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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第10話〜

作者: 福紙

訳あり物件だが、バス停近い、森林公園近い、映画館近い上に家賃が安い現世のアパート。


「しかし…閻魔様、金の出どころはどこですか?」


白刃(しらは)さん、何か悪い言い方ですね…」


「うむ。聞きたいか?現世のお布施(ふせ)でまかなっている」


お布施らしい。閻魔大王は咳払いをする。


「この世界は地獄と極楽…まぁ天国と神界があってな、1年に1度予算会議…と言うより山分けだな」


「1度一緒について行った事ありますが…ただの大ゲンカじゃないですか。神界の天照大神(あまてらすおおかみ)様と極楽の阿弥陀如来(あみだにょらい)様とかなり揉めてたじゃないですか」


「あれは天照が“私のお布施の方が多いですぅー!”とか言い始めるからだ!」


と聞きたくもない裏事情を言う閻魔大王。と白刃が新聞紙のチラシを見つけた。


「…すぽーつらんど開業?」


「あ!白刃さん!いいの見つけましたね〜!ふっふっふ」


とこん助がタブレットを見せた。


「ローラースケート、ボーリング、何でもやれるスポーツ施設です!今なら3人以上で行くと、スポーツランドのマスコット“スポッツ君”ストラップくれます!」


閻魔大王は興味を示した。


「ぬぅ…面白い。行くぞ!貴様ら!」


と支度をし始めた。

専用バスはあったが、閻魔大王が乗車拒否をした。一行は歩いて行く事にした。こん助は大人の姿になり、3人で歩く。歩いて1時間、スポーツ施設に着いた。なかなかの賑わいである。受付で手続きをする。こん助がスラスラと書く。が、年齢欄で手が止まる。


『僕ら…もう年齢という概念が…』


チラッと閻魔大王と白刃を見る。


自極(じごく)円馬(えんま)25歳、白狐(しろこ)白羽(しらは)23歳、夜神(やかん)紺助(こんすけ)20歳”


と書いた。そして入場券の代わりの腕輪をもらった。


「これをつけていれば、色んなのができるんですよー」


「ほぅ…」


「こん助、白刃よ。人間が足に車輪をつけて滑っておるぞ」


と閻魔大王はローラースケートに興味を示した。ローラースケートの靴を借りて、早速乗ってみる。運動神経のよい白刃は立ち上がるとすぐに乗りこなす。


『意外と簡単だな…閻魔様とこん助は…』


と見ると、やっとの事でコースに来たこん助と立つ事すら出来ない閻魔大王がいた。


「し、白刃さぁあ〜ん!待ってぇええ〜!!」


「こん助よ!置いて行くな!!私は立てぬぞ!おい!この車輪が!!」


スーッと白刃はこん助の元にやってきた。


「ぼ、僕より、閻魔様を…!!」


「白刃ー!!貴様、何故だ?!」


結局、白刃はこん助と閻魔大王の手を掴んで滑る事にした。


「白刃さん!絶対離さないでくださいねぇえ〜!」


「ぅおおお…!!勝手に進むぞ…進むぞ…!白刃!手を離してみろ!杏慈(あんじ)に言うからな!」


「はぁ…」


とへっぴり腰とガクガクする足の2人を連れて滑る白刃。と、とあるカップルが目に入った。男は女の手を引いて滑っている。その姿を思わず自分と杏慈を重ねてしまった。


「!!雑念よ!去れぇええーー!!」


「ちょっと、しら…!!」


「ぬぉお?!いきなりどうし…!!」


白刃は2人の手を離して猛スピードで滑って行った。置いていかれたこん助と閻魔大王は動けなくなってしまった。


「え、閻魔様…僕ら、一歩も動けません…!」


「し、白刃め…!!早く戻って来ぬか…!ん?」


と出入り口を見ると同じ状況の女性がいた。


「何故じゃ…何故わらわがこの程度のものを…!」


美しい長い黒髪で美白の肌、赤いアイラインを引いたタイトな服の女性…天照大神であった。


「こ、こん助…!最悪だぞ…!天照(あまてらす)がいる…!!」


「え?!天照様が?!あ!あそこでプルプルしてる女性ですね?!」


「おのれ…奴も現世にやってきおったか!!今年の予算会議でよくも…!」


と閻魔大王の執念が足を一歩一歩動かす。


「え、閻魔様!置いていかないで!」


「ぬぅ…!わらわだって…!!」


「ふははは!!情けぬのぅ!天照大神!!」


「そ、その声は!!」


天照大神が顔を上げると、涼しげな顔をしている閻魔大王がいたが、足は耐えているのかプルプルとしている。天照大神は手すりを伝って立ち上がる。


「だ、誰かと思えば、閻魔大王じゃな?!噂では聞いておったが…、こ、こんなところで会うとは奇遇じゃのう…!」


「天照よ…悔しかったらここまで来るがよい!」


「く…!!よく言うわ!わらわとて、そちらに行けるわ!!」


と行った瞬間、


「わー!!どいてどいてぇええーー!!」


「ふぬぅ?!」


と閻魔大王は何者かとぶつかり、滑って行く。


「あああー!!閻魔様ー!!」


目の前を滑って行く閻魔大王を助けられずこん助は叫ぶしかなかった。


「き、貴様!無礼者…って、貴様!?」


「閻魔ー?!何でここにいるの?!」


つるーっと滑って壁で止まった。少し癖っ毛の髪にアジアン風な服を着た男がニコッと笑った。


阿弥陀(あみだ)ぁぁー!?」


「やあ、久しぶり。牛頭(ごず)君と馬頭(めず)君元気かい?」


「それより、貴様!何でここに?!」


「あぁ!お主は阿弥陀如来!?」


現世のスポーツ施設に3神が集まった。

その後、天照大神は“覚えておれ!”と言って、靴を履き替える場所までかなりの時間がかかり、阿弥陀如来は“とりあえず帰るー”と言ってハイハイして戻った。立ち上がれない閻魔大王とその場からこん助は、バッティングコーナーで煩悩滅殺させる白刃を待った。


そして彼ら(白刃と阿弥陀如来以外)を次の日待っていたのは全身筋肉痛であった。


「ぐおおおおーーー!!今日の…裁きは休み…」


「いけません!さぁ、お裁きを!こん助!」


「…僕も賛成です…!!」


一方、神界でも、


「おのれ…閻魔大王!覚えておれぇ!アイタタ…」


と天照大神は謎のリベンジを誓った。

10話目にして3神が集結!次の日に筋肉痛とはみんんな若いな…

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