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9-10(P97)

晴彦が気絶したのを確認するとインフィニティは淡々と彼の意識の復旧作業を開始した。とはいっても電撃吸収のスキルを得ている男に電撃を使用するわけにはいかない。ではどうするのか。しばし思案したインフィニティは水の魔法を使って浮遊する水球を作成すると晴彦の顔面に容赦なく纏わりつかせた。そんなことをすれば息ができなくなるのは一目瞭然だった。溺死する危険性などは最初から考えていない。自らの主を起こすことしか頭になかった。気道を封じられた晴彦の口から気泡が上がっていく様を淡々とインフィニティは待ち続けた。恐ろしく事務的な対応であった。そこには情けや無用というものは全くなく、ただ目的を果たそうとする確固たる意志があるだけだった。


「がぼがぼがぼ!!」


晴彦が目を覚ますのを確認した後にインフィニティは魔法を解いた。げほげほと水を吐き出しながらむせ返る晴彦を見ながら鑑定スキルは冷静に意識が戻るまでの時間を記憶した。




               ◆◇◆◇◆◇          




電気ショックの次は水攻めかよ。日に日に殺意が増していくインフィニティさんの意識覚醒方法に俺は恐怖した。幾らなんでもありえないだろう。殺意が明確すぎる。殺す気なのか。その問いに鑑定スキルは冷静に答えた。


『マスターの今の生命力なら溺死する可能性は皆無であると申し上げます。ただし、脳内に酸素が一定時間行き渡らないと重度の障害が残る可能性がありますので早めに起きることを推奨します』

「この方法を選ぶ時点で疑問を感じないのか」

『電気ショックは効果が見込めません。他に効果がありそうなものですと火あぶりにするか刃物で刺すしかありませんが』

「お前、絶対に処刑方法と間違えているよな」


ガクブルするような方法である。この調子だと物理攻撃が効きづらいからギロチンにしてみましたとか普通に言いそうである。これ以上問答していたらこちらの頭がおかしくなるわ。そう思いながら俺は周囲を見渡した。酷い有様だった。周囲の建物や車のガラスというガラスが全て粉々に割れてしまっている。車のガラスなんて強化ガラスだろうから簡単に割れないはずなのに。怖いのは道路のアスファルトにも微妙な亀裂が走っている点だった。恐るべし、金切声。ちょっとやばすぎるから使用するのは控えよう。

そういえば大蜘蛛の姿が見つからない。よく見たら蜘蛛のいた位置には元の姿に戻ったワンコさんが横たわっていた。慌てて駆け寄るとワイシャツの胸元が上下していることから息をしているのが分かった。そういえば着やせしているけど胸が大きいんだよな。何となく注視してしまった後で咳ばらいをして目を逸らした。

しかし、これで二回目の襲撃である。剣狼とかいう刀の制御が全くできていないことになる。このままでは呪いの期限が来て俺も死ぬことになるな。流石にそれはちょっと避けたいぞ。何か解決の糸口はないものか。そう思った俺はワンコさんのステータスを確認してみることにした。



剣崎壱美

年齢:24

Lv.28

種族:人間

職業:侍

状態異常:【呪】

称号:境界渡り

孤狼族のクォーター


体力:244/244

魔力:58

筋力:245(644)

耐久:166(321)

器用:280

敏捷:285

智慧:120

精神:144

ユニークスキル

〈弐回攻撃〉

〈固有武装召喚〉

〈魔剣召喚〉【呪】(6000/180000)

〈クリティカルヒット〉

〈先読み〉

〈瞬間剛力〉

〈鋼鉄の腕〉



やっぱり状態異常の【呪】って状態になっているのか。効果を詳細検索してみると剣狼を抜いたことで意識を乗っ取られて化け蜘蛛に変わると書いてあった。 〈魔剣召喚〉にも【呪】と書いてあるな。そこまで見たところで俺は違和感を覚えた。魔剣召喚のところに何か見慣れた経験値表示がされていたからだ。これはひょっとして克服経験値を書いてあるのではないのか。


「おい、インフィニティ、この数値ってあれだよな」

『はい。魔剣召喚の呪いの克服経験値を現しています。数値から推測するに化け蜘蛛に一回変化するごとに3000を獲得すると思われます』


なんということだろうか。ワンコさんは必死に化け蜘蛛に乗っ取られまいと頑張っていたというのに、この数値から分かることは全く無駄な努力だったという事になる。要は化け蜘蛛に何度も変身することで克服できるステータスなのだ。何というシステム的な誤りだろうか。そう考えると気の毒になってくるではないか。どうもこの世界のシステムを考えた神様は相当性悪らしい。となれば作戦変更が必要になる。俺は少し考えた後にインフィニティに尋ねた。


「インフィニティ、ワンコさん用にトレーニングメニューを考えたいんだけど」

『楽しそうな相談ですね、承りましょう』


この時の俺の大きな失敗はインフィニティに相談したことだった。だが、暴走のエンジンがかかったインフィニティさんは最早止まることなどできなかったのである。



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