


歴史を善悪で二つに叩き切る資格は誰にも無いでしょう。


私が一つだけ憶えておきたいと思っていることは『行き場所のない人間たちはこうなってしまう』という事実でしょうか。


将来に希望の持てない人間は過剰に攻撃的になり、他人を思いやる余裕など持てないのです。

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